転生したら聖女でした。聖女として生きてきます

綾月百花   

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 あっ、と思った瞬間、私は足を滑らせた。
 折れた側の靴が滑り、高いヒールの足をくじいた。そのまま階段を転がり落ちて、私は頭をぶつけた。
 意識が朦朧として、そのまま眠るように気を失ってしまった。



『そうだわ、私、階段から落ちて、気を失ったんだわ』
『そうして、由香の意識は私の中に入ってきたのよ』
『今、思い出したわ』
『身体はどうなったか、見せて差し上げましょうか?』

 アリエーテは祈りを行い、次元を超えた。

『私が眠っているわ』
『飯田由香とベッドの上に書かれてあるわね』
『ここは病院ね。誰かが運んでくれたのかしら?』

 病室の扉が開いて、人が入ってきた。

「由香、そろそろ起きないか?」

『この声は孝史先輩だわ』

 天井から見ていた私は、孝史に近づいた。

 孝史は眠る私の手を握っていた。

「僕はいつまでも待てるけれど、このまま目覚めないと、病院を変わらないといけなくなるらしい。僕の側からいなくならないで」

『……孝史』
『愛されていたようね』
『……アリエーテ』
『由香の本来の居場所を探していたの。遅くなってごめんなさい。私も意識を失って、ようやく時間をかけて探すことができたの』
『私のために、ずっと探していてくれたの?』
『由香には、たくさんいろんな事を教わったわ。デザインなんて描いたことなかったけれど、とても楽しかった。いい思い出になったわ。素敵なドレスを作ってもらえて嬉しかったわ』
『そんなこと、たいしたことではないわ。私が仕事で携わってきたことをさせてもらっただけよ』
『身体に戻って。孝史さんが待っているわ。これは真実よ』

「由香、結婚してほしい」

 孝史が私の頬を撫でている。

「行くなって声をかけたんだ。遅くなったから、うちに泊まれって言うつもりだった。それなのに、由香はおっちょこちょいだから、仕事場から飛び出して行ってしまったんだ。時間をみたら、もう終電の時間が過ぎていたんだよ。仕事場の電気を消して鍵をかけてから、追いかけたんだ。そうしたら、由香が地下鉄の階段の下に倒れていた。僕は後悔したんだ。もっと早くに泊まっていけと言えばよかったと……」

『なんて、バカなんだ、私。時計くるっていたのかな?』

「由香の腕時計の針に細工をしたのは僕なんだ。由香は本気にしていなかったけれど、僕は本気で由香を好きだった。電車に乗り遅れたら、僕の部屋に泊まってくれると思っていたんだ。毎日でも泊まりに来て欲しくて」

『由香、孝史さん、本気で由香を好きだわ。私は由香の身体を探す間、何度も孝史さんの声を聞いていたわ。今、戻らないと、戻れなくなるわ。私の力は、弱っているの』
『まさか、死んでしまうの?』
『異次元を超える力は、そんなに簡単じゃないの。私の体力の限界なの』
『それほどまで、探してくれたの?』
『一緒にいられて楽しかったわ。さあ、時間がないの、重なるわよ。その瞬間、自分の身体に戻って』
『アリエーテ、ありがとう』
『お幸せに……』

 アリエーテの身体が、私の身体に重なった。
 その瞬間、私はアリエーテに背中を押された気がした。

「……孝史、先輩」
「目が覚めたのか?由香」

 孝史はナースコールを押した。

「由香が目覚めました」

 孝史が私を抱きしめて泣いている。
 アリエーテが微笑んで消えた。

「私、孝史のこと大好きよ」
「由香より僕の方が好きに決まっている」

 私は孝史の身体を抱きしめた。
 ずっと好きだと言いたかった。
 勇気をくれてありがとう。アリエーテ……。



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