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1 聖女の証
8 妹の裏切り(8)
しおりを挟むアリエーテの衣装部屋は華やかになった。
バイオレットのドレスができあがった後、黄緑色のドレスに赤いドレス、清楚な白のドレスとデザイン画を持って行き作ってもらった。古い丈の短いドレスを捨てて、美しいドレスを並べた。どのドレスも聖女の証が見えるデザインにした。せっかく美しい痣があるなら、それを飾らなくては勿体ない。
聖女の証に華があるので、どんなアクセサリーも邪魔になる。
アリエーテはスタイルが良く、美人だったので、どんなドレスも美しく似合った。
早くパーティーがあればいいのに。
部屋にソファーを置き、ドレッサーも置いた。
父に欲しいと強請ったら、好きなものを選びなさいと言われた。
カーテンもベッドカバーも新しく美しい物に替えて、ベッドには天蓋を付けた。
悲しみで心を閉じて眠ったアリエーテに見せてあげたい。
華やかで美しい部屋ができあがった。
アリエーテが習慣にしていた教会にも通い、心の弱った人々を癒やし、元気を与えた。
どうするのか分からなかったが、体が自然に動いた。
教会に通うときは、白いワンピースを身につけるようだ。白いワンピースは何着か新調した。両親に言ったら、王宮から送られた金貨を一枚くれた。銀行に行き金貨を換金した。それが高いのか安いのかまでは分からないが、手元に大金ができた。
私は時々、アリエーテに話しかける。勿論返事はないが、言葉を閉ざしているのだけかもしれない。私はアリエーテと一緒に過ごしていても少しも構わない。
人には二重人格と思われるかもしれないが、このまま悲しみで心を閉ざしてしまうのは可哀想だ。
プリュームは王宮から戻ってこない。部屋は片付き、荷物は王宮に送るだけになっているが、まだ送って欲しいと通知が来ない。
季節は巡り、冬になった。
「冬の服を買いに行こう」と父が誘ってきた。
馬車に乗り、お抱えのお店に連れて行かれた。
私はまだデザインを描いておいた。鏡を見ていると、アリエーテに似合うデザインが思い浮かぶ。思うままデザインを描き、それを持ってお店に行くとデザイナーが「勉強になります。聖女様はいろんな才能をお持ちなのですね」と言った。
「うちのデザイナーになっていただきたいわ」
「お手伝いしても構いませんよ。教会に通った後は、特にすることもありませんので」
「いいのですか?」
お店のデザイナーが、アリエーテとアリエーテの両親に聞いている。
「お金を稼ぐことも勉強になります。お父様、お許しいただけますか?」
「ああ、いいだろう。いい気分転換にもなるだろう」
婚約破棄されて、プリュームが家から出た後から、父はアリエーテに甘くなったようだ。
アリエーテが塞ぎ込まないように、気を遣われているのだろう。
本物のアリエーテは、心を閉ざして、心の奥底に沈んでいってしまったのだけど、両親はそれを知らないのだから……。
私は教会の仕事を終えると、お洒落をして街に出かけるようになった。私の仕事はデザイン画を描くことがメインだ。できあがった洋服の着心地を確かめ、次のデザインの参考にする。
新しいデザインの洋服が並びだしたお店は繁盛し、店に活気が出てきた。お給料は上乗せでもらえる。銀行に通帳を作り、貯金も始めた。アリエーテが目覚めたときに、自由にこの体を使わせてもらったお礼をしたい。
デザインを指名されることも増えて、ドレスやウエディングドレスもデザインする。
ウエディングドレスを描いていると、アリエーテに作ってあげたい。
自宅に帰って後は、アリエーテの為のデザインを描く。心優しく傷つきやすいアリエーテの為のウエディングドレスのデザインを描いて、両親に見てもらう。
「私に作ってもいいですか?」
「好きにしていい」
「ありがとうございます」
両親はどう思ったか分からないが、私がこの世界にいる間に、アリエーテのためのウエディングドレスを作ってあげたい。
お店で注文して、「美しい」と褒められる。
突然、この世界にやって来てしまったのなら、もしかしたら、突然、戻れるかもしれない。
前の世界は、働き詰めで結婚を考える余裕もなかった。好きな人はいたけれど、結婚の話までは進まなかった。飲み友達みたいな感じだ。会社の愚痴を言い合い、たまに抱き合った。彼は、同僚の先輩だった。尊敬できる先輩で目標だった。
いつか彼から求婚されたらいいなと思った事は一度や二度じゃない。それほど愛していた。今頃、彼はどうしているだろう。突然、行方をくらませた私を、もう忘れてしまったかもしれない。
会いたいなと思う。会って抱きしめて欲しい。
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