ドラゴンキラーと呼ばれた女/プルムの恋と大冒険

守 秀斗

文字の大きさ
2 / 82

第2話:宿屋の部屋で吐いちゃった

しおりを挟む
 慌てて、あたしは宿屋へ全速力で帰る。
 息が切れるー! 
 体中、汗ダラダラ。

 宿屋の裏口について、壁をよじ登り、窓から二〇四号室に飛び込む。
 パーティのみんなが、階段を上ってくる足音が聞こえてきた。
 二〇四号室と二〇三号室の中扉の鍵を開けようとするが、焦ってうまくいかない。
 いちいち閉めなきゃ良かったあ!
 やばい!

 どうにか開けて二〇三号室に飛び込み、あたしが寝ているはずの二〇二号室への中扉を開けようとするが、また閉まってる。
 いちいち、きちんと中扉の鍵を閉めておく、あたしのバカ!

 みんなが二階の廊下に到着したみたい。
 何とか開けて、二〇二号室のベッドに汗びっしょりで布団に滑り込んだ。
 おっと、さっき市場でくすねたリンゴはベッドの上から、部屋の隅のカゴに投げ入れる。
 ナイスシュート!

 部屋の廊下側の扉が開く。
 あたしは寝たふり。
 アデリーナさんとサビーナちゃんが入ってきた。

 セーフ! のはずが、たらふく食った後に、お酒を飲んだ上、全速力で走ったおかげで気分が悪くなった。おまけに、あたしはお酒は好きだけど、実はあまり強くない。
 吐きそう!
 やばい!
 うーん、我慢、我慢。
 ああ、我慢できない。

「オエ!」

 あたしは起き上がり、床に思いっきり吐いちゃった。
 ああ、やばい、どうしよう。
 びっくりするアデリーナさんとサビーナちゃん。

「プルム、大丈夫」

 アデリーナさんが近づき、あたしの顔を見てびっくりする。

「汗びっしょりじゃないの」
「だ、大丈夫です」

 あたしは必死に誤魔化そうとする。

「もしかしてプルムさん、傷が化膿とかして、熱が出ているんではないでしょうか」

 サビーナちゃんが心配してくれた。
 優しいなあ、サビーナちゃん。

「シーツがすごく濡れてる」

 アデリーナさんがベッドをさわって言った。
 あっ、それはさっきベッドの上であぐらをかいて意地汚く食べてたら、うっかりコップの水をこぼして濡れてるだけですけどって、そんなこと説明できん。

「大変! 大変!」

 サビーナちゃんがあたふたしている。
 あたしの体の具合が悪くて発熱して、その汗で濡れてると誤解されちゃったみたい。
 アデリーナさんがあたしに言った。

「とにかく体を拭いて、あと着替えないと」
「あ、いや、本当に大丈夫ですから」
「だめ、言う事聞きなさい!」
「は、はい」

 真面目だなあ、アデリーナさん。

 強制的に服を脱がされる。
 女同士とは言え裸を見られるのは恥ずかしい。

「どうしたんだ!」

 リーダーとバルドが騒ぎを聞きつけ、扉を開け部屋の中に入ってきた。
 ひえ、男どもに裸を見られた!

「男の方たちは出ていきなさい!」

 アデリーナさんが怒鳴る。

「アワワ!」

 慌てて、部屋から出る男二人。
 ああ、もういいや、どうにでもしてくれ。
 寝たふりのつもりが、本当に寝てしまった。

 気がつくと、シーツの交換はサビーナちゃんがしてくれたようだ。
 あたしが汚した床の掃除もしている。

 ちょっと悪い気がしてきた。
 服はアデリーナさんがパジャマを貸してくれた。
 いい人たちね。

 そして、今は、部屋で一人、ベッドで安静にしている。
 安静にする必要ないけど。
 
 様子を見て起き上がり、部屋の隅にある洗面台で顔を洗う。
 ゲロ吐いたんで口の中が気持ち悪い。
 歯を磨いて、コップの水でゆすぐ。

 鏡で自分の顔をしばし見る。
 いつもの見慣れた童顔が映っている。

 目がデカいわりに鼻が小さいし、顔が丸いから幼く見えるんよ。
 おまけにチビだし。
 小学生に間違えられたこともある。
 もっと背が高くて、面長の美人顔に生まれたかった。

 やれやれ。

 髪形はショートボブ。
 髪の毛がまとめて何本か立って、先端がカールしている。
 気がつくと、いつも立ってるんよ。
 このアホ毛何とかならんかな。
 鏡を見ながら、アホ毛を直していると、パーティのみんなは隣のリーダーたちが泊っている部屋に集まっているようだ。

 すぐに戻ってきたのは、目的のモンスターが他のパーティに先を越されて退治されちゃったからみたい。
 えーと、どんなモンスターだったっけ。
 名前がやたら難しいモンスターだった。
 忘れちゃった。
 けど、退治されたから、もうどうでもいいか。

 みんなが何か話し合いを始めようとしている雰囲気。
 さっと壁に張り付くあたし。
 シーフ技の盗聴術! と言ってもコップを逆さまにして壁にあてるだけ。
 この宿屋、かなりの安普請だ。
 壁がスカスカ。

「えーと、プルムさんのことで相談したいのですが」

 サビーナちゃんが議題をあげる。

「パーティから外した方がいいと思います」

 ひえ、サビーナちゃん、大人しそうな顔して、いきなりあたしの首切り宣告かー!
 それに対して、文句を言うバルド。

「反対だ! ケガしたからといって、すぐにクビだなんて、かわいそうじゃないか」

 いい人だ! けど、自分が酷いケガをさせたのであたしの調子が悪いと思い込んでいるからかな。

「うーん」

 はっきりしないリーダー。
 優柔不断だなあ。

「私も反対です。プルムさん、もう少しすれば体調も良くなると思います。それまで私たちでカバーしましょう」

 アデリーナさんのご発言。
 意外にもお優しい。

「うーん、うーん」

 おい、はっきりせいリーダー。うーんしか言えないのか。

「私はプルムさんの体が心配なんですよ。もし無理してかえって悪くなったら」

 おっ、サビーナちゃん、あたしの体を心配してくれてるのか。
 悪い子ではなさそう。

「うーん、とりあえず様子をみよう」

 さすが優柔不断リーダー。
 問題を先延ばしにするだけね。
 まあ、結論から言うと真面目な人ばっかりね、このパーティ。

 さて、どうするか? よし、思いついたぞ。
 泣き落とし!
 パジャマ姿で部屋を出て、隣の部屋のドアを力弱く叩く。

「誰、開いてるよ」

 リーダーの声が聞こえてきた。
 あたしは、しおらしげに部屋の中に入った。

「……ご迷惑かけて本当に申し訳ありません」

 ウソ涙目で頭を下げる。

「ああ、いや、そんなに気にしないで」

 リーダーがちょっと慌てている。
 優しいなあリーダー。
 イケメンだし。

「迷惑かけるなら、パーティから外れます。私は必要ないでしょう。他の人を新たに募集したほうがいいと思います……」

 あたしはなるべく弱々しい声で言う。
 そんなあたしを見て、バルドが少し慌てている。

「ああ、そんなに思いつめないで」

 サビーナちゃんが心配そうな顔をしてる。

「プルムさん、体の方は大丈夫なんですか」
「うーん、まだ冒険に出られないけど……ああ、そうだ会計の仕事なら」
「ああ、それがいい、そうしよう」

 なぜか嬉しそうなバルド。

「代わってもらって、よろしいんですか」

 よろしいですよ、アデリーナさん。

「うーん、とりあえず、そうしてもらおうか」

 優柔不断リーダー、とりあえず結論を出す。
 優柔不断でも優しいところは好き。
 めでたく会計担当になりました。
 ところで会計ってどうやるの。

 適当でいっか!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました

東野あさひ
ファンタジー
無能の烙印、婚約破棄、そして辺境追放――。でもそれ、全部“勘違い”でした。 王国随一の名門貴族令嬢ノクティア・エルヴァーンは、魔力がないと断定され、婚約を破棄されて辺境へと追放された。 だが、誰も知らなかった――彼女が「古代魔術」の適性を持つ唯一の魔導士であることを。 行き着いた先は魔物の脅威に晒されるグランツ砦。 冷徹な司令官カイラスとの出会いをきっかけに、彼女の眠っていた力が次第に目を覚まし始める。 無能令嬢と嘲笑された少女が、辺境で覚醒し、最強へと駆け上がる――! 王都の者たちよ、見ていなさい。今度は私が、あなたたちを見下ろす番です。 これは、“追放令嬢”が辺境から世界を変える、痛快ざまぁ×覚醒ファンタジー。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

処理中です...