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ハロウィン

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▪️カボチャのアレ

「そろそろハロウィンだね」
「ああハロウィンだな。そして相変わらず唐突だなお前は」

 私の机にへたり込む彼女ーーーーまぁ本名を語る程でもないのでメタ子と呼んでくれたまえ。

「どうも桜木(さくらぎ)愛(まな)です」
「人の心の声に答えないでくれない?」
「だって~、私の名前をどうモジってもあだ名はメタ子になんないじゃん」
「この世の全てに対してメタ的存在だからメタ子ってコトでよろしく」
「なら許そう」

 許すのかよ。
 まぁそれは置いといて、私の名前は美都(みと)梨々香(りりか)と申します。こっちだけ覚えて下さいテストに出ます。

「はい先生、何の科目のテストにでますかッ!」
「脳内の台詞に返事すんなし」

 さてさて、例の如く昼休みになると隣のクラスからやってくるメタ子。
こいつは世間でいうところの幼馴染ではあるが、何が悲しくて毎日毎日、隣のクラスに居る私の元へ顔を出すのだろうか。
 友達がいないのか? ああ分かる分かる、絡みがウザいものね。
 私? ええ基本的にボッチですけど何か?

「ねぇ、モノローグが長いよ?」
「うるせぇ語らせろ、ボッチ舐めんな」

 周りのリア充共に負けないぜ、心の中でだがな!

「……で、なんだって?」
「いやだからハロウィン、かぼちゃ、トリックオアトリート」
「だからハロウィンが何だっての」
「いや、ハロウィンだな~って」
「それだけ?」
「ねぇ、ここから話を広げてはくれまいか梨々香さんや」
「無茶振りしてくんなテメェ」

 しかしハロウィン、もうそんな時期か。
 そもそもそんなイベント、ボッチの私には無縁の長物だろう。街に繰り出してワイワイする気など毛頭ない。

「じゃあせめて話だけでも花を咲かせようよ?」
「だから頭の中を読むなと。そもそも何で分かるの? 実はエスパーなの?」
「梨々香の頭の中とチョ◯ボールの銀のエンゼルは透けて見えるぜ」
「なんで金は見えねぇんだよ不自由かよ」
「もう、話が前に進まないよぅ」

 誰のせいだバカやろう。

「ねぇ、もしこの世に白米が無くて、カボチャが主食になったらどうする?」
「まーたぶっ飛んだ質問だね」
「いいから考えて、私は真剣なんだよ!」

 机をドンと叩くメタ子。
 キレるポイントがピーキー過ぎて草である。

「そうだなぁ……」

 白米が無くなる? しかし、言われてみればご飯がない食卓なんて考えた事も無かった。白米の代わりにカボチャ。果たして一般的なオカズと合うのだろうか?
 いや合わない。そもそもお米がなければ丼ものがメニューから消え去るじゃないか。カツ丼に親子丼に天丼。私の血液といっていい丼もの無き世界など滅んでしまえ。

「カボチャは無しで」
「浅いよ!」
「!?」
「考えてみてよ梨々香。丼ものだって白米があるからこそ生まれた奇跡なんだよ? つまり、白米が人類に考えるキッカケを与えたって意味だよね? ならカボチャが主食になったら? 人類はカボチャに合う料理を生み出そうと切磋琢磨すると私は信じてる!」
「お、おう」
「それにカボチャはビタミンA、ビタミンC、ビタミンEは免疫に関わる栄養素を含んでいて、抗酸化作用があり、免疫力低下の一因となる活性酸素を取りのぞいてくれる働きがあるの!」
「それカンペ無しで言えるのキモくない? 昨日から調べてきたの?」
「調べたよ!」
「調べたのかよ」

 キーンコーンカーンコーン。

「あ、昼休み終わっちゃったね、梨々香ばいばーい」
「あ、おいメタ子……」

 脱兎の如く教室から去りゆくメタ子、そして残された私とーーーー集まるクラスの視線。
 ああ、あんなデカい声で会話してたらそりゃ目立つよね。
 それはそれとして、一番怖いのは。

「オチがないってコトだよね」
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