39 / 44
4 色欲は命を削る斧
・・・
しおりを挟むオレは遊園地に行くと決めたとき、スマホの電源を落とした。
だから、どんなに待っても薫から連絡がくることはない。だけど、一度だけ明香里のスマホに連絡が入った。
留守電に「優を知らない?」と、とても短い伝言が入っていた。
薫は待ち合わせ場所に、ちゃんと来たんだとわかった。
オレが約束をすっぽかしたんだなと思ったけど、約束の場所に行く気にはならなかった。
「由美ちゃん、いきなり呼び出しちゃったけど、彼氏大丈夫だった?」
篤が駆けつけ、三人になったオレたちは、以前ラブホの部屋を提供してくれた明香里の親友を呼んだ。
三人でアトラクションを次々とまわっていたとき、たまたま明香里のスマホに連絡が入ったのだ。乗り物に乗るとき、三人だとなにかと不都合なので、気軽な気持ちでオレが『おいでよ』と誘った。
『行く』と答えた由美ちゃんは、二十分もかからないうちにやってきた。
「平気、平気。彼氏とはもう別れたの」
あっけらかんと言って、彼女は満面の笑みでオレと明香里の間に、体をすべらせてきた。
「早いよ、由美ちゃん」
「そうかな?」
「由美は王子様を探し中なんだって」
呆れるオレに、明香里はすかさずフォローを入れる。
「そう。体も心も相性ピッタリな彼氏が欲しいの。もちろん私の彼氏はイケメンに限るけど」
にこにこ笑う明るい由美ちゃんは、明香里の親友をはるだけあって、かなり可愛い。
胸も大きいし、クラスでも明香里と同じくらい人気がある。
「次の候補はまだ見つからないの?」
「うーん、そうね」
明香里の問いに、視線を彷徨わす。
そして止まった先は、
「オレ?」
由美ちゃんはコクンと頷いて、明香里に「いい?」と確認を取ってきた。
「うーん・・・」
明香里はオレの顔を見て、苦笑を浮かべる。
「駄目!」
明香里の代わりに篤が慌てる。
「優はピュアーだから、由美ちゃんの相手はまだ無理だって」
オレと由美ちゃんの間に割って入って、篤はオレの腕に絡まる由美ちゃんの腕を引き離そうとする。
「そんなこと大丈夫なのに」
私がいろいろ教えてあげるから・・・と由美ちゃんは、篤の腹部に肘鉄を打ち込んで可愛く微笑む。
「ねえ、明香里。大事な優君をちょっと貸してよ」
根っからのマゾの篤は、腹を押さえて唸っている。そんな篤を横目で見ながらいつも薫がするような、誘うような眼差しで由美ちゃんを見た。
「由美ちゃん、明香里じゃなくて、オレに聞いてよ」
明香里が小さくため息をついた。きっと呆れているんだと思う。
「女の子ふたりで、勝手にオレのこと決めないでよ」
オレはぎゅっと腕を絡めてくる由美ちゃんの腕を解くと、肩幅の狭い柔らかな肩を抱いた。
「デートしてみる?」
女の子とデートするのは初めてだけど、今は薫のことを忘れていたかった。
「あ、狡い、デートの約束、俺のほうが先だったのに」
篤がまた暴れだした。
「悪いな篤」
「残念でした」
由美ちゃんはちょろっと舌を出すと、明香里に手を振った。
「あとで、合流しましょ」
オレは結局、明香里と篤を置いて、由美ちゃんとデートすることになった。
1
あなたにおすすめの小説
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜
紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。
ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。
そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる