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最終話:永遠に天使様の顔を見る
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さて、次の日。
天使様に声をかけられた。
「志水さん、山田君のこと知らないかしら。昨日から行方不明みたいなの」
「なんで私に聞くんですか」
「あなたと山田君が一緒に旧校舎へ行くのを見た人がいたみたいで、それから彼を見た人がいないみたいなの……」
山田君だと。
あんな醜い生き物を君付けで呼ばないでほしいわ、天使様。
ヤーマダって呼んでほしいわね。
意味ないけど。
「先生に言われて、いらない段ボール箱を二人で持って行っただけです。その後は知らないですよ」
「そう……」
心配そうな天使様。
ヤーマダは私の家の地下室で腐ってますよと言いたくなったが、黙っていた。
そして、成績は下がったが、頭のいい私は、天使様がヤーマダの件で話しかけてくるだろうと予想していた。
そして、その準備もあらかじめちゃんとしてあった。
手錠とかロープね。
天使様を守ってやらないと。
私の家の地下室で。
「ただ、山田さん、元カノと別れ話でトラブっているって言ってましたよ」
「え、元カノって」
動揺している我が天使様。
「中学生時代から付き合っている子らしいんですけど、新しい彼女が出来たから別れようとしたら、相手から殺してやるとか言われたみたいですね」
「ホント! 志水さん、その、山田君の元カノって知ってるの」
「ええ、知ってます」
「あの、その人の連絡先、もし知っていたら教えてくれるかしら」
「うーん、家に行けば連絡先が書いてある書類とか残ってるかもしれませんけど、放課後、私の家に来ますか」
「是非ともお願いしたいんだけど」
「わかりました」
こんなアホなウソに引っかかる我が天使様。
ヤーマダとは中学は一緒だったけど、仲が良くないし、ぼっちの独立リーグの私にそんな話をするわけないじゃん。
こりゃ、いずれ我が天使様は誰かに騙されてひどい目に遭うに違いない。
これは私が守ってやらないと。
永遠に。
……………………………………………………
私の自宅に天使様を案内する。
地下室に天使様を招き入れる。
そして、秘かに扉の鍵を閉める。
この扉、鍵がないと開けることは出来ない。
天使様がおっしゃった。
「あの、志水さん、この部屋、変な匂いがするけど……」
ヤーマダの腐った死体の匂いかしら。
困ったな、ちゃんと閉めなかったのかしらとヤーマダを入れたケースを確かめてたら、うっかり横倒しにしてしまった。
ケースの蓋が開いて、ビニール袋に入ったヤーマダの死体が転がり出る。
悲鳴をあげる天使様。
逃げようとして、扉をガチャガチャやってる。
私は用意しておいた包丁を取り出す。
顔面真っ青の天使様。
悲鳴を出すのもやめてしまった。
恐怖で顔がこわばっている。
「お、お願い、志水さん、殺さないで」
我が天使様を殺すわけないじゃない。
「天使様、椅子に座ってくれる」
「は、はい」
もう完全に恐怖で私の言うがままって感じ。
我が天使様、相当気が弱いと見える。
天使様の両腕を、椅子の背もたれの後ろに回して手錠をかける。
あと足首はロープで椅子の脚に片方ずつ縛り付ける。
全く抵抗しない天使様。
私みたいなちんちくりんなんか、蹴とばせば簡単にノックアウト出来ると思うけど。
怖くて何も考えられないって感じ。
こりゃ、本当に守ってあげないと。
この椅子、かなり重いからもう身動きはできないわ。
さあ、じっくりと天使様を鑑賞。
美しいわ。
もう何時間でも見ていられるわ。
私がうっとりと天使様を見つめていると、天使様が聞いてきた。
「……あ、あの、志水さん、いったい、私をどうするつもりなの」
「どうって、私は天使様を永遠にお守りするつもりですよ」
「……どういう意味……」
「どういう意味って、天使様の美しさを永遠に守るつもりですよ。あんな山田みたいな醜い生き物なんかに汚される前にね」
「こんな地下室で守るって……」
「ここで二人でいれば、醜い生き物は寄ってこないでしょう」
「あなたのご両親が戻ってきたらどうするつもりなの」
「そうですねえ。この部屋には入ってこないでしょ。でも、入ってきたら、あのしょうもない親どもを殺します。そして遺産が入ったら、永久に二人で暮らしましょう」
ますます顔面蒼白の我が天使様。
けど、怖がっている顔もお美しい。
「あなた……頭がおかしいわ」
私って、おかしいかしら。
私がしばらく無言で考えていると、天使様が慌てて謝る。
「ご、ごめんなさい、二度とおかしいなんて言わないから、お願い、殺さないで!」
何だか涙目になって、勝手に謝っている。
また怖がっている、我が天使様。
別に怒ってないんだけどな。
私は狂っているのかな。
まあ、どうでもいいわ。
けど、これも全て天使様を守るためよ。
この世の汚れからね。
汚れと言えば、忘れてた。
ヤーマダの死骸。
面倒だなあ。
けど、仕方がない。
さっさと済ませるか。
私はチェーンソーでヤーマダの解体を始めた。
ギュイーン!
天使様が悲鳴をあげておられる。
けど、この部屋、防音室なのよね。
私の親が、この部屋で楽器の練習していた関係でそうなったみたい。
血まみれになる私。
適当にヤーマダを細切れにして新聞紙で包んで、いくつかのビニール袋に入れて、終了。
また楽器のケースに入れる。
明日の燃えるゴミの日に捨てる予定。
ああ、疲れた。
数時間かかった。
ちょっとトイレ。
ついでにシャワーを浴びてくる。
きれいにさっぱりした後は、やはり天使様の鑑賞タイム。
地下室に戻ると、天使様がビクッとする。
そして、うつむいた。
もう怖くて口が開けない様子。
「天使様、お顔をあげてくれませんか」
「……はい」
顔をあげる天使様。
お美しい。
しかし、震えている。
まあ、怖いんでしょうね。
うーん、かわいそう。
けど、これも天使様を守るためよ。
そして、私はまた天使様を鑑賞。
ずーっと鑑賞。
何時間も鑑賞。
ああ、美しい。
ああ、幸せ。
あれ、天使様がもじもじしている。
どうしたのかな。
「……あの、志水さん」
「はい、なんでしょうか、天使様」
「ト、トイレに行きたいの……これ、解いてくれませんか……」
「なんでトイレに行きたいんですか」
一瞬、びっくりする天使様。
「……何でって、用を足すためよ」
「何の用ですか」
呆然とした顔をする天使様。
なんで呆然とするのかしらね。
「何の用って、決まってるじゃない」
「だから何の用ですか」
「……おしっこしたいの!」
「え、なんで天使様がおしっこするんですか」
ポカーンとした顔をする天使様。
それでもお美しい。
「するに決まってるじゃない!」
「天使様はしないでしょ」
天使様が焦っておられる。
「お、お願い、もう漏れそうなの。志水さん、これ以上、私を虐めないで、お願いします!」
「いや、だから天使様はそんなことしないでしょ」
「ふざけないで!」
「ふざけていません」
天使様が私のように汚いおしっこをするなんて想像できないなあ。
「天使様は冗談で言ってるおられるんですよね」
「冗談じゃないわよ! お願い、ねえ、トイレに行かせて、何でも志水さんの言うこと聞くから。ねえ、早く、トイレに、ああ、も、漏れちゃう……我慢できない……」
天使様はおふざけになっているだけ。
私は無視して、また天使様の美しいお顔の鑑賞にふける。
あれ、天使様のお顔が真っ青と言うか震えてきた。
膝も震えている。
「志水さん、お願いします、本当に漏れそうなの。お願い、トイレに行かせてください……」
天使様が涙を流している。
うーん、そのお顔もお美しい。
しかし、本当なのだろうか。
「天使様は本当にトイレに行きたいのですか」
「はい」
うーん、信じられない。
こんな美しいお方が。
私はスカートをめくって、天使様の股に手を突っ込む。
「な、何をするの、や、やめて!」
私は下着の上から天使様の股間を刺激してみた。
「ちょ、ちょっと、何をするの」
「冗談ですよね、天使様がおしっこなんて」
「ああ、やめて、志水さん、そこ、だめ、ああ、出る、出ちゃう、だめ、あっ、いや、だめえ、ああ、出る、出ちゃう……」
天使様が天井へ顔を向ける。
身体が震えている。
そして、大量の黄金色の液体が天使様のあそこから出てきて、椅子から垂れ流れて床に水溜まりをつくる。
うーん、本当だったのね。
天使様はがっくりと顔を下に向けて泣き始めた。
もう涙をボロボロと流している。
信じられないなあ、じゃあ、大きい方もしてるわけだ。
こんな美しい人が。
しばらくして、天使様が顔を上げてこっちへ向けた。
涙で顔がびしょ濡れ。
鼻水まで垂れ流している。
うーん、美しくないわ。
残念だわ。
美しくないなら守る必要もないわね。
私は神倉さんの縛めを解いてやった。
「じゃあ、帰っていいわ、神倉さん」
神倉さんはまたポカーンとした顔をした。
ちょっと間抜けな顔ね。
そして、地下室の扉を開けて玄関まで見送ってあげた。
スカートや靴下がおしっこまみれね。
よろよろと家を出ていく神倉さん。
「あ、ちょっと待って!」
私は神倉さんに声をかける。
ビクッとして立ち止まる神倉さん。
じっとしている神倉さんに、私は彼女のカバンを渡す。
「あ、ありがとう……」
「では、これで」
また、よろよろと歩き出す神倉さん。
しかし、だいぶ離れたところで急に走り出した。
どうしたのかしら。
さて、私は自室へ行く。
部屋に貼ってある神倉さんのポスター。
剥がそうと思ったんだけど。
うーん、やっぱり美しいわ。
そう、さっき漏らした彼女は別人ね。
そうよね。
私はまたうっとりとそのポスターを眺める。
そして、十分もしないうちに、パトカーのサイレンが聞こえてきた。
何か事故でも起きたのかしらね。
……………………………………………………
今、私は四方を白い壁の部屋でベッドに拘束されている。
精神病院に入っている。
だいぶ暴れたんで拘束されちゃった。
けど、幸せよ。
部屋に貼ってあった神倉さんのポスターを差し入れてもらったから。
それは壁に貼ってある。
ベッドに拘束されているけど、天使様の美しいお顔は見れる。
もうずっと見ていたいわ。
永遠に。
〔END〕
天使様に声をかけられた。
「志水さん、山田君のこと知らないかしら。昨日から行方不明みたいなの」
「なんで私に聞くんですか」
「あなたと山田君が一緒に旧校舎へ行くのを見た人がいたみたいで、それから彼を見た人がいないみたいなの……」
山田君だと。
あんな醜い生き物を君付けで呼ばないでほしいわ、天使様。
ヤーマダって呼んでほしいわね。
意味ないけど。
「先生に言われて、いらない段ボール箱を二人で持って行っただけです。その後は知らないですよ」
「そう……」
心配そうな天使様。
ヤーマダは私の家の地下室で腐ってますよと言いたくなったが、黙っていた。
そして、成績は下がったが、頭のいい私は、天使様がヤーマダの件で話しかけてくるだろうと予想していた。
そして、その準備もあらかじめちゃんとしてあった。
手錠とかロープね。
天使様を守ってやらないと。
私の家の地下室で。
「ただ、山田さん、元カノと別れ話でトラブっているって言ってましたよ」
「え、元カノって」
動揺している我が天使様。
「中学生時代から付き合っている子らしいんですけど、新しい彼女が出来たから別れようとしたら、相手から殺してやるとか言われたみたいですね」
「ホント! 志水さん、その、山田君の元カノって知ってるの」
「ええ、知ってます」
「あの、その人の連絡先、もし知っていたら教えてくれるかしら」
「うーん、家に行けば連絡先が書いてある書類とか残ってるかもしれませんけど、放課後、私の家に来ますか」
「是非ともお願いしたいんだけど」
「わかりました」
こんなアホなウソに引っかかる我が天使様。
ヤーマダとは中学は一緒だったけど、仲が良くないし、ぼっちの独立リーグの私にそんな話をするわけないじゃん。
こりゃ、いずれ我が天使様は誰かに騙されてひどい目に遭うに違いない。
これは私が守ってやらないと。
永遠に。
……………………………………………………
私の自宅に天使様を案内する。
地下室に天使様を招き入れる。
そして、秘かに扉の鍵を閉める。
この扉、鍵がないと開けることは出来ない。
天使様がおっしゃった。
「あの、志水さん、この部屋、変な匂いがするけど……」
ヤーマダの腐った死体の匂いかしら。
困ったな、ちゃんと閉めなかったのかしらとヤーマダを入れたケースを確かめてたら、うっかり横倒しにしてしまった。
ケースの蓋が開いて、ビニール袋に入ったヤーマダの死体が転がり出る。
悲鳴をあげる天使様。
逃げようとして、扉をガチャガチャやってる。
私は用意しておいた包丁を取り出す。
顔面真っ青の天使様。
悲鳴を出すのもやめてしまった。
恐怖で顔がこわばっている。
「お、お願い、志水さん、殺さないで」
我が天使様を殺すわけないじゃない。
「天使様、椅子に座ってくれる」
「は、はい」
もう完全に恐怖で私の言うがままって感じ。
我が天使様、相当気が弱いと見える。
天使様の両腕を、椅子の背もたれの後ろに回して手錠をかける。
あと足首はロープで椅子の脚に片方ずつ縛り付ける。
全く抵抗しない天使様。
私みたいなちんちくりんなんか、蹴とばせば簡単にノックアウト出来ると思うけど。
怖くて何も考えられないって感じ。
こりゃ、本当に守ってあげないと。
この椅子、かなり重いからもう身動きはできないわ。
さあ、じっくりと天使様を鑑賞。
美しいわ。
もう何時間でも見ていられるわ。
私がうっとりと天使様を見つめていると、天使様が聞いてきた。
「……あ、あの、志水さん、いったい、私をどうするつもりなの」
「どうって、私は天使様を永遠にお守りするつもりですよ」
「……どういう意味……」
「どういう意味って、天使様の美しさを永遠に守るつもりですよ。あんな山田みたいな醜い生き物なんかに汚される前にね」
「こんな地下室で守るって……」
「ここで二人でいれば、醜い生き物は寄ってこないでしょう」
「あなたのご両親が戻ってきたらどうするつもりなの」
「そうですねえ。この部屋には入ってこないでしょ。でも、入ってきたら、あのしょうもない親どもを殺します。そして遺産が入ったら、永久に二人で暮らしましょう」
ますます顔面蒼白の我が天使様。
けど、怖がっている顔もお美しい。
「あなた……頭がおかしいわ」
私って、おかしいかしら。
私がしばらく無言で考えていると、天使様が慌てて謝る。
「ご、ごめんなさい、二度とおかしいなんて言わないから、お願い、殺さないで!」
何だか涙目になって、勝手に謝っている。
また怖がっている、我が天使様。
別に怒ってないんだけどな。
私は狂っているのかな。
まあ、どうでもいいわ。
けど、これも全て天使様を守るためよ。
この世の汚れからね。
汚れと言えば、忘れてた。
ヤーマダの死骸。
面倒だなあ。
けど、仕方がない。
さっさと済ませるか。
私はチェーンソーでヤーマダの解体を始めた。
ギュイーン!
天使様が悲鳴をあげておられる。
けど、この部屋、防音室なのよね。
私の親が、この部屋で楽器の練習していた関係でそうなったみたい。
血まみれになる私。
適当にヤーマダを細切れにして新聞紙で包んで、いくつかのビニール袋に入れて、終了。
また楽器のケースに入れる。
明日の燃えるゴミの日に捨てる予定。
ああ、疲れた。
数時間かかった。
ちょっとトイレ。
ついでにシャワーを浴びてくる。
きれいにさっぱりした後は、やはり天使様の鑑賞タイム。
地下室に戻ると、天使様がビクッとする。
そして、うつむいた。
もう怖くて口が開けない様子。
「天使様、お顔をあげてくれませんか」
「……はい」
顔をあげる天使様。
お美しい。
しかし、震えている。
まあ、怖いんでしょうね。
うーん、かわいそう。
けど、これも天使様を守るためよ。
そして、私はまた天使様を鑑賞。
ずーっと鑑賞。
何時間も鑑賞。
ああ、美しい。
ああ、幸せ。
あれ、天使様がもじもじしている。
どうしたのかな。
「……あの、志水さん」
「はい、なんでしょうか、天使様」
「ト、トイレに行きたいの……これ、解いてくれませんか……」
「なんでトイレに行きたいんですか」
一瞬、びっくりする天使様。
「……何でって、用を足すためよ」
「何の用ですか」
呆然とした顔をする天使様。
なんで呆然とするのかしらね。
「何の用って、決まってるじゃない」
「だから何の用ですか」
「……おしっこしたいの!」
「え、なんで天使様がおしっこするんですか」
ポカーンとした顔をする天使様。
それでもお美しい。
「するに決まってるじゃない!」
「天使様はしないでしょ」
天使様が焦っておられる。
「お、お願い、もう漏れそうなの。志水さん、これ以上、私を虐めないで、お願いします!」
「いや、だから天使様はそんなことしないでしょ」
「ふざけないで!」
「ふざけていません」
天使様が私のように汚いおしっこをするなんて想像できないなあ。
「天使様は冗談で言ってるおられるんですよね」
「冗談じゃないわよ! お願い、ねえ、トイレに行かせて、何でも志水さんの言うこと聞くから。ねえ、早く、トイレに、ああ、も、漏れちゃう……我慢できない……」
天使様はおふざけになっているだけ。
私は無視して、また天使様の美しいお顔の鑑賞にふける。
あれ、天使様のお顔が真っ青と言うか震えてきた。
膝も震えている。
「志水さん、お願いします、本当に漏れそうなの。お願い、トイレに行かせてください……」
天使様が涙を流している。
うーん、そのお顔もお美しい。
しかし、本当なのだろうか。
「天使様は本当にトイレに行きたいのですか」
「はい」
うーん、信じられない。
こんな美しいお方が。
私はスカートをめくって、天使様の股に手を突っ込む。
「な、何をするの、や、やめて!」
私は下着の上から天使様の股間を刺激してみた。
「ちょ、ちょっと、何をするの」
「冗談ですよね、天使様がおしっこなんて」
「ああ、やめて、志水さん、そこ、だめ、ああ、出る、出ちゃう、だめ、あっ、いや、だめえ、ああ、出る、出ちゃう……」
天使様が天井へ顔を向ける。
身体が震えている。
そして、大量の黄金色の液体が天使様のあそこから出てきて、椅子から垂れ流れて床に水溜まりをつくる。
うーん、本当だったのね。
天使様はがっくりと顔を下に向けて泣き始めた。
もう涙をボロボロと流している。
信じられないなあ、じゃあ、大きい方もしてるわけだ。
こんな美しい人が。
しばらくして、天使様が顔を上げてこっちへ向けた。
涙で顔がびしょ濡れ。
鼻水まで垂れ流している。
うーん、美しくないわ。
残念だわ。
美しくないなら守る必要もないわね。
私は神倉さんの縛めを解いてやった。
「じゃあ、帰っていいわ、神倉さん」
神倉さんはまたポカーンとした顔をした。
ちょっと間抜けな顔ね。
そして、地下室の扉を開けて玄関まで見送ってあげた。
スカートや靴下がおしっこまみれね。
よろよろと家を出ていく神倉さん。
「あ、ちょっと待って!」
私は神倉さんに声をかける。
ビクッとして立ち止まる神倉さん。
じっとしている神倉さんに、私は彼女のカバンを渡す。
「あ、ありがとう……」
「では、これで」
また、よろよろと歩き出す神倉さん。
しかし、だいぶ離れたところで急に走り出した。
どうしたのかしら。
さて、私は自室へ行く。
部屋に貼ってある神倉さんのポスター。
剥がそうと思ったんだけど。
うーん、やっぱり美しいわ。
そう、さっき漏らした彼女は別人ね。
そうよね。
私はまたうっとりとそのポスターを眺める。
そして、十分もしないうちに、パトカーのサイレンが聞こえてきた。
何か事故でも起きたのかしらね。
……………………………………………………
今、私は四方を白い壁の部屋でベッドに拘束されている。
精神病院に入っている。
だいぶ暴れたんで拘束されちゃった。
けど、幸せよ。
部屋に貼ってあった神倉さんのポスターを差し入れてもらったから。
それは壁に貼ってある。
ベッドに拘束されているけど、天使様の美しいお顔は見れる。
もうずっと見ていたいわ。
永遠に。
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