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二章 (異世界)
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「お兄ちゃん、起きて! そろそろ起きないとアルバイト遅刻しちゃうよ?」
「もうちょっと……まだ、アラーム鳴ってない……」
「もー、何時間も前になってたよ! 早く起きて!」
揺さぶられる体。それが逆に心地よい眠りを作り出す。なんて優しいおこしかただ……室内だというのに寒いし冷たい。何故?
「寒いから布団から出たくない」
「え? お兄ちゃん何言ってるの? 寒くなんかないよ? もしかして、熱でもあるの? だったら美代子さんに電話しないと。それと病院行かないと」
「寒いに決まっているだろ。何たって冬だぞ」
「お兄ちゃんやっぱりアルバイトは休んで早く病院に行ったほうがいいよ。今は夏だよ」
夏?
ミ――――ン……ミン、ミン……ミーンとセミの鳴き声? あれ? あれ? あれ!? ちょっと何それ!!
「ありえないから!!」
…………あ……あー。こッ……ここは……夢の中だね。そうだよありえないよ。いやーさすがに焦ったね。夢にしても冗談きっついよ。あははははははははは。もう一度目を瞑って目を開ければほら――
「見知らぬ雪だらけの廃墟と化した教会が……アハハハハハハハハ? おっかしいなー」
夢のまた夢ってやつか、そうだそうに違いない。なら俺のすべきことは再び目を瞑ること、ただそれだけ! そして目を開ければ!
「はいっ、景色変わってません! ここどこ――――――――――――――――――!!」
どこかの中心で「遭」を叫ぶ。
さて、混乱するのはここまでだ。まずは現状を判断することが大切。目覚める前の記憶を――たしかアルバイトを終えて帰路の途中でジッポライターを見つけて――
自分の手に収まるそれを見る。
――その後……そうだ。突然どこからか声が聞こえてきて、そのまま倒れたんだ。そして目を覚ませば教会で横たわっていたと……結局訳が分からない。
そもそもここは日本なのだろうか?
「何故大事なことを忘れていた!!」
つい大きな声をあげてしまう。人の声一つしないここでは妙に響く。
スマホがあるじゃないか! よかったこれで連絡を取れば助かる。
スマホをポケットから取り出して電源を入れるが、電波が立っていない。
これだけだだっ広い場所で電波が届かないとなると……。
「ファンタジー小説を読んでおくべきだったかもしれない」
思ったことを呟く。まだここが異世界だと決まったわけではない。少なくとも崩れかけている柱に刻まれた文字らしきものには覚えがない。日本ではないことは確かだ。そうなると、意識を失っている間に手段かはわからないにしてもここへ来た。
それだけでもう普通ではない。
今思うと突然聞こえてきた言葉。あれは呪文のような感じだった。ならたぶんあれは召喚の呪文。
「まさかね」
取り敢えずここにいても仕方がない。ここがどこなのかを把握するためにも、ここを拠点として移動してみよう。
運がいいことに当分の食料とたまたま拾ったジッポーがある。まずは燃えるようなものと、屋根とかになりそうなものを探そう。
すごく吹雪いているからあまり遠くには行かないようにしよう。
協会から少し離れた場所に森があった。そこには見たこともない植物が多くあって、だんだんさっきの冗談を撤回したい気持ちが強くなっていく。
長方形の長さ一メートルと五十センチに厚さ一センチ程ある葉っぱ。驚きなのはそのサイズではなく、頑丈さだ。鉄かと思ってしまう硬さだと言うのにプラスティックのように軽い。
なんて使いやすい。
硬くて葉の部分だけ持って帰る事ができないので、根っこごと抜いて協会の角に植えていく。建物の壁と葉で作り上げた即席の家。雪風はこれでしのげる。
「美代子さんのくれた防寒具がこんなかたちで、さっそく役に立つなんて思ってもいなかった」
一人呟く。それに対して言うものは誰もいない。そうこの場には誰もいない。弧だ。
まるで夢に出てきた男のようだな。
燃えやすい筒状の太い茎を立てて、先にジッポーで火を点けると先端で球体状に火がともる。
美代子さんからもらったお店のあまりもののパンを食べて、ペットボトルの水を飲む。
こんな不安な時は満天の星を見たい気分ではあったが外は吹雪が酷く、星どころか空すら見えない。
「今夜はここで寝るしかないか。目を覚ましたら元の場所に戻っていないかな――――」
吹雪の中、体を温める火を前に、冷たい壁に背中を預けて眠りについた。夢でありますようにと願って。
「もうちょっと……まだ、アラーム鳴ってない……」
「もー、何時間も前になってたよ! 早く起きて!」
揺さぶられる体。それが逆に心地よい眠りを作り出す。なんて優しいおこしかただ……室内だというのに寒いし冷たい。何故?
「寒いから布団から出たくない」
「え? お兄ちゃん何言ってるの? 寒くなんかないよ? もしかして、熱でもあるの? だったら美代子さんに電話しないと。それと病院行かないと」
「寒いに決まっているだろ。何たって冬だぞ」
「お兄ちゃんやっぱりアルバイトは休んで早く病院に行ったほうがいいよ。今は夏だよ」
夏?
ミ――――ン……ミン、ミン……ミーンとセミの鳴き声? あれ? あれ? あれ!? ちょっと何それ!!
「ありえないから!!」
…………あ……あー。こッ……ここは……夢の中だね。そうだよありえないよ。いやーさすがに焦ったね。夢にしても冗談きっついよ。あははははははははは。もう一度目を瞑って目を開ければほら――
「見知らぬ雪だらけの廃墟と化した教会が……アハハハハハハハハ? おっかしいなー」
夢のまた夢ってやつか、そうだそうに違いない。なら俺のすべきことは再び目を瞑ること、ただそれだけ! そして目を開ければ!
「はいっ、景色変わってません! ここどこ――――――――――――――――――!!」
どこかの中心で「遭」を叫ぶ。
さて、混乱するのはここまでだ。まずは現状を判断することが大切。目覚める前の記憶を――たしかアルバイトを終えて帰路の途中でジッポライターを見つけて――
自分の手に収まるそれを見る。
――その後……そうだ。突然どこからか声が聞こえてきて、そのまま倒れたんだ。そして目を覚ませば教会で横たわっていたと……結局訳が分からない。
そもそもここは日本なのだろうか?
「何故大事なことを忘れていた!!」
つい大きな声をあげてしまう。人の声一つしないここでは妙に響く。
スマホがあるじゃないか! よかったこれで連絡を取れば助かる。
スマホをポケットから取り出して電源を入れるが、電波が立っていない。
これだけだだっ広い場所で電波が届かないとなると……。
「ファンタジー小説を読んでおくべきだったかもしれない」
思ったことを呟く。まだここが異世界だと決まったわけではない。少なくとも崩れかけている柱に刻まれた文字らしきものには覚えがない。日本ではないことは確かだ。そうなると、意識を失っている間に手段かはわからないにしてもここへ来た。
それだけでもう普通ではない。
今思うと突然聞こえてきた言葉。あれは呪文のような感じだった。ならたぶんあれは召喚の呪文。
「まさかね」
取り敢えずここにいても仕方がない。ここがどこなのかを把握するためにも、ここを拠点として移動してみよう。
運がいいことに当分の食料とたまたま拾ったジッポーがある。まずは燃えるようなものと、屋根とかになりそうなものを探そう。
すごく吹雪いているからあまり遠くには行かないようにしよう。
協会から少し離れた場所に森があった。そこには見たこともない植物が多くあって、だんだんさっきの冗談を撤回したい気持ちが強くなっていく。
長方形の長さ一メートルと五十センチに厚さ一センチ程ある葉っぱ。驚きなのはそのサイズではなく、頑丈さだ。鉄かと思ってしまう硬さだと言うのにプラスティックのように軽い。
なんて使いやすい。
硬くて葉の部分だけ持って帰る事ができないので、根っこごと抜いて協会の角に植えていく。建物の壁と葉で作り上げた即席の家。雪風はこれでしのげる。
「美代子さんのくれた防寒具がこんなかたちで、さっそく役に立つなんて思ってもいなかった」
一人呟く。それに対して言うものは誰もいない。そうこの場には誰もいない。弧だ。
まるで夢に出てきた男のようだな。
燃えやすい筒状の太い茎を立てて、先にジッポーで火を点けると先端で球体状に火がともる。
美代子さんからもらったお店のあまりもののパンを食べて、ペットボトルの水を飲む。
こんな不安な時は満天の星を見たい気分ではあったが外は吹雪が酷く、星どころか空すら見えない。
「今夜はここで寝るしかないか。目を覚ましたら元の場所に戻っていないかな――――」
吹雪の中、体を温める火を前に、冷たい壁に背中を預けて眠りについた。夢でありますようにと願って。
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