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第19話:暗殺者との戦い
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オーギュスタンが私に向かって剣を振りかざして突進してくる。
私はマクシミリアン様から借りた剣を放り捨てた。
そして、護身用の銀のナイフをオーギュスタン目がけて素早く投げた。
「ウグ!」
私の投げたナイフはオーギュスタンの胸に刺さった。
心臓を一突き。
そのまま、テーブルの中央で崩れ落ちるオーギュスタン。
どうやらオーギュスタンを倒せたらしい。私はホッとした。本来、アラン様暗殺のために訓練を重ねた心臓を狙ったナイフ投げ。まさか、アラン様を守るために使うことになるとは思わなかった。
私は水まき機械のところに走る。カミーユ様が倒れていた。機械をすぐに止める。霧が晴れてきた。しかし、何とか立ち上がろうとする吸血鬼もいれば、気絶したままの方もいる。吸い込んだ量の違いのようだ。
「カミーユ様、大丈夫ですか」
「あ……なんとか大丈夫……」
カミーユ様は大丈夫らしい。するとアラン様がうめいていらっしゃる。私はすぐにアラン様の方に戻った。
「大丈夫ですか、アラン様、元気を出してください」
「ああ、大丈夫だよ、すまん……」
私にささえられて、何とか立ち上がるアラン様。
他の吸血鬼の方々も少しずつ身体の麻痺が治っていくようだ。
アラン様が言った。
「……うーん、どうやら、あの変な機械のせいのようだな」
「はい、そう思います」
すると、吸血鬼の方々がカミーユ様の方を疑わしい顔で見る。
カミーユ様がびっくりした顔で、言い訳をしている。
「わ、私は何も知りません。ただ、機械を動かしただけです。そしたら、変な霧が出てきておかしくなったんです」
「本当か、お前がアラン様暗殺の手助けをしたんじゃないのか」
警備隊員の一人がカミーユ様を詰問している。
「本当です、私は何も知りません」
泣きだしそうなカミーユ様。
すると、フラフラしながらもポール様が立ち上がった。
警備隊員に向かって言った。
「カミーユは犯人じゃないよ」
「じゃあ、誰なんですか」
ポール様がいまだに気絶している執事のブレソール様を蹴とばした。
「痛い!」
「何、演技してんだよ、ブレソール。お前、人間だろ」
ポール様の発言にびっくりする私。
「お前の頭の中身が一瞬分かったんだよ、フランソワーズの部屋の鏡にお前が映っている時に。あの鏡は一瞬だけだが人間の考えが分かるんだよ。お前、人間の国のスパイだろ。それですぐに逮捕しようかと思ったんだが、兄貴と相談してもう少し泳がせてみようかって話になってな」
「そ、そんな、何かの間違いです、ポール様」
よろつきながら立ち上がる執事のブレソール。
「暑いからあの機械で霧を出しましょうってお前が言い出したんじゃないか。吸血鬼って言い張るならその犬歯をさわらせろよ、どうせ入れ歯だろ」
突然、よろついていたブレソールがすばやくテーブルの上にのぼった。
「死ね、アラン!」
ブレソールがテーブルの上で死んでいるオーギュスタンの胸から銀のナイフを抜くとアラン様目がけて投げる。
「この野郎!」
ポール様が焦ってブレソールを剣で斬り倒した。
しかし、ナイフがアラン様へ向かって飛んでくる。
「危ない!」
咄嗟に私は盾になろうとアラン様に抱き着いた。
衝撃が私の背中に走る。
ナイフが私の身体を突き抜けてアラン様の胸に刺さっている。
(……ああ、私は、大切な人、愛する人を守れなかった……)
私は崩れ落ちていく。
「おい、フランソワーズ、しっかりしろ! おい、フランソワーズ、死ぬな!」
「……アラン様、お怪我は……」
すると、アラン様は胸のポケットからタバコケースを取り出した。
ケースにナイフが突き刺さった跡がついている。
「フランソワーズ、君がくれたこのタバコケースで助かったんだよ」
「……よかった、アラン様……」
(……アラン様はご無事だったんだわ、嬉しい……)
私は横たわったまま、目を瞑る。
少しずつ意識が遠のいていく。
アラン様が大声で呼びかけているのが聞こえてきた。
「おい、フランソワーズ、死ぬな! 頼むから死なないでくれ!」
「……いえ、私はもう……だめみたいです……」
ナイフで身体を貫かれた。
激痛が私の身体を襲う。
助かるわけがない。
私の意識がますます薄れていく。
けど、私は満足しているわ。
一度は大切な人を見捨てた卑怯な女。
けど、今回は守り抜いた。
もう一度だけでもいいから、アラン様に抱かれたかったけど。
ああ、けど、死ぬ前に、アラン様のお顔を見たい。
アラン様の顔を見ながら死にたい。
私は目を少し開けた。
すると、アラン様が顔を近づけてきた。
私の首筋に歯をあてる。
「……あ、アラン様……それをしては……だめです……」
ものすごい快感が私の身体中に走った。
身体をナイフで貫かれた痛みなんか全く消えて行った。
そして、私は意識を失った。
……………………………………………………
気が付くと、私は地下の自室のベッドの上で横になっていた。
側にはアラン様がいる。
「大丈夫か、フランソワーズ、気分は」
「あ、はい、全然、大丈夫です」
確か、あのナイフは私の身体を貫いたはず。
しかし、その傷は全く治っていた。
「よかった……」
アラン様がきつく私を抱きしめてくれる。
嬉しい。
もう、嬉しくて、私もアラン様に抱き着く。
ただ、私は気になった。
「あの、もしかして、私を助けるために首を噛んだのでしょうか」
「もちろんだよ。この世に君がいなくなるなんて考えられないよ」
「けど、そんなことをしたら……」
「わかってる、覚悟の上だよ。僕は貴族から平民に落とされる」
それを聞いて、私は涙が出てきた。
「申し訳ありません、私のために」
「いいんだよ、それに君に前々から言いたいことがあったんだ」
「な、何でしょうか」
「フランソワーズ、僕は君が好きだ、大好きなんだ、初めて会った時から君に一目惚れしてしまって。その後もますます君にのめりこんでしまった、君の事を心底愛してしまったんだ、僕は君とずっと一緒にいたいんだ……突然だけど、フランソワーズ、結婚してくれないか」
「は、はい、もちろんです」
「けど、僕はもう王様でもなんでもなく、吸血鬼の最下層の者になったんだが……」
「かまいません、アラン様となら地の果てでもついていきます」
私とアラン様は激しくキスをした。そして、私は気が付いた。私の犬歯が尖っている。私は吸血鬼になったんだわ。けど、全然かまわない、アラン様と一緒にいられるなら。
私たちが激しく抱き合ってキスをしていると部屋の扉あたりで咳払いが聞こえた。
振り向くとポール様がいた。
「えーと、兄貴にフランソワーズ、お取込み中、悪いけどさあ。まあ、本当は見逃してやりたいんだけどなあ。でもなあ、こればっかりはちょっとなあ、まずいんだよなあ」
「わかってる、貴族から平民に降格処分の話だろ」
「うん、それでさあ、兄貴の後任だけど、吸血鬼国家連合評議会に報告して、とりあえず誰か優秀な人を摂政にしようかと重臣たちと相談するつもりなんだけど、いいかなあ」
「いや、ポール、国王の任務はお前がやれ」
「えー! 俺に王様なんて出来ないよ」
「いや、頼む。お前は信用できるからな」
ポール様が困った顔をしている。
「俺、王様が出席しなきゃいけない、いろんな儀式とかああいうのが大嫌いなんだけど」
「我慢してくれ。お前が一番信頼できる」
「けど、今回、俺、兄貴の防衛に失敗したけどなあ」
「いや、ブレソールをすぐに逮捕しろとお前は何度も僕に言ったじゃないか。それを断ってスパイとして泳がせようなんて言ったのは僕だ。ポールには責任はないよ、僕が傲慢だっただけだ。おまけにブレソールが人間だったことを、つい最近まで見抜けなかったなんて王様失格だよ」
そう言えば、私は気になっていたことをポール様に聞いた。
「あの霧のことなんですけど、以前に使用したときは何ともなかったですよね。何で今回は皆さん倒れてしまったんですか」
「どうも、以前、フランソワーズが運転した時なんだけど、あの時はただの水を入れていたようなんだ。それが終わった後に、シルバーモンド、例の銀に似た金属なんだけど、ブレソールの奴が入れておいたみたいだな。それから、暗殺者のオーギュスタンが兄貴に投げた銀のナイフだけどあれを盗んだのもブレソールだろうな。人間だから銀のナイフをさわっても大丈夫だし、多分、あの赤ワインをオーギュスタンに飲ませる時にこっそり渡したんだろう。わざと大きな音を出してさ。俺もうっかり赤ワインの方に注目してしまった。まあ、憶測だけど。あいつはもう死んだから」
「けど、あの機械はモラヴィア王国から贈呈されたものですけど。ウロホリー王国からではないですよ」
「そうなんだよ、そこら辺も重臣たちと相談するつもりさ、今後、どうするか。けど、今日はもう寝るよ、疲れたから。じゃあ、お二人、遠慮なく楽しんでね。この地下の部屋ならどんな大声を出しても大丈夫だなって、俺っていやらしいなあ。いいのかよ、こんなスケベな奴が王様になって、あはは」
ヘラヘラしながら、部屋を出て行くポール様。
「あの……アラン様もお疲れですよね……」
「いや、あのシルバーモンドって金属は身体を麻痺させるけど、ほとんど後遺症とかはないんだよ、もう、全然、大丈夫だよ」
「そうですか……」
「君の方こそ、今夜はゆっくりと休んだ方がいいんじゃないのか」
私は顔を真っ赤にする。私の方から求めるなんて、はしたない女と思われてしまうかしら。けど、いいわ、どう思われても。もう、我慢できない、アラン様に抱いてほしい!
「いえ、全然、平気です。むしろ、いつもより元気になったみたいです……あの、抱いてください、お願いいたします、アラン様! もう、思いっ切り私を抱きしめてくださいませ!」
「もう、アランでいいよ、王様じゃないんだから」
「いえ、アラン様ってお呼びしたいです……」
その夜、私とアラン様は激しく抱き合った。
朝になるまで。
私はマクシミリアン様から借りた剣を放り捨てた。
そして、護身用の銀のナイフをオーギュスタン目がけて素早く投げた。
「ウグ!」
私の投げたナイフはオーギュスタンの胸に刺さった。
心臓を一突き。
そのまま、テーブルの中央で崩れ落ちるオーギュスタン。
どうやらオーギュスタンを倒せたらしい。私はホッとした。本来、アラン様暗殺のために訓練を重ねた心臓を狙ったナイフ投げ。まさか、アラン様を守るために使うことになるとは思わなかった。
私は水まき機械のところに走る。カミーユ様が倒れていた。機械をすぐに止める。霧が晴れてきた。しかし、何とか立ち上がろうとする吸血鬼もいれば、気絶したままの方もいる。吸い込んだ量の違いのようだ。
「カミーユ様、大丈夫ですか」
「あ……なんとか大丈夫……」
カミーユ様は大丈夫らしい。するとアラン様がうめいていらっしゃる。私はすぐにアラン様の方に戻った。
「大丈夫ですか、アラン様、元気を出してください」
「ああ、大丈夫だよ、すまん……」
私にささえられて、何とか立ち上がるアラン様。
他の吸血鬼の方々も少しずつ身体の麻痺が治っていくようだ。
アラン様が言った。
「……うーん、どうやら、あの変な機械のせいのようだな」
「はい、そう思います」
すると、吸血鬼の方々がカミーユ様の方を疑わしい顔で見る。
カミーユ様がびっくりした顔で、言い訳をしている。
「わ、私は何も知りません。ただ、機械を動かしただけです。そしたら、変な霧が出てきておかしくなったんです」
「本当か、お前がアラン様暗殺の手助けをしたんじゃないのか」
警備隊員の一人がカミーユ様を詰問している。
「本当です、私は何も知りません」
泣きだしそうなカミーユ様。
すると、フラフラしながらもポール様が立ち上がった。
警備隊員に向かって言った。
「カミーユは犯人じゃないよ」
「じゃあ、誰なんですか」
ポール様がいまだに気絶している執事のブレソール様を蹴とばした。
「痛い!」
「何、演技してんだよ、ブレソール。お前、人間だろ」
ポール様の発言にびっくりする私。
「お前の頭の中身が一瞬分かったんだよ、フランソワーズの部屋の鏡にお前が映っている時に。あの鏡は一瞬だけだが人間の考えが分かるんだよ。お前、人間の国のスパイだろ。それですぐに逮捕しようかと思ったんだが、兄貴と相談してもう少し泳がせてみようかって話になってな」
「そ、そんな、何かの間違いです、ポール様」
よろつきながら立ち上がる執事のブレソール。
「暑いからあの機械で霧を出しましょうってお前が言い出したんじゃないか。吸血鬼って言い張るならその犬歯をさわらせろよ、どうせ入れ歯だろ」
突然、よろついていたブレソールがすばやくテーブルの上にのぼった。
「死ね、アラン!」
ブレソールがテーブルの上で死んでいるオーギュスタンの胸から銀のナイフを抜くとアラン様目がけて投げる。
「この野郎!」
ポール様が焦ってブレソールを剣で斬り倒した。
しかし、ナイフがアラン様へ向かって飛んでくる。
「危ない!」
咄嗟に私は盾になろうとアラン様に抱き着いた。
衝撃が私の背中に走る。
ナイフが私の身体を突き抜けてアラン様の胸に刺さっている。
(……ああ、私は、大切な人、愛する人を守れなかった……)
私は崩れ落ちていく。
「おい、フランソワーズ、しっかりしろ! おい、フランソワーズ、死ぬな!」
「……アラン様、お怪我は……」
すると、アラン様は胸のポケットからタバコケースを取り出した。
ケースにナイフが突き刺さった跡がついている。
「フランソワーズ、君がくれたこのタバコケースで助かったんだよ」
「……よかった、アラン様……」
(……アラン様はご無事だったんだわ、嬉しい……)
私は横たわったまま、目を瞑る。
少しずつ意識が遠のいていく。
アラン様が大声で呼びかけているのが聞こえてきた。
「おい、フランソワーズ、死ぬな! 頼むから死なないでくれ!」
「……いえ、私はもう……だめみたいです……」
ナイフで身体を貫かれた。
激痛が私の身体を襲う。
助かるわけがない。
私の意識がますます薄れていく。
けど、私は満足しているわ。
一度は大切な人を見捨てた卑怯な女。
けど、今回は守り抜いた。
もう一度だけでもいいから、アラン様に抱かれたかったけど。
ああ、けど、死ぬ前に、アラン様のお顔を見たい。
アラン様の顔を見ながら死にたい。
私は目を少し開けた。
すると、アラン様が顔を近づけてきた。
私の首筋に歯をあてる。
「……あ、アラン様……それをしては……だめです……」
ものすごい快感が私の身体中に走った。
身体をナイフで貫かれた痛みなんか全く消えて行った。
そして、私は意識を失った。
……………………………………………………
気が付くと、私は地下の自室のベッドの上で横になっていた。
側にはアラン様がいる。
「大丈夫か、フランソワーズ、気分は」
「あ、はい、全然、大丈夫です」
確か、あのナイフは私の身体を貫いたはず。
しかし、その傷は全く治っていた。
「よかった……」
アラン様がきつく私を抱きしめてくれる。
嬉しい。
もう、嬉しくて、私もアラン様に抱き着く。
ただ、私は気になった。
「あの、もしかして、私を助けるために首を噛んだのでしょうか」
「もちろんだよ。この世に君がいなくなるなんて考えられないよ」
「けど、そんなことをしたら……」
「わかってる、覚悟の上だよ。僕は貴族から平民に落とされる」
それを聞いて、私は涙が出てきた。
「申し訳ありません、私のために」
「いいんだよ、それに君に前々から言いたいことがあったんだ」
「な、何でしょうか」
「フランソワーズ、僕は君が好きだ、大好きなんだ、初めて会った時から君に一目惚れしてしまって。その後もますます君にのめりこんでしまった、君の事を心底愛してしまったんだ、僕は君とずっと一緒にいたいんだ……突然だけど、フランソワーズ、結婚してくれないか」
「は、はい、もちろんです」
「けど、僕はもう王様でもなんでもなく、吸血鬼の最下層の者になったんだが……」
「かまいません、アラン様となら地の果てでもついていきます」
私とアラン様は激しくキスをした。そして、私は気が付いた。私の犬歯が尖っている。私は吸血鬼になったんだわ。けど、全然かまわない、アラン様と一緒にいられるなら。
私たちが激しく抱き合ってキスをしていると部屋の扉あたりで咳払いが聞こえた。
振り向くとポール様がいた。
「えーと、兄貴にフランソワーズ、お取込み中、悪いけどさあ。まあ、本当は見逃してやりたいんだけどなあ。でもなあ、こればっかりはちょっとなあ、まずいんだよなあ」
「わかってる、貴族から平民に降格処分の話だろ」
「うん、それでさあ、兄貴の後任だけど、吸血鬼国家連合評議会に報告して、とりあえず誰か優秀な人を摂政にしようかと重臣たちと相談するつもりなんだけど、いいかなあ」
「いや、ポール、国王の任務はお前がやれ」
「えー! 俺に王様なんて出来ないよ」
「いや、頼む。お前は信用できるからな」
ポール様が困った顔をしている。
「俺、王様が出席しなきゃいけない、いろんな儀式とかああいうのが大嫌いなんだけど」
「我慢してくれ。お前が一番信頼できる」
「けど、今回、俺、兄貴の防衛に失敗したけどなあ」
「いや、ブレソールをすぐに逮捕しろとお前は何度も僕に言ったじゃないか。それを断ってスパイとして泳がせようなんて言ったのは僕だ。ポールには責任はないよ、僕が傲慢だっただけだ。おまけにブレソールが人間だったことを、つい最近まで見抜けなかったなんて王様失格だよ」
そう言えば、私は気になっていたことをポール様に聞いた。
「あの霧のことなんですけど、以前に使用したときは何ともなかったですよね。何で今回は皆さん倒れてしまったんですか」
「どうも、以前、フランソワーズが運転した時なんだけど、あの時はただの水を入れていたようなんだ。それが終わった後に、シルバーモンド、例の銀に似た金属なんだけど、ブレソールの奴が入れておいたみたいだな。それから、暗殺者のオーギュスタンが兄貴に投げた銀のナイフだけどあれを盗んだのもブレソールだろうな。人間だから銀のナイフをさわっても大丈夫だし、多分、あの赤ワインをオーギュスタンに飲ませる時にこっそり渡したんだろう。わざと大きな音を出してさ。俺もうっかり赤ワインの方に注目してしまった。まあ、憶測だけど。あいつはもう死んだから」
「けど、あの機械はモラヴィア王国から贈呈されたものですけど。ウロホリー王国からではないですよ」
「そうなんだよ、そこら辺も重臣たちと相談するつもりさ、今後、どうするか。けど、今日はもう寝るよ、疲れたから。じゃあ、お二人、遠慮なく楽しんでね。この地下の部屋ならどんな大声を出しても大丈夫だなって、俺っていやらしいなあ。いいのかよ、こんなスケベな奴が王様になって、あはは」
ヘラヘラしながら、部屋を出て行くポール様。
「あの……アラン様もお疲れですよね……」
「いや、あのシルバーモンドって金属は身体を麻痺させるけど、ほとんど後遺症とかはないんだよ、もう、全然、大丈夫だよ」
「そうですか……」
「君の方こそ、今夜はゆっくりと休んだ方がいいんじゃないのか」
私は顔を真っ赤にする。私の方から求めるなんて、はしたない女と思われてしまうかしら。けど、いいわ、どう思われても。もう、我慢できない、アラン様に抱いてほしい!
「いえ、全然、平気です。むしろ、いつもより元気になったみたいです……あの、抱いてください、お願いいたします、アラン様! もう、思いっ切り私を抱きしめてくださいませ!」
「もう、アランでいいよ、王様じゃないんだから」
「いえ、アラン様ってお呼びしたいです……」
その夜、私とアラン様は激しく抱き合った。
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