転生したら聖女でした。聖女として生きてきます

綾月百花   

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1   聖女の証

9   妹の裏切り (9)

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「イグレシア、部屋に来なさい」
 寒くなり一度宮殿に戻って来た息子を国王は私室に呼んだ。私室なら、誰も来ないだろう。
 誰もというのは、王宮に居座っているプリュームの事だが……。
「父上、母上、お久しぶりです」
「いつまで別邸に住み続けるつもりだ。アンスタンとブフリストにも家庭がある。我が儘で別邸に住み続けるのは止めなさい」
「はい」
「王宮にいたくない理由は、彼女だね?」
「……はい」
「一夜の過ちは男なら、あるだろう」
「まあ」と母がハンカチで口元を隠した。
「私は、妻一筋で、10代に結婚してしまったから過ちはなかったが、騎士たちの話を聞くと、それほど珍しいことでもないようだ。いったい何があった?」
「彼女に初めてを奪われました。しかも彼女は処女で、私の愛おしいアリエーテの妹です」
 国王は少し笑った。
「襲われたのか?」
「……ええ、いきなり服を脱ぎだして、私の股間を緩めると、恥ずかし場所を握って擦って、痼ってきたところで、いきなり私を跨ぎ、彼女が股間を当てて、そのまま一気に奥まで入れてしまったのです。アリエーテの妹だから油断をしていました。部屋で会うべきではなかった」
「それで避けておるのか?」
「はい。私はアリエーテを愛していますが、双子の姉妹だからと言って、プリュームは愛していません。結ばれた後でも、彼女を抱きしめたいとは思えません。しかし、プリュームは私と結婚するつもりです。婚礼の条件に聖女の証と書いたのは、アリエーテしか聖女はいないからです。なのに、プリュームの手首には美しい薔薇の花が咲いています。騎士の話では戦場でアリエーテと祈りを一緒に捧げたとか……。アリエーテが倒れた後、プリュームも倒れたとか……。彼女に本当に聖女の力があるのか分かりません。どうしていいのか、分からなくなってしまったのです」
 一気に話したイグレシアは、大きなため息をつく。
「今のまま、放置しても改善はされない。どうしてもプリューム嬢が王宮から出て行かないのなら、ハーレムを作り、そちらに入っていただきなさい。イグレシアに結婚の意思がないのなら、そのことを彼女に話しなさい。ハーレムに入るか、ここを出て行くか。あまり間を置きすぎると、後々面倒だ」
「もう、かなり面倒なのですけれど……」
「誰かが代われる物ではない。これは行為を行った当事者同士の話し合いだ。しっかり向き合いなさい」
「……はい」
「話し合いは、部屋ではなく応接室を使いなさい。側近を側に置くように」
「……わかりました」
 イグレシアは両親の部屋から出て、隠れるように自分の部屋に戻って鍵をかけた。




 客を招く応接室にプリュームは招かれた。
 イグレシア王子の他に側近が二人控えている。


「イグレシア殿下、お久しぶりです。どこかに視察に出かけていたのですか?この頃、寒くなり、冬物の洋服を届けてもらいました」
「プリューム、私はどうしても君と結婚はできない」
「どうしてですか?聖女の証もあるし、私たちは既に結ばれています」
「私はあの時、油断をしていた。まさか女性が服を脱ぎ、男性器を握り、自分で挿入するなど想像もしていなかったのだ」
「それでも、私をお迎えになった殿下は、我を忘れるように腰を振っていましたわ」

 イグレシアはまた頭を抱える。

「男性の生理でございます。女性の中に迎えられたら、どんな男でも腰を振るでしょう」
 側近の一人がプリュームに言った。
「国王陛下は、このまま居座るなら、ハーレムに入るようにと申しております」
 また側近の一人が言った。

「ハーレムに入ったら、愛してくださるの?私、殿下に抱かれてから、寂しくて、殿下のことばかり考えていますの」
「無理だ。頼むから出て行ってくれ。慰謝料がいるなら払おう」
「私はお金目当てではありませんわ」
「では、出て行ってくれるね?」
「私は諦めてはいないわ。イグレシア王子様の事を愛していますもの」
 プリュームは立ち上がると、向かいに座っているイグレシア王子の前まで歩くと、頭を掴み深く口づけした。
 側近が止めに入る前に、微笑みながら唇を離す。
「一度うちに帰りますけれど、またお邪魔します。私のお部屋を作ってくださったら、とても嬉しいですわ」

 プリュームは丁寧にお辞儀をして、応接室から出て行った。
「まったくとんだお転婆なお嬢様だ。素早く口づけまでして。殿下、大丈夫ですか?」
「口の中を蹂躙された。アリエーテの前で、口づけをされたら、アリエーテを傷つけてしまう」
「殿下、あまり考えすぎないように……、肝心な時にできなくなる事もあります。精神的なショックから勃起しなくなることもありますから」
「もう手遅れかもしれない。あの日から、勃起はしない。自慰もしていない。……したいとも思わない」
「殿下!」

 お世継ぎが!

「アリエーテ様にお会いしてください」
「アリエーテは許してくれるだろうか?」
「分かりませんが、ここは押しの一手で」
 応接間の扉が開いて、国王夫妻が部屋に入ってきた。
「パーティーを開こう。ちょうど妻の誕生日だ」
「畏まりました」
 側近の二人が声を揃えた。

「ダンスを踊りなさい。きっとやり直せるわ」
「……だといいですけれど」
「お手紙を書きなさいね」
「……読んでくれるだろうか?」
「そんな弱気では振り向かせられませんよ」
 王妃は手厳しい。
 子供のように、しょんぼりとした王子は、ますます、小さくなっていく。


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