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1 欲求不満なのかな
5 バイトクビになりました
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「店長、昨日は急に休んですみませんでした」
「奈都君は真面目だから、体調が悪い日は休んでくれていいよ」
「ありがとうございます」
奈都は丁寧に頭を下げる。
「お店のお掃除します」
「頼むね」
奈都は更衣室に入って、学校の制服の上からエプロンをすると、掃除道具入れから布巾を取り出す。
布巾言っても棚を拭くものなので、清潔で使い捨てだ。
消毒用のスプレーを布巾かけて、棚を拭いていく。
「奈都ちゃん、昨日はどうしたの?休んだりして心配したよ」
早朝から、常連客の松岡が奈都の隣に並んだ。
「熱でもあったのかな?」
男の手が奈都の前髪を掻き上げて、額に触れた。
「やめてください」
お客に手を上げてはいけない。
数歩後ろに下がって、松岡から距離を取る。
「照れたりして、かわいいね」
「お客様、今日は何をお探しですか?」
「奈都ちゃんだよ」
背筋に悪寒が走る。
完全なストーカーだ。
「かわいいね」
女の子のように奈都の髪は肩まで伸ばしている。
奈都の頭には傷がある。
短く切ると傷が見えてしまうので、奈都は小さな頃から髪を長く伸ばすように両親に言われている。
子供の頃、交通事故に遭い、頭の手術をしたのだと聞かされている。
生死に関わるような怪我だった言われた。
怪我ひどかったせいか、奈都は幼い頃の記憶がない。
耳の横の髪を撫でられて、奈都は唇をかみしめて頭を下げる。
「お客様、僕は商品ではありません」
「前にいくらだと聞いただろう?いくらなら抱かせてくれる?」
以前、亜稀を追いかけてホテルの前で会った男だ。
「セレブ高校なのに、バイトなんてして。家が急に貧乏にでもなったの?」
「お客様には関係ありません」
奈都は店内の詰め所に戻ろうとした。
けれど、足を引っかけられて、床に転んでしまった。
松岡が奈都の体を跨いだ。
「生活に困らないように、援助してあげてもいいよ。代償は奈都ちゃんの体ね」
「お客様、やめてください」
エプロンを引っ張られ、ボタンが弾け飛ぶ。
次にネクタイを抜かれて、ワイシャツを開かれた。
「いやーっ」
ボタンが弾け飛んだとき、コンビニの扉が開いた。
お客は真っ直ぐ、早足で歩いてくる。
「俺のものになりな」
「嫌だ!」
ズボンのベルトを緩められそうになったとき、奈都の上に跨がっていた男が蹴られた。
「レイプ未遂の現行犯だ」
転がった男の手を、亜稀が握っていた。
「店長、警察に電話してください」
店の奥から、店長がスマホを持って歩いてくる。
「もう呼んである」
手にはロープが握られていた。
「証拠は防犯カメラに撮ってありますから。出所しても出禁ですから」
店長は松岡に言いながら、体をぐるぐるとロープで縛った。
「奈都、大丈夫か?」
涙を浮かべた奈都は亜稀に抱きついていた。
「怖かった」
「こいつを捕まえるために、助けるのが遅くなってごめん。元凶がなくならないと、ずっと狙われる」
震えながら、奈都は頷く。
すぐに警察が来て、現場検証が行われ、証拠の防犯カメラの映像が提出された。
奈都の犯された制服も証拠品に提出されることになった。
警察で事情聴取を受けて出てくると、響介が着替えを持ってきていた。
「響ちゃん、ごめん」
「着替えておいで」
「うん」
空いた取調室で服を着替えて、奈都が身につけていた物は、警察に提出した。
控え室に行くと、店長が頭を下げてきた。
「守ってやれなくてすまなかった。奈都君は真面目によく働いて、客受けもよかったが、私が心配なんだ。金森のお子様に何かあっては先代や先々代に申し訳ない。どうか仕事を辞めてくれるか?」
「クビですか?」
店長は頷いて、頭を下げてくれた。
お客を犯罪者にしてしまった。
お店にも迷惑をかけてしまった。
「お世話になりました」
頷いた店長が待合室から出て行った。
奈都は待合室の椅子に座って、黙って俯いていた。
「帰るぞ」
亜稀が奈都の手を握る。
「亜稀がホテルに入っていったとき、会った人だったんだ」
「俺が悪かった。奈都が見てるって知らずに軽はずみな遊びをしてたから」
「僕はいくらだと思う?」
「奈都っ!」
「奈都!」
兄弟二人の怒った声がした。
「体を売ろうなんて思ってない。ただいくらだって、聞かれたから」
「値段はつけられない。奈都は僕たちの大切な兄弟だ」
響介の手が頭を抱いて体ごと抱きしめてくる。
「うん」
「奈都も響介も帰るぞ。遅くなったから、どこかで飯食って行こうぜ」
「僕の制服、どうしよう」
「まだ店は開いているだろう。新しいのを買えばいい」
「お父さんとお母さんが買ってくれたものなのに」
奈都は膝を抱えるようにして泣いてしまった。
両親が亡くなったあの時に戻ってしまったようだ。
あの頃の奈都は、ずっと部屋に引きこもって泣いていた。
「奈都、うちに帰って、両親に感謝しよう。二人が買ってくれた制服が、今は奈都を守っている。そうだろう?」
奈都は顔を上げて響介を見る。
(響ちゃんの言うとおりだ)
「泣いたりしてごめん」
奈都は涙を拭って、立ち上がった。
響介と亜稀が奈都の手を繋ぐ。
二人に支えられながら、奈都は歩いて行く。
「新しいバイト先、見つかるかな?」
「バイトは禁止だ」
家長の響介が声を上げた。
「奈都が家にいないと落ち着いて仕事ができない。仕事が欲しいなら、僕の仕事を手伝ってくれ。会社の仕事が面倒で仕方ない」
「響ちゃん」
「俺も、奈都が作ったご飯が食べたい」
「亜稀」
「だから、うちにいてくれ」
響介の手が頭を撫でる。
「わかった」
なんて素敵な兄弟だろう。
奈都は二人のためにならなんでもできるような気がした。
「響ちゃんも亜稀も大好き」
二人が笑顔を見せる。
空には綺麗な星空が見えていた。
「奈都君は真面目だから、体調が悪い日は休んでくれていいよ」
「ありがとうございます」
奈都は丁寧に頭を下げる。
「お店のお掃除します」
「頼むね」
奈都は更衣室に入って、学校の制服の上からエプロンをすると、掃除道具入れから布巾を取り出す。
布巾言っても棚を拭くものなので、清潔で使い捨てだ。
消毒用のスプレーを布巾かけて、棚を拭いていく。
「奈都ちゃん、昨日はどうしたの?休んだりして心配したよ」
早朝から、常連客の松岡が奈都の隣に並んだ。
「熱でもあったのかな?」
男の手が奈都の前髪を掻き上げて、額に触れた。
「やめてください」
お客に手を上げてはいけない。
数歩後ろに下がって、松岡から距離を取る。
「照れたりして、かわいいね」
「お客様、今日は何をお探しですか?」
「奈都ちゃんだよ」
背筋に悪寒が走る。
完全なストーカーだ。
「かわいいね」
女の子のように奈都の髪は肩まで伸ばしている。
奈都の頭には傷がある。
短く切ると傷が見えてしまうので、奈都は小さな頃から髪を長く伸ばすように両親に言われている。
子供の頃、交通事故に遭い、頭の手術をしたのだと聞かされている。
生死に関わるような怪我だった言われた。
怪我ひどかったせいか、奈都は幼い頃の記憶がない。
耳の横の髪を撫でられて、奈都は唇をかみしめて頭を下げる。
「お客様、僕は商品ではありません」
「前にいくらだと聞いただろう?いくらなら抱かせてくれる?」
以前、亜稀を追いかけてホテルの前で会った男だ。
「セレブ高校なのに、バイトなんてして。家が急に貧乏にでもなったの?」
「お客様には関係ありません」
奈都は店内の詰め所に戻ろうとした。
けれど、足を引っかけられて、床に転んでしまった。
松岡が奈都の体を跨いだ。
「生活に困らないように、援助してあげてもいいよ。代償は奈都ちゃんの体ね」
「お客様、やめてください」
エプロンを引っ張られ、ボタンが弾け飛ぶ。
次にネクタイを抜かれて、ワイシャツを開かれた。
「いやーっ」
ボタンが弾け飛んだとき、コンビニの扉が開いた。
お客は真っ直ぐ、早足で歩いてくる。
「俺のものになりな」
「嫌だ!」
ズボンのベルトを緩められそうになったとき、奈都の上に跨がっていた男が蹴られた。
「レイプ未遂の現行犯だ」
転がった男の手を、亜稀が握っていた。
「店長、警察に電話してください」
店の奥から、店長がスマホを持って歩いてくる。
「もう呼んである」
手にはロープが握られていた。
「証拠は防犯カメラに撮ってありますから。出所しても出禁ですから」
店長は松岡に言いながら、体をぐるぐるとロープで縛った。
「奈都、大丈夫か?」
涙を浮かべた奈都は亜稀に抱きついていた。
「怖かった」
「こいつを捕まえるために、助けるのが遅くなってごめん。元凶がなくならないと、ずっと狙われる」
震えながら、奈都は頷く。
すぐに警察が来て、現場検証が行われ、証拠の防犯カメラの映像が提出された。
奈都の犯された制服も証拠品に提出されることになった。
警察で事情聴取を受けて出てくると、響介が着替えを持ってきていた。
「響ちゃん、ごめん」
「着替えておいで」
「うん」
空いた取調室で服を着替えて、奈都が身につけていた物は、警察に提出した。
控え室に行くと、店長が頭を下げてきた。
「守ってやれなくてすまなかった。奈都君は真面目によく働いて、客受けもよかったが、私が心配なんだ。金森のお子様に何かあっては先代や先々代に申し訳ない。どうか仕事を辞めてくれるか?」
「クビですか?」
店長は頷いて、頭を下げてくれた。
お客を犯罪者にしてしまった。
お店にも迷惑をかけてしまった。
「お世話になりました」
頷いた店長が待合室から出て行った。
奈都は待合室の椅子に座って、黙って俯いていた。
「帰るぞ」
亜稀が奈都の手を握る。
「亜稀がホテルに入っていったとき、会った人だったんだ」
「俺が悪かった。奈都が見てるって知らずに軽はずみな遊びをしてたから」
「僕はいくらだと思う?」
「奈都っ!」
「奈都!」
兄弟二人の怒った声がした。
「体を売ろうなんて思ってない。ただいくらだって、聞かれたから」
「値段はつけられない。奈都は僕たちの大切な兄弟だ」
響介の手が頭を抱いて体ごと抱きしめてくる。
「うん」
「奈都も響介も帰るぞ。遅くなったから、どこかで飯食って行こうぜ」
「僕の制服、どうしよう」
「まだ店は開いているだろう。新しいのを買えばいい」
「お父さんとお母さんが買ってくれたものなのに」
奈都は膝を抱えるようにして泣いてしまった。
両親が亡くなったあの時に戻ってしまったようだ。
あの頃の奈都は、ずっと部屋に引きこもって泣いていた。
「奈都、うちに帰って、両親に感謝しよう。二人が買ってくれた制服が、今は奈都を守っている。そうだろう?」
奈都は顔を上げて響介を見る。
(響ちゃんの言うとおりだ)
「泣いたりしてごめん」
奈都は涙を拭って、立ち上がった。
響介と亜稀が奈都の手を繋ぐ。
二人に支えられながら、奈都は歩いて行く。
「新しいバイト先、見つかるかな?」
「バイトは禁止だ」
家長の響介が声を上げた。
「奈都が家にいないと落ち着いて仕事ができない。仕事が欲しいなら、僕の仕事を手伝ってくれ。会社の仕事が面倒で仕方ない」
「響ちゃん」
「俺も、奈都が作ったご飯が食べたい」
「亜稀」
「だから、うちにいてくれ」
響介の手が頭を撫でる。
「わかった」
なんて素敵な兄弟だろう。
奈都は二人のためにならなんでもできるような気がした。
「響ちゃんも亜稀も大好き」
二人が笑顔を見せる。
空には綺麗な星空が見えていた。
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