上 下
66 / 426
レストラン・スコヴィルの客

作務衣の客(後編)

しおりを挟む
ラビーはまず魔法で鉄板の温度を出来るだけ下げた。
牛乳、 卵黄、 生クリーム、 砂糖をボウルに入れてかき混ぜる。
バニラエッセンスも忘れずに。
そして冷えた鉄板の上で混ぜながらヘラで形を整える。

「・・・・・」

練習をしたので綺麗にまとまり、 アイスクリームが出来上がる。
アイスクリームを器によそい表に出て来る。
陶芸家は器を持ってスープをごくごくと飲んでいる様だった。

「ぷはー!! からえええええええええええええええええええ!!」
「スープ残せば良いのに」
「私はラーメンもスープまで飲む派だ!! はー!! はー!!」

ひーひー言っている陶芸家。
水も全部飲み干す。

「これ、 店からのサービスです」

そう言ってアイスクリームを出すラビー。

「何だこれ? 冷たい・・・とりあえず頂こう」

アイスクリームを一匙食べる陶芸家。

「あまぁああああああああああああああああああい!!
そしてつめたああああああああああああああああああい!!
こんな物も作れるのか女将!!」
「まぁね」
「辛い物食べた後にデザートか・・・何とも嬉しい心遣いよ!!」

勢い良く一気にアイスクリームを食べる陶芸家。

「ふぅ・・・・・満足した・・・女将はこれは代価だ、 受け取るが良い」

幾つかの器や皿を貰うラビー。

「ありがたく頂いておきますね」

ラビーは王妃教育で陶芸品の美術的価値を鑑定する事も学んだ。
貰った器や皿は美術的観点から言って価値は無いが。
普通に使用出来るので問題は無いと思い受取った。
態々価値は無いという事も無いだろう。

「それは私が作った作品だ」
「なるほど」
「如何だ? 何か感じる物が有るのではないか?」
「いえ、 特に・・・」 
「この作品には私の魂を込めた」
「はぁ・・・」
「何故かそれが伝わらないと嘆いていたが今日分かったよ」
「つまり?」
「愛だ!!!!」
「あ、 愛ですか?」
「その通り、 気持ち、 心と言い換えても良い
女将さんが私にデザートを振舞った、 私を思いやる気持ち、 心遣い
媚びずにその気概を出す、 何とも素晴らしい事よ」
「あ、 ありがとうございます」
「私の作品に魂と心を叩き込む!! それでもっと良くなる筈だ!!」
「そ、 そうですか」
「今までの作品は女将に渡そう、 使ってやってくれ」
「は、 はい・・・」
「ではな!! 失礼する!!」

そう言って陶芸家は去って行ったのだった。
しおりを挟む

処理中です...