【完結】安心してください。わたしも貴方を愛していません

綾月百花   

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23   アンテレSIDE

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 ネアンが持っていたお金とアンスタンが持っていたお金は、かなり大金だ。

 オマケに宝石が大量にある。

 宝石商を演じるか?

 お金は、この国の物が大半だ。

 アンスタンが、隣国のお金を持っていたが、どちらが多いかと数えると、自国の金の方が多い。

 国境まで、馬に乗って走ったが、国境を渡るかかなり迷った。

 結局、国境を渡った。

 金よりも安全を選んだ。

 自国にいれば、指名手配犯だが、隣国、インコンシェ王国に渡れば、ただの伯爵子息になる。

 ただ、元のアンスタン・コンシュリ伯爵子息を知る人に会う可能性は高くなる。

 できるだけ、知り合いに会わないために、国境近くの比較的大きな街に留まった。

 ジュルナル地区に住んでいたと身分証に書かれていたから、国境を渡ると同時に、本屋を見つけて、地図で探した。どうやら、王都である事が分かった。

 要はタウンハウスなのだろう。

 都市部に近づかなければ、危険な事はそうそうないだろう。

 言葉も、貴族学校に通っていたことで、隣国の言葉は習っていた事もあり、言葉も通じる。

 国境近くの村に移動し、家を借りた。

 仕事も探した。

 一人でひっそりと生きて行くなら、それほどお金は要らない。

 今度の仕事は、荷運びは止めて、工場の管理人の仕事を選んだ。

 アンテレは侯爵子息だった。

 領地からの収入や投資の仕事もやって来た。

 繊維会社の女工の監視役と事務仕事だ。

 平民の13歳から60歳くらいの女が働いている。

 こうしてみると、13歳の少女は、肌が瑞々しくて美しい。

 ネアンなど相手にせずに、マリアーノと本当の結婚式を挙げたのだから、本当の夫婦になればよかったのだと、様々な年齢の女工を見ながら思うのだ。

 白い結婚が、俺の人生を狂わせた。

 父上が言うように、ネアンとの交際を終わらせるべきだったのだ。

 最後に見たネアンの肌は荒れていた。若さもあるだろうが、あの女は宝石やドレスにお金を使っていたが、化粧品はあまり興味がないような感じだった。

 どちらにしろ、今更、悔やんでも人生は巻き戻らない。


「コンシュリ様、お顔の色があまり宜しくないですわ」


 若い女工が、俺の顔色を覗き込んできた。

 よく見ると、愛らしい顔をしている。


「なんだ?」

「あの、宜しければ、お食事でも如何ですか?」

「ああ、いいだろう」


 物欲しそうな顔をしている。


「幾つだ?」

「13歳よ、幼い姉弟を養っているわ」


 明らかに、13歳の少女は俺を誘っていた。

 拙いその仕草が、ちぐはぐで、可愛らしく感じた。

 午後から、俺はその少女を部屋に呼び出して、その少女を買った。

 健気に振る舞っていたが、13歳の少女は初めてだった。

 処女の証が太股を伝って流れていく。

 途中から、少女は泣いていたが、俺は手加減をしなかった。

 誘ってきたのは、この少女の方だ。

 満足するほど、貪ったのはどれくらいぶりだろう。

 少女は、人形になったように、動けなくなっていた。

 ぐったりとソファーに倒れている。

 そう、横になっていると言うよりは、倒れていると表現した方が適していた。

 手足を動かすことも億劫のようだ。


「幾ら欲しいんだ?」

「……今夜の食事を弟妹に食べさせてあげたいの」


 ネアンのように宝石を強請るわけではなく、高価なドレスを強請るわけでもない。

 ただ一食の食事のために。

 それも、弟妹の食事のために体を売った少女が、愛おしく感じた。


「どこに住んでいるんだ?」

「貧民街よ。5歳の弟と3歳の妹がいるの」

「食事は食べさせてやろう。その代わり、俺以外に体を売るのはよせ。体を売らないと約束できるなら俺の妻にしてやろう」


 少女は目を見開き、そして、涙をこぼした。

 体を隠すことすらせずに、手で涙を拭っている。


「約束を守ります。旦那様」


 俺は、少女の処女の証を拭き取り、少女に綺麗に洋服を着せた。

 体が痛むのか、時々、顔をしかめているが、一生懸命に我慢している姿に心引かれた。


「名は何という?」

「シルビアです」

「シルビアか、俺のことは、アンスタンと呼べ」

「はい、アンスタン様」


 少女の顔を見ると、白い結婚をしたマリアーノに似ているようにも見えた。

 子供だと思っていたが、ネアンを抱いたときよりも興奮した。

 俺は異国に来て、初めて心が休まる場所を見つけたような気がした。

 この子をもっと抱きたいと俺は思ったのだ。

 他の手垢の付かないように、大切にしたい。

 終業のサイレンが鳴ると、俺はシルビアを連れて、シルビアの家に行った。

 幼い弟妹が、姉の帰りを待っていた。


「お姉ちゃん」


 二人の弟妹は、シルビアに抱きついていた。


「旦那様、エリンにミリアです」

「荷物を纏めなさい」

「はい」


 シルビアは、弟妹達の着替えを布に包んで、自分の着替えも手早く片付けていく。

 小さな部屋の中には、台所もあったが、食べ物はなさそうだった。


「両親はどうした?」

「疫病で、亡くなりました」

「そうか」

「両親の洋服や持ち物を売って食べ物に換えていましたが、もう売る物もなくなってしまったのです」


 シルビアは自分の着替えを持つと、弟妹達に頭を下げるように、言っている。

 幼い弟妹達は、身を寄せ合って、頭を深く下げた。

 シルビアの洋服は、たったの3着だった。弟や妹の服よりも少ない。シルビアは自分の洋服も売っていたのだろう。


「この部屋は借りているのか?」

「はい」

「では、解約してきなさい」

「はい」


 シルビアは、部屋から出ると走って行った。

 暫く待つと、シルビアは戻ってきた。


「解約しました」

「では行こうか?」


 俺はまず、借家に子供達を連れて行き、荷物を置くと、食堂に連れて行った。


「好きな物を食べられる量だけ頼みなさい」

「旦那様、ありがとうございます」


 子供達の目がキラキラと輝いている。

 シルビアが、メニューを見て、食事を頼んだ。

 スープは三人分、肉料理は一人分、パンを一個ずつ頼んだだけだ。


「もういいのか?」

「普段から、食べていないので、残してしまいます」

「そうか」


 俺は違う肉料理を二種類頼んで、パンとスープを頼んだ。

 子供達に分けてやればいい。

 オーダーするときに取り皿を頼んだので、料理が運ばれてきたら、俺は俺が頼んだ肉料理を分けてやった。

 子供達が目を見開き、涙を目に溜めている。



「さあ、食べなさい」

「ありがとうございます」


 シルビアがお礼を言って、子供達は頭を下げた。

 俺は自分が今、この子達にすごく優しくしたいと思っていることに驚いた。


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