ずっと抱きしめていたい

綾月百花   

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4   色欲は命を削る斧

・・・

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 オレは遊園地に行くと決めたとき、スマホの電源を落とした。 
 だから、どんなに待っても薫から連絡がくることはない。だけど、一度だけ明香里のスマホに連絡が入った。 
 留守電に「優を知らない?」と、とても短い伝言が入っていた。 
 薫は待ち合わせ場所に、ちゃんと来たんだとわかった。 
 オレが約束をすっぽかしたんだなと思ったけど、約束の場所に行く気にはならなかった。 
 
 

「由美ちゃん、いきなり呼び出しちゃったけど、彼氏大丈夫だった?」 
 篤が駆けつけ、三人になったオレたちは、以前ラブホの部屋を提供してくれた明香里の親友を呼んだ。 
 三人でアトラクションを次々とまわっていたとき、たまたま明香里のスマホに連絡が入ったのだ。乗り物に乗るとき、三人だとなにかと不都合なので、気軽な気持ちでオレが『おいでよ』と誘った。 
『行く』と答えた由美ちゃんは、二十分もかからないうちにやってきた。 
「平気、平気。彼氏とはもう別れたの」 
 あっけらかんと言って、彼女は満面の笑みでオレと明香里の間に、体をすべらせてきた。 
「早いよ、由美ちゃん」 
「そうかな?」 
「由美は王子様を探し中なんだって」 
 呆れるオレに、明香里はすかさずフォローを入れる。 
「そう。体も心も相性ピッタリな彼氏が欲しいの。もちろん私の彼氏はイケメンに限るけど」 
 にこにこ笑う明るい由美ちゃんは、明香里の親友をはるだけあって、かなり可愛い。 
 胸も大きいし、クラスでも明香里と同じくらい人気がある。 
「次の候補はまだ見つからないの?」 
「うーん、そうね」 
 明香里の問いに、視線を彷徨わす。 
 そして止まった先は、 
「オレ?」 
 由美ちゃんはコクンと頷いて、明香里に「いい?」と確認を取ってきた。 
「うーん・・・」 
 明香里はオレの顔を見て、苦笑を浮かべる。 
「駄目!」 
 明香里の代わりに篤が慌てる。 
「優はピュアーだから、由美ちゃんの相手はまだ無理だって」 
 オレと由美ちゃんの間に割って入って、篤はオレの腕に絡まる由美ちゃんの腕を引き離そうとする。 
「そんなこと大丈夫なのに」 
 私がいろいろ教えてあげるから・・・と由美ちゃんは、篤の腹部に肘鉄を打ち込んで可愛く微笑む。 
「ねえ、明香里。大事な優君をちょっと貸してよ」 
 根っからのマゾの篤は、腹を押さえて唸っている。そんな篤を横目で見ながらいつも薫がするような、誘うような眼差しで由美ちゃんを見た。 
「由美ちゃん、明香里じゃなくて、オレに聞いてよ」 
 明香里が小さくため息をついた。きっと呆れているんだと思う。 
「女の子ふたりで、勝手にオレのこと決めないでよ」 
 オレはぎゅっと腕を絡めてくる由美ちゃんの腕を解くと、肩幅の狭い柔らかな肩を抱いた。 
「デートしてみる?」 
 女の子とデートするのは初めてだけど、今は薫のことを忘れていたかった。 
「あ、狡い、デートの約束、俺のほうが先だったのに」 
 篤がまた暴れだした。 
「悪いな篤」 
「残念でした」 
 由美ちゃんはちょろっと舌を出すと、明香里に手を振った。 
「あとで、合流しましょ」 
 オレは結局、明香里と篤を置いて、由美ちゃんとデートすることになった。 
 
 
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