ドラゴンキラーと呼ばれた女/プルムの恋と大冒険

守 秀斗

文字の大きさ
40 / 82

第40話:いろいろと落ち着かないあたし

しおりを挟む
 次の日、またジェラルドさんが職場の部屋にやって来た。

「プルム小隊長」
「はい」

 呼びかけられて、緊張するあたし。

「ちょっと会議室で相談したいことがあるんですが」

 ドキドキする。
 いや、単なる勘違いかも。

 ジュスタおばさんは、ジェラルドさんがあたしを見てたって言ったけど、実はあたしのアホ毛が気になって、思わずじっと見てただけかもしれん。

 また二人っきりで会議室。
 勝手に緊張するあたし。

「え、えーと、相談とは何でしょうか」
「昨日の件ですが、情報省のクラウディア参事官に連絡しました」
「あ、そうですか。とりあえず、この件はもう情報省におまかせしたらどうですか」

「一応そうするつもりです。クラウディア参事官からは、この件は内密ってことにして下さいと言われました。プルムさんにも伝えて下さいとも」
「わかりました。ところで、チェーザレさんを殺した犯人の捜査の方はどうなんでしょうか」
「今のところ全く進んでいないんですが、私が考えているのは、やはり、クーデターを計画している関係者じゃないかと思っています」

 チェーザレがクーデター計画について、ジェラルドさんに伝えようとしたのを知った犯人が殺したのだろうか。
 犯行の動機としては合っているけど。

「そうすると、ジェラルドさんも危険ってことですよね」
「そういうことになります」
「充分、身辺にお気を付けください」

 さて、話が終わって会議室を出ると、またジェラルドさんに廊下で呼び止められる。

「プルムさん、ええと、その……」

 何だろう。
 何、え、告白、まさか、何だろう。

 ドキドキするぞ。
 今、廊下ではあたしとジェラルドさんだけ。
 
「実は……」

 その時、チャラ男ことロベルトが廊下に顔を出し、間抜けな声であたしを呼んだ。

「プルム小隊長殿、電話っすよ~」
「あ、いいです。すいません」

 慌てながら走って自分の小隊の部屋に戻って行くジェラルドさん。
 チャラ男、邪魔すんなよ!
 
 机に戻って、電話を取ると、美しい声が聞こえてきた。

「こんにちは、プルムさん!」

 情報省のクラウディアさんだ。

「プルムです。何でしょうか、クラウディア様」
「あの~こんな事、プルムさんにしか頼めないので電話いたしました」

「へ? 何ですか?」
「アレサンドロ大隊長のご自宅の電話番号お教え願いませんでしょうか。本当はこちらにも資料があるはずなんですが、見当たらなくて、失くしちゃって、あのー、そのー、他の職員に聞くのも恥ずかしくて、困ってるんです……」

 電話口でオロオロしてる。
 大丈夫か、情報省参事官殿。
 オロオロお姫様と呼びたくなる。

 しかし、なぜ赤ひげのおっさんの自宅の番号が知りたいんだろう?
 あと、番号教えるついでに、クーデターの件も聞こうと思ったがやめた。

 あまり関わると面倒だ。
 仕事が増えちゃう。

 働いたら負け!

 とは言え、ちょっとあたしも赤ひげのおっさんが気になってきた。
 クーデターとは反乱を起こして政府を乗っ取ることとジェラルドさんに教えてもらったけど、もう少し詳しく知りたい。
 分隊長の机の上で難しい規則集を読んでいる、インテリのバルドに聞いてみる。

「ねえ、バルド、クーデターって何?」
「政府内の不満分子が現政権をひっくり返して、権力を握るのがクーデターだな。革命と違うのは、一般市民が参加していない点かなあ」
「ふーん」

 よくわからん。

「で、プルムは何でそんな事聞くの」
「えーと、今読んでる小説に出てきたんよ」

 あたしは適当に誤魔化した。

「警備隊は関係ないよね」
「いや、軍隊が起こすのが普通だけど、警備隊や一般人の政治活動家も加わる場合もあるよ」

「クーデターってどんな感じで起きるの?」
「まあ、政府の重要人物の逮捕や施設を占領するのが普通だな」
「ふーん」

 いまいちイメージがわかないな。

 いろいろと考えていると、クーデターの件やらチェーザレの件やらジェラルドさんのことが一緒くたになって、何だか落ち着かない。

 落ち着かないまま机に座っていると、ロベルトがドサッと大きな音を立てて、書類をあたしの机の決裁箱に置く。
 一瞬、ビビるあたし。

「ジェラルドさん、いい男っすねー、プルム小隊長殿はどう思いますか?」

 いきなり聞かれて、オタオタするあたし。

「そ、そうね、美男子ね」

 ろくに喋れん。
 しかし、チャラ男ことロベルトはそのまま席に戻った。

 単に、挨拶がてらに言っただけか。
 チャラ男の奴、ビビらせんなよ。

 しかし、ちょっと気になってきたので、アレサンドロ大隊長の様子でも見てくるかと、いつもはサビーナちゃんに書類は持って行ってもらうんだけど、あたしが持って行く。

「失礼します」

 大隊長室に入る。
 決裁文書を決裁箱に置くと、ただうなずく赤ひげのおっさん。

 うーん、いつもと変わらん感じだ。
 特に変わった様子は無い。

 と思ったら、あれ、机の上に首都メスト市の地図を広げて見ているぞ。
 官庁街の部分とかを赤線で引いている。

 怪しいぞ。
 要注意だな。

 しかし、赤線なんて引いている段階なら、まだクーデターは起こさないだろう。

 翌日は、休日。
 モヤモヤを解消したい。

 朝っぱらから、スキップして賭博場へ。
 モヤモヤしなくても行くけどね。
 
 朝でもやってる珍しい店が、ゲッ! 改装中。
 仕方が無い。
 王宮の向こうの賭博場へ行くか。

 ん? 背後から視線を感じる。
 サっと振り向く。
 誰もいない。

 気のせいかと思ったら、あれ、前方に見たことあるおっさんが歩いている。
 ブルーノ元中佐だ。

 また、「ドラゴンキラー」とか嫌味を言われるかもしれないので、久々のシーフ技!
 壁隠れ。
 と言っても、王宮の壁に向かってうつ向いているだけ。

 あたしには気づかず通り過ぎた。
 無職だからヒマなのかね。

 王宮前のラーメン屋に入って行った。
 朝からラーメン食うのか?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました

東野あさひ
ファンタジー
無能の烙印、婚約破棄、そして辺境追放――。でもそれ、全部“勘違い”でした。 王国随一の名門貴族令嬢ノクティア・エルヴァーンは、魔力がないと断定され、婚約を破棄されて辺境へと追放された。 だが、誰も知らなかった――彼女が「古代魔術」の適性を持つ唯一の魔導士であることを。 行き着いた先は魔物の脅威に晒されるグランツ砦。 冷徹な司令官カイラスとの出会いをきっかけに、彼女の眠っていた力が次第に目を覚まし始める。 無能令嬢と嘲笑された少女が、辺境で覚醒し、最強へと駆け上がる――! 王都の者たちよ、見ていなさい。今度は私が、あなたたちを見下ろす番です。 これは、“追放令嬢”が辺境から世界を変える、痛快ざまぁ×覚醒ファンタジー。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

処理中です...