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5 北の王国の流行病
10 流行病(10)
しおりを挟む新しく装着された馬は勢いがある。勢いよく馬は走る。勢いがなくなると、国の施設に寄り、新しい馬に替えてもらい休まず王都まで走った。三日で王都までついて、イグレシアが王宮から走って来た。
「アリエーテ身体は大丈夫か?」
「ええ、医師と看護師がつきっきりで、面倒を診て下さいました」
「アリエーテをありがとうございます」
イグレシアは、まだ馬車の中にいる医師と看護師に頭を下げた。
国王陛下も王宮から出てきて、騎士団一行を出迎えた。
「お疲れであった。聖女様、一刻も早く、祈りをお願いしたい。感染は更に進んでおります。イグルス地区から王都にかけて感染者が増えて、王立病院では入院患者が更に20人亡くなった」
「すぐに始めます」
アリエーテは見晴らしのいい王宮の前から、まず神への祈りをすると、聖女の祈りを始めた。
空が虹色に染まり、美しい光が降り注ぐ。
アリエーテの胸が熱くなる。
できるだけ広範囲に広がるように意識しながら、祈りを深める。
皆が神聖な光を浴びながら美しい空を見上げる。
光が徐々に薄れ、虹色の空も元の青空に戻って行く。
やっと終わったと思った瞬間、アリエーテはパタリと倒れた。
「アリエーテ」
イグレシアはアリエーテを抱きしめるが完全に意識を失っている。
医師がアリエーテの脈を診る。
心臓が止まっていた。
「殿下、離れて下さい」
医師が心臓マッサージを始めた。
看護師が、アリエーテの首を反らし、口から息を吹き込む。
「……アリエーテ、死ぬな」
イグレシアはアリエーテの傍らに座りこみ、胸を激しく押されているアリエーテを見ていた。
「自発呼吸戻りました」
看護師の声に、皆がホッと息を吐く。
「病院に至急連れて行きたい。設備のある病院でないと、呼吸と心臓の管理ができない」
「王立病院に運びましょう。清められたのなら、使えるはずです」
騎士達が素早く、馬車の準備を始めた。アリエーテが専属の騎士に抱き上げられ、急いで医師と看護師も乗り込む。
イグレシアを残して、アリエーテは行ってしまった。
「殿下、病院に送りましょう」
残された騎士が声をかけてきた。
「すまない。……頼む」
イグレシアは、馬車に乗り込んだ。
馬車は、先に走り出した馬車を追いかける。
「今回は聖女様に無茶をさせました。最後の祈りまで身体を持たせるために、眠りを塞ぎ食事を与え、点滴をして、体力の回復を無理にさせていました。身体はギリギリの状態だったと思います」
「……そうか」
「聖女様をお救いしたい。心優しい聖女様は、モレキュール王国を猛烈な早さで走らせ死にかけた馬をお救い下さいました。身体が弱っている身でありながら、馬の命まで見捨てることができなかったのです」
「アリエーテらしい」
「北のモレキュール王国では、国王陛下が亡くなっておりました。17歳の皇太子が跡を継ぐと思います。どれほどの国民が助かったか分かりませんが、国は救われました。我が国もお救い下さいました。最後まで任務を遂行しました。どうかお褒め下さい」
「ああ、分かっている。アリエーテはいつも一所懸命だ」
病院に着き、騎手をしていた騎士が走ってストレッチャーを持ってくる。
アリエーテ専属の騎士が、アリエーテを抱き上げ、ストレッチャーに乗せる。医師と看護師が走って、病院内に入る。
「ここは封鎖されている」
病院の関係者が、ストレッチャーを止めた。
「私はイグレシア王子、そこを通せ。そのベッドの上にいるのは聖女様だ」
「すみません」
ストレッチャーは走り、救命センターに運ばれた。
「ブレイン医師、そのお方は?」
「聖女様だ、最後の祈りの後、心臓が止まった。至急検査と処置をお願いしたい」
「こちらへどうぞ」
ストレッチャーは灯りの下に置かれた。
看護師の手で、コートが脱がされ、ワンピースはハサミで切られていく。
美しい素肌が晒されていく。
「聖女の祈りを連続で3回行った。馬車での移動中、血圧が低下し、点滴で処置を行い、一時的に回復させた。ずっと眠っておった。無理矢理起こし食事を与え、最後の祈りまで身体を持たせた。このまま死なせるわけにはいかぬ。必ずお救いしたい」
「畏まりました」
医師達は、この国の最先端の医療を行った。
イグレシアは、扉の前に立ち、命がけの戦いを見ていた。
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