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1 聖女の証
1 妹の裏切り(1)
しおりを挟む「アリエーテお姉様、やっとお目覚めね」
目を開けると、部屋のベッドに寝かされていた。妹のプリュームが私を覗き込んでいる。
「そんなに眠っていたかしら?」
なんて上品に話すんだろう、私。
自分の意思とは繋がっているようでまだ繋がっていない。
それにしても綺麗な声だわ。
「三日三晩眠っていたわ。途中でお見舞いに殿下が見えたけれど、眠っていると申し上げたら帰って行かれたわ」
「殿下が?・・・・・・お目にかかりたかったわ」
「お姉様、お話がありますの」
「……なにかしら?」
「婚約者を交換していただけませんか?」
「婚約者は物ではありません。ドレスやアクセサリーとは違いますのよ」
「だけど、私、お姉様の婚約者の方が好みですの」
「これは幼い頃に、決められたものよ」
起き上がろうとして、また目眩がする。
諦めてベッドに横になったまま、妹の顔をよく見る。
だんだんいろんな記憶が思い出されてくる。
アリエーテの記憶だろう。
この子は、私の持ち物を欲しがり、よく交換して欲しいと言ってきた子だった。私の真似をしていろんな事をしたり、双子だからといって、私の持ち物を持ち出したり、欲張りで貪欲で、いつの間にかなくなっている物も多かった。
……なるほど。
今度は婚約者の交換なのね。
双子か……。
双子なら私の容姿も、プリュームのように美しいのだろうか?
今まで気に留めていなかった自分の容姿が気になり、長い髪の一房を握って目の前に持ってくると、その髪は白銀の色をしていた。
あら薄紅色の方が可愛らしいのに。
顔に触れると、張りのある小さな顔をしている。目の色は何色かしら?
「プリューム、鏡を取ってくださる?」
「いいわよ」
プリュームは棚まで行くと手鏡を持ってきた。なんの飾りもない質素な手鏡を受け取り、自分の顔と初対面した。
プリュームより美人だわ……。
目の色はペリドットのような綺麗な黄緑色だった。唇の色は薄紅色で顔立ちは、プリュームとそっくりだ。髪の色と瞳の色が違うだけだ。
枕の横に鏡を置いて、妹を見る。
「お姉様が目覚めたと、知らせてきます」
プリュームは今頃、思い出したのか、部屋から出て行った。
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