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プロローグ
プロローグ
しおりを挟む私の名前は、飯田由香32歳。ゲームソフト開発部に所属、毎日の深夜までの残業に疲れていた。終電にギリギリの時間に夜道を駆けていた。地下鉄の入り口に入り、階段を駆け下りようとして、足を滑らせたところまでは覚えているが、目を覚ましたら知らない世界にいた。
荒涼とした戦場に立ち、祈っていた。
まるでゲームのラストシーンのように天は虹色に染まり光が降り注ぎ、倒れていた戦士が起き上がっていく。すべての者から戦意は喪失されていた。戦士は撤退していき、戦場には私しかいなくなった。
美しいラストだ。そうだ、ラストは少女の祈りにしようと、漠然と思った。
「世界を浄化しました」
自分の声とは思えないほど、綺麗な声だ。
誰もいないと思っていたら、すぐ横に少女が立っていた。
「お姉様、成功しましたわ」
お姉様と声をかけてきた少女は美しい容姿をしていた。薄紅色の長い髪と瞳をしている。唇まで薄紅色で、思わず見とれてしまう。
「アリエーテお姉様大丈夫ですか?」
美しい少女は、私の手を掴んだ。その手首には白い包帯が巻かれていた。
「どうしたの?……怪我をしたの?」
「プリュームは怪我などしていません」
私の名前はアリエーテで妹の名前はプリュームというのね。
「お姉様、さあ、行きましょう。馬車が出てしまうわ」
「ええ」
プリュームは荒涼とした草原をしっかりした足取りで私の手を掴み歩いて行く。
彼女の頬には、満面の笑みが浮かんでいる。
どうしてか、私はとても疲れているのに……。
石に躓き、転んだ私を彼女は優しく起こしてくれる。
「疲れているのね。後は任せて。……私がすべて上手くするわ」
何を上手くするのだろう?
「聖女様、お疲れ様です」
足下がおぼつかない私を騎士が、横抱きにした。その隣で、プリュームがパタリと倒れた。
とても苦しそうにしている。
「プリューム様を頼む」
すぐにもう1人の騎士が来て、プリュームは運ばれていく。薄紅色の瞳は閉じられ、小さな口元は苦しげだ。私も苦しいけれど……。
胸が熱い。私は騎士の腕の中で気を失った。
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