ドラゴンキラーと呼ばれた女/プルムの恋と大冒険

守 秀斗

文字の大きさ
61 / 82

第61話:国境を視察する

しおりを挟む
 ランベルト第一副隊長と一緒にカクヨーム王国との国境付近を視察する。
 国境の平地には大量の監視塔や鉄条網などが設置されているが、ドラゴンが現れた場所は、険しい山岳地帯で、両国とも監視体制があまり整っていないようだ。

 カクヨーム王国とは六年前の戦争以来、ずっと緊張状態なのだが、お互い戦争はしたくないみたい。

 そして、ランベルト副隊長がある情報を教えてくれた。

「政略結婚の噂があるんですよ」
「え、政略結婚って、誰と誰ですか?」
「我が国は皇太子様です。カクヨーム王国の方はどういう女性かわからないですが」

 パオロさんもそんなことを言ってたな。
 へえ~王室も大変だ。
 王室を通じて、両国の友好を高めようとしているのかね。

「しかし、友好ムードを煽っておいて、実はカクヨーム王国はドラゴンで先制攻撃を狙っている可能性もありますね」

 ランベルト副隊長が心配そうな顔をする。
 いや、その認識はまずいぞ。
 けど、ドラゴン秘儀団の事は極秘なんだよなあ。

「ただ、おかしいところもあるんですよね。カクヨーム王国は積極的にモンスターを軍隊が退治して回っていた国なんです。ドラゴンなんて利用しますでしょうか」

 そうなのか。
 どうするか。

 うーん、仕方が無いな。
 ドラゴン秘儀団という名称を隠して、あたしはドラゴンを操っている連中がいることを説明することにした。

「実は、ニエンテ村のシアエガ湖で六年前にレッドドラゴンが暴れた事件というのは、人間がドラゴンを操るのに失敗したからなんですよ」
「え、そうなんですか」

「ドラゴンを操って、世界を支配しようとした団体がいて、それで、普通のドラゴンは操れたんですけどね。でも、巨大なレッドドラゴンには通用しなくて、山が吹っ飛んだんです」
「そのレッドドラゴンを倒したのがプルム隊長なんですね。すごいですね。山を吹っ飛ばすドラゴンを倒すなんて」

 いや、違うんですけど~。
 なんか恥ずかしいなあ。

 だいたい、何でみんな信じるのかなあ。
 こんな泥棒万引き女がドラゴンを倒せるはずないのになあ。
 まあ、いいか……今はあたしがドラゴンキラーじゃないとかそんなことを言っている場合じゃないもんなあ。

「今回も、その連中が関係していると、プルム隊長はお考えですか」
「多分、そうだと思います。その団体はシアエガ湖で、ほぼ全滅したんですが、多分、残党がが活動しているんじゃないかと思います」

 残党と言えば、デルフィーノさんを思い出してしまった。
 あの優しい分隊長のデルフィーノさん。
 あたしがラブレターを渡そうとしたデルフィーノさん。

 あんなやさしい人がなんでドラゴン秘儀団なんてバカ集団に入ったんだろうか。
 だいたい、ドラゴン秘儀団の目標って世界征服だったっけ。
 なんだか忘れちゃった。

 でも、あの心優しいデルフィーノさんが世界征服のために入るなんて、おかしいぞと今さら思ってしまう。

「カクヨーム王国と組んだんですかねえ」
「いや、それは無いと思います」

 ドラゴン秘儀団みたいな、あんなバカ集団と組むだろうか。
 もし、そうなら、もう大々的に攻めてきてもよさそうだし。

 しかし、バカなあたしでも、あのバカ集団の目的がなんとなくわかってきたぞ。
 ドラゴン秘儀団の連中は、わざとドラゴンを中立地帯で暴れさせて、ナロード王国とカクヨーム王国の間に戦争を起こさせて、その隙に世界を支配する気じゃないだろうか? いや、世界を支配したいのかなあ。よくわからんぞ。

 しかし、どうすればいいか。
 うーむ。

 ひらめいた!
 簡単に解決出来るぞ。

 ナロード王国とカクヨーム王国が共同でドラゴンを倒せばいい。
 そうすれば、戦争にならずに、むしろ仲良くなれるんでないの?

 もう、ドラゴンを倒せる大砲はあることだし。
 戦争したら負けよ!
 平和が一番。

 働いたら負け! とか今回は言えないな。
 緊急事態だ。

「ランベルト副隊長、カクヨーム王国と共同でドラゴンを倒せばいいんじゃないですか。向こうに連絡すればいいと思いますけど」
「いや、私が連絡しても、無理でしょう。かえって、誤解を招かねないですね。これは政府の上の連中同士が話し合わないと」

 そうなのか。
 よし、フランコのおっさんの出番だな。

「私から官房長官に連絡します」
「お願いします。カクヨーム王国の軍隊とドラゴンキラーのプルム隊長の共同作戦ですね」

 こらこら、あたしは一介の泥棒なんだって、と言おうとしたが、やっぱりやめた。
 ちと、今さら言うのは恥ずかしい。

 すぐに国境警備隊の施設に戻って、フランコ官房長官に電話で連絡する。

「軍隊に報告して、早くこちらへドラゴンを倒せる大砲を持ってくるよう命じてくれませんか。あと、カクヨーム王国にも連絡してください」
「了解した。閣議にかけて、外務省を通じて、カクヨーム王国に連絡を取ってみる」
「長官、これは緊急を要しますよ」

 フランコのおっさんもちょっと緊張してた。
 戦争なんてやだもんね。

 けど、これでなんとなくかたがつきそうだ。
 ちょっと、安心。

 官舎にもどって、とりあえず、ベッドヘタイブ!
 疲れたよ、国境付近の山とか登ってさあ。

 もう寝るよ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

下宿屋 東風荘 7

浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..☆ 四つの巻物と本の解読で段々と力を身につけだした雪翔。 狐の国で保護されながら、五つ目の巻物を持つ九堂の居所をつかみ、自身を鍵とする場所に辿り着けるのか! 四社の狐に天狐が大集結。 第七弾始動! ☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..☆ 表紙の無断使用は固くお断りさせて頂いております。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

処理中です...