18 / 35
桜の奇跡 ~赤い糸の絆~
3-3
しおりを挟むお酒が飲みたくなった。
手にしたのは院内PHSだ。
加納の直通ナンバーを押していた。
『消化器外科、加納』
「センターの原です、お忙しいところ申し訳ございません。今日はお手すきの時間はございますか?」
『は?』
素っ頓狂な声が返ってきて、原は電話を切ってしまった。すぐに、PHSが鳴った。
『加納。いきなり電話きるなよ』
「すみません。忙しいのかと思いまして」
『忙しいけどさ、時間外はいつも開けてるよ。時間が空いたなら、迎えに行くから待ってろよ』
「今日はヘリ当番なので、定時に終わります」
『それなら、いい子で待ってな』
ぷつりと電話が切れた。
定時で終わった原は、シャワー室で汗を流し、私服に着替えた。
医局のシャワーは水圧もあって、自宅に帰ってからシャワーを浴びるより気持ちがいいし、自宅のシャワー室は狭いうえに、使えば掃除をしなくてはならないので、できるだけ病院で済ませている。
持ち込んだミントのシャンプーは懐かしさを感じさせるだけでなく、頭をスッキリさせてくれる。
転送のフライトの後三度飛んで、体は疲れていたが心は晴れやかだった。
過去の傷は癒えていた。そのことが、とても嬉しかった。
ソファーに座っているうちに眠くなってきた。
髪を撫でられて、原は目を覚ました。
ソファーの隣に、加納が座っていた。いつの間にか加納の肩に凭れかかっていた。
「すみません」
慌てて体を起こすと、加納は爽やかに笑っていた。
「謝るなよ。こういうのを役得って言うんだ」
「役得って・・・」
「まあ、いいさ。食事行くか?」
「今日は奢りますので」
「金の心配はするな」
「でも、今日は僕が出しますから」
「はいはい、わかったから。どこに連れて行ってくれるんだ?」
「えーっと。お店を知らないので、連れて行っていただけますか?」
センターは纏まって食事会が行われないので、原はお店を知らない。
センター以外の医師ともあまり交流がないので、飲みに行くこともない。
「今日はイタリアンにするか?ラフな感じのお店だ」
「加納先生の好きなところで」
「じゃあ、決まり。行くぞ」
「はい、加納先生」
斜め掛けのショルダーバックを下げて、原は加納の後を追う。
0
あなたにおすすめの小説
うちの前に落ちてたかわいい男の子を拾ってみました。 【完結】
まつも☆きらら
BL
ある日、弟の海斗とマンションの前にダンボールに入れられ放置されていた傷だらけの美少年『瑞希』を拾った優斗。『1ヵ月だけ置いて』と言われ一緒に暮らし始めるが、どこか危うい雰囲気を漂わせた瑞希に翻弄される海斗と優斗。自分のことは何も聞かないでと言われるが、瑞希のことが気になって仕方ない2人は休みの日に瑞希の後を尾けることに。そこで見たのは、中年の男から金を受け取る瑞希の姿だった・・・・。
ほたるのゆめ
ruki
BL
恋をすると世界が輝く。でもその輝きは身体を重ねるといつも消えてしまった。そんな蛍が好きになったのはオメガ嫌いのアルファ優人だった。発情したオメガとその香りを嫌悪する彼に嫌われないように、ひたすらオメガである事を匂わさないようにしてきた蛍は、告げることの出来ない思いに悩んでいた。
『さかなのみるゆめ』の蛍と(木佐)優人のお話です。時間軸的には『さかな・・・』のお話の直後ですが、本編主人公達はほとんど出てこないので、このお話だけでも楽しめるかと思います。けれど『さかな・・・』の方も読んで頂けると幸いです。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
愛され少年と嫌われ少年
透
BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。
顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。
元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。
【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】
※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。
亡国の王弟は女好きの騎士に溺愛される
コムギ
BL
アラバンド国の王弟ルカーシュは、騎士のシモンによって地下牢から救い出された。
その時、肌に触れたシモンに、やけどのような怪我を負わせてしまう。
ルカーシュは北の魔女の末裔であり、魔力を持っていた。
魔力を持たない者に触れると、怪我をさせてしまうという。
騎士団長からの命令で、シモンはルカーシュの護衛につくことになった。
※他サイトにも掲載しています。
届かない「ただいま」
AzureHaru
BL
いつも通りの変わらない日常のはずだった。
「行ってきます。」と言って出て行った貴方。1日が終わる頃に「ただいま。」と「おかえり。」を笑顔で交わすはずだった。でも、その言葉はもう貴方には届かない。
これは「優しさが奪った日常」の物語。
仮面の王子と優雅な従者
emanon
BL
国土は小さいながらも豊かな国、ライデン王国。
平和なこの国の第一王子は、人前に出る時は必ず仮面を付けている。
おまけに病弱で無能、醜男と専らの噂だ。
しかしそれは世を忍ぶ仮の姿だった──。
これは仮面の王子とその従者が暗躍する物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる