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第七機
時間稼ぎ 【翠間・ナヅナ】 4
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四足で歩くように動いていた為に動きが遅かったロボットが滑るように加速をして距離をとっていた翠間とナヅナを襲う。足一つ一つに今までなかったはずのタイヤ姿を現していた。変化はそれだけではない。三本の指の付いていたアームは今や見る影もなく、右に二十五メートル近くあるランス左にはやたらと分厚いシールド。その姿は重戦車、重戦士だ。
その長いランスが迫る。刹那に翠間は思う。ランスのコース上には俺と少し外れた位置にナヅナの体がある。
「命令だ、ナヅナ避けろ!!」
咄嗟の判断。だがこのままでは二人ともただでは済まない。人間である翠間には決して、回避することは不可能なのは嫌でも瞬時に理解した。例えナヅナが翠間を抱えてよけようとも完全回避にはならない。その場合、ナヅナは翠間が翠間の命を最優先する。それではナヅナは戦闘続行不可能となる。現状それは最もしてはならない結末。
翠間が助かったところで、何分も経たない内に倉庫にいる機甲官と同じか祖霊所の状態になるだけだ。それではロボットが外周地から人の多い中心部へと進行してしまう。それだけは阻止しなければならない。増援が来るまでの時間を少しでも多く稼ぐことが可能なのはナヅナ。よって、ナヅナを生かす選択肢をとった。
今まで命令を守ってきたナヅナ。だがこの時――否、篤という少し考え方の変わった男との出会いから、影響を受けた。更に信頼できる姉、ツバキができた事で自身の考えを持つようになった。
――――そうでなければ、ただの人形だ。
篤のセリフがナヅナを完全に変えた。
ナヅナは考えることもせずただ体の動きに任せた。
翠間とランスの間に割り込む。ランスはそのままナヅナの胸のあたりを容赦なく刺す。体に刺さって瞬間的に勢いを失う。それを見逃さずナヅナはそれ以上いかないように手でしっかりと掴んだ。
「ナヅナ!!」
今までにない感情むき出しの声。
「だい……じょう、ぶです」
ナヅナは翠間に見えないことが分かっていながらも笑顔を作った。
ランスが動かなくなったことでロボットは次の手に出た。回転だ。ランスが突然高速回転をした。
何とか抑えていたランスは回転によって手の中で滑る。ナヅナの手からは摩擦による火花が散る。ランスは次第にナヅナの体を先へと進んでいく。
「くそ! 止まりやがれ!」
翠間はいつも以上に感情的になって銃の引き金を引き続ける。弾がなくなったら、カートリッジを手早く交換して、再び引き金を引く。翠間の行動とは裏腹にランスは順調にナヅナの体を貫こうとしている。
パーツの損傷が激しく自由が利かなくなりつつある体、とうとう受け止めていた手が離れて、力なく宙で揺れる。抵抗する力が減って進みが早まったランスは小さな体をあっさりと穴を開けた。
「――なさい」
割れた声を必死に出したナヅナの目には光がなく、まるで人形のようになっていた。ただその目からは涙が流れていた。
「命令無視をしておいて勝手に死ぬんじゃねぇぞ!!」
ロボットの体を支える四本の足の内一本に最も脆い関節部分にゼロ距離から銃弾を全て撃ち込む。
脆い部分なだけあって、ダメージがあったのかそこから蒸気が上がり重心が少し崩れた。
攻撃してきた翠間を放っておくわけもなく、左アームのシールドで叩き飛ばす。人の体では耐えることもなく紙のように宙を舞った。
もうその場には戦えるものはいない。
その長いランスが迫る。刹那に翠間は思う。ランスのコース上には俺と少し外れた位置にナヅナの体がある。
「命令だ、ナヅナ避けろ!!」
咄嗟の判断。だがこのままでは二人ともただでは済まない。人間である翠間には決して、回避することは不可能なのは嫌でも瞬時に理解した。例えナヅナが翠間を抱えてよけようとも完全回避にはならない。その場合、ナヅナは翠間が翠間の命を最優先する。それではナヅナは戦闘続行不可能となる。現状それは最もしてはならない結末。
翠間が助かったところで、何分も経たない内に倉庫にいる機甲官と同じか祖霊所の状態になるだけだ。それではロボットが外周地から人の多い中心部へと進行してしまう。それだけは阻止しなければならない。増援が来るまでの時間を少しでも多く稼ぐことが可能なのはナヅナ。よって、ナヅナを生かす選択肢をとった。
今まで命令を守ってきたナヅナ。だがこの時――否、篤という少し考え方の変わった男との出会いから、影響を受けた。更に信頼できる姉、ツバキができた事で自身の考えを持つようになった。
――――そうでなければ、ただの人形だ。
篤のセリフがナヅナを完全に変えた。
ナヅナは考えることもせずただ体の動きに任せた。
翠間とランスの間に割り込む。ランスはそのままナヅナの胸のあたりを容赦なく刺す。体に刺さって瞬間的に勢いを失う。それを見逃さずナヅナはそれ以上いかないように手でしっかりと掴んだ。
「ナヅナ!!」
今までにない感情むき出しの声。
「だい……じょう、ぶです」
ナヅナは翠間に見えないことが分かっていながらも笑顔を作った。
ランスが動かなくなったことでロボットは次の手に出た。回転だ。ランスが突然高速回転をした。
何とか抑えていたランスは回転によって手の中で滑る。ナヅナの手からは摩擦による火花が散る。ランスは次第にナヅナの体を先へと進んでいく。
「くそ! 止まりやがれ!」
翠間はいつも以上に感情的になって銃の引き金を引き続ける。弾がなくなったら、カートリッジを手早く交換して、再び引き金を引く。翠間の行動とは裏腹にランスは順調にナヅナの体を貫こうとしている。
パーツの損傷が激しく自由が利かなくなりつつある体、とうとう受け止めていた手が離れて、力なく宙で揺れる。抵抗する力が減って進みが早まったランスは小さな体をあっさりと穴を開けた。
「――なさい」
割れた声を必死に出したナヅナの目には光がなく、まるで人形のようになっていた。ただその目からは涙が流れていた。
「命令無視をしておいて勝手に死ぬんじゃねぇぞ!!」
ロボットの体を支える四本の足の内一本に最も脆い関節部分にゼロ距離から銃弾を全て撃ち込む。
脆い部分なだけあって、ダメージがあったのかそこから蒸気が上がり重心が少し崩れた。
攻撃してきた翠間を放っておくわけもなく、左アームのシールドで叩き飛ばす。人の体では耐えることもなく紙のように宙を舞った。
もうその場には戦えるものはいない。
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