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第7話:国防軍精鋭部隊
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あたしは報告を終えた後、クラウディアさんから勧められた。
「宿屋に帰るのは危険なので、今夜はこの集会場にお泊りになったほうが良いと思いますが」
「はい、そうするつもりです」
あたしは一階の集会場へ降りる。
やれやれ、クラウディアさんからえらい事を聞いてしまった。
けど、まあ大丈夫ね。
集会場では、冒険者たちが雑魚寝してる。
真夜中、寝ている皆さんを起こさないよう、小さいランプしかついてない廊下をそろりそろりと歩いていると、廊下の端にリーダーやバルド、アデリーナさんがいた。
何か話し合っている。
リーダーがあたしに気づいた。
「お、プルム、戻ってきたのか」
なぜかドキドキする。
ん、あたしどうしたの?
この年で心臓障害?
「体の調子はどうなの」
アデリーナさんが気づかってくれる。
「はい、大丈夫です。ただ宿屋に一人で居ると寂しくて」
賊に襲われたことは、クラウディアさんから口止めされているので、みんなには言わなかった。
「ところで皆さん、どうしたんですか」
「アデリーナの布団にもぐり込もうとした奴がいて、トラブルになったんだよ」
トラブルの原因をバルドが教えてくれた。
「男の人っていやらしい!」
ご立腹のアデリーナさん。男嫌いで真面目なうえに潔癖症ですか。まあ、いきなり知らない男が布団にもぐり込んで来たら、潔癖症じゃなくても嫌だよね。
「一応、向こうは謝ったんで事なきを得たんだけど。プルムも注意してね。けど、どうしましょう、寝る場所がないけど」
「廊下でかまいません」
あたしはアデリーナさんに答えた。今まで、野宿もよくしたしね。廊下ならマシのほうなんよ。ところで、アデリーナさんもいいとこのお嬢さんらしいんよ。何で冒険者なんてヤクザな商売やってんのかな。
すると、髪の長い金髪のかわいい少女が廊下に出てきて、あたしに話かけてきた。
「プルムさん」
よく見るとポニテをおろしたサビーナちゃん。
「よろしければ、私と一緒のお布団で寝ませんか」
「ありがとう、助かります」
サビーナちゃんと一緒の布団で寝ながら、小声でおしゃべり。
「プルムさん、お体の方は大丈夫なんですか」
「うーん、えーと。そうね、だいぶ良くなってきたんじゃないかなあ」
あたしは、もう全然元気だけど、まだ病人のふりしていたほうがいいかなと思い、答えを濁す。うーむ、ますます悪い気がしてきた。
「サビーナちゃんこそ、大丈夫なの。体の方は」
「はい、全然、大丈夫です。治癒していただいた方には後でお礼を言いに行くつもりです。プルムさん、お名前はご存知ですか」
えーと、クラウディア……何だっけ、下の名前を忘れた。
あたしは頭が悪い。
仕方がない。
「クレリックのクラウディアさんよ」
「クラウディアさんですね。分かりました」
「それにしても、サビーナちゃんがここに運び込まれたときはびっくりしたわ。真っ黒焦げなんだもん。どうすればいいのかわからなくて、困ってたら、クラウディアさんがあっと言う間に治して、これまたびっくり」
「クラウディアさん凄い人ですね。おまけに凄い綺麗」
「そうそう、あんな綺麗な人、初めてみた。ただし、眉毛は書いてたけど」
「えっ、何で知ってるんですか」
「秘密」
「えー、教えてくださいよ」
「いやあ、見れば分かるわよ。お礼に行くとき、眉毛ペンシルでも持っていったらどう? ついでに書いてあげたら」
「そんなことしたら怒られちゃいますよ」
二人でクスクスと笑う。
「そういや冒険服はどうしたの」
「村の人が古いのを譲ってくれました。ただ、自分が着ていたのを捨てられちゃったのは残念です」
「え、何で? 黒焦げでもう着れなかったと思うけど」
「あの冒険服は母が縫ってくれたものなんです。大切なものなので、着れなくても残しておきたかったんです」
「そうなんだ。お母様は裁縫の仕事でもしてるの」
「はい、ただ、最近ちょっと体調が悪くて、家計を足しになるかと、この仕事をはじめたんです」
ああ、サビーナちゃん、健気だなあ。
涙が出そう。
「プルムさんのお母さんはどういう方なんですか」
「えーと、私が小さい頃、両親は病気で亡くなったんで、よく分からない」
「……ごめんなさい、こんな事聞いて……」
「ううん、別にいいよ。気にしないで」
本当は捨て子だったんで、もしかしたらあたしの父親も母親も健在かもしれない。
別に会いたくもない。
どこに居るかも分からないし。
ただ、もしも会ったら、その時は……。
「……プルムさん、怒ったんですか」
ぼんやりとしてたら、サビーナちゃんがちょっと不安な顔してる。
「全然怒ってないよ、眠くなっただけ。もう眠りましょ!」
「そうですね。おやすみなさい」
……………………………………………………
「プルム!」
そう呼ばれて抱きしめられた。
あたしもギュウと抱きしめる。
頭の中が真っ白。
ずうっと抱きしめられていたい。
「プルムさん、プルムさん」
「ん、あれ、ここは、どこ」
布団をギュウと抱きしめて寝ぼけてるあたし。
枕が足元にある。
いつの間にか体が逆向きで寝ていた。
「プルムさん、起きてください。もう朝ですよ」
サビーナちゃんに起こされる。
翌朝、気がつくと集会場で寝ていたのはあたし一人。
他の冒険者たちはとっくの昔に起きて、朝食をすませたようだ。
寝ぼけ眼で答える。
「あれ、もう朝」
「お寝坊さんですね」
サビーナちゃんもあきれ顔。
何か、変な夢を見たような気がする。
いや、気持ち良かった感じ。
内容、忘れちゃった。
外を見ると、王国の国防軍特別編成の精鋭部隊が到着していた。
テントや炊事場やらを設置している。
千人近くいるぞ。
「わあ、凄い! だけど、よくこんなに早く、こんな田舎に来れましたね。そう思いませんか、プルムさん」
サビーナちゃんが驚いている。
「うーん、緊急事態だからかなあ。すぐに電報も打っただろうし。相手はドラゴンだもん」
あたしは朝食のパンを食べながらモグモグしつつ、テキトーに答える。
あたしたち冒険者は予備隊みたいな感じになるみたい。
火縄銃を持ってる部隊もある。
火縄銃でドラゴンにかなうのかな。
「あれは、火縄銃じゃないよ。最新鋭の後込め銃だ」
バルドが説明してくれた。
長い銃身に、ベルトみたいなのが付いているデカい銃を三人がかりで担いでいる兵士たちもいる。
「あれは、機関銃だな。一分間に二百発ぐらい連射出来る。ベルトみたいのに弾が付いているだろ」
「へえ~」
バルドって、もしかして軍事マニアかな。
凄いバカでかい大砲をでかいけん引車で引っ張ってきた。すげーでかい。あれならドラゴンも倒せるかもしれん。けん引車の煙突みたいなところから白い煙が出てる。
「あれ、馬とか引っ張ってないのにけん引車が勝手に動いてる」
あたしが不思議がっていると、またバルドが説明してくれた。
「蒸気機関で動いているんだよ」
「何ですか、蒸気機関って」
「水を沸騰させて、その蒸気圧力でシリンダー内のピストンを動かして車を回すんだ。蒸気機関自体は大昔からあったけどな」
「ふーん」
さっぱり分からん。
「世の中どんどん発展して行きますねえ」
「発電所も作られたようだ」
「発電所って何?」
「電気を作るのさ」
「それでどうすんの」
「ランプの代わりに電灯をつけたりする」
「ふーん」
よく分からん。
「遠くの人と話せる機械も発明されたらしいぞ。首都に広まってるらしい」
「何それ、魔法みたいね」
「音声を電気信号に変換するんだ」
「ふーん」
やっぱり分からん。
「バルド、詳しいのね」
「大学で習った」
「えー大卒なの! まだ十七歳じゃなかったっけ」
「飛び級」
「へー! 頭良いんだ。何で冒険者なんてやってるの」
「俺、三男坊なんだ、兄貴二人が会社を継ぐから、俺はいらないのさ」
「会社って、どんな会社」
「ゴッジ・コーポレーション」
大企業じゃん。大金持ちじゃないか。よーし、バルドからうまく情報を聞きだして、実家に空き巣に入るか、ってそんなこと考えちゃいかん。
それにしても、ドラゴンを倒せるほどの武器があるなら、他のモンスターだって軍隊が退治出来るじゃん。冒険者稼業もそろそろ廃業か。
精鋭部隊の隊長はいかにも強そうな筋肉モリモリの巨体で赤ひげのおっさん。
アレサンドロ大将。
何となく偉そうな名前。怖い顔してる。いかにも悪役っぽい顔。
兵士を整列させて、閲兵してる。
「いいかあ! 相手がたとえドラゴンでも、このアレサンドロにかかれば、倒すのはトカゲをひねりつぶすほどたやすいことだ。お前たちは、安心して俺の采配に従え!」
鼓舞激励するアレサンドロ将軍。
「アレサンドロ将軍、万歳! 万歳!」
兵士たちが唱和している。
副隊長が三人もいる。
中肉中背のセルジオ大佐。陰険そうな顔してる。この人も、いかにも悪役っぽい顔。
え? 人を外見で判断するなって? すんまへん。
痩身のブルーノ中佐。普通の顔。
もう一人副隊長がなかなかのイケメン。ロミオ少佐。ちょっと小柄ね。いや、赤ひげのおっさんがデカすぎるのかも。
「ロミオ様ー!」
「素敵ー!」
集会所の窓から、キャーキャー騒いでるアデリーナさんとサビーナちゃん。
「サビーナちゃん、あのロミオって副隊長知ってるの」
「はい、大ファンです。かっこいいし、優しいし、まだ若いのに周りからも尊敬されてる方なんですよ。偶然、会ったとき、サインをもらったことがあるんです。丁寧に対応してくれて感激しました」
ふーん、有名みたいね。何だか今回、急遽、駆けつけてきたらしいけど。
よく見るとわずかに周りを落ち着かない感じで見まわしている。
シーフの勘よ。
手柄を取りたいのね。イケメン人気先行なんで、人気だけでなくかっこいい俺様の実力を発揮したい、そんな感じがする。
しらけるあたし。周りを意識してるし、かっこつけすぎよ。
あたしらのリーダーのほうがよっぽどイケメンだし、優しいし、穏やかだし、いつも自然体でかっこつけてないし……あれ?
精鋭部隊を見物しているリーダーの横顔をちらっと見る。
顔が赤くなる。え、何で?
もう一回見る。
顔が上気する。こ、これは、まさか! 恋!
何か引っかかっていたのはこのことだったのかあ!
ふと、リーダーと目が合う。
さっと目をそらしてしまった。
ああ、熱が出てきた。体も火照ってきた。やばい!
「プルムさん、まだ熱がありそうですね。やっぱり宿屋に帰って休んだほうが良いのではないでしょうか」
サビーナちゃんが心配してくれる。
「私たちはこの集会場で待機するからプルムは宿屋に戻って休憩しててもいいよ」
アデリーナさんに言われた。
分かりました、アデリーナさん。
それに、あたしも宿屋に用事があるんよね。
「宿屋に帰るのは危険なので、今夜はこの集会場にお泊りになったほうが良いと思いますが」
「はい、そうするつもりです」
あたしは一階の集会場へ降りる。
やれやれ、クラウディアさんからえらい事を聞いてしまった。
けど、まあ大丈夫ね。
集会場では、冒険者たちが雑魚寝してる。
真夜中、寝ている皆さんを起こさないよう、小さいランプしかついてない廊下をそろりそろりと歩いていると、廊下の端にリーダーやバルド、アデリーナさんがいた。
何か話し合っている。
リーダーがあたしに気づいた。
「お、プルム、戻ってきたのか」
なぜかドキドキする。
ん、あたしどうしたの?
この年で心臓障害?
「体の調子はどうなの」
アデリーナさんが気づかってくれる。
「はい、大丈夫です。ただ宿屋に一人で居ると寂しくて」
賊に襲われたことは、クラウディアさんから口止めされているので、みんなには言わなかった。
「ところで皆さん、どうしたんですか」
「アデリーナの布団にもぐり込もうとした奴がいて、トラブルになったんだよ」
トラブルの原因をバルドが教えてくれた。
「男の人っていやらしい!」
ご立腹のアデリーナさん。男嫌いで真面目なうえに潔癖症ですか。まあ、いきなり知らない男が布団にもぐり込んで来たら、潔癖症じゃなくても嫌だよね。
「一応、向こうは謝ったんで事なきを得たんだけど。プルムも注意してね。けど、どうしましょう、寝る場所がないけど」
「廊下でかまいません」
あたしはアデリーナさんに答えた。今まで、野宿もよくしたしね。廊下ならマシのほうなんよ。ところで、アデリーナさんもいいとこのお嬢さんらしいんよ。何で冒険者なんてヤクザな商売やってんのかな。
すると、髪の長い金髪のかわいい少女が廊下に出てきて、あたしに話かけてきた。
「プルムさん」
よく見るとポニテをおろしたサビーナちゃん。
「よろしければ、私と一緒のお布団で寝ませんか」
「ありがとう、助かります」
サビーナちゃんと一緒の布団で寝ながら、小声でおしゃべり。
「プルムさん、お体の方は大丈夫なんですか」
「うーん、えーと。そうね、だいぶ良くなってきたんじゃないかなあ」
あたしは、もう全然元気だけど、まだ病人のふりしていたほうがいいかなと思い、答えを濁す。うーむ、ますます悪い気がしてきた。
「サビーナちゃんこそ、大丈夫なの。体の方は」
「はい、全然、大丈夫です。治癒していただいた方には後でお礼を言いに行くつもりです。プルムさん、お名前はご存知ですか」
えーと、クラウディア……何だっけ、下の名前を忘れた。
あたしは頭が悪い。
仕方がない。
「クレリックのクラウディアさんよ」
「クラウディアさんですね。分かりました」
「それにしても、サビーナちゃんがここに運び込まれたときはびっくりしたわ。真っ黒焦げなんだもん。どうすればいいのかわからなくて、困ってたら、クラウディアさんがあっと言う間に治して、これまたびっくり」
「クラウディアさん凄い人ですね。おまけに凄い綺麗」
「そうそう、あんな綺麗な人、初めてみた。ただし、眉毛は書いてたけど」
「えっ、何で知ってるんですか」
「秘密」
「えー、教えてくださいよ」
「いやあ、見れば分かるわよ。お礼に行くとき、眉毛ペンシルでも持っていったらどう? ついでに書いてあげたら」
「そんなことしたら怒られちゃいますよ」
二人でクスクスと笑う。
「そういや冒険服はどうしたの」
「村の人が古いのを譲ってくれました。ただ、自分が着ていたのを捨てられちゃったのは残念です」
「え、何で? 黒焦げでもう着れなかったと思うけど」
「あの冒険服は母が縫ってくれたものなんです。大切なものなので、着れなくても残しておきたかったんです」
「そうなんだ。お母様は裁縫の仕事でもしてるの」
「はい、ただ、最近ちょっと体調が悪くて、家計を足しになるかと、この仕事をはじめたんです」
ああ、サビーナちゃん、健気だなあ。
涙が出そう。
「プルムさんのお母さんはどういう方なんですか」
「えーと、私が小さい頃、両親は病気で亡くなったんで、よく分からない」
「……ごめんなさい、こんな事聞いて……」
「ううん、別にいいよ。気にしないで」
本当は捨て子だったんで、もしかしたらあたしの父親も母親も健在かもしれない。
別に会いたくもない。
どこに居るかも分からないし。
ただ、もしも会ったら、その時は……。
「……プルムさん、怒ったんですか」
ぼんやりとしてたら、サビーナちゃんがちょっと不安な顔してる。
「全然怒ってないよ、眠くなっただけ。もう眠りましょ!」
「そうですね。おやすみなさい」
……………………………………………………
「プルム!」
そう呼ばれて抱きしめられた。
あたしもギュウと抱きしめる。
頭の中が真っ白。
ずうっと抱きしめられていたい。
「プルムさん、プルムさん」
「ん、あれ、ここは、どこ」
布団をギュウと抱きしめて寝ぼけてるあたし。
枕が足元にある。
いつの間にか体が逆向きで寝ていた。
「プルムさん、起きてください。もう朝ですよ」
サビーナちゃんに起こされる。
翌朝、気がつくと集会場で寝ていたのはあたし一人。
他の冒険者たちはとっくの昔に起きて、朝食をすませたようだ。
寝ぼけ眼で答える。
「あれ、もう朝」
「お寝坊さんですね」
サビーナちゃんもあきれ顔。
何か、変な夢を見たような気がする。
いや、気持ち良かった感じ。
内容、忘れちゃった。
外を見ると、王国の国防軍特別編成の精鋭部隊が到着していた。
テントや炊事場やらを設置している。
千人近くいるぞ。
「わあ、凄い! だけど、よくこんなに早く、こんな田舎に来れましたね。そう思いませんか、プルムさん」
サビーナちゃんが驚いている。
「うーん、緊急事態だからかなあ。すぐに電報も打っただろうし。相手はドラゴンだもん」
あたしは朝食のパンを食べながらモグモグしつつ、テキトーに答える。
あたしたち冒険者は予備隊みたいな感じになるみたい。
火縄銃を持ってる部隊もある。
火縄銃でドラゴンにかなうのかな。
「あれは、火縄銃じゃないよ。最新鋭の後込め銃だ」
バルドが説明してくれた。
長い銃身に、ベルトみたいなのが付いているデカい銃を三人がかりで担いでいる兵士たちもいる。
「あれは、機関銃だな。一分間に二百発ぐらい連射出来る。ベルトみたいのに弾が付いているだろ」
「へえ~」
バルドって、もしかして軍事マニアかな。
凄いバカでかい大砲をでかいけん引車で引っ張ってきた。すげーでかい。あれならドラゴンも倒せるかもしれん。けん引車の煙突みたいなところから白い煙が出てる。
「あれ、馬とか引っ張ってないのにけん引車が勝手に動いてる」
あたしが不思議がっていると、またバルドが説明してくれた。
「蒸気機関で動いているんだよ」
「何ですか、蒸気機関って」
「水を沸騰させて、その蒸気圧力でシリンダー内のピストンを動かして車を回すんだ。蒸気機関自体は大昔からあったけどな」
「ふーん」
さっぱり分からん。
「世の中どんどん発展して行きますねえ」
「発電所も作られたようだ」
「発電所って何?」
「電気を作るのさ」
「それでどうすんの」
「ランプの代わりに電灯をつけたりする」
「ふーん」
よく分からん。
「遠くの人と話せる機械も発明されたらしいぞ。首都に広まってるらしい」
「何それ、魔法みたいね」
「音声を電気信号に変換するんだ」
「ふーん」
やっぱり分からん。
「バルド、詳しいのね」
「大学で習った」
「えー大卒なの! まだ十七歳じゃなかったっけ」
「飛び級」
「へー! 頭良いんだ。何で冒険者なんてやってるの」
「俺、三男坊なんだ、兄貴二人が会社を継ぐから、俺はいらないのさ」
「会社って、どんな会社」
「ゴッジ・コーポレーション」
大企業じゃん。大金持ちじゃないか。よーし、バルドからうまく情報を聞きだして、実家に空き巣に入るか、ってそんなこと考えちゃいかん。
それにしても、ドラゴンを倒せるほどの武器があるなら、他のモンスターだって軍隊が退治出来るじゃん。冒険者稼業もそろそろ廃業か。
精鋭部隊の隊長はいかにも強そうな筋肉モリモリの巨体で赤ひげのおっさん。
アレサンドロ大将。
何となく偉そうな名前。怖い顔してる。いかにも悪役っぽい顔。
兵士を整列させて、閲兵してる。
「いいかあ! 相手がたとえドラゴンでも、このアレサンドロにかかれば、倒すのはトカゲをひねりつぶすほどたやすいことだ。お前たちは、安心して俺の采配に従え!」
鼓舞激励するアレサンドロ将軍。
「アレサンドロ将軍、万歳! 万歳!」
兵士たちが唱和している。
副隊長が三人もいる。
中肉中背のセルジオ大佐。陰険そうな顔してる。この人も、いかにも悪役っぽい顔。
え? 人を外見で判断するなって? すんまへん。
痩身のブルーノ中佐。普通の顔。
もう一人副隊長がなかなかのイケメン。ロミオ少佐。ちょっと小柄ね。いや、赤ひげのおっさんがデカすぎるのかも。
「ロミオ様ー!」
「素敵ー!」
集会所の窓から、キャーキャー騒いでるアデリーナさんとサビーナちゃん。
「サビーナちゃん、あのロミオって副隊長知ってるの」
「はい、大ファンです。かっこいいし、優しいし、まだ若いのに周りからも尊敬されてる方なんですよ。偶然、会ったとき、サインをもらったことがあるんです。丁寧に対応してくれて感激しました」
ふーん、有名みたいね。何だか今回、急遽、駆けつけてきたらしいけど。
よく見るとわずかに周りを落ち着かない感じで見まわしている。
シーフの勘よ。
手柄を取りたいのね。イケメン人気先行なんで、人気だけでなくかっこいい俺様の実力を発揮したい、そんな感じがする。
しらけるあたし。周りを意識してるし、かっこつけすぎよ。
あたしらのリーダーのほうがよっぽどイケメンだし、優しいし、穏やかだし、いつも自然体でかっこつけてないし……あれ?
精鋭部隊を見物しているリーダーの横顔をちらっと見る。
顔が赤くなる。え、何で?
もう一回見る。
顔が上気する。こ、これは、まさか! 恋!
何か引っかかっていたのはこのことだったのかあ!
ふと、リーダーと目が合う。
さっと目をそらしてしまった。
ああ、熱が出てきた。体も火照ってきた。やばい!
「プルムさん、まだ熱がありそうですね。やっぱり宿屋に帰って休んだほうが良いのではないでしょうか」
サビーナちゃんが心配してくれる。
「私たちはこの集会場で待機するからプルムは宿屋に戻って休憩しててもいいよ」
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