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4 兄から離れる覚悟
5 初詣
しおりを挟む肩の火傷は、また手術を受けたが、家に帰ることを許された。
精神科の薬は継続された。せっかく改善してきたが、今回の事件のこともあるので、薬の軽減は見送られてしまった。
生みの母親は誘拐と暴行、窃盗、脅迫、誘拐の罪で逮捕された。執行猶予中の事件なので、刑罰は重くなるだろうと言われた。
警察の事情聴取を受けている間に、大晦日は終わってしまった。
自宅に帰ると、友麻の婚約者の亜里砂とその両親が、客間に通されていた。
亜里砂は自室に戻った。
スマホに蘭々からのメールが届いた。
丁寧な謝罪文が書かれていた。
会いたいと最後に書かれていて、亜里砂は迷ったが、出かけることにした。
家にいたくない。
同じ名前の兄の婚約者に会いたくなかった。
ダイニングテーブルに「蘭々と出かけてきます」と書いて家を出た。
待ち合わせのカフェに行くと、蘭々が既にいた。
亜里砂は蘭々のテーブルの横に立った。
「座ってもいいのかな?」
「亜里砂」
蘭々は立ち上がって、頭を下げた。
「ごめんなさい。私、すごく酷いことをした」
亜里砂は蘭々の前に座ると、蘭々も座った。
「いつも明るい亜里砂に助けられてきたのに、甘えていた。亜里砂なら許してくれるって、いつも思っていたの。最初の下駄箱の手紙は私が用意したの。俊に言われて、亜里砂を貶めるために。俊に亜里砂と俊のどちらかを選んでと言われたの。私、俊を選んだの。俊に唆されて亜里砂を虐めていたの。最初はゲーム感覚だったの。でも、亜里砂を虐めた日は俊が優しくしてくれたから、優しくされるために亜里砂を虐め続けたの。亜里砂を虐めているうちに、だんだん自分が偉くなってきたような気がして、俊に王女様って呼ばれて浮かれていたの。亜里砂はいつも綺麗で亜里砂の持っている物を持っていたら自分も綺麗になれるような気がして、亜里砂の物が欲しくなったの。でも、俊にいろんな物を買ってあげて、お小遣いが足りなくなって親に頼んでお小遣いを増やしてもらったけど、それでも足りなくて、それで亜里砂に強請るようになったの。俊に言われて、目が覚めた。私、亜里砂しか友達がいなかった。それなのに、酷いことをしてごめんなさい」
「訴えたりしないよ」
亜里砂は安心させるように、一番心配していると思うことを告げた。
蘭々は、明らかにホッとした顔を見せた。
「怒ってないの?」
「悲しかった。蘭々は親友だと思っていたから」
「本当にごめんなさい。もう遅いかもしれないけど、また友達から始めてほしいの」
お嬢様で気位の高い蘭々が、頭を深く下げている。
「もう虐めないなら。友達からなら」
「ありがとう」
蘭々はまた頭を下げた。
「もういいよ。私たちは同等なんでしょ?」
「同等になりたい」
亜里砂もアンジュの服を着て、蘭々もアンジュの服を着ていた。
「記念に初詣、一緒にいかない?お守り一緒に買いましょう。ちゃんとした恋愛ができるように」
「いいよ。私もきちんとした恋愛したいから」
蘭々はオーダーしていたココアを飲み干すと、席を立った。
「行きましょう」
「うん」
前払いのお店のいいところは、すぐにお店を出られるところだ。
蘭々と久しぶりに食事を摂って、そのまま初詣に出かけた。
お店から、母のスマホにメールを入れて、外食の許可ももらった。
二人で恋愛成就のお守りを買うと、長く並んだ列を戻っていく。
遠くで除夜の鐘が鳴っている。
「亜里砂は大学、どこ行くの?」
「本当は京都に行きたかったんだけど、試験料払う時期を逃しちゃって、付属の大学。蘭々は?」
「私はアメリカに留学するの。両親がアメリカに行くことになったから」
「あと少しか一緒にいられないんだね」
「海外に旅立つ前に過ちに気付いてよかった」
「日本に来るときは、うちに泊まって」
「アメリカに来るときは、うちに泊まってね」
指切りをして、久しぶりに手を繋いだ。
「今日は帰ろうか?」
「夜更かしは、お肌に良くないし」
二人で笑い合った。
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