ドラゴンキラーと呼ばれた女/プルムの恋と大冒険

守 秀斗

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第18話:アデリーナが殴られる

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 そろそろ寒くなってきたなあという日、巡回中のアデリーナさんがなかなか帰って来ない。

 市民から通報があった。
 警備隊員の女性が倒れてるとのこと。
 あたしらの部隊の管轄区域だ。

 デルフィーノさん以下、全員で現場に駆けつける。
 情報省の建物近くで、アデリーナさんが倒れてた。

「アデリーナ! 大丈夫か!」

 リーダーが焦って、アデリーナさんを起こす。
 幸い、意識はあるみたい。
 情報省付近の小道で不審な人物を見たので、職務質問をしたら、いきなり頭を殴られたそうだ。

 お前が殴ったんだろって? そんなことするわけないでしょ!

「攻撃魔法を使えばいいのに」

 あたしがアデリーナさんに聞く。

「警備隊員は魔法が禁止されてるから使えなかった……」

 真面目だなあ、アデリーナさん。

 あたしなんか巡回してても、職務質問なんかしないけどね。
 面倒だし、そもそも、あたしが泥棒なんだから、まっ先に自分で自分を職務質問しなきゃいけないことになるんよ。

 おい! お前は何のために巡回してるんだって? 散歩よ、散歩。働いたら負け!
 え? この税金泥棒って? もともと泥棒ですので。
 けど、すんまへん。

 リーダーがアデリーナさんを抱き上げて、病院に連れて行った。
 あっ、お姫様だっこだ。

 いーなあ、いーなあ、アデリーナ。
 今度、あたしもケガしたふりでもしようかな。

 とりあえず、残ったメンバーで付近の周辺への聞き込み。
 あたしとデルフィーノさん、バルドとサビーナちゃんとで二組に分かれる。

 デルフィーノさんと一緒で、あたしは、ウキウキ! おっと、ダメダメ。
 アデリーナさんをぶん殴った奴を逮捕しなきゃ。

 目撃者を探し出して話を聞くと、黒装束の人物が走って逃げていくのを見たそうだ。
 黒装束! まさか、ドラゴン秘儀団か。
 シアエガ湖で全滅したんじゃないのか。

 それとも、ドラゴン秘儀団のコスプレをした奴か、ってドラゴン秘儀団のことは秘密にしてるんだから、それは無いだろうね。

 あたしは目撃者に質問した。

「その不審者、ドラゴンがデザインされているペンダントをしてませんでしたか」
「さあ、気づきませんでしたねえ」

 うーむ、今回もドラゴンペンダントを落としてくれれば、分かりやすかったんだけど、そういつも落としたりはしないか。しかし、情報省付近というのがひっかかるんよね。
 結局、黒装束以外には収獲無しで、警備隊庁舎に戻る。

 リーダーが先に帰っていた。
 サビーナちゃんが心配そうにリーダーに聞いている。

「アデリーナさんの具合はどうなんですか」
「大丈夫だけど、しばらく休んだほうがいいと医者には言われたんだ。だけど、本人はすぐ復帰したいと言うんだよ」

 それを聞いたデルフィーノさんがリーダーにアドバイスしてる。

「いや、休んだほうがいいよ。こういう時はゆっくり休んだほうがいい」
 
 優しいなあ、デルフィーノさん。
 ますます、好感度アップかける三乗。

「ところで、プルムさん」

 デルフィーノさんから声をかけられた

「はい、何でしょうか! 分隊長殿」

 デルフィーノさんに声をかけられるだけで嬉しくなる。

「さっき、目撃者の方にペンダントの事を聞いてたけど、何か思い当たる事があるんですか」

 やばい! ドラゴン秘儀団の件は情報省以外は極秘だったんだ。
 どうしよう。

「えーと、単純にペンダントが好きなんで聞いただけです」

 メチャクチャな答え方をしてしまった。

「そうですか」

 デルフィーノさんあんまり気にしてない、と思ったら、セルジョ小隊長ところへ行く。
 まずいなあ、ペンダントの事、報告すんのかな。

「セルジョ小隊長殿、提案があるのですが」
「何だね、デルフィーノ君」

「巡回は、現在一人で行っていますが、今回のアデリーナ隊員の件を鑑みると、当分の間、二人体制の方がよろしいのでは」
「なるほど、そう言えば、その方がいいかもしれん。ちょっと、大隊長に言ってくる」

 セルジョ小隊長が大隊長室に向かった。

 え? 二人体制? 
 じゃあ! デルフィーノさんと一緒に巡回することもあるんだ。
 やったあ! 巡回デート! 巡回デート!

 お前、ふざけてんのか! いい加減にしろ! 仕事しろって? いいじゃん、それぐらい許してよ!

 あたしは、翌日、サビーナちゃんとアデリーナさんのお見舞いに行った。
 官庁街の近くにあるラブクラフト病院。

 頭に包帯巻いてるアデリーナさんにリーダーが付き添ってる。
 いーなあ、いーなあ、アデリーナ。

 サビーナちゃんがアデリーナさんに聞いている。

「おケガの方は大丈夫ですか、アデリーナさん」
「全然、大丈夫、早く仕事に復帰したい」

 えらいなあ、あたしなら出来る限り引き延ばして、ずうっと休んでるぞ。
 あたしもアデリーナさんに聞いた。

「犯人、どんな奴だったんですか」
「うーん、黒装束ぐらいしか分からない。情報省の建物を見ながら行ったり来たりしてたんで、変だなと思って……」

 そう言いながら、アデリーナさんが急に口をおさえる。
 気分が悪そう。

「どうした」
 
 リーダーが心配そう。
 アデリーナさん、頭殴られてるし。やばくないか。心配になる。

「大丈夫……」

 でも、リーダーの胸にもたれかかるアデリーナさん。
 びっくりして、オタオタするあたし。

 アデリーナさん、失神してる。
 全然、大丈夫じゃないぞ!

「おい、アデリーナ、しっかりしろ」

 リーダーがアデリーナさんに呼びかける。

「お医者さん、呼んできます」

 サビーナちゃんが慌てて病室を飛び出した。

 あたしらは、医者が診察している間、廊下で待つ。

「大丈夫かなあ」

 廊下をウロウロしているリーダー。
 医者が出てきた。

「おめでとうございます」

 は?

「おめでたです」

 リーダーが病室に飛び込んだ。

……………………………………………………

 あたしはリーダーに「おめでとうございます」と言った。

 けど、ショック!
 何でショックなんだよって? うーん、とにかく、つらいんよ。うまく説明できん。
 結婚して、一緒に住んで、一年間。妊娠しても、全然おかしくないだろって? そうなんよ、そうなんよ。だけど、何かモヤモヤすんのよ。

 そのまま、今日はうちらの部隊は夜勤。
 アデリーナさんはお休み。
 夜勤と言っても、警備隊の部隊室で座ってるだけ。

 夜の巡回は自警団がやっている。
 交替で休憩時間があるけど、あたしの場合は常に休憩しているようなもんね。

 通報があったら駆けつけることになっているけど、ほとんど通報はない。
 本当は、昼間に眠ってなきゃいけないんだけど、アデリーナさんの件で、起きたまんまで出勤。普段なら爆睡しちゃうけど、眠れん。

 リーダー嬉しそうにしてた。
 ああ、ショック。

 何で、ショックを受けるんだって? うーん、自分でも分からない。
 お前が一方的に片思いしてただけだろって? 片思いでも切ない気分になるんよ。現実を突きつけられたんよ。

 いーなあ、いーなあ、アデリーナ。
 あたしがつわりで苦しむことは、果たしてこれからあるのだろうか。

 やれやれ。

 まあ、ともかくアデリーナさん、本当におめでとう。
 あたしは前向きになるぞ。

 よし、今度は、恋文作戦だ!
 デルフィーノ分隊長にラブレターを書こっと。

 けど、ラブレターってどう書くの?
 だいたい、手紙って書いたことない。
 どう書きだすの? 
 分からん。

 ちょっと、警備隊の書類を見てみる。

『拝啓時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます』

 違う。

『お世話になっております』

 違うって。

『事務連絡』

 違うだろー!

 いいや。
 もう、いきなり、

『分隊長、好きです! プルム』でいいか。

 だめ、短すぎ! おまけに鉛筆書きだと、まるで幼稚園児みたい。

 やっぱり、『はじめまして』かな。
 違うー! 毎日会ってるじゃん。

『お仕事、お疲れ様です』

 うーん、何だか疲れてきた。

 最初の書きだしから悩むあたしは、やはり頭が悪い。
 鉛筆じゃあ、かっこ悪いな。
 そうそう下賜品の万年筆とやらを思い出す。

 さすが高級品。きれいだ。鉛筆書きよりマシかな。
 ん、このペン本体にちょっとキズがついてるな。

 まあ、いっか!

 って、内容考えなきゃ。
 デルフィーノさんに勤務中、ラブレターを渡したら、怒られるかな。
 優しいから怒らないだろう、と思う。

 朝になって、夜勤が終わって、サビーナちゃんと一緒に寮に帰る。
 パジャマに着替えて、ベッドヘタイブ! 妄想デート! 相手はもちろんデルフィーノさん。
 そうやって、寝るときはいつも妄想してんのかって? そうよ、何が悪い!
 え? キモイ? うるさいわい!
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