6 / 82
第6話:クラウディア情報省参事官
しおりを挟む
あたしは夕闇迫る頃に宿屋に戻った。
「ふう、疲れた」
部屋に入って、あたしはベッドにダイブ!
空中でくるっと横半回転。
あお向けで大の字に寝る。
ドラゴンなんて相手にしてたら命がいくつあっても足りん。
バックレるか。
え? さっき『ドラゴン許せん! 絶対ぶっ殺す!』とか言ってただろって?
もう仲間のケガは治ったからドラゴンはもういいや、許してやる。
ありがたく思え、ドラゴン。
つーかねー! ドラゴンに勝てるわけないでしょ! あんたらがやってよ!
とは言うものの、トンズラする前に冒険者ギルドの組合費分だけはパーティの仲間に返さないといけないなあ。
だけど、いまオケラ状態、スッカラカン。
「それに、うーん、何かひっかかる。何だろう? 何か大切なことを」
本当に忘れっぽいあたし。
お腹が減った。
昨日、果物屋からくすねたリンゴを思い出した。
部屋の隅の籠から出して食べる。
ベッドの上でリンゴをかじっていると、あれ、何かいい香りがしてきた。
廊下を歩く音がする。
扉の隙間からなぜか眩い光が差してきたぞ。
ノックの音がした。
「開いてるよ~」
あたしはベッドの上で行儀悪くあぐらをかいて、リンゴをかじり、口をモグモグしながら返事をする。
そして、扉が開くと、そこには美しすぎる美人クレリックの完璧美人さんが立っていた。
「あわわ、何でしょう」
あたしは思わずベッドの上で正座。
そうさせる威厳がある完璧美人さんです。
おまけに、完璧美人さんの背後には、屈強で目つきの鋭い情報省員らしき男が二人立っている。
ちと怖い。
「お食事中、突然、失礼します。お邪魔だったかしら」
「いえいえ、私に何かご用でございますでしょうか」
あたしはひたすらへいこらする。
「まだ自己紹介が済んでいませんでしたね。私は王国情報省参事官のクラウディア・デ・ラウレンティスと申します」
クラウディアさんニッコリ笑いつつも、何やら厳しい雰囲気を醸し出す。
あたしはちょっとビビる。
あと、参事官って何ぞや? さっぱりわからん。
よくわからんが偉い人なんだろうな。
「えー、私は冒険者で、えーと剣士をやってる、プルム・ピコロッティです」
泥棒で、万引き常習犯とはとても言えん。
すると、唐突にクラウディアさんからいきなり質問される。
「あなた、何か隠していませんか」
え! まさか、博打で仲間の金をスッカラカンして、盗賊に罪をなすりつけた件がばれたのか?
やばい! 逮捕されるの? 強制収容所とかに送られんの?
怖いよー!
「ひえー、クラウディア様、申し訳ありません。私、ギャンブル依存症なんです。これは病気なんです。私が悪いんじゃないんです! 病気が悪いんです! 何とぞお許し願いますう」
あたしはベッドの上で手をついて、頭を下げる。土下座状態。
すると、あんた何言ってんのって顔をするクラウディアさん。
「えーと、ポケットに入れている物を見せてほしいんですが」
「へ?」
あ、盗賊が落としたペンダントのことか?
何で分かるの? 透視術とか? そういう魔法があんの?
男のクレリックがそんな術持ってたら嫌よね。
ペンダントを差し出すと、クラウディアさん凄い厳しい表情を浮かべる。
ますますビビるあたし。
「あ、あの、これ、例の盗賊が逃げるとき、街道に落としていったものを私が拾ったんです」
あたしが事情を説明すると、また優しげな顔に戻るクラウディアさん。
「これ、私が預かってよろしいでしょうか」
何だろう? クラウディアさん、ペンダントコレクターなのか?
まあどうでもいいや。
長い物には巻かれろで行くぞ。
「あ、はい、よろしいです。じゃなくて、かまいませんです。いっそ差し上げますでございます、クラウディア様」
ペコペコしまくるあたし。
「ありがとうございます」
美しい顔でニコニコするクラウディアさん。
笑顔もとっても素敵。
「どうぞ、どうぞ」
あたしはますますへいこらする。
「あと、不用心ですわ。盗賊も出たことですし、部屋の鍵をかけたほうが良いですわよ」
「はい、仰せの通りにいたします」
「では、あなたもお気を付けて。おやすみなさい」
ベッドの上で、平伏するあたしに優しく声をかけつつ、情報省員を引き連れて、クラウディアさんは優雅に去っていった。
「あー、びびった」
情報省だから、何か怖いんよ、あの人。
政府の役人という先入観があるからかな。
あたしは一介の泥棒だしね。
さて、あたしもうら若き十六歳の夢見る乙女だし、部屋に鍵かけよっと。
引っかかっていたのは、あのペンダントのことか。
あれ、まだ忘れているような。
いいや、もう寝る。
……………………………………………………
真夜中、宿屋の二階の廊下を歩く音がかすかに聞こえる。
あたしが寝ている部屋の前で止まった。
どうやら不審者が来たようだ。
鍵を開けて、月明りの薄暗い部屋の中に入ってきた。
そっとベッドに近づくと、膨らんでるベッドカバーにいきなり剣を突き立てる。
「あたしに何か用?」
部屋の隅に立って、腕を組んでニヤリと笑う。
よくある展開だけど、ちょっとかっこいいあたし。
シュッ!
いきなり剣をあたしに向けてくる、全身黒装束で顔も覆面で隠した不審者。
殺す気満々じゃん。
「おっと!」
ギリギリでよけて、あたしは不審者の右腕にナイフでぐっさりと傷をつけた。
「ウグ!」
不審者がうめく。
かなりの深手ね。
フフン、狭い部屋ならシーフが有利よ。
と思ったんだけど。
矢継ぎ早に剣を繰り出してくる不審者。
あたしは防戦一方。
「クッ!」
手ごわいぞ、こいつ。
ちょっとなめたか。
とにかく逃げる!
あたしは、部屋の窓をぶち破って、下の街道に飛び降りた。
月明りの中、集会場に向かって、真夜中の街道を走る。
多分、追っては来ないだろうけど、念のため、今夜は宿屋には戻らないで集会場で寝ることにした。
あと、クレリックで情報省の参事なんとかのクラウディアさんに報告しとくかな。
「ふう、疲れた」
部屋に入って、あたしはベッドにダイブ!
空中でくるっと横半回転。
あお向けで大の字に寝る。
ドラゴンなんて相手にしてたら命がいくつあっても足りん。
バックレるか。
え? さっき『ドラゴン許せん! 絶対ぶっ殺す!』とか言ってただろって?
もう仲間のケガは治ったからドラゴンはもういいや、許してやる。
ありがたく思え、ドラゴン。
つーかねー! ドラゴンに勝てるわけないでしょ! あんたらがやってよ!
とは言うものの、トンズラする前に冒険者ギルドの組合費分だけはパーティの仲間に返さないといけないなあ。
だけど、いまオケラ状態、スッカラカン。
「それに、うーん、何かひっかかる。何だろう? 何か大切なことを」
本当に忘れっぽいあたし。
お腹が減った。
昨日、果物屋からくすねたリンゴを思い出した。
部屋の隅の籠から出して食べる。
ベッドの上でリンゴをかじっていると、あれ、何かいい香りがしてきた。
廊下を歩く音がする。
扉の隙間からなぜか眩い光が差してきたぞ。
ノックの音がした。
「開いてるよ~」
あたしはベッドの上で行儀悪くあぐらをかいて、リンゴをかじり、口をモグモグしながら返事をする。
そして、扉が開くと、そこには美しすぎる美人クレリックの完璧美人さんが立っていた。
「あわわ、何でしょう」
あたしは思わずベッドの上で正座。
そうさせる威厳がある完璧美人さんです。
おまけに、完璧美人さんの背後には、屈強で目つきの鋭い情報省員らしき男が二人立っている。
ちと怖い。
「お食事中、突然、失礼します。お邪魔だったかしら」
「いえいえ、私に何かご用でございますでしょうか」
あたしはひたすらへいこらする。
「まだ自己紹介が済んでいませんでしたね。私は王国情報省参事官のクラウディア・デ・ラウレンティスと申します」
クラウディアさんニッコリ笑いつつも、何やら厳しい雰囲気を醸し出す。
あたしはちょっとビビる。
あと、参事官って何ぞや? さっぱりわからん。
よくわからんが偉い人なんだろうな。
「えー、私は冒険者で、えーと剣士をやってる、プルム・ピコロッティです」
泥棒で、万引き常習犯とはとても言えん。
すると、唐突にクラウディアさんからいきなり質問される。
「あなた、何か隠していませんか」
え! まさか、博打で仲間の金をスッカラカンして、盗賊に罪をなすりつけた件がばれたのか?
やばい! 逮捕されるの? 強制収容所とかに送られんの?
怖いよー!
「ひえー、クラウディア様、申し訳ありません。私、ギャンブル依存症なんです。これは病気なんです。私が悪いんじゃないんです! 病気が悪いんです! 何とぞお許し願いますう」
あたしはベッドの上で手をついて、頭を下げる。土下座状態。
すると、あんた何言ってんのって顔をするクラウディアさん。
「えーと、ポケットに入れている物を見せてほしいんですが」
「へ?」
あ、盗賊が落としたペンダントのことか?
何で分かるの? 透視術とか? そういう魔法があんの?
男のクレリックがそんな術持ってたら嫌よね。
ペンダントを差し出すと、クラウディアさん凄い厳しい表情を浮かべる。
ますますビビるあたし。
「あ、あの、これ、例の盗賊が逃げるとき、街道に落としていったものを私が拾ったんです」
あたしが事情を説明すると、また優しげな顔に戻るクラウディアさん。
「これ、私が預かってよろしいでしょうか」
何だろう? クラウディアさん、ペンダントコレクターなのか?
まあどうでもいいや。
長い物には巻かれろで行くぞ。
「あ、はい、よろしいです。じゃなくて、かまいませんです。いっそ差し上げますでございます、クラウディア様」
ペコペコしまくるあたし。
「ありがとうございます」
美しい顔でニコニコするクラウディアさん。
笑顔もとっても素敵。
「どうぞ、どうぞ」
あたしはますますへいこらする。
「あと、不用心ですわ。盗賊も出たことですし、部屋の鍵をかけたほうが良いですわよ」
「はい、仰せの通りにいたします」
「では、あなたもお気を付けて。おやすみなさい」
ベッドの上で、平伏するあたしに優しく声をかけつつ、情報省員を引き連れて、クラウディアさんは優雅に去っていった。
「あー、びびった」
情報省だから、何か怖いんよ、あの人。
政府の役人という先入観があるからかな。
あたしは一介の泥棒だしね。
さて、あたしもうら若き十六歳の夢見る乙女だし、部屋に鍵かけよっと。
引っかかっていたのは、あのペンダントのことか。
あれ、まだ忘れているような。
いいや、もう寝る。
……………………………………………………
真夜中、宿屋の二階の廊下を歩く音がかすかに聞こえる。
あたしが寝ている部屋の前で止まった。
どうやら不審者が来たようだ。
鍵を開けて、月明りの薄暗い部屋の中に入ってきた。
そっとベッドに近づくと、膨らんでるベッドカバーにいきなり剣を突き立てる。
「あたしに何か用?」
部屋の隅に立って、腕を組んでニヤリと笑う。
よくある展開だけど、ちょっとかっこいいあたし。
シュッ!
いきなり剣をあたしに向けてくる、全身黒装束で顔も覆面で隠した不審者。
殺す気満々じゃん。
「おっと!」
ギリギリでよけて、あたしは不審者の右腕にナイフでぐっさりと傷をつけた。
「ウグ!」
不審者がうめく。
かなりの深手ね。
フフン、狭い部屋ならシーフが有利よ。
と思ったんだけど。
矢継ぎ早に剣を繰り出してくる不審者。
あたしは防戦一方。
「クッ!」
手ごわいぞ、こいつ。
ちょっとなめたか。
とにかく逃げる!
あたしは、部屋の窓をぶち破って、下の街道に飛び降りた。
月明りの中、集会場に向かって、真夜中の街道を走る。
多分、追っては来ないだろうけど、念のため、今夜は宿屋には戻らないで集会場で寝ることにした。
あと、クレリックで情報省の参事なんとかのクラウディアさんに報告しとくかな。
0
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
下宿屋 東風荘 7
浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..☆
四つの巻物と本の解読で段々と力を身につけだした雪翔。
狐の国で保護されながら、五つ目の巻物を持つ九堂の居所をつかみ、自身を鍵とする場所に辿り着けるのか!
四社の狐に天狐が大集結。
第七弾始動!
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..☆
表紙の無断使用は固くお断りさせて頂いております。
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる