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第39話:ジェラルド小隊長と相談する
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翌日は夜勤。
鬱々と夕方に出勤すると、隣の部屋のジェラルド小隊長が待っていた。
イケメンのジェラルドさんだ。
私服を着ている。
「あれ、ジェラルド小隊長、今日は非番じゃなかったんですか?」
「ちょっとお聞きしたいことがあるんです。会議室でお話ししませんか」
「はあ」
イケメンと会議室で二人きり。
しかし盛り上がらん。
まだチェーザレの件が後を引いている。
何の話だろう。
非番なのに仕事熱心な人だなあ。
「例の情報屋の件ですが、すみません、そちらにやっていただいて」
ああ、そうか。
場所は、ジェラルドさんの管轄区域だったのか。
チェーザレの死体は第二十区域で発見された。
そして、ジェラルドさんにチェーザレについて聞かれる。
「チェーザレさんとは知り合いだったそうで」
「ええ、そうですが」
「彼はなぜ殺されたんでしょうか」
「いや、分かりません」
「何か重要なことは言ってませんでしたか」
「私は聞いてないです。この間、偶然会った時は、もうひと仕事したら故郷に帰ると言ってました」
すると、ジェラルドさんが少し深刻な顔で言った。
「チェーザレさんは、ある秘密を知ったから殺されたんだと思います」
秘密とは何だろう?
チェーザレは大した事してなかった雰囲気だったけど。
「私はチェーザレさんが殺された日の夕方、会う約束をしていたんです。実はその五日前にも一度会っていたんですが」
殺される五日前って、あたしがチェーザレに機関銃罵倒攻撃をした日か。
寂しげな背中を見せて立ち去るチェーザレを思い出して、あたしは暗くなる。
「待ち合わせ場所のゴミ捨て場で、何か騒ぎが起きていて自警団員が大勢いるので、チェーザレさんは来れないのかなと思ったんですが。まさか、彼が殺されていたとは思いませんでした」
そうなのか。
殺されるほどの秘密とは何だろう。
あたしには検討もつかない。
結局、ジェラルドさんには何も教えることが出来なかった。
話が終わって、会議室から出ようとしたら、ジェラルド小隊長に声をかけられた。
「えーと、プルムさん」
「何ですか?」
「あ、いや、いいです」
何だろう。
なにかもっと知りたい事があったのか。
ジェラルドさんは、実はあたしがチェーザレと同郷だったと知ってたかもしれん。
何とも憂鬱な気分だ。
机に戻ると、サビーナちゃんが机の横にやってきて、囁くような小声で苦情を言ってきた。
「ロベルトさんが仕事をさぼって自転車で遊んでますよ」
やれやれ。リーダーは優しくて、叱ることが出来ないだろうなあ。
「しょうがないなあ」
あたしは警備隊庁舎の建物を出る。
寮の隣の運動場で、チャラ男ことロベルトが自転車を乗り回している。
夕方なんで、運動場の電灯をつけてやがる。
相変わらずまっすぐ走って、曲がろうとしてスッ転んでるぞ。
ロベルトに近づいて、怒鳴りつける。
「やい、チャラ男! なに自転車で遊んでんだよ、仕事しろ! 後、電気がもったいないぞ!」
「いや、自転車に乗る練習っす」
いつも通りヘラヘラしている。
全く、あたしのことなんて上司ともなんとも思っていないような態度。
上司を舐め切っているぞ、このいい加減なチャラ男は。
まあ、あたしもいい加減だけどね。
威厳も全く無いし。
……………………………………………………
夜勤が終わって、寮に戻る。
今日は非番だ。
チェーザレはもうこの世にいないんだよなあ。
鬱々としてくる。
誰に殺されたのか。
死ぬ時ってどんな感じなんだろう。
あたしも、いつかは死ぬんだろうけど、どんな死に方するんだろう。
って、暗いね。
なるべく考えないほうがいいかな、チェーザレには悪いけど。
それに、この件はジェラルド小隊長の管轄だし。
けど、今日はギャンブルする気にもならないな。
ゴロゴロしてたら、もう昼だ。
ちょっとラーメンでも食べに行くか。
この前の蛸事件の時、ルチオ教授とチャラ男と一緒に昼食を取った、王宮の前の美味しいラーメン屋に行く。
塩ラーメンを食べていると、二階から降りてきた痩せたおっさんに声をかけられた。
「おい、ドラゴンキラー」
えーと名前は忘れたが、顔は覚えている。
何て名前だったっけ。
「ブルーノだ、忘れたか」
思い出した。
赤ひげ大隊長アレサンドロのおっさんの飲み友達ブルーノ中佐だ。
いや、レッドドラゴン事件で、部下を置いて逃げ出したから元中佐かな。
けど、酒臭くないな。
「何だ、また仕事さぼってるのか」
ブルーノのおっさんが笑う。
むかついた。
「違いますよ、今日は非番なんです。ブルーノさんこそ仕事さぼっているんですか」
「俺は無職だよ、ガハハ!」
笑いながらラーメン屋から出て行った。
無職なのに、何か明るいね。
寮に戻って、一人部屋で午後の昼寝をしていると、寮母のジュスタおばさんから言われた。
「ジェラルド小隊長があんたを訪ねてきたよ」
何だろう、わざわざ女子寮に訪ねてくるなんて。
玄関まで行くと、制服姿のジェラルド小隊長が頭を下げた。
「お休みのところわざわざすみません。ちょっとお話が」
「えーと、じゃあ、玄関ロビーのソファでどうですか?」
「いや、ちょっと二人きりで話したいんですが」
二人で寮の隣の運動場へ行って、端っこに置いてあるベンチに座る。
運動場には、今は誰も居ない。
あたしたち二人だけ。
秋なので、枯れ葉がチラホラ落ちてくる。
うーん、何となくデートっぽい雰囲気。
イケメンと二人っきりでベンチに座って、勝手に緊張するあたし。
「私もこの裏の寮で暮らしているんですよ」
ジェラルドさんがそう言った。
ふむ、ジェラルドさんも寮生活か。
と言うことは独身か! よーし!
って何で喜ぶんだ、お前はって? 恋人いるかもしれないだろって? まあ、そうなんだけど。
いや、とりあえず可能性が増えたぞ!
ところで、何の用だろう?
「実は相談事があるんですよ。例のチェーザレさんが殺された件です。どうも、彼はかなり重大な秘密を知ってしまったらしいんです」
あのチェーザレが重大な秘密とは。
何だろう?
「クーデターを計画しているグループがあるらしいんです」
クーデター? あれ、前に聞いた事ある単語だな。
うーん、どっかで聞いた。
忘れちゃった。
「クーデターって何ですか」
「要するに反乱を起こして政府を乗っ取ることですね」
「ええ! 大変な情報じゃないですか。すぐにアレサンドロのおっさん、じゃなくて大隊長に知らせないと」
「いや、それが……」
どうも、ジェラルドさんがチェーザレから聞いた情報では、ニエンテ村のレッドドラゴン事件で軍隊をクビになった人物が、中心人物として関わっているらしい。
軍隊から追放された恨みで、行動している可能性もあるようだ。
チェーザレには軍隊に友人がいたらしい。
そこからの情報のようだ。
ただ、チェーザレに最後に会った時は、その人物が誰かはわからなかった。
次回に会う時までに、その人物の名前がわかりそうだとチェーザレは言っていた。
多分、それで殺されたのではないかと、ジェラルドさんは考えているみたい。
あれ、おいおい、確かアレサンドロのおっさん、レッドドラゴンからまっ先に逃げ出して、軍を追放されたんじゃなかったっけ。
「クビになった人物って、もしかしてアレサンドロ大隊長の事ですか」
「いや、わかりません。他にも何人かいます。だいたい、大半は逃げたって聞いてますが。あまり人に聞かせられない事なんで、仕方が無く、こんな場所で相談しているわけです」
「いっそのこと警備総監に直接連絡したらどうですか」
「それが、チェーザレ氏が言ってたのは武器を持っている政府組織のトップもからんでいると。警備隊か軍隊かわかりませんが」
何だかえらい大変な話になってきた。
恋愛してるどころじゃないぞ。
「チェーザレさんは、何か言ってませんでしたか」
「うーん、噂を聞いたとか何とか言ってましたが、それ以上は」
「そうですか」
何やら深刻な顔で悩んでいるジェラルドさん。
そうだ、情報省にまかせればいいんじゃないか。
情報省は武器を持っていないから、このクーデターとやらには関わってないだろう。
「じゃあ、情報省に連絡を取った方がいいんじゃないですか」
「そうしようと思っているんですが、デリケートな問題なんで。私は警備隊以外では知り合いはいないんですよ。プルムさんは、どなたか知ってる人はおりませんか」
あたしが知ってるのは、クラウディアさんだけなんだよなあ。
大丈夫か、あの人。
天然お嬢様。
けど、参事官とやらで偉い人だから、クラウディアさんの事をとりあえずジェラルドさんに教えておこう。
「クラウディア参事官に相談したらどうですか。参事官なら、偉い人にも報告できるでしょう」
「そうですね、わかりました。ところで、考えてみれば凄いですね、プルムさんは」
「は? 何の事ですか」
「軍隊も逃げ出すドラゴンを倒したんですから」
「アハハ、いや、大した事ないですよ」
あたしがドラゴンを倒したとジェラルドさんも信じているのか。
マジかよ。
どんどん話が大きくなっていくような気がしてきたなあ。
やっぱり、「ドラゴンはプルムさんが退治したことで事件は解決した事にしたいんです」ってクラウディアさんに言われた時、断ればよかったなあ。
やれやれ。
ジェラルドさんと別れて、女子寮に戻ると、ジュスタおばさんから声をかけられる。
「ジェラルド小隊長っていい男だねえ」
「はあ」
あたしは生返事。
クーデターの事で頭がいっぱい。
まさかアレサンドロのおっさんが関わっているのか。
思い出したぞ。
あの陰険な顔。
レッドドラゴン事件で赤ひげのおっさんと同じく逃げ出したセルジオ大佐だ。
この前、廊下の端っこでヒソヒソと赤ひげ大隊長と話してたぞ。
怪しい。
あと、うーん、何か忘れてるんだよなあ。
何だっけ。
鉈が浮かんだ。
何で鉈が。
あれ、お菓子のナタデコッコが思い浮かぶ。
何でナタデコッコ?
寮の玄関であたしが悩んでいると、ジュスタおばさんがニヤニヤ顔で言った。
「以前、ジェラルドさんがお前の事をじっと見てたよ」
「え、ホント!」
ドキドキするあたし。
クーデターのことも頭の隅に追いやられる。
乙女心がヒートアップ!
自分の部屋に戻って、寝る。
妄想デートの相手はジェラルドさんになる。
え? 妄想デートはキモイからやめろって? うるさい! あたしの勝手でしょ!
鬱々と夕方に出勤すると、隣の部屋のジェラルド小隊長が待っていた。
イケメンのジェラルドさんだ。
私服を着ている。
「あれ、ジェラルド小隊長、今日は非番じゃなかったんですか?」
「ちょっとお聞きしたいことがあるんです。会議室でお話ししませんか」
「はあ」
イケメンと会議室で二人きり。
しかし盛り上がらん。
まだチェーザレの件が後を引いている。
何の話だろう。
非番なのに仕事熱心な人だなあ。
「例の情報屋の件ですが、すみません、そちらにやっていただいて」
ああ、そうか。
場所は、ジェラルドさんの管轄区域だったのか。
チェーザレの死体は第二十区域で発見された。
そして、ジェラルドさんにチェーザレについて聞かれる。
「チェーザレさんとは知り合いだったそうで」
「ええ、そうですが」
「彼はなぜ殺されたんでしょうか」
「いや、分かりません」
「何か重要なことは言ってませんでしたか」
「私は聞いてないです。この間、偶然会った時は、もうひと仕事したら故郷に帰ると言ってました」
すると、ジェラルドさんが少し深刻な顔で言った。
「チェーザレさんは、ある秘密を知ったから殺されたんだと思います」
秘密とは何だろう?
チェーザレは大した事してなかった雰囲気だったけど。
「私はチェーザレさんが殺された日の夕方、会う約束をしていたんです。実はその五日前にも一度会っていたんですが」
殺される五日前って、あたしがチェーザレに機関銃罵倒攻撃をした日か。
寂しげな背中を見せて立ち去るチェーザレを思い出して、あたしは暗くなる。
「待ち合わせ場所のゴミ捨て場で、何か騒ぎが起きていて自警団員が大勢いるので、チェーザレさんは来れないのかなと思ったんですが。まさか、彼が殺されていたとは思いませんでした」
そうなのか。
殺されるほどの秘密とは何だろう。
あたしには検討もつかない。
結局、ジェラルドさんには何も教えることが出来なかった。
話が終わって、会議室から出ようとしたら、ジェラルド小隊長に声をかけられた。
「えーと、プルムさん」
「何ですか?」
「あ、いや、いいです」
何だろう。
なにかもっと知りたい事があったのか。
ジェラルドさんは、実はあたしがチェーザレと同郷だったと知ってたかもしれん。
何とも憂鬱な気分だ。
机に戻ると、サビーナちゃんが机の横にやってきて、囁くような小声で苦情を言ってきた。
「ロベルトさんが仕事をさぼって自転車で遊んでますよ」
やれやれ。リーダーは優しくて、叱ることが出来ないだろうなあ。
「しょうがないなあ」
あたしは警備隊庁舎の建物を出る。
寮の隣の運動場で、チャラ男ことロベルトが自転車を乗り回している。
夕方なんで、運動場の電灯をつけてやがる。
相変わらずまっすぐ走って、曲がろうとしてスッ転んでるぞ。
ロベルトに近づいて、怒鳴りつける。
「やい、チャラ男! なに自転車で遊んでんだよ、仕事しろ! 後、電気がもったいないぞ!」
「いや、自転車に乗る練習っす」
いつも通りヘラヘラしている。
全く、あたしのことなんて上司ともなんとも思っていないような態度。
上司を舐め切っているぞ、このいい加減なチャラ男は。
まあ、あたしもいい加減だけどね。
威厳も全く無いし。
……………………………………………………
夜勤が終わって、寮に戻る。
今日は非番だ。
チェーザレはもうこの世にいないんだよなあ。
鬱々としてくる。
誰に殺されたのか。
死ぬ時ってどんな感じなんだろう。
あたしも、いつかは死ぬんだろうけど、どんな死に方するんだろう。
って、暗いね。
なるべく考えないほうがいいかな、チェーザレには悪いけど。
それに、この件はジェラルド小隊長の管轄だし。
けど、今日はギャンブルする気にもならないな。
ゴロゴロしてたら、もう昼だ。
ちょっとラーメンでも食べに行くか。
この前の蛸事件の時、ルチオ教授とチャラ男と一緒に昼食を取った、王宮の前の美味しいラーメン屋に行く。
塩ラーメンを食べていると、二階から降りてきた痩せたおっさんに声をかけられた。
「おい、ドラゴンキラー」
えーと名前は忘れたが、顔は覚えている。
何て名前だったっけ。
「ブルーノだ、忘れたか」
思い出した。
赤ひげ大隊長アレサンドロのおっさんの飲み友達ブルーノ中佐だ。
いや、レッドドラゴン事件で、部下を置いて逃げ出したから元中佐かな。
けど、酒臭くないな。
「何だ、また仕事さぼってるのか」
ブルーノのおっさんが笑う。
むかついた。
「違いますよ、今日は非番なんです。ブルーノさんこそ仕事さぼっているんですか」
「俺は無職だよ、ガハハ!」
笑いながらラーメン屋から出て行った。
無職なのに、何か明るいね。
寮に戻って、一人部屋で午後の昼寝をしていると、寮母のジュスタおばさんから言われた。
「ジェラルド小隊長があんたを訪ねてきたよ」
何だろう、わざわざ女子寮に訪ねてくるなんて。
玄関まで行くと、制服姿のジェラルド小隊長が頭を下げた。
「お休みのところわざわざすみません。ちょっとお話が」
「えーと、じゃあ、玄関ロビーのソファでどうですか?」
「いや、ちょっと二人きりで話したいんですが」
二人で寮の隣の運動場へ行って、端っこに置いてあるベンチに座る。
運動場には、今は誰も居ない。
あたしたち二人だけ。
秋なので、枯れ葉がチラホラ落ちてくる。
うーん、何となくデートっぽい雰囲気。
イケメンと二人っきりでベンチに座って、勝手に緊張するあたし。
「私もこの裏の寮で暮らしているんですよ」
ジェラルドさんがそう言った。
ふむ、ジェラルドさんも寮生活か。
と言うことは独身か! よーし!
って何で喜ぶんだ、お前はって? 恋人いるかもしれないだろって? まあ、そうなんだけど。
いや、とりあえず可能性が増えたぞ!
ところで、何の用だろう?
「実は相談事があるんですよ。例のチェーザレさんが殺された件です。どうも、彼はかなり重大な秘密を知ってしまったらしいんです」
あのチェーザレが重大な秘密とは。
何だろう?
「クーデターを計画しているグループがあるらしいんです」
クーデター? あれ、前に聞いた事ある単語だな。
うーん、どっかで聞いた。
忘れちゃった。
「クーデターって何ですか」
「要するに反乱を起こして政府を乗っ取ることですね」
「ええ! 大変な情報じゃないですか。すぐにアレサンドロのおっさん、じゃなくて大隊長に知らせないと」
「いや、それが……」
どうも、ジェラルドさんがチェーザレから聞いた情報では、ニエンテ村のレッドドラゴン事件で軍隊をクビになった人物が、中心人物として関わっているらしい。
軍隊から追放された恨みで、行動している可能性もあるようだ。
チェーザレには軍隊に友人がいたらしい。
そこからの情報のようだ。
ただ、チェーザレに最後に会った時は、その人物が誰かはわからなかった。
次回に会う時までに、その人物の名前がわかりそうだとチェーザレは言っていた。
多分、それで殺されたのではないかと、ジェラルドさんは考えているみたい。
あれ、おいおい、確かアレサンドロのおっさん、レッドドラゴンからまっ先に逃げ出して、軍を追放されたんじゃなかったっけ。
「クビになった人物って、もしかしてアレサンドロ大隊長の事ですか」
「いや、わかりません。他にも何人かいます。だいたい、大半は逃げたって聞いてますが。あまり人に聞かせられない事なんで、仕方が無く、こんな場所で相談しているわけです」
「いっそのこと警備総監に直接連絡したらどうですか」
「それが、チェーザレ氏が言ってたのは武器を持っている政府組織のトップもからんでいると。警備隊か軍隊かわかりませんが」
何だかえらい大変な話になってきた。
恋愛してるどころじゃないぞ。
「チェーザレさんは、何か言ってませんでしたか」
「うーん、噂を聞いたとか何とか言ってましたが、それ以上は」
「そうですか」
何やら深刻な顔で悩んでいるジェラルドさん。
そうだ、情報省にまかせればいいんじゃないか。
情報省は武器を持っていないから、このクーデターとやらには関わってないだろう。
「じゃあ、情報省に連絡を取った方がいいんじゃないですか」
「そうしようと思っているんですが、デリケートな問題なんで。私は警備隊以外では知り合いはいないんですよ。プルムさんは、どなたか知ってる人はおりませんか」
あたしが知ってるのは、クラウディアさんだけなんだよなあ。
大丈夫か、あの人。
天然お嬢様。
けど、参事官とやらで偉い人だから、クラウディアさんの事をとりあえずジェラルドさんに教えておこう。
「クラウディア参事官に相談したらどうですか。参事官なら、偉い人にも報告できるでしょう」
「そうですね、わかりました。ところで、考えてみれば凄いですね、プルムさんは」
「は? 何の事ですか」
「軍隊も逃げ出すドラゴンを倒したんですから」
「アハハ、いや、大した事ないですよ」
あたしがドラゴンを倒したとジェラルドさんも信じているのか。
マジかよ。
どんどん話が大きくなっていくような気がしてきたなあ。
やっぱり、「ドラゴンはプルムさんが退治したことで事件は解決した事にしたいんです」ってクラウディアさんに言われた時、断ればよかったなあ。
やれやれ。
ジェラルドさんと別れて、女子寮に戻ると、ジュスタおばさんから声をかけられる。
「ジェラルド小隊長っていい男だねえ」
「はあ」
あたしは生返事。
クーデターの事で頭がいっぱい。
まさかアレサンドロのおっさんが関わっているのか。
思い出したぞ。
あの陰険な顔。
レッドドラゴン事件で赤ひげのおっさんと同じく逃げ出したセルジオ大佐だ。
この前、廊下の端っこでヒソヒソと赤ひげ大隊長と話してたぞ。
怪しい。
あと、うーん、何か忘れてるんだよなあ。
何だっけ。
鉈が浮かんだ。
何で鉈が。
あれ、お菓子のナタデコッコが思い浮かぶ。
何でナタデコッコ?
寮の玄関であたしが悩んでいると、ジュスタおばさんがニヤニヤ顔で言った。
「以前、ジェラルドさんがお前の事をじっと見てたよ」
「え、ホント!」
ドキドキするあたし。
クーデターのことも頭の隅に追いやられる。
乙女心がヒートアップ!
自分の部屋に戻って、寝る。
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