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第18話:昼食会
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昼食会が始まった。
私は中庭の隅っこで立っているだけだ。そして、ついアラン様の横顔に目が行ってしまう。素敵な顔。もう、ずっと見ていたい。そして、夜の行為を思いだして顔が赤くなる。自分はいやらしい女だなあとまた思ってしまった。
すると、執事のブレソール様がウロホリー王国の使者のオーギュスタンが座っているテーブルの前に、バンッと音を立てて箱を置いた。出席者、一同が驚いてそっちを見る。
「これはあなたがお持ちになった国王陛下への贈呈品だそうだね」
「はい、我が国の最高級品の赤ワインです」
すると、ブレソール様が箱を開けて、中から赤ワインの瓶を取り出す。
そして、栓を抜いた。
「では、まずはあなたに飲んでいただくとしますか」
「あ、いえ、これはアラン国王陛下への贈り物で、私のようなものがいただけるものではないのですが」
「飲めない事情でもあるのですか」
「いや、そんなことはないですけど……」
オーギュスタンの前に置いてあるワイングラスに、赤ワインを注ぐブレソール様。
しかし、オーギュスタンはなかなか飲もうとしない。
オーギュスタンは落ち着かない様子で周りをキョロキョロと見回している。
昼食会場がざわつき始めた。
「どうしたんですか。何か飲めない事情でもあるんでしょうか、オーギュスタンさん」
「いえ、そういうわけではありませんが、アラン国王陛下に失礼ではと思いまして。これは国王陛下のために持ってきたものですから……」
すると、アラン様がオーギュスタンに声をかける。
「別にかまわんよ。毒が入っているわけではないんだろ」
「は、はい……」
やっとワイングラスを手に取るオーギュスタン。
オーギュスタンはワイングラスの赤ワインを一気に飲み干した。
そして、グラスをテーブルに置くと、にこやかな笑顔で言った。
「いやあ、美味しいですねー! 私の安月給では、二度とこんな美味しいワインは飲めないですねえ」
その台詞に、出席者のみんなが笑った。ブレソール様は不機嫌な顔で赤ワインの入っていた箱を片付ける。また、なごやかに昼食会が進んでいく。すると、ずっと黙っていたヴァネッサ様が発言した。
「国王陛下、せっかく外国からのお客様が持って来られたんだから、あの赤ワインを飲まないと礼儀を欠くんじゃなくて」
「うむ……うーん、そうだな」
アラン様の席の前にメイドが赤ワインのボトルを持って行き、ワイングラスに注ごうとすると、またヴァネッサ様が言った。
「待って、私が注いであげるわ」
「ああ……」
なんとなくアラン様の態度が変だなあと私は思った。
アラン様の持つワイングラスに、オーギュスタンが持ち込んだ赤ワインを注ぐヴァネッサ様。
グラスの縁までたっぷりと注ぐ。
それを興味深げに見ているオーギュスタン。
しばらくグラスを眺めているアラン様。そして、アラン様が一気に赤ワインを飲む。そして、ガクッと頭を垂れる。座っているみんなが少し慌てるが、すぐにアラン様は頭をまた上げて言った。
「いや、なかなか美味しいワインだな、ありがとう」
「いえいえ、国王陛下のお口に合いまして、非常に光栄ではあります」
また、やたらペコペコするオーギュスタン。出席者のみんなもほっとしたのか、昼食会はまたなごやかな雰囲気に戻った。しかし、アラン様は少し不快な顔をされている。
そんなアラン様にヴァネッサ様が言った。
「私のグラスにも注いでいただけるかしら、国王陛下。それとも私にはそんなこともしてくれないのかしら。お前のような傲慢な女になんで国王がワインを注いだりしなきゃいけないんだよって感じかしらね」
「……ああ、わかったよ」
ヴァネッサ様の持つワイングラスに適当にワインを注ぐ不機嫌そうなアラン様。
そのワインを飲むヴァネッサ様。
「あら、すごく美味しいじゃない、このワイン。もっと飲んだら、アラン」
「いや、僕はもういいよ……」
「そう、じゃあ、皆さまにもこの美味しいワインを味わってもらいましょう」
メイドを呼んで、ワインボトルを渡すヴァネッサ様。
そう言えば、アラン様がお酒の類を飲んでいるのを見たことがないなあ。実はお酒とか苦手じゃないのかしら。ヴァネッサ様はニヤニヤと笑っている。もしかして、嫌がらせかしら。本当に仲が悪そうね、この二人。それにしても、どうやら、このやたらペコペコしているオーギュスタンと言う人はやはり単なる小役人に過ぎないのかなと私は思った。
そして、私はやっぱりアラン様の顔を見てしまう。相変わらずヴァネッサ様とは全く喋らず、イザベル様とばっかり喋っている。その素敵な横顔。ああ、もう永遠に見ていたい。そして、またはしたない妄想をしてしまう。アラン様に抱かれている私。ああ、だめだめ、そんなことを考えちゃと思っていると、ブレソール様が私に近づいてきた。
「フランソワーズ、例のモラヴィア王国からの贈り物の水まき機械を動かしてくれないか。だいぶ暑いので、例の水の霧を出せとのポール様のご命令だ」
「あ、はい、わかりました」
私は例の人間の国モラヴィア王国から贈られた水まき機械の方へ行こうとする。
すると、カミーユ様に止められた。
「どこに行くの、フランソワーズ」
「あの、ポール様が、暑いので水まき機械を動かせとのことです。例の水蒸気を出して霧でこの暑さをやわらげるのが目的だと思いますが」
「私がやるわ」
「え、大丈夫ですか」
「私でも出来るわよ、あなたは一番隅っこにいなさい。いっそ、地下の自室に戻ったらどうなの。本来、あなたのような者がこんな場所にいるだけでもおかしいのよ」
「は、はい、すみません……」
カミーユ様は持っていた鉄製のお盆を私に押し付けると水まき機械の方へ行く。そう、私は国王陛下を暗殺しようとした重罪人。アラン様も私を相手にしてくれるのは若い時だけだろう。このまま、ひっそりと暮らしていくしかないのかあと暗くなる。
また中庭の隅っこで、他の方々と離れて、一人でポツンと立っている私。
誰も私には近寄らない。
やっぱり寂しいなあ。
カミーユ様が水まき機械を動かし始めた。例の水蒸気の霧が中庭を覆う。暑い夏なので、私は少し気分が良くなった。そして、またアラン様の顔を見てしまう。アラン様は本当に私のことが好きなのかなあ、どうなんだろう、もしかしたら勘違いかもしれないなあ。
そんなことを考えていたら、アラン様の背後に立っていたマクシミリアン様の動きがおかしい。あれ、アラン様に近づいていく。
そう思っていたら、マクシミリアン様がいきなり膝から崩れ落ちて倒れた。いや、違う、アラン様も顔を上に向かれて目を瞑って身体を震わせている。ヴァネッサ様、イザベル様、それに、ポール様や執事のブレソール様、他の吸血鬼の重臣や警備隊員たちも全員おかしくなっている。地面に倒れる人も続出。
私は呆然としてしまった。
いったい何が起こったの。
人間の私以外は全員倒れてしまった。
すると、オーギュスタンが立ち上がった。
ポケットから銀のナイフを取り出す。
腕を振り上げた。
アラン様を狙っているわ!
シュッ!
オーギュスタンがナイフを投げた。
私は咄嗟に鉄製のお盆をアラン様の前に投げる。
運良く、ナイフはお盆にはじかれた。
はじかれたナイフは遠く中庭の外に飛んで行った。
オーギュスタンが驚いている。
「お前、何で吸血鬼のくせに倒れないんだ!」
この男、暗殺者だわ。
私は走って、アラン様に近づいた。
「アラン様、アラン様、大丈夫ですか」
「あ……フランソワーズ、か、身体が痺れて……」
アラン様はうまく話せないようだ。
身体も動かせないみたい。
もしかして、さっきの霧に何か仕込んであったのかしら。
私は地面に倒れて動けないマクシミリアン様に言った。
「マクシミリアン様、剣をお借りいたします」
すると、オーギュスタンも自分の背後で倒れている警備隊員の剣を鞘から抜き取って、テーブルの上に乗っかって構える。
「本当は銀のナイフ心臓一突きで殺害する予定だったんだがな。まあ、この鉄製の剣でも首を刎ね飛ばせば吸血鬼の王様でも殺せるだろう」
私はオーギュスタンに向かって叫んだ。
「アラン様を殺させはしないわ!」
そう、絶対に守る。
私は一度、大切な人を見捨てた。
自分の命が惜しくて、仲間のクロードを見捨てて逃げ出した卑怯な女、臆病者、ゴミのような女。
けど、二度も同じことは繰り返さない。
絶対に、アラン様を守る。
私は左腕を突き出す。
そして、マクシミリアン様の剣を右手に持って、左腕の上に置いた。
私の剣の構えにオーギュスタンが少し警戒している。
しかし、すぐにゲラゲラと笑い出した。
「何だ、その剣の構えは。思い出したぞ、確か吸血鬼の王を暗殺する時に仲間を裏切って全員殺させて、自分だけは助かった女がいるって話を。結局、その女は毎晩、吸血鬼の王様に犯されてひどい目に遭ってヒイヒイ言わされているってな」
「私は仲間を裏切ってないわ、裏切ったのはあなたの国のペラシ国王じゃないの。アラン様をまるで極悪非道の吸血鬼みたいに私たちに教え込んで、殺しに行かせたんじゃないの、領土がほしくて」
「吸血鬼の味方をする人間の方がおかしいだろ。後、お前のその剣の構え、はったりだろ。お前の体格でその大きい剣は扱えないな」
勘の良い奴だなと私は思った。そう、このマクシミリアン様の体格に合わせた剣は重すぎて私には扱えない。そして、私はこの剣を使うつもりはない。
しかし、怖くなってきた。足が震えている。向こうは相当訓練を積んできた奴だろう、私に倒せるだろうか。国王警備隊員もポール様も倒れたままだ。アラン様を守れるのは私しかいない。
死ぬのは怖い。
けど、また私は思い返す、大切な人を守る、逃げたりはしない、絶対に愛する人を守る!
「この裏切り者の女が、吸血鬼王と一緒に叩き斬ってやる!」
オーギュスタンがテーブルの上を料理の皿を蹴とばしながら走って来た。
「死ね!」
オーギュスタンが剣を振りかざした。
私は中庭の隅っこで立っているだけだ。そして、ついアラン様の横顔に目が行ってしまう。素敵な顔。もう、ずっと見ていたい。そして、夜の行為を思いだして顔が赤くなる。自分はいやらしい女だなあとまた思ってしまった。
すると、執事のブレソール様がウロホリー王国の使者のオーギュスタンが座っているテーブルの前に、バンッと音を立てて箱を置いた。出席者、一同が驚いてそっちを見る。
「これはあなたがお持ちになった国王陛下への贈呈品だそうだね」
「はい、我が国の最高級品の赤ワインです」
すると、ブレソール様が箱を開けて、中から赤ワインの瓶を取り出す。
そして、栓を抜いた。
「では、まずはあなたに飲んでいただくとしますか」
「あ、いえ、これはアラン国王陛下への贈り物で、私のようなものがいただけるものではないのですが」
「飲めない事情でもあるのですか」
「いや、そんなことはないですけど……」
オーギュスタンの前に置いてあるワイングラスに、赤ワインを注ぐブレソール様。
しかし、オーギュスタンはなかなか飲もうとしない。
オーギュスタンは落ち着かない様子で周りをキョロキョロと見回している。
昼食会場がざわつき始めた。
「どうしたんですか。何か飲めない事情でもあるんでしょうか、オーギュスタンさん」
「いえ、そういうわけではありませんが、アラン国王陛下に失礼ではと思いまして。これは国王陛下のために持ってきたものですから……」
すると、アラン様がオーギュスタンに声をかける。
「別にかまわんよ。毒が入っているわけではないんだろ」
「は、はい……」
やっとワイングラスを手に取るオーギュスタン。
オーギュスタンはワイングラスの赤ワインを一気に飲み干した。
そして、グラスをテーブルに置くと、にこやかな笑顔で言った。
「いやあ、美味しいですねー! 私の安月給では、二度とこんな美味しいワインは飲めないですねえ」
その台詞に、出席者のみんなが笑った。ブレソール様は不機嫌な顔で赤ワインの入っていた箱を片付ける。また、なごやかに昼食会が進んでいく。すると、ずっと黙っていたヴァネッサ様が発言した。
「国王陛下、せっかく外国からのお客様が持って来られたんだから、あの赤ワインを飲まないと礼儀を欠くんじゃなくて」
「うむ……うーん、そうだな」
アラン様の席の前にメイドが赤ワインのボトルを持って行き、ワイングラスに注ごうとすると、またヴァネッサ様が言った。
「待って、私が注いであげるわ」
「ああ……」
なんとなくアラン様の態度が変だなあと私は思った。
アラン様の持つワイングラスに、オーギュスタンが持ち込んだ赤ワインを注ぐヴァネッサ様。
グラスの縁までたっぷりと注ぐ。
それを興味深げに見ているオーギュスタン。
しばらくグラスを眺めているアラン様。そして、アラン様が一気に赤ワインを飲む。そして、ガクッと頭を垂れる。座っているみんなが少し慌てるが、すぐにアラン様は頭をまた上げて言った。
「いや、なかなか美味しいワインだな、ありがとう」
「いえいえ、国王陛下のお口に合いまして、非常に光栄ではあります」
また、やたらペコペコするオーギュスタン。出席者のみんなもほっとしたのか、昼食会はまたなごやかな雰囲気に戻った。しかし、アラン様は少し不快な顔をされている。
そんなアラン様にヴァネッサ様が言った。
「私のグラスにも注いでいただけるかしら、国王陛下。それとも私にはそんなこともしてくれないのかしら。お前のような傲慢な女になんで国王がワインを注いだりしなきゃいけないんだよって感じかしらね」
「……ああ、わかったよ」
ヴァネッサ様の持つワイングラスに適当にワインを注ぐ不機嫌そうなアラン様。
そのワインを飲むヴァネッサ様。
「あら、すごく美味しいじゃない、このワイン。もっと飲んだら、アラン」
「いや、僕はもういいよ……」
「そう、じゃあ、皆さまにもこの美味しいワインを味わってもらいましょう」
メイドを呼んで、ワインボトルを渡すヴァネッサ様。
そう言えば、アラン様がお酒の類を飲んでいるのを見たことがないなあ。実はお酒とか苦手じゃないのかしら。ヴァネッサ様はニヤニヤと笑っている。もしかして、嫌がらせかしら。本当に仲が悪そうね、この二人。それにしても、どうやら、このやたらペコペコしているオーギュスタンと言う人はやはり単なる小役人に過ぎないのかなと私は思った。
そして、私はやっぱりアラン様の顔を見てしまう。相変わらずヴァネッサ様とは全く喋らず、イザベル様とばっかり喋っている。その素敵な横顔。ああ、もう永遠に見ていたい。そして、またはしたない妄想をしてしまう。アラン様に抱かれている私。ああ、だめだめ、そんなことを考えちゃと思っていると、ブレソール様が私に近づいてきた。
「フランソワーズ、例のモラヴィア王国からの贈り物の水まき機械を動かしてくれないか。だいぶ暑いので、例の水の霧を出せとのポール様のご命令だ」
「あ、はい、わかりました」
私は例の人間の国モラヴィア王国から贈られた水まき機械の方へ行こうとする。
すると、カミーユ様に止められた。
「どこに行くの、フランソワーズ」
「あの、ポール様が、暑いので水まき機械を動かせとのことです。例の水蒸気を出して霧でこの暑さをやわらげるのが目的だと思いますが」
「私がやるわ」
「え、大丈夫ですか」
「私でも出来るわよ、あなたは一番隅っこにいなさい。いっそ、地下の自室に戻ったらどうなの。本来、あなたのような者がこんな場所にいるだけでもおかしいのよ」
「は、はい、すみません……」
カミーユ様は持っていた鉄製のお盆を私に押し付けると水まき機械の方へ行く。そう、私は国王陛下を暗殺しようとした重罪人。アラン様も私を相手にしてくれるのは若い時だけだろう。このまま、ひっそりと暮らしていくしかないのかあと暗くなる。
また中庭の隅っこで、他の方々と離れて、一人でポツンと立っている私。
誰も私には近寄らない。
やっぱり寂しいなあ。
カミーユ様が水まき機械を動かし始めた。例の水蒸気の霧が中庭を覆う。暑い夏なので、私は少し気分が良くなった。そして、またアラン様の顔を見てしまう。アラン様は本当に私のことが好きなのかなあ、どうなんだろう、もしかしたら勘違いかもしれないなあ。
そんなことを考えていたら、アラン様の背後に立っていたマクシミリアン様の動きがおかしい。あれ、アラン様に近づいていく。
そう思っていたら、マクシミリアン様がいきなり膝から崩れ落ちて倒れた。いや、違う、アラン様も顔を上に向かれて目を瞑って身体を震わせている。ヴァネッサ様、イザベル様、それに、ポール様や執事のブレソール様、他の吸血鬼の重臣や警備隊員たちも全員おかしくなっている。地面に倒れる人も続出。
私は呆然としてしまった。
いったい何が起こったの。
人間の私以外は全員倒れてしまった。
すると、オーギュスタンが立ち上がった。
ポケットから銀のナイフを取り出す。
腕を振り上げた。
アラン様を狙っているわ!
シュッ!
オーギュスタンがナイフを投げた。
私は咄嗟に鉄製のお盆をアラン様の前に投げる。
運良く、ナイフはお盆にはじかれた。
はじかれたナイフは遠く中庭の外に飛んで行った。
オーギュスタンが驚いている。
「お前、何で吸血鬼のくせに倒れないんだ!」
この男、暗殺者だわ。
私は走って、アラン様に近づいた。
「アラン様、アラン様、大丈夫ですか」
「あ……フランソワーズ、か、身体が痺れて……」
アラン様はうまく話せないようだ。
身体も動かせないみたい。
もしかして、さっきの霧に何か仕込んであったのかしら。
私は地面に倒れて動けないマクシミリアン様に言った。
「マクシミリアン様、剣をお借りいたします」
すると、オーギュスタンも自分の背後で倒れている警備隊員の剣を鞘から抜き取って、テーブルの上に乗っかって構える。
「本当は銀のナイフ心臓一突きで殺害する予定だったんだがな。まあ、この鉄製の剣でも首を刎ね飛ばせば吸血鬼の王様でも殺せるだろう」
私はオーギュスタンに向かって叫んだ。
「アラン様を殺させはしないわ!」
そう、絶対に守る。
私は一度、大切な人を見捨てた。
自分の命が惜しくて、仲間のクロードを見捨てて逃げ出した卑怯な女、臆病者、ゴミのような女。
けど、二度も同じことは繰り返さない。
絶対に、アラン様を守る。
私は左腕を突き出す。
そして、マクシミリアン様の剣を右手に持って、左腕の上に置いた。
私の剣の構えにオーギュスタンが少し警戒している。
しかし、すぐにゲラゲラと笑い出した。
「何だ、その剣の構えは。思い出したぞ、確か吸血鬼の王を暗殺する時に仲間を裏切って全員殺させて、自分だけは助かった女がいるって話を。結局、その女は毎晩、吸血鬼の王様に犯されてひどい目に遭ってヒイヒイ言わされているってな」
「私は仲間を裏切ってないわ、裏切ったのはあなたの国のペラシ国王じゃないの。アラン様をまるで極悪非道の吸血鬼みたいに私たちに教え込んで、殺しに行かせたんじゃないの、領土がほしくて」
「吸血鬼の味方をする人間の方がおかしいだろ。後、お前のその剣の構え、はったりだろ。お前の体格でその大きい剣は扱えないな」
勘の良い奴だなと私は思った。そう、このマクシミリアン様の体格に合わせた剣は重すぎて私には扱えない。そして、私はこの剣を使うつもりはない。
しかし、怖くなってきた。足が震えている。向こうは相当訓練を積んできた奴だろう、私に倒せるだろうか。国王警備隊員もポール様も倒れたままだ。アラン様を守れるのは私しかいない。
死ぬのは怖い。
けど、また私は思い返す、大切な人を守る、逃げたりはしない、絶対に愛する人を守る!
「この裏切り者の女が、吸血鬼王と一緒に叩き斬ってやる!」
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