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第二機
不安・任務
しおりを挟む「七尾――」
涙声で呟いた声をギリギリ携帯端末が拾い穂摘に届ける。
『その声……サクラ? どうしたの? 前向きをモットーにするサクラが飼い主にすがる犬みたいな声で呼んで』
妹を心配する姉のような声にサクラは安心感を覚えて吐露する。
「帰ってきた、あっくんの様子が変なの……何かに怯えてるようで。穂摘と一緒にいたとき何か変わった様子あった?」
「うーん……怯えるようなことは一切なかったけど、もし何かあったとしたらおそらく私と別れた後だと思うけど」
穂摘はあれこれ思い返しながら答える。
篤の怯えている理由につて、全くもって手がかりがなくなってしまった。
サクラの中で篤が闇に引き込まれていくような気がして、どうも落ち着いてはいられない。
滅多に――否、サクラに一度も見せたことのない表情。それが網膜にべったりと張り付いて離れない。
「ねー、どうしよう‼ どうしよう七尾‼」
『だいじょうぶ』と混乱したサクラに諭すように言った。その言葉は何の根拠もない。それでも穂摘がいう言葉には不思議と心に響く。
『篤なら大丈夫よ。私と同じ機甲官なんだから。それに私より強いし、もし何かあっても私が助けに行く。それに明日からは篤を守ってくれる人がそばにいてくれるじゃない。安心してくれて大丈夫よ。何かわかったら必ず連絡するから。いつも通りでいてあげて』
「うん。わかった」
サクラは涙を拭いて笑顔を見せた。
(よかった。でも……なんだか寂しい。この会話に入れないことや、少しは篤さんのことをわかっていると思っていたけど、何一つわかっていないことが――)
『そうだ、今日篤を両親に紹介したのよ。母が喜んでいたわ』
「ちょっとそれどういうことー⁉」
『冗談』と穂摘は言った。サクラは一瞬、呆けた表情をして遊ばれたことに気が付いて、言葉を投げるように「バカ‼」と言った。
『ごめんね。サクラは揶揄い甲斐があるからつい。そうだ、ツバキちゃんに代わってもらえる』
「穂摘がツバキに代わってだって」
サクラはツバキに携帯端末を手渡してお風呂場へ駆けて行った。
お風呂場からは「入ってくるな‼」「いーじゃーん」と叫んでいる。
その声を聴きながらツバキは微笑む。電話を替わっていたことを忘れていたツバキは携帯端末を耳に当てて――
「ごめんなさい。穂摘さん。ツバキです」
『こんばんは』
「こんばんは。それでご用事は何ですか?」
特に思い当たることもなかったツバキは至極当たり前な質問をする。
電話越しに呼吸を感じる。穂摘はツバキに話すタイミングを窺っている。それを感じ取ったツバキはただただ受け身に徹した。
『その――サクラとの話、聞こえた?』
ようやく話した穂摘の声は小さく普通の人ではうまく聞き取れない。しかし話している相手は機械人形だ。聞くことに集中すれば全くもって問題ない。
「すみません。盗み聞きをするつもりではなかったんですけど……」
『そう。でも、まぁいいわ。さっきはサクラにあんなこと言ったけど、私も心配でさ。明日から篤に気を配ってもらえる?』
「わかりました。私でよかったら」
『あなたにしか頼めないの、お願いね』
ありがとう、と一言添えて通話を切った。
ツバキに早速任務が与えられた。
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