転生したら聖女でした。聖女として生きてきます

綾月百花   

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3   王妃様の誕生日パーティー

3   王妃様の誕生日パーティー(3)

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 あっという間に1週間が過ぎ、王妃様の誕生日パーティー日がやって来た。
 午前中の教会での治療を早めに終えると、家から迎えの馬車が来た。
 自宅に戻って、モリーとメリーが綺麗に肌をマッサージしてくれる。とても気持ちがいい。肌がワントーン明るくなり、バイオレットのドレスを着た。髪は綺麗に結い上げてもらい髪飾りもつける。化粧は薄化粧でパールのネックレスを付ける。拘った一品だ。聖女の証も美しく映える。
 プリュームが悔しそうに見ている。

「お父様、プリュームはお父様が見ていらして」
「わしから離れるな、いいか?」
「……分かりましたわ」

 プリュームは仕方なく答えた。
 馬車は二台使われ、1台目に両親とプリュームが乗った。2台目に、タクシスと二人で乗った。

「お姉様、とても美しいです」
「ありがとう、タクシス」
「聖女の証ですね。初めて見せていただきました。とても美しいものなのですね」
「ありがとう」

 宮殿に着くと、馬車から順番に降りて、宮殿の中に入る。
 宮殿の中は、とても明るく美しい。エントランスの天井には天使が舞っている絵画が描かれていて、壁は白く、その奥に続く廊下は大理石でできていて、パーティー会場には美しいシャンデリアがキラキラ光っている。

「アルシナシオン様」
「プリューム、久しぶりだな」
「ペンサミエント公爵、こんばんは」
「エクスタシス公爵、あの件ですが、息子がプリューム嬢を気に入っているというので、話を進めさせていただきます」

 プリュームの顔が笑顔になる。

「アルシナシオン様、本当にいいのですか?」
「もちろん。でも、少しお淑やかになってくれよ」
「はぁい」

 今まで聞いたこともない、可愛らしい声でプリュームは返事をしている。



 プリュームの結婚が決まった。
 両親はホッとしている。
 本人もかなりホッとしているようだ。
 そんなに好きなら、最初から本命に手を出せばいいのに。イグレシア王子に手を出すから、家に閉じ込められ、アリエーテの心が悲しみに沈んでしまった。
 私は、パーティー会場を見渡す。皆が私を見ている。アリエーテの聖女の証を見ている。
 きっと秘密にされていた物なのだろう。こんなに美しい物を隠すのは勿体ない。
 私が歩くと、皆が頭を垂れる。
 私はイグレシア王子を知らない。
(どこにいるの?早く迎えに来て)
 二人の騎士が近づいてきて、深く頭を下げた。

「聖女様。イグレシア王子は今、臥せっております。一緒に来てくださいますか?」
「病気なの?」
「毎日、手紙を書かれていましたが、返事がなく、益々心を傷めています」
「手紙なんてもらってないわ」
「毎日、遣いの者が届けに行っておりましたが……」
「……プリューム!」

 私は振り返った。

「なぁに?」
「あなた王家からの手紙を受け取っていませんか?」
「受け取っているわよ。……だって、お姉様が私のドレスを作ってくださらないから」
「一生、作りません」

 私は、騎士に頭を下げた。

「妹が盗んでいたようです」
「安心いたしました」

 騎士はそう言うと、「どうぞ、こちらへ」と私を招いた。私は心の中で、アリエーテを呼び続けた。
 やっと会えるのに、会えるのならアリエーテに会わせてあげたい。私は消えてもいい。恋い焦がれていた彼女が、会うべきだ。
 パーティー会場から出て、廊下をずっと進み、階段を上がって、廊下をまた進んだ先で、騎士は足を止めた。

「少し、お待ちください」

 一人の騎士が部屋に入り、すぐに出てきた。

「さあ、こちらへどうぞ」
「はい」

 私は部屋の中に入った。
 部屋の中は二人だけだ。
 アリエーテの心に呼びかけた。
(目覚めて。ここにあなたが会いたがっていたイグレシア王子がいるのよ)
 ベッドに横たわった王子の近くに近づいていく。
 そっと顔を覗き込むと、王子とは思えないほど顔色も悪く、げっそりと痩せていた。

「イグレシア様」

 私は彼の手を握った。
 聖女の証が熱くなる。
 殿下が目を開けたとき、私の中でアリエーテが動き出した。

「イグ、しっかりして」

 アリエーテの見えない優しい腕がイグレシア王子を包みこみ、弱っていた体に生気を注ぎ込む。
 アリエーテの聖女の証が赤く染まる。

「アリエーテ。僕を許してくれるのか?」
「怒っていません。初めから許しています」
「アリエーテ、会いたかった」
「私もずっとお目にかかりたかった」

 二人はやっと手を握りあった。私はそっと陰を顰めるように静かに様子を見ていた。
 イグレシア王子はベッドから起き上がり、アリエーテを抱きしめている。

「お食事は摂っていなかったのね?」
「アリエーテの手紙が来ないから、怒って許してもらえないのかと落胆してしまったんだ」
「プリュームの悪戯です。うちに帰ったら、きつく叱っておきます」
「帰らないで、ここにいてくれないか?不安で……」
「ええ、いいですわよ。元気になるまで、ここにいましょう」
「元気になっても、帰らないでくれ」

 アリエーテはイグレシアの背中を撫でている。

「帰らないで、結婚してくれないか?」
「はい。結婚してください」

 私は微笑んだ。アリエーテの心がふわふわして嬉しそうだ。
 イグレシア殿下はアリエーテに触れるだけのキスをして、初めて、美しいドレスを着ていることに気付いた。

「なんと美しい」

 彼の手が聖女の証に触れる。

「これが聖女の証なのか、なんと美しく、綺麗な証だ。このドレスと一体化しているのか?」
「はい。証が見えるように作られています」
「ダンスを踊りたい」
「立てますの?」
「ああ、立てるとも」
 イグレシア王子はベッドから降りて、「アンスタン、ブフリスト」と声を上げた。
「はっ」

 二人の騎士が部屋に入ってきた。

「なにかお食事を召し上がった方がいいのですけど」
「食事よりもダンスを踊りたい」
「お食事も準備してあります」

 使用人がパン粥を持ってきた。

「タキシードの準備ができる間に、食事を召し上がってください」
「わかった」
 
 イグレシア王子はソファーにアリエーテを連れて行くと、自分で食事を食べて、食後のお茶も飲んだ。

(いつも奇跡を見てきたけれど、精気のなくなった人が、帰りは自力で帰っていく。この力は素晴らしい)

「アリエーテ、少し待ってくれるか?」
「はい、廊下にいましょう」

 廊下に出ると、二人の騎士が「こちらにどうぞ」と別室に連れて行かれた。
 ソファーに座ると、温かな紅茶が出てきた。

「我々は、殿下の側近、アンスタンとブフリストと申します。殿下に何があったのかご存じですか?」
「はい、聞いております」
「殿下は苦しんでおります。どうかお責めにならないでください」
「元はと言えば、妹の責任です」

 二人の騎士は、深く頭を下げた。
 イグレシアはタキシードを身につけ、長く伸びていた髭もすっきりさせて、部屋に入ってきた。

「アリエーテ、どうかダンスを踊ってください」
「喜んで」

 二人は手を取りダンス会場へ向かった。


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