【完結】安心してください。わたしも貴方を愛していません

綾月百花   

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47   結婚式

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 次々とお客様が到着します。

 そのたびにご挨拶に伺います。

 結婚式までの一週間、とても慌ただしく過ごしました。

 結婚式の当日は、メリスとネルフがわたくしを綺麗にしてくださいます。

 所長がくれた箱の中には、『結婚式の前に使うこと』と書かれた紙が貼られたエステサロンで使われる商品が1週間分入っていました。それをネルフが使って、肌を綺麗に磨いてくださいました。

 お陰で、結婚式当日は、肌が白く輝くように綺麗になりました。

 所長がわたくしを訪ねてきたとき、「綺麗だよ、マリアーノ」と満足そうな顔をしました。

 ビオニールお兄様もいらしてくださいました。


「今度こそ、幸せになりなさい」とおっしゃってくださいました。


 お父様もお兄様も「幸せになりなさい」とおっしゃってくださいました。

 久しぶりにエリナが訪ねてきました。

 大きなお腹をして、旦那様と会いに来てくださいました。

 わたくし達は、教会に移動すると、待合室で面会の人とお話をして過ごしました。

 今回の結婚式は、怖くありません。

 イグが、きちんとエスコートしてくださいます。

 わたくしの側にずっと一緒にいてくれます。

 ウエディングドレスに、皇帝陛下がくださったティアラをしました。

 時間になり、イグはお父様にエスコートを代わりました。


「僕は先に行っているよ」

「はい」


 イグは控え室から出て行きました。


「マリア、三度目はないよ。この式を楽しみなさい」

「はい、お父様」


 そっと手を引かれて、父の腕に、掴まります。

 お父様はゆっくり歩いてくださいます。


「そういえば、エステサロンに現れていた男は、あれ以来、姿を見せなくなったらしい。騎士を置いたのがよかったのかもしれないね」

「そう、よかったわ」

「貴族街のお店の店員ですけれど、貴族から平民になったお嬢様に任せたいと思うの。貴族の令嬢はすぐに止めてしまうから。教育しても育つ前に辞めてしまうから、上手く接客ができる者が少ないの。どうかしら?平民街のお店で覚えてもらって、貴族街のお店に来てもらえたら嬉しいのですけれど」

「マリアがそうしたいのなら、そのようにしなさい」

「はい。また募集を出しますわ」


 父と話すことは、お店のことや仕事の話ばかりだ。

 わたくしは、父の子だと思うのです。

 似た者同士ですね。

「お母様が生きていたら、喜んでくださいましたね?」

「そうだね、前の時は、お母さんは反対したんだ。でも、父が間違えた」

「もう昔のことよ」


 一歩、一歩、赤い絨毯の上を歩く。

 前には、イグが待っている。


「もう、侯爵様に会うこともきっとないわ」

「きっとないだろう」

「もう、この国にはいないと思うの」

「そうだね」


 目の前に笑顔のイグがいる。


「娘を頼みます」

「はい、必ず幸せにします」


 父の腕からイグの腕に代わります。


「お父様、ありがとうございます」


 お父様は優しく微笑んだ。

 一歩ずつ、ゆっくり歩いて行く。


「やっとこの日を迎えられたね」

「そうね、長いようで短かったわ」

「僕は父上と母上のような夫婦になりたいと思っているんだ」

「素敵ね」

「僕を永遠の伴侶に選んでくれて、ありがとう」

「わたくしこそ、ありがとう。まだ相応しいかどうか分からないけれど、努力をしますわ」

「そのままのマリアでいいんだ」

「ありがとう、イグ」


 神父の前で足を止めて、宣誓をしていく。

 一回目の結婚式では、嘘の宣誓だったけれど、今度は本物の結婚式だ。

 今度こそ、幸せになれる。

 宣誓が終わると、イグは触れるだけのキスをした。

 指輪の交換をして、わたし達は結婚した。

 参列者の皆さんに、お辞儀をして、赤い絨毯の上を退場していく。

 これから、王宮で晩餐会が行われる。

 迎えの馬車が来ていた。

 馬車に乗ろうと通路に出たとき、人の多さに圧倒された。

 歩道には人が溢れていた。

 それを騎士達がこちらに人が来ないように警備していた。

 乗り込む馬車の周りには、馬に乗ったイグの近衛騎士とわたくしの専属騎士が、周りを固める。

 その前後に騎士達が馬に乗って、馬車の前後に数え切れないほど並んでいる。

 すごい……。

 騎士の衣装も華やかな物になっていて、わたくしは、ふと足を止めて、周りを見ると、イグが微笑んだ。


「今日のために準備されたんだ。華やかで綺麗だな」

「そうね、素晴らしいわ」


 わたくしは、イグに手を引かれて馬車に乗り込んだ。ドレスの裾は、ティランが直してくれた。


「ありがとう」

「いいえ」


 ティランは扉を閉めた。

 守られながら、馬車は走る。

 沿道には、わたし達の結婚式を見に来た王都に住む民が、手を振っている。


「マリア、手を振って」

「ええ」


 イグも手を振っている。

 街の中をパレードして、王宮に戻ってくると、教会にいたお客様が王宮に到着していた。








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


いつも読んでいただきありがとうございます。
明日が本編最終日です。お楽しみに(*^_^*)
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