97 / 156
第六機
星々
しおりを挟む
ナヅナは一早く治療が必要なようで、そのまま部屋に運ばれた。
篤は緊急室の近くの椅子に腰を掛けて、無事に終了する事を願う。秒針の針がカチカチとテンポよく進んでいく。六十回程繰り返して、長針がカチャリと針を一つ進める。いつもなら気にすることもない時計という日常の記録と自分自身の鼓動に急かされる。
長針が三十回程動いた頃に電話が掛かってきた。篤は相手を確認して、慌てて建物を出た。
「悪い、サクラ。連絡するのをすっかり忘れていた」
『もー。どれだけ待っても二人とも帰って来ないし!! 町はすごいことになっていたから任務だとは思ってたけど、ツバキちゃんに連絡してもつながらなかったし……まぁ、でもよかった。ツバキちゃんは?』
「無事だ。あぁ、でも今日は帰れそうにない。ツバキが頑張ってくれて、大きな事故にならなくてすんでな。でも怪我をしていて治してもらっている最中だ」
手持無沙汰の右腕にまかれた包帯を見て、自身の能力のなさに頭に血が上る。篤は拳で壁を叩く。
『あっくんどうしたの?』
音が聞こえたようで、サクラが篤に問いかける。
「何でもない」
『そうかー。でも無事でよかった。明日の夜には帰ってくるの?』
「あぁ。帰る前に連絡をする。おいしい夜食を頼むぞ……楽しみにしてる」
『うん。それじゃぁお休み』
「お休み」
今日一日、心配させた上に寂しい思いもさせてしまったことを篤は反省しつつ、携帯端末をしまった。
発電施設が一か所機能を失った事で重要施設への電力供給の為に計画停電が行われていて、街灯もほとんどついていなかったり、会社も早く終わり外はいつもに比べて静かで中央に位置するこの施設からでも波の音が聞こえてきそうで、そして暗い。
空を見上げればいつもなら見ることのできない星々が姿を現して、幻想的だ。
「ここにいたか……。キミが星空を見て感傷的になる人間だとは思はなかったよ」
突然声をかけられて、声の主を見ると――白衣姿の水瀬さんだった。
「ツバキは!?」
「無事に終わったよ。いま彼女はベッドでグッスリだ。それにしても私が言うのもあれだが、ひどい顔をしているな……サクラが見たら大変なことになりそうだな」
「そう……ですかね」
「そうだ。キミは夕食を食べたのかい? まだならこれから私とどうだい。もちろん誘ったからには私が奢る」
篤は緊急室の近くの椅子に腰を掛けて、無事に終了する事を願う。秒針の針がカチカチとテンポよく進んでいく。六十回程繰り返して、長針がカチャリと針を一つ進める。いつもなら気にすることもない時計という日常の記録と自分自身の鼓動に急かされる。
長針が三十回程動いた頃に電話が掛かってきた。篤は相手を確認して、慌てて建物を出た。
「悪い、サクラ。連絡するのをすっかり忘れていた」
『もー。どれだけ待っても二人とも帰って来ないし!! 町はすごいことになっていたから任務だとは思ってたけど、ツバキちゃんに連絡してもつながらなかったし……まぁ、でもよかった。ツバキちゃんは?』
「無事だ。あぁ、でも今日は帰れそうにない。ツバキが頑張ってくれて、大きな事故にならなくてすんでな。でも怪我をしていて治してもらっている最中だ」
手持無沙汰の右腕にまかれた包帯を見て、自身の能力のなさに頭に血が上る。篤は拳で壁を叩く。
『あっくんどうしたの?』
音が聞こえたようで、サクラが篤に問いかける。
「何でもない」
『そうかー。でも無事でよかった。明日の夜には帰ってくるの?』
「あぁ。帰る前に連絡をする。おいしい夜食を頼むぞ……楽しみにしてる」
『うん。それじゃぁお休み』
「お休み」
今日一日、心配させた上に寂しい思いもさせてしまったことを篤は反省しつつ、携帯端末をしまった。
発電施設が一か所機能を失った事で重要施設への電力供給の為に計画停電が行われていて、街灯もほとんどついていなかったり、会社も早く終わり外はいつもに比べて静かで中央に位置するこの施設からでも波の音が聞こえてきそうで、そして暗い。
空を見上げればいつもなら見ることのできない星々が姿を現して、幻想的だ。
「ここにいたか……。キミが星空を見て感傷的になる人間だとは思はなかったよ」
突然声をかけられて、声の主を見ると――白衣姿の水瀬さんだった。
「ツバキは!?」
「無事に終わったよ。いま彼女はベッドでグッスリだ。それにしても私が言うのもあれだが、ひどい顔をしているな……サクラが見たら大変なことになりそうだな」
「そう……ですかね」
「そうだ。キミは夕食を食べたのかい? まだならこれから私とどうだい。もちろん誘ったからには私が奢る」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる