リア充撲滅。眼力で焼き尽くしてやる☆

綾月百花   

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3   リア充撲滅

1   リア充撲滅

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 12月に入って、寒くなってきた。
 亜里砂が学校へ行く時間に、珍しく友麻が部屋から出てきた。
「おはよう、亜里砂」
「・・・」
 亜里砂は頭を下げて、返事はしなかった。
 友麻とは会話はしていない。
 顔を見るだけで心が悲鳴をあげる。これ以上、自分を壊すわけにはいかない。
 兄離れをしなくてはと、亜里砂も思っている。
 友麻は久しぶりに普段着を着ていた。
 手にはキャスター付きの旅行バックを持っている。
 亜里砂は友麻の後を追いかけるようにダイニングに入っていく。
「珍しいね、二人で出てくるなんて」
 父が笑っている。母も嬉しそうだ。
 亜里砂は返事をしなった。
「たまたま同時に扉が開いたんだよ」
 友麻は普段通りに返事をする。
「今日から温泉旅行だったな?亜里砂さんも喜んでいるだろう?」
「嬉しそうだったな」
「結婚はいつにするんだ?」
「急いでするつもりはない」
「亜里砂さんの両親も心配するだろう。早めに結婚してあげなさい」
「そうよ。娘を預けているんですもの。心配に決まっているわ」
「亜里砂さんも急いでいないみたいだし」
 亜里砂なのに亜里砂じゃない名前が、ずっと食卓に出てくる。
 亜里砂は席を立った。
「亜里砂、どうしたの?まだ何も食べてないじゃない?」
「ご飯、いらない。私、やっぱり名前を変える」
「亜里砂、ちゃんと朝食を摂ってお薬飲まなくちゃ駄目でしょ?」
 亜里砂は目の前にある自分のコップを持って部屋に戻った。
 薬を飲んで、鞄を持つと部屋から出た。友麻が部屋の前にいた。
「亜里砂、ごめん。無神経な会話だった。名前は、」
「リア充撲滅!」
 言葉を遮って友麻の顔をしっかり見て、毒を吐く。
 それ以上何も言わずに、走って家から出た。
「亜里砂、お弁当は?」
 母の声がしたが戻らなかった。


 スマホのゲームを起ち上げて、衣装を変える。
 ひよこからピンクのツインテールになり白いワンピースを着て、自分の部屋でダンスを踊る。
(名前、何にしようかな?)
 短いスカートをひらひらさせて、ゲームの中のありさは楽しそうに踊っている。
 メッセージが飛んできた。
『おはよう、ありさ』
 何度も無視をし続けたが、あまりしつこいのでブロックをしようとしたが、亜里砂にはゲームの中にもフレンドがいなかった。
『おはよう』と打ち込む。
 いつもはお昼だったり夜だったり、時間は様々だけど、メッセージが送られてきて、一緒にダンジョンに入って狩りをする間柄になっていた。
 彼は亜里砂よりレベルが高くて、強い敵も一人で倒せるのに、わざわざレベルの低いありさをダンジョン深くまで連れていってくれる。
 夜の9時に寝る亜里砂は、遅くまでゲームができないので、いつも狩りの途中でログアウトしてしまう。もっと深くまで潜ってみたいけれど、発作を起こさないために飲む薬は、夜の9時に飲まないと、翌朝起きられない。『ばいばい』と書くと『おやすみ』と帰ってくる。
 亜里砂は自分が病気だと彼に話してある。
 二人だけのチャットルームで、いろいろ話すようになって、亜里砂の精神は落ち着くようになった。
『まだ授業前?』
『うん。ゆうは、珍しいね、こんな時間に』
『今日は仕事が休みなんだ』
『お仕事してるの?学生かと思った』
『騙すつもりはなかったんだけど、会社員だよ』
『そうなんだ。せっかくの休みなら遊びに行けばいいのに』
『もしかしたらありさがいるかと思って』
『授業前はゲームしてるよ』
『友達と遊ばないの?』
『私には友達はいないよ。誰も口をきいてくれないの』
『虐められてるの?』
『うん。声の出し方も忘れるくらい、誰とも話してない』
『ありさの声を聞いてみたい。きっと可愛い声なんだろうな』
『そんなことはないよ。みんな私を嫌いになるの。ゆうも嫌いになったらブロックしてね』
『ありさからメッセージをもらったことは今まで一度もないよ』
 亜里砂はクスクスと微笑んだ。
 まわりの生徒が「なんか笑い声がする。気持ち悪い」と言った。
 その言葉を無視する。
『私からは送らないよ』
『最初の約束だったね』
『ごめんなさい。私、人と関わるのが怖いの』
 蘭々と喧嘩してから、クラス全体で無視されるようになった。
 亜里砂は存在しない人。
『気にしなくていいよ。ありさは僕の友達だから』
『ありがとう』
『今日は何時に帰るの?』
『4時くらい』
『帰ったらサウスダンジョンの奥まで行こうか?』
『連れていってくれるの?』
『レベル上げ手伝うよ』
『ありがとう。そろそろ授業始まるから、またね』
『ありさ、負けるなよ』
『うん』
 亜里砂はゲームを切り、スマホを鞄にしまう。
 ゆうと会話していると、気持ちが安らぐ。
 朝の辛い気持ちも、和らいできた。
 ほんのり温かい気持ちになった。


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