幼馴染みの彼と彼

綾月百花   

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「話しを聞いてやれなくて、すまない」

「いいや、真は菜都美を抱えて、それどころじゃないだろう。俺一人で解決してしまうつもりだった。情けないよな?」

「情けないとは思わないよ。あっちゃんは俺と菜都美を守ろうとしたんだから」


 篤志は教授に事細かく聞かれて、パワハラの書類を作成した。

 俺の大学は卒業生が、理不尽な目に遭った会社には、今後、生徒を送り出さない。生徒を求められても、断固断る規律があるみたいだ。

 今後、大塚電気株式会社に我が校の生徒は就職しないだろう。

 我が校の生徒は、偏差値も高く、学ぶ勉学も一流だと言われている。

 教授のレベルも高く、授業に付いていけない者は、知らぬ間にいなくなっている。

 自主退学をして、別の大学に移っている事が多いらしい。

 世界に名前を残す大学であるから、在学中も卒業後も実績を見守っている。

 あっちゃんは、性格も穏やかで、顔面偏差値も高い。背も高いので、あっちゃんの周りには人が集まる。

 俺は背が低いので、皆の影になって目立たない。

 俺は自分のペースを乱されると、かなり苛立つ。精神的に未熟なのだ。

 虚弱体質ではないが、食が細くなり、嘔吐もしてしまう。

 これは、俺の欠点だ。

 それ以外は、あっちゃんと並べる実力はあるが、やはり人は見栄えを第一にする。

 俺の顔面偏差値は、低いので、女子にはモテない。

 それは助かっている。

 女子にモテないが、男子が周りを固めている。

 便利屋なのか?

 勉強を教えてと言ってくる者は多かった。そのお礼に、食べ物の差し入れをよくもらった。

 俺は研究室から出ないから。


「仕事のことだが、先に卒業した先輩が、仲間内で企業をしているらしい。先生に名刺をもらった。一度、聞いてみないか?」

「うん、でも、俺は無理かも。菜都美を連れて仕事に出ることを許してくれるとは思わない。菜都美は少しずつ成長している。あと数ヶ月で、自力で動けるようになるんだよ。それこそ、一番手のかかる時期が来るって言うのに」


 食後の菜都美は、ぐっすりと眠っている。


「はー」と、溜息をすると、篤志が微笑んだ。

「なんか、一人だけスッキリした顔をしているな?」

「全部、吐き出したら、スッキリした。カミングアウトしたしね」

「あー、俺も、カミングアウトしちゃった」


 カミングアウトしたけど、怖くはなかった。


「なぁ、結婚しようよ。今は他人だから、俺や真が病気になったときに、保証人にもなれないんだ。急を要した時にでも。手術の保証人になれないんだよ?直ぐに処置もしてもらえないなんて、辛くなるだけだぞ」

「そうか、そう言う事もあるのか」

「俺も菜都美の親になれるから、急に何かあったときにも、絶対にあったら助かる事も増えると思うよ」

「ふつつか者ですが、よろしくお願いします」と俺が言うと、篤志は車を脇に止めて、後ろを振り返った。

「真、今の言葉は嘘じゃないな?」

「嘘なんてついてないよ?俺と結婚するのは嫌なの?」

「今から役所に行って、直ぐに結婚の証明書をもらってこよう」


 俺は笑った。

 どんだけ結婚したいんだよ?


「叔母さんにカミングアウトしてないんだろう?」

「うちの親は、兄貴のできがいいから、俺の事はどちらかというと放置なんだよ」

「それで、役所は間に合うの?」

「結婚届けは、夜間でもしているんだよ。でも、余裕で間に合うと思うよ」

「あっちゃんが行くところに、俺も行くから」

「じゃ、出発だな」


 篤志は身を乗り出すと、俺の手を引っ張って、俺を抱きしめた。


「好きだ」

「俺も好きだよ」

「ロボットじゃないな?」

「ロボットも好きだけど、あっちゃんも好きだよ」

「俺だけ好きだと言え」


 俺は笑って誤魔化した。

 いつまでロボットネタを引っ張るの?

 もういい加減、その話はなかったことにしてくれればいいのに。

 篤志は俺にキスをして、格好いい笑顔を見せた。


「今から行くから」


 篤志は車を走らせた。

 俺は幸せだった。

 叔母さんにカミングアウトするときは、ちょっと怖いけれど、篤志がいるから、きっと大丈夫だ。


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