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39 プレゼント(1)
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最後に青い瞳を縫い付けて、刺繍のハンカチができあがった。
「お嬢様、美しいハンカチができましたね」
「メリスが教えてくださったからよ」
「私は何も教えておりません」
メリスは優しく微笑む。
わたくしはできあがったハンカチを広げた。
四隅のうち三隅に刺繍が施してある。
羽ばたく鷹の刺繍、この国の国旗、白文字でイグの名前。
どれも丁寧に刺した物だ。
羽が輝くように、銀の糸が使われている。その方法を教えてくれたのはメリスだ。立体的にできて、今まで刺した刺繍の中で、一番、美しい。
早くイグに手渡したい。
その思いで、久しぶりに部屋から出ようと思った。
王妃様のお茶会後、実家に戻って、元気を取り戻し王宮に戻ってきたが、食事以外部屋に閉じ籠もっていた。
お店も気になっているが、まだ外に出る気力まではない。
女主人として情けないが、お客様に何かを言われたときに、冷静に対応できる自信がない。
「イグレッシア王子の元に行ってきますね」
「行ってらっしゃいませ」
二人の侍女は、優しく見送ってくれる。
メリスはわたくしのドレスに刺繍を施してくれている。
まだ部分的にしか見えないけれど、それが素敵な物だと分かる。白いドレスに描かれるメリスの世界ができあがるのが楽しみなのです。
扉を開けると、わたくしの専属騎士が立っています。
女性騎士はずっと変わらずいてくれたが、男性騎士は一度姿を消したが、また戻ってきた。
確か、ライアンという名で、体格のしっかりとした、わたくしには勿体ない人選だと思うの。メアリー様が怒るのも分かるような気がするのよ。
「ここは王宮内です。安全のはずですわ。わたくしの部屋を二人の騎士で見守るのは、どう考えても人の無駄遣いですわ」
「マリアーノ様は、次期王太子妃になられるお方です。その身に何かあってはなりません。王宮であっても、外出先であっても、私たちはマリアーノ様の影のように控えて、毎日、安全に過ごせるように、お手伝いをさせていただくことが勤めでございます」
女騎士のティランが敬礼の姿勢を取った。
体格のいいライアンまで騎士の礼をするから、わたくしは、戸惑ってしまう。
「ライアン様は、イグレッシア王子の近衛騎士になりたかったのでしょう。わたくしから口添えいたしましょうか?」
「いいえ、あの頃の私は間違いに気づかずに、殿下の大切なマリアーノ様を傷つけてしまいました。殿下が心健やかに過ごせるように、その奥方様をお守りすることは、この国を守ることに匹敵いたします。その役目を戴いた私は、殿下に信頼されていることでございます。どうか、私をお許しください」
「二人も贅沢だわ」
「マリアーノ様、私のことはライアンとお呼びください。敬称はいりません」
「どう見てもわたくしより立派だわ」
わたくしは、立ち話を終えて、イグの執務室に向かう。
わたくしの後ろから、二人の騎士は付き添ってくださる。
大袈裟だし、ここは安全な王宮内よ。護衛をされる必要などないと思うけれど、イグに相談してみましょう。
イグの執務室の扉をノックすると、若い宰相様が扉を開けてくださいました。
「イグレッシア王子にお話をしたいの」
「マリア、おいで」
部屋の中からイグの声がした。
わたくしは入室した。
若い宰相様以外に騎士が、二人立っている。近衛騎士様でしょうか?
なんだか落ち着かない。
ここでハンカチを手渡すのは、どうかと思ってしまった。
王宮内であっても、二人きりで会う場所はないのだ。
困ったわ。
「ちょうど、よかった。今、呼びに行かせるつもりだった。宝石商に宝石を見せてもらっていたのだ」
よく見ると小柄な男性がいた。
皆さん、体格がいいので、その影に隠れて見落としていた。
「マリア、こちらに来て」
「はい」
わたくしはお客様にお辞儀をした。
「この間、メアリー殿が王宮に来たときに、ずいぶん、綺麗に着飾っていたのだ。髪飾りもネックレスも指輪も美しい宝石をしていた。それを見て、マリアも飾ってみたくなった」
「メアリー様がおいでになったの?」
「手紙についてのあれこれを、陛下と王妃と間に入っていただき、解決させたのだ」
「お手紙は、もう届かないのね?」
「ああ」
「よかったわ」
あの手紙は執念深さが気持ち悪かったので、受け取るのが嫌だったのだ。
謝罪とは思えない文章は、傲慢さが浮き出ていた。
できれば、友達などになりたくない相手だった。
「こちらにおいで」
「はい」
イグはソファーに座っていて、テーブルの上にいろんな宝石が出されていた。
「マリアはどんな物を持っている?」
「領地で取れる真珠ですわ」
「それ以外は?」
「持っていません」
「真珠も素晴らしいですが、天然石を用いた物もお似合いになるかと思います」
イグがわたくしの指にいろんな色の指輪をはめてくれる。
「色白の上に、細い指をなさっていますね」
宝石商はわたくしを褒める。
たくさんの宝石をはめすぎて、イグは、目移りしすぎてどれがいいのか、すっかり迷いだした。
「マリア、気に入った物はあったか?」
「贈ってくださるなら、イグの瞳と同じ色の宝石がいいですわ」
「青ですか?」
宝石商はテーブルの上を青い宝石だけにした。
さすが手際がいい。
わたくしは透き通るような青い瞳と似ている宝石を指に通した。
「これは、お目が高い。アクアマリンですね」
「ほう」
宝石商は、今度はアクアマリンばかりをテーブルに載せていく。
「美しい色だ」
「イグの瞳と同じですわ」
「こんな美しい色と言われると、照れるな」
イグの頬が僅かに赤くなる。
「この指輪だけでいいわ」
「何を言う。私の妻だ。飾って悪いか?」
「それなら、最低限でいいわ」
「欲がない」
「宝石は持ったことがないの」
「それなら、尚更、美しく飾ろう」
イグは指輪とネックレスはお揃いにして、髪飾りは宝石の宝箱のようないろんな青い宝石が集められた物を選んだ。とてもゴージャスに見える。宝石商が、それとお揃いのネックレスと指輪を出すと、それも選んだ。一気に物持ちになったようだ。
「こんなに贅沢だわ」
「お茶会になんの装飾もなしで出るのか?」
「今までなくても困らなかったわ」
「これからは、私の力量を測られる。妻も飾れない未熟な王と笑われるのは困る」
「それなら、自分で買うわ。国費は税金ですもの」
「困った妻だ。何が欲しいのだ?」
「母が困ったらダイヤモンドを付けておけばいいわとおっしゃっていたの」
テーブルの上が、今度はダイヤモンドに変わる。わたくしはゴージャスな指輪とゴージャスなネックレスと髪飾りを選んだ。
「これはわたくしが買います」
「頑固だ。これも私が買う」
「イグも頑固よ。国費は大切に使わなくてはいけないわ」
「私の威厳はどうする?」
「アクアマリンも高価よ。威厳はここでお使いになって」
「いや、全部私が買う」
つい、言い合いになってしまった。
「奥様、ここはイグレッシア王子に花を持たせてください」
宰相様にお願いされて、イグの側近も皆様、頭を下げている。
「それなら、もっと質素にするわ」
「いや、これで会計を頼む」
「イグ、もう一つ、欲しいものがあるの」
「何が欲しいのだ?」
「お揃いの指輪が欲しいの。結婚指輪はしないのですか?」
「忘れておった」
テーブルの上が、今度はペアリングに変わった。
「今度はイグが選んでください」
「よし、いいぞ」
「今度の指輪はイグもはめるのよ?」
「そうだったな」
イグはとても悩んで、それでも、揃いの指輪を選んでくださいました。
総額幾らになったか、心配になったが、宰相様が許しているので、許容範囲だったのかもしれません。
一気に物持ちになって、イグと宰相様が護衛を伴って、わたくしの部屋に宝石を運んでくださいました。
「ネルフ、宝石箱をもらってきてくれ」
「畏まりました」
ネルフは急いで部屋から出て行った。
「メリス、旦那様に買って戴きました」
「よかったですね。とてもいい物ですわ」
メリスは宝石を見て、微笑んだ。
「そういえば、部屋に用があったから尋ねてきたのだろう?何かあったか?」
「わたくしに、これほどの護衛は要りませんわ。時々、お店に出掛けて、後は、王宮で仕事をしますわ」
「まだ言っておるのか?その外に出掛けるときに心配なのだ。誘拐されたり、殺されたりしたらどうする?」
「そんなことあるのかしら?」
「王太子妃は未来の王妃だ。もっと自覚しなさい」
「でも、護衛の無駄遣いよ。ライアン様が気の毒よ」
「まだ気にしておるのか?ライアンは、五人分は働く。十分に節約しておる」
「五人分働くの?それほど優秀なら、イグの側近にすべきだわ」
「心配なのだ。マリアには、仕事を続ける許可を出しておる。その分、今までの妃より危険なのだ。護衛を断るならば、仕事はさせられない」
「それは困るわ。わたくしの仕事は、化粧品だけではないのよ。傷薬もアレルーギーで肌を傷めた肌を治す薬も作っているのよ。今、医師の間でも、わたくしの研究所の薬をよく使って戴いているのよ?今までの研究を無駄にはできないわ」
「それなら、黙って騎士に守られていなさい」
「はい」
「婚礼まで二ヶ月だ。無事に結婚の日を迎えよう」
「ええ、分かったわ」
ネルフが戻ってきて、宝石を片付けることになった。
メリスがお茶を淹れてくださる。
その間に、ネルフと一緒に宝石を片付けた。
宝石があるからか、今日はわたくしの部屋は賑やかで、やはりイグと二人になれない。
皆さんが部屋から出て行ってから、わたくしは美しい包装紙でハンカチを包んだ。
この方が汚れないし、中身が見えない。
いつの間にか、婚礼まで二ヶ月を切っている。
お店をほったらかしていたので、店員の腕を確かめに行かなくては、抜き打ちにお店に出掛けてもいいだろう。
専属騎士の二人には、明日出掛けることを知らせておく。
夕食の時間に、イグが迎えに来た。
わたくしは、ミニバックを持って出掛けた。
ミニバックの中には、ハンカチが入っている。
食後に少しデートができるといいけれど。
「お嬢様、美しいハンカチができましたね」
「メリスが教えてくださったからよ」
「私は何も教えておりません」
メリスは優しく微笑む。
わたくしはできあがったハンカチを広げた。
四隅のうち三隅に刺繍が施してある。
羽ばたく鷹の刺繍、この国の国旗、白文字でイグの名前。
どれも丁寧に刺した物だ。
羽が輝くように、銀の糸が使われている。その方法を教えてくれたのはメリスだ。立体的にできて、今まで刺した刺繍の中で、一番、美しい。
早くイグに手渡したい。
その思いで、久しぶりに部屋から出ようと思った。
王妃様のお茶会後、実家に戻って、元気を取り戻し王宮に戻ってきたが、食事以外部屋に閉じ籠もっていた。
お店も気になっているが、まだ外に出る気力まではない。
女主人として情けないが、お客様に何かを言われたときに、冷静に対応できる自信がない。
「イグレッシア王子の元に行ってきますね」
「行ってらっしゃいませ」
二人の侍女は、優しく見送ってくれる。
メリスはわたくしのドレスに刺繍を施してくれている。
まだ部分的にしか見えないけれど、それが素敵な物だと分かる。白いドレスに描かれるメリスの世界ができあがるのが楽しみなのです。
扉を開けると、わたくしの専属騎士が立っています。
女性騎士はずっと変わらずいてくれたが、男性騎士は一度姿を消したが、また戻ってきた。
確か、ライアンという名で、体格のしっかりとした、わたくしには勿体ない人選だと思うの。メアリー様が怒るのも分かるような気がするのよ。
「ここは王宮内です。安全のはずですわ。わたくしの部屋を二人の騎士で見守るのは、どう考えても人の無駄遣いですわ」
「マリアーノ様は、次期王太子妃になられるお方です。その身に何かあってはなりません。王宮であっても、外出先であっても、私たちはマリアーノ様の影のように控えて、毎日、安全に過ごせるように、お手伝いをさせていただくことが勤めでございます」
女騎士のティランが敬礼の姿勢を取った。
体格のいいライアンまで騎士の礼をするから、わたくしは、戸惑ってしまう。
「ライアン様は、イグレッシア王子の近衛騎士になりたかったのでしょう。わたくしから口添えいたしましょうか?」
「いいえ、あの頃の私は間違いに気づかずに、殿下の大切なマリアーノ様を傷つけてしまいました。殿下が心健やかに過ごせるように、その奥方様をお守りすることは、この国を守ることに匹敵いたします。その役目を戴いた私は、殿下に信頼されていることでございます。どうか、私をお許しください」
「二人も贅沢だわ」
「マリアーノ様、私のことはライアンとお呼びください。敬称はいりません」
「どう見てもわたくしより立派だわ」
わたくしは、立ち話を終えて、イグの執務室に向かう。
わたくしの後ろから、二人の騎士は付き添ってくださる。
大袈裟だし、ここは安全な王宮内よ。護衛をされる必要などないと思うけれど、イグに相談してみましょう。
イグの執務室の扉をノックすると、若い宰相様が扉を開けてくださいました。
「イグレッシア王子にお話をしたいの」
「マリア、おいで」
部屋の中からイグの声がした。
わたくしは入室した。
若い宰相様以外に騎士が、二人立っている。近衛騎士様でしょうか?
なんだか落ち着かない。
ここでハンカチを手渡すのは、どうかと思ってしまった。
王宮内であっても、二人きりで会う場所はないのだ。
困ったわ。
「ちょうど、よかった。今、呼びに行かせるつもりだった。宝石商に宝石を見せてもらっていたのだ」
よく見ると小柄な男性がいた。
皆さん、体格がいいので、その影に隠れて見落としていた。
「マリア、こちらに来て」
「はい」
わたくしはお客様にお辞儀をした。
「この間、メアリー殿が王宮に来たときに、ずいぶん、綺麗に着飾っていたのだ。髪飾りもネックレスも指輪も美しい宝石をしていた。それを見て、マリアも飾ってみたくなった」
「メアリー様がおいでになったの?」
「手紙についてのあれこれを、陛下と王妃と間に入っていただき、解決させたのだ」
「お手紙は、もう届かないのね?」
「ああ」
「よかったわ」
あの手紙は執念深さが気持ち悪かったので、受け取るのが嫌だったのだ。
謝罪とは思えない文章は、傲慢さが浮き出ていた。
できれば、友達などになりたくない相手だった。
「こちらにおいで」
「はい」
イグはソファーに座っていて、テーブルの上にいろんな宝石が出されていた。
「マリアはどんな物を持っている?」
「領地で取れる真珠ですわ」
「それ以外は?」
「持っていません」
「真珠も素晴らしいですが、天然石を用いた物もお似合いになるかと思います」
イグがわたくしの指にいろんな色の指輪をはめてくれる。
「色白の上に、細い指をなさっていますね」
宝石商はわたくしを褒める。
たくさんの宝石をはめすぎて、イグは、目移りしすぎてどれがいいのか、すっかり迷いだした。
「マリア、気に入った物はあったか?」
「贈ってくださるなら、イグの瞳と同じ色の宝石がいいですわ」
「青ですか?」
宝石商はテーブルの上を青い宝石だけにした。
さすが手際がいい。
わたくしは透き通るような青い瞳と似ている宝石を指に通した。
「これは、お目が高い。アクアマリンですね」
「ほう」
宝石商は、今度はアクアマリンばかりをテーブルに載せていく。
「美しい色だ」
「イグの瞳と同じですわ」
「こんな美しい色と言われると、照れるな」
イグの頬が僅かに赤くなる。
「この指輪だけでいいわ」
「何を言う。私の妻だ。飾って悪いか?」
「それなら、最低限でいいわ」
「欲がない」
「宝石は持ったことがないの」
「それなら、尚更、美しく飾ろう」
イグは指輪とネックレスはお揃いにして、髪飾りは宝石の宝箱のようないろんな青い宝石が集められた物を選んだ。とてもゴージャスに見える。宝石商が、それとお揃いのネックレスと指輪を出すと、それも選んだ。一気に物持ちになったようだ。
「こんなに贅沢だわ」
「お茶会になんの装飾もなしで出るのか?」
「今までなくても困らなかったわ」
「これからは、私の力量を測られる。妻も飾れない未熟な王と笑われるのは困る」
「それなら、自分で買うわ。国費は税金ですもの」
「困った妻だ。何が欲しいのだ?」
「母が困ったらダイヤモンドを付けておけばいいわとおっしゃっていたの」
テーブルの上が、今度はダイヤモンドに変わる。わたくしはゴージャスな指輪とゴージャスなネックレスと髪飾りを選んだ。
「これはわたくしが買います」
「頑固だ。これも私が買う」
「イグも頑固よ。国費は大切に使わなくてはいけないわ」
「私の威厳はどうする?」
「アクアマリンも高価よ。威厳はここでお使いになって」
「いや、全部私が買う」
つい、言い合いになってしまった。
「奥様、ここはイグレッシア王子に花を持たせてください」
宰相様にお願いされて、イグの側近も皆様、頭を下げている。
「それなら、もっと質素にするわ」
「いや、これで会計を頼む」
「イグ、もう一つ、欲しいものがあるの」
「何が欲しいのだ?」
「お揃いの指輪が欲しいの。結婚指輪はしないのですか?」
「忘れておった」
テーブルの上が、今度はペアリングに変わった。
「今度はイグが選んでください」
「よし、いいぞ」
「今度の指輪はイグもはめるのよ?」
「そうだったな」
イグはとても悩んで、それでも、揃いの指輪を選んでくださいました。
総額幾らになったか、心配になったが、宰相様が許しているので、許容範囲だったのかもしれません。
一気に物持ちになって、イグと宰相様が護衛を伴って、わたくしの部屋に宝石を運んでくださいました。
「ネルフ、宝石箱をもらってきてくれ」
「畏まりました」
ネルフは急いで部屋から出て行った。
「メリス、旦那様に買って戴きました」
「よかったですね。とてもいい物ですわ」
メリスは宝石を見て、微笑んだ。
「そういえば、部屋に用があったから尋ねてきたのだろう?何かあったか?」
「わたくしに、これほどの護衛は要りませんわ。時々、お店に出掛けて、後は、王宮で仕事をしますわ」
「まだ言っておるのか?その外に出掛けるときに心配なのだ。誘拐されたり、殺されたりしたらどうする?」
「そんなことあるのかしら?」
「王太子妃は未来の王妃だ。もっと自覚しなさい」
「でも、護衛の無駄遣いよ。ライアン様が気の毒よ」
「まだ気にしておるのか?ライアンは、五人分は働く。十分に節約しておる」
「五人分働くの?それほど優秀なら、イグの側近にすべきだわ」
「心配なのだ。マリアには、仕事を続ける許可を出しておる。その分、今までの妃より危険なのだ。護衛を断るならば、仕事はさせられない」
「それは困るわ。わたくしの仕事は、化粧品だけではないのよ。傷薬もアレルーギーで肌を傷めた肌を治す薬も作っているのよ。今、医師の間でも、わたくしの研究所の薬をよく使って戴いているのよ?今までの研究を無駄にはできないわ」
「それなら、黙って騎士に守られていなさい」
「はい」
「婚礼まで二ヶ月だ。無事に結婚の日を迎えよう」
「ええ、分かったわ」
ネルフが戻ってきて、宝石を片付けることになった。
メリスがお茶を淹れてくださる。
その間に、ネルフと一緒に宝石を片付けた。
宝石があるからか、今日はわたくしの部屋は賑やかで、やはりイグと二人になれない。
皆さんが部屋から出て行ってから、わたくしは美しい包装紙でハンカチを包んだ。
この方が汚れないし、中身が見えない。
いつの間にか、婚礼まで二ヶ月を切っている。
お店をほったらかしていたので、店員の腕を確かめに行かなくては、抜き打ちにお店に出掛けてもいいだろう。
専属騎士の二人には、明日出掛けることを知らせておく。
夕食の時間に、イグが迎えに来た。
わたくしは、ミニバックを持って出掛けた。
ミニバックの中には、ハンカチが入っている。
食後に少しデートができるといいけれど。
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