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32 お茶会は出たくはありませんの
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王宮に戻ると、笑顔のわたくしを見て、陛下と王妃様は微笑んだ。
「楽しかったか?」
「はい、お母様のお墓に挨拶して参りました。それから、研究所の所長と打ち合わせなどができました。秋の新作の準備に取りかかれそうです」
「それは、よかったな」
陛下は大きく頷いた。
「イグレッシア、マリアーノの研究所はどうだった?」
「父上は研究所を見たことがあるのですか?」
「いや、王妃から話だけは聞いていた」
「僕は初めて見たのですが、電気という物があり、それで、扉も自動で開き、清潔なエリアで研究も工場もできておりました。この国の国家レベルの秘密の場所ですね。国を挙げて、あの研究所は守らなければならないと思いました。この国も電気という物が一般的なれば、かなり便利になると思います。学ぶことが多くありました」
「そうか、私も一度見学に行きたいな」
「陛下、是非、ご覧ください。わたくしが他国で学んで、領地に作った物です。研究所で働く者達は、わたくしがスカウトして参りました。優秀な研究員です。新たな製品が、次々とできあがっています。王妃様、こちらは新作のマッサージオイルでございます。スズランの香りがいたします。宜しければ、お試しください」
わたくしは、王妃様の背後にいる従者に瓶を渡した。
「ありがとう。マリア。皆さんはお元気でしたか?」
「はい、父も兄夫婦も元気にしておりました」
「マリアも元気になってよかったわ」
「王妃様、あの時は泣いてばかりいて、申し訳ございません。もう元気です」
「そう、よかったわ」
「イグレッシア王子が、ずっと寄り添ってくださいました」
「僕は、妻が泣いていたら、寄り添っていたいからな」
「二人とも末永く、仲良くしなさい」
「はい、父上」
イグは陛下に頭を下げた。
「公務を任せてすみませんでした。明日から、公務に戻りますので」
「頼れるうちは頼りなさい。今回はキエフにも手伝ってもらった。後で少しだけお礼を言っておくといい」
「はい、父上」
イグは再び、お辞儀をした。
「さあ、長旅で疲れただろう。食事はまだかな?」
「はい、まだです」
「では、食事をしたら、ゆっくり休みなさい」
「ありがとうございます」
最後はわたくしとイグは声を揃えて、一緒にお辞儀をした。
「では、食事に行って参ります」
イグに手を引かれ、わたくし達は一緒に陛下と王妃様の前から辞した。そのまま食事をしに、ダイニングに向かった。
+
食事を終えて、部屋に戻るとメリスとネルフが待っていた。
「お嬢様、入浴されますか?」
「ええ」
「では、試供品のオイルを使ってみましょう」
「二人とも疲れたでしょう?明日でもいいのよ?」
「いいえ、わたくしどもも楽しみにしておりましたわ」
「それなら、お願いします」
お風呂に入り、洗ってもらった後に、マッサージ用のベッドに横になる。
スズランの優しい香りがする。
「いい香りね」
「いい香りですね。オイルも滑らかですよ」
「ええ、とても、気持ちがいいわ」
ネルフが丁寧にほぐしてくれる。馬車の中でずっと座っていたので、体が凝り固まっている。それをマッサージで、ほぐしてくれている。
滑らかなオイルが、肌に馴染む感じが気持ちよく、香りもきつくなくちょうどいい。
「上品な香りですね」
「そうね、早速、手紙を書かなくちゃ。きっと直ぐにお店に並ぶわ」
「お嬢様、熱いタオルを当てますね」
「はい」
仕上げの熱いタオルを背中に当てられ、全身を拭ってもらう。
「お嬢様、バスローブをお召しください」
「はい」
メリスがバスローブを広げてくれている。
袖を通すと、素早く身につけていく。
「お茶を準備してあります」
「ありがとう、メリス」
お風呂場から出ると、鏡台の前に座る。
メリスが髪を梳かして、まだ濡れた髪にオイルを塗ってくれる。
研究所には電気があるから、研究所にはドライヤーという髪を乾かす機械があるが、まだこの国は電気が普及していない。
タオルで乾かすしかない。
ネルフが来て、肌の手入れをしてくれる。
一通り終わると、体の火照りも取れてきた。
お茶を飲むと母の味のお茶だった。
メリスが居てくれる間に、この味を覚えたい。
「メリス、この味になるように、お茶を淹れたいの。教えてくださいますか?」
「勿論、いいですわ」
「では、明日から、教えてくださいね」
メリスは、ネルフが慣れるまでの約束なので、ずっと一緒には居られない。
「それと、刺繍も教えてくださいますか?殿下にプレゼントができるくらいは上達したいの」
「いいですよ。お嬢様、よかったら、ドレスを一着いただけますか?」
「ええ、いいわ。メリスのいい物をどうぞ。でも、もしかしたら、刺繍をしてくださるの?」
「ええ、せっかくですから」
「嬉しいわ」
期間が決められているなら、その時間を大切にしなければ、後で後悔はしたくない。
ネルフはネグリジェを持ってきた。
下着を身につけて、ネグリジェを身につける。
「お嬢様、お風呂の片付けに行って参ります。ご不在の間の手紙は、机の上に置いておきました」
「ありがとう」
ネルフはお風呂に戻っていった。
「メリスは休んでくださいね」
「ええ、休みながらしておりますよ」
ソファーに座ればいいのに、メリスは丸椅子を持ってきて、部屋の隅に置いて、そこに座る。
無理を言っているのはわたくしの方なので、申し訳がない。
わたくしは机の上に置かれた手紙を見ていく。
二泊三日しか経ってないのに、手紙はけっこうあった。
同じ名前の手紙が三通もあって、気になって、よく見た。
メアリー・カスカータ侯爵令嬢と書かれている。
一つの封を開けると、便箋が2枚入っている。
取り敢えず読んでいくと、先日のお茶会でのことのようだ。謝っているのだとしたら、ちょっとお言葉が違うような気がする。お友達になって欲しいこと、パーティーを開くので来て欲しいという内容だった。二枚目の便箋には、招待状と書かれている。
王妃様のお茶会の日のことを思い出して、不快に思い、明日、断りの手紙を書こうと思って、机の端に置くと、他の手紙を見ていく。
返事のいる物だけ、別にして、確認した手紙を纏めておく。
その夜は、早めに休んだ。
翌日、メリスに刺繍を教わっていると、手紙が届けられた。
ネルフが受け取り、手紙を確認すると、またあの令嬢から手紙が届いた。
朝一番で、お断りの手紙を書いたので、まだ届いていないのだろうと、手紙は捨てる箱の中に入れた。
間違って大事な手紙を捨ててしまうことを心配して、捨てる予定の手紙は、一つの箱の中に入れて後で見直すのだ。
他の手紙を確認した。
仕事の手紙はなく、ビオニールお兄様からの手紙が届いた。
領地に戻ったことを聞いたこと。元気でいるかとか、たまには遊びにおいでと書かれていた。
後で、手紙を書こうと思い、机に置いておく。
今は刺繍の練習なので、刺繍を続ける。
お母様も刺繍を嗜んでいたので、刺繍をするのは久しぶりだ。昔は一緒に刺繍をしていたことを思い出し、メリスに刺繍を教わっていると母が居た頃を思い出す。
その翌日、またあの令嬢から手紙が届いた。
内容は、以前と同じで、もしかしたら、手紙は届いていていないのかもしれないと思い、お断りの手紙を書いて、届いた手紙は、念のために取っておいた。
その翌日もまたあの令嬢から手紙が届いた。
さすがに気持ちが悪く、イグに相談した。
「返事はもう書かなくていい」と言われて、ホッとした。
その翌日もまたあの令嬢から手紙が届いた。
まるでコピーされた文章が送られてくるようで、気持ちが悪い。
20通、同じ手紙が送られて、またイグに相談した。
今度は、手紙を持っていって見てもらった。
「僕から、断りの手紙を書いておくよ」と、イグは送られてきた手紙を受け取って「心配いらない」と笑った。
その翌日も、その翌日もまたあの令嬢から手紙が送られてきた。
「イグ、あの手紙だけれど、まだ来ているの。お手紙書いてくださった?」
「書いたよ」
「届いてないのかしら?」
追加の二通をイグに渡した。
「この令嬢、気持ちが悪いわ」
「相手になる必要はない」
「でも、気になるわ」
「それより、明後日は結婚式のドレスを作るんだよ。お義父さん明日には来るだろう?」
「タウンハウスの邸に来ているって、明後日、こちらに来る予定だって手紙が来たわ」
「そうか、ここに来てくれていいのにな?」
「お店も見に行かないと。お父様もお店を出しているから」
「そうだったね」
「このまま、お昼ご飯に行こうか?」
「そのつもりだったの」
「少し待って、この手紙、置いてくるから」
「はい」
イグは部屋の中に入って、若い宰相様と話している。
先に、若い宰相様が部屋を出て行って、イグが出てきた。
若い宰相様はアルソス様という名らしい。彼はイグの幼馴染みで、今は信頼できる相棒だと言っていた。彼は、わたくしの前を通ると、頭を下げてくれる。
濃い金の色をした髪に、ラピスラズリのような神秘的な瞳をしている。
イグは青空のような綺麗な青い瞳をしているので、昼と夜のように見えてしまう。
「では行こうか?」
「はい」
イグがいつものように手を繋いで、廊下を歩いて行く。
「今日は昼から、何かするのか?」
「王妃様とお茶会をして、それから部屋にいるわ。やりたいことがあるの」
「そうか」
「イグは公務?」
「そうだね」
「お手伝いできなくて、ごめんね」
イグが微笑む。
「結婚したら、嫌でも、仕事をさせられる」
「そうなの?」
そんな日がきたら幸せだろうな。
「わたくし、事務仕事も早いのよ」
「それは頼もしい」
二人で笑い合った。
「楽しかったか?」
「はい、お母様のお墓に挨拶して参りました。それから、研究所の所長と打ち合わせなどができました。秋の新作の準備に取りかかれそうです」
「それは、よかったな」
陛下は大きく頷いた。
「イグレッシア、マリアーノの研究所はどうだった?」
「父上は研究所を見たことがあるのですか?」
「いや、王妃から話だけは聞いていた」
「僕は初めて見たのですが、電気という物があり、それで、扉も自動で開き、清潔なエリアで研究も工場もできておりました。この国の国家レベルの秘密の場所ですね。国を挙げて、あの研究所は守らなければならないと思いました。この国も電気という物が一般的なれば、かなり便利になると思います。学ぶことが多くありました」
「そうか、私も一度見学に行きたいな」
「陛下、是非、ご覧ください。わたくしが他国で学んで、領地に作った物です。研究所で働く者達は、わたくしがスカウトして参りました。優秀な研究員です。新たな製品が、次々とできあがっています。王妃様、こちらは新作のマッサージオイルでございます。スズランの香りがいたします。宜しければ、お試しください」
わたくしは、王妃様の背後にいる従者に瓶を渡した。
「ありがとう。マリア。皆さんはお元気でしたか?」
「はい、父も兄夫婦も元気にしておりました」
「マリアも元気になってよかったわ」
「王妃様、あの時は泣いてばかりいて、申し訳ございません。もう元気です」
「そう、よかったわ」
「イグレッシア王子が、ずっと寄り添ってくださいました」
「僕は、妻が泣いていたら、寄り添っていたいからな」
「二人とも末永く、仲良くしなさい」
「はい、父上」
イグは陛下に頭を下げた。
「公務を任せてすみませんでした。明日から、公務に戻りますので」
「頼れるうちは頼りなさい。今回はキエフにも手伝ってもらった。後で少しだけお礼を言っておくといい」
「はい、父上」
イグは再び、お辞儀をした。
「さあ、長旅で疲れただろう。食事はまだかな?」
「はい、まだです」
「では、食事をしたら、ゆっくり休みなさい」
「ありがとうございます」
最後はわたくしとイグは声を揃えて、一緒にお辞儀をした。
「では、食事に行って参ります」
イグに手を引かれ、わたくし達は一緒に陛下と王妃様の前から辞した。そのまま食事をしに、ダイニングに向かった。
+
食事を終えて、部屋に戻るとメリスとネルフが待っていた。
「お嬢様、入浴されますか?」
「ええ」
「では、試供品のオイルを使ってみましょう」
「二人とも疲れたでしょう?明日でもいいのよ?」
「いいえ、わたくしどもも楽しみにしておりましたわ」
「それなら、お願いします」
お風呂に入り、洗ってもらった後に、マッサージ用のベッドに横になる。
スズランの優しい香りがする。
「いい香りね」
「いい香りですね。オイルも滑らかですよ」
「ええ、とても、気持ちがいいわ」
ネルフが丁寧にほぐしてくれる。馬車の中でずっと座っていたので、体が凝り固まっている。それをマッサージで、ほぐしてくれている。
滑らかなオイルが、肌に馴染む感じが気持ちよく、香りもきつくなくちょうどいい。
「上品な香りですね」
「そうね、早速、手紙を書かなくちゃ。きっと直ぐにお店に並ぶわ」
「お嬢様、熱いタオルを当てますね」
「はい」
仕上げの熱いタオルを背中に当てられ、全身を拭ってもらう。
「お嬢様、バスローブをお召しください」
「はい」
メリスがバスローブを広げてくれている。
袖を通すと、素早く身につけていく。
「お茶を準備してあります」
「ありがとう、メリス」
お風呂場から出ると、鏡台の前に座る。
メリスが髪を梳かして、まだ濡れた髪にオイルを塗ってくれる。
研究所には電気があるから、研究所にはドライヤーという髪を乾かす機械があるが、まだこの国は電気が普及していない。
タオルで乾かすしかない。
ネルフが来て、肌の手入れをしてくれる。
一通り終わると、体の火照りも取れてきた。
お茶を飲むと母の味のお茶だった。
メリスが居てくれる間に、この味を覚えたい。
「メリス、この味になるように、お茶を淹れたいの。教えてくださいますか?」
「勿論、いいですわ」
「では、明日から、教えてくださいね」
メリスは、ネルフが慣れるまでの約束なので、ずっと一緒には居られない。
「それと、刺繍も教えてくださいますか?殿下にプレゼントができるくらいは上達したいの」
「いいですよ。お嬢様、よかったら、ドレスを一着いただけますか?」
「ええ、いいわ。メリスのいい物をどうぞ。でも、もしかしたら、刺繍をしてくださるの?」
「ええ、せっかくですから」
「嬉しいわ」
期間が決められているなら、その時間を大切にしなければ、後で後悔はしたくない。
ネルフはネグリジェを持ってきた。
下着を身につけて、ネグリジェを身につける。
「お嬢様、お風呂の片付けに行って参ります。ご不在の間の手紙は、机の上に置いておきました」
「ありがとう」
ネルフはお風呂に戻っていった。
「メリスは休んでくださいね」
「ええ、休みながらしておりますよ」
ソファーに座ればいいのに、メリスは丸椅子を持ってきて、部屋の隅に置いて、そこに座る。
無理を言っているのはわたくしの方なので、申し訳がない。
わたくしは机の上に置かれた手紙を見ていく。
二泊三日しか経ってないのに、手紙はけっこうあった。
同じ名前の手紙が三通もあって、気になって、よく見た。
メアリー・カスカータ侯爵令嬢と書かれている。
一つの封を開けると、便箋が2枚入っている。
取り敢えず読んでいくと、先日のお茶会でのことのようだ。謝っているのだとしたら、ちょっとお言葉が違うような気がする。お友達になって欲しいこと、パーティーを開くので来て欲しいという内容だった。二枚目の便箋には、招待状と書かれている。
王妃様のお茶会の日のことを思い出して、不快に思い、明日、断りの手紙を書こうと思って、机の端に置くと、他の手紙を見ていく。
返事のいる物だけ、別にして、確認した手紙を纏めておく。
その夜は、早めに休んだ。
翌日、メリスに刺繍を教わっていると、手紙が届けられた。
ネルフが受け取り、手紙を確認すると、またあの令嬢から手紙が届いた。
朝一番で、お断りの手紙を書いたので、まだ届いていないのだろうと、手紙は捨てる箱の中に入れた。
間違って大事な手紙を捨ててしまうことを心配して、捨てる予定の手紙は、一つの箱の中に入れて後で見直すのだ。
他の手紙を確認した。
仕事の手紙はなく、ビオニールお兄様からの手紙が届いた。
領地に戻ったことを聞いたこと。元気でいるかとか、たまには遊びにおいでと書かれていた。
後で、手紙を書こうと思い、机に置いておく。
今は刺繍の練習なので、刺繍を続ける。
お母様も刺繍を嗜んでいたので、刺繍をするのは久しぶりだ。昔は一緒に刺繍をしていたことを思い出し、メリスに刺繍を教わっていると母が居た頃を思い出す。
その翌日、またあの令嬢から手紙が届いた。
内容は、以前と同じで、もしかしたら、手紙は届いていていないのかもしれないと思い、お断りの手紙を書いて、届いた手紙は、念のために取っておいた。
その翌日もまたあの令嬢から手紙が届いた。
さすがに気持ちが悪く、イグに相談した。
「返事はもう書かなくていい」と言われて、ホッとした。
その翌日もまたあの令嬢から手紙が届いた。
まるでコピーされた文章が送られてくるようで、気持ちが悪い。
20通、同じ手紙が送られて、またイグに相談した。
今度は、手紙を持っていって見てもらった。
「僕から、断りの手紙を書いておくよ」と、イグは送られてきた手紙を受け取って「心配いらない」と笑った。
その翌日も、その翌日もまたあの令嬢から手紙が送られてきた。
「イグ、あの手紙だけれど、まだ来ているの。お手紙書いてくださった?」
「書いたよ」
「届いてないのかしら?」
追加の二通をイグに渡した。
「この令嬢、気持ちが悪いわ」
「相手になる必要はない」
「でも、気になるわ」
「それより、明後日は結婚式のドレスを作るんだよ。お義父さん明日には来るだろう?」
「タウンハウスの邸に来ているって、明後日、こちらに来る予定だって手紙が来たわ」
「そうか、ここに来てくれていいのにな?」
「お店も見に行かないと。お父様もお店を出しているから」
「そうだったね」
「このまま、お昼ご飯に行こうか?」
「そのつもりだったの」
「少し待って、この手紙、置いてくるから」
「はい」
イグは部屋の中に入って、若い宰相様と話している。
先に、若い宰相様が部屋を出て行って、イグが出てきた。
若い宰相様はアルソス様という名らしい。彼はイグの幼馴染みで、今は信頼できる相棒だと言っていた。彼は、わたくしの前を通ると、頭を下げてくれる。
濃い金の色をした髪に、ラピスラズリのような神秘的な瞳をしている。
イグは青空のような綺麗な青い瞳をしているので、昼と夜のように見えてしまう。
「では行こうか?」
「はい」
イグがいつものように手を繋いで、廊下を歩いて行く。
「今日は昼から、何かするのか?」
「王妃様とお茶会をして、それから部屋にいるわ。やりたいことがあるの」
「そうか」
「イグは公務?」
「そうだね」
「お手伝いできなくて、ごめんね」
イグが微笑む。
「結婚したら、嫌でも、仕事をさせられる」
「そうなの?」
そんな日がきたら幸せだろうな。
「わたくし、事務仕事も早いのよ」
「それは頼もしい」
二人で笑い合った。
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