輪廻転生∞俺の未来は英雄とのことなので異世界に召喚される!?

ケニーさん

文字の大きさ
6 / 9
二章 (異世界)

しおりを挟む
「お兄ちゃん、起きて! そろそろ起きないとアルバイト遅刻しちゃうよ?」

「もうちょっと……まだ、アラーム鳴ってない……」

「もー、何時間も前になってたよ! 早く起きて!」

 揺さぶられる体。それが逆に心地よい眠りを作り出す。なんて優しいおこしかただ……室内だというのに寒いし冷たい。何故?

「寒いから布団から出たくない」

「え? お兄ちゃん何言ってるの? 寒くなんかないよ? もしかして、熱でもあるの? だったら美代子さんに電話しないと。それと病院行かないと」

「寒いに決まっているだろ。何たって冬だぞ」

「お兄ちゃんやっぱりアルバイトは休んで早く病院に行ったほうがいいよ。今は夏だよ」

 夏?
 ミ――――ン……ミン、ミン……ミーンとセミの鳴き声? あれ? あれ? あれ!? ちょっと何それ!!

「ありえないから!!」

 …………あ……あー。こッ……ここは……夢の中だね。そうだよありえないよ。いやーさすがに焦ったね。夢にしても冗談きっついよ。あははははははははは。もう一度目を瞑って目を開ければほら――

「見知らぬ雪だらけの廃墟と化した教会が……アハハハハハハハハ? おっかしいなー」

 夢のまた夢ってやつか、そうだそうに違いない。なら俺のすべきことは再び目を瞑ること、ただそれだけ! そして目を開ければ!

「はいっ、景色変わってません! ここどこ――――――――――――――――――!!」

 どこかの中心で「あい」を叫ぶ。

 さて、混乱するのはここまでだ。まずは現状を判断することが大切。目覚める前の記憶を――たしかアルバイトを終えて帰路の途中でジッポライターを見つけて――
 自分の手に収まるそれを見る。
 ――その後……そうだ。突然どこからか声が聞こえてきて、そのまま倒れたんだ。そして目を覚ませば教会で横たわっていたと……結局訳が分からない。
 そもそもここは日本なのだろうか?

「何故大事なことを忘れていた!!」

 つい大きな声をあげてしまう。人の声一つしないここでは妙に響く。
 スマホがあるじゃないか! よかったこれで連絡を取れば助かる。
 スマホをポケットから取り出して電源を入れるが、電波が立っていない。
 これだけだだっ広い場所で電波が届かないとなると……。

「ファンタジー小説を読んでおくべきだったかもしれない」

 思ったことを呟く。まだここが異世界だと決まったわけではない。少なくとも崩れかけている柱に刻まれた文字らしきものには覚えがない。日本ではないことは確かだ。そうなると、意識を失っている間に手段かはわからないにしてもここへ来た。
 それだけでもう普通ではない。
 今思うと突然聞こえてきた言葉。あれは呪文のような感じだった。ならたぶんあれは召喚の呪文。

「まさかね」

 取り敢えずここにいても仕方がない。ここがどこなのかを把握するためにも、ここを拠点として移動してみよう。
 運がいいことに当分の食料とたまたま拾ったジッポーがある。まずは燃えるようなものと、屋根とかになりそうなものを探そう。
 すごく吹雪いているからあまり遠くには行かないようにしよう。
 協会から少し離れた場所に森があった。そこには見たこともない植物が多くあって、だんだんさっきの冗談を撤回したい気持ちが強くなっていく。
 長方形の長さ一メートルと五十センチに厚さ一センチ程ある葉っぱ。驚きなのはそのサイズではなく、頑丈さだ。鉄かと思ってしまう硬さだと言うのにプラスティックのように軽い。
 なんて使いやすい。
 硬くて葉の部分だけ持って帰る事ができないので、根っこごと抜いて協会の角に植えていく。建物の壁と葉で作り上げた即席の家。雪風はこれでしのげる。

「美代子さんのくれた防寒具がこんなかたちで、さっそく役に立つなんて思ってもいなかった」

 一人呟く。それに対して言うものは誰もいない。そうこの場には誰もいない。弧だ。
 まるで夢に出てきた男のようだな。
 燃えやすい筒状の太い茎を立てて、先にジッポーで火を点けると先端で球体状に火がともる。
 美代子さんからもらったお店のあまりもののパンを食べて、ペットボトルの水を飲む。
 こんな不安な時は満天の星を見たい気分ではあったが外は吹雪が酷く、星どころか空すら見えない。

「今夜はここで寝るしかないか。目を覚ましたら元の場所に戻っていないかな――――」

 吹雪の中、体を温める火を前に、冷たい壁に背中を預けて眠りについた。夢でありますようにと願って。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

 社畜のおじさん過労で死に、異世界でダンジョンマスターと なり自由に行動し、それを脅かす人間には容赦しません。

本条蒼依
ファンタジー
 山本優(やまもとまさる)45歳はブラック企業に勤め、 残業、休日出勤は当たり前で、連続出勤30日目にして 遂に過労死をしてしまい、女神に異世界転移をはたす。  そして、あまりな強大な力を得て、貴族達にその身柄を 拘束させられ、地球のように束縛をされそうになり、 町から逃げ出すところから始まる。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

処理中です...