屋上の合鍵

守 秀斗

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第8話:屋上で鈴木さんに抱かれる妄想をする

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 朝食はいつも通り、テレビ番組の音が聞こえるだけ。食事が終わるとさっさと無言で出て行く夫。そして、私はドキドキしながら出社。もう噂になってたりして。地下室でいやらしい行為をする女の話。ああ、そうなったらどうなるの、私。

 でも、実際に職場へ行くと、別に同僚の態度は変わらない。いつもと同じ。そうよねえ、いきなりそこら中にベラベラ喋るわけはないわよね。でも、これから少しずつ噂が広まって、総務部長とかに呼び出されて、地下室で変な行為はやめるよう注意されたりして。そんなことはないか。

 でも、私が廊下に出て他の部署に書類を持って行き、そして戻る最中に、偶然、鈴木さんに会ってしまった。思わず、顔が真っ赤になる私。でも、鈴木さんはうつむき加減に会釈だけして私とすれ違う。ああ、その横顔。美男子だわ、私のタイプって、その私の好みの人に何ていやらしくも情けないところを見られたのかしら。恥ずかしい! 夫が抱いてくれないので欲求不満になって自ら慰めてた女。そして、鈴木さんに抱かれる夢も見た。

 私のあそこが熱くなる。ああん、私っていやらしいわ、本当に。トイレに入る。そして、あそこをまさぐる私。今朝したばかりなのに、おかしいわ、私。でも、我慢出来ない。便座に座って、胸やあそこ、後ろの穴をまさぐったりする。鈴木さんに抱かれることを妄想しながら。いろんな格好で愛されるの。貫かれるの、中に出されるの。もう、ありとあらゆる行為をされるの。こんなことしてはいけないと思いつつやめられない。

「……ああ……いく……」

 さすがに大声は出せない。何とか喘ぎ声を小さくして、そして、私はいってしまった。そして、自己嫌悪。私って、性欲が本当に強い。いやらしい大人のおもちゃを集めたりしたり、いろんないやらしい衣装を着て元カレと楽しんだりしたなあ。そんな行為を撮影までしてた。

 ああ、これも夫が相手にしてくれないからよ。何が身勝手な女なのよ。夫婦ならするのが普通でしょ。私は子供がほしいのに、全く相手にしてくれない。子供が出来ればなにか変わるかもとまた私は思ってしまう。今日は定時で帰って、夫にもう一度話し合いを持つことにした。

 そして、定時。私はさっさと帰宅する。そして、夫が帰るのを待った。一応、夕食は用意した。夫が帰ってきた。しかし、ただいまの一言も無い。むしろ、私がいることに驚いている。

「なんだ、今日は早いな」

 それだけ言って、後は無言。

「あ、あの、和夫さん。夕食用意しましたけど」
「帰る途中の定食屋で済ましたからいらないよ」

 なによ、私の作ったものは食べるのも嫌なのって、何も事前に連絡してなかったから自分で夕食を済ますのは当然かな。そんなことより、例の件よ。子供の件よ。

「そうですか。わかりました。それで、あ、あの……あなた、その、ご相談があるのですが」
「なんだよ」
「その、子供のことなんだけど、やっぱり若い時に産んだ方がいいと思うの。だから、その……」
「なんだよ、したいって言うのか。でも、今朝、浴室で自分でやってただろ」

 夫の発言にびっくりする私。あの時、私、喘いでそして大声を出してたんだわ。それが聞こえていたのかしら。顔を赤くしてしまう私。

「共同に使う場所でなにを淫らなことしてんだよ」
「……淫らって、そんな、ひどいです。だって、あなたが相手にしてくれないから……」
「でも、シャワーを浴びながら、あそこをさわって満足したんじゃないの。それで充分だろ」

 ひどい。私は腹が立ったが、もう少し話がしたい。

「あの、浴室ではしたない行為をしたことは謝ります。でも、子供の件とは関係ないでしょ。ねえ、あなたは何を考えているの。子供はほしくないの」
「君との子供は欲しくないね。じゃあ、俺はシャワーを浴びて、寝るから。ちなみに浴室ではしないよ」

 夫のひどい言葉に私は茫然とする。ショックの余り、自分の部屋に戻ってただベッドの上で座っている。これはもう離婚だなあと私は思った。いや、もう離婚しているのも同じだわ。単なる同居人だわ、それも仲の悪い同居人。

 前に夫が言ってたなあ。離婚の件を私が言ったら。両親や親族を説得するのに苦労したし、世間体もあるから、今さらちょっと無理だって。まあ、あっという間にスピード離婚するのは嫌なのかしら。夫はタイミングを計っているんだわ。結局、離婚よね。でも、いつ離婚するのかしら。夫も嫌いな女が家に居てストレス溜らないのかしら。

 どうすればいいの。田舎の両親は大金持ちと結婚した私を自慢に思っているふしがあるのよねえ。私の方もそう簡単に離婚するってわけにはいかないかしらね。でも、こんな無味乾燥な生活が続くなんて、私には耐えられないわ。もう寝ようと思っても、なかなか眠れない。

 頭をすっきりさせたくなった私。昔、元カレとキャンプに行ったときに使ったコンパクトな折り畳みのマットレスをタンスの奥から取り出した。夫はもう寝たみたい。そして、合鍵持って、パジャマ姿で屋上へ行く。誰も見てないでしょ。

 今日はいい天気だわ。そして、いつも通りの素晴らしい夜景。そして、マットレスを下にひいて寝転ぶ私。離婚したら、こんなタワーマンションの屋上で夜景を見ることなんてないだろうなあ。そして、夫との関係を考える。憂鬱になる。もう終わりね。でも、いつ終わらせられるのかしらね。勝手に出て行こうかしら、安アパートでも借りて。でも、離婚してくれないかもしれないなあ。ああ、イライラしてきた。別のことを考えよう。

 すると、鈴木さんの顔が浮かんできた。そして、いつの間にか私は裸にされる。彼に思いっ切り抱きしめられる。私のあそこが熱くなる。ああん、思いっ切り貫かれるの。ありとあらゆる体位で愛されるの。また、したくなった。私って淫乱だわ。服を脱ごうとして思いとどまった。ここは高くて、どこからも見えないだろうけど、野外で裸になって自分でしようとするなんて。ああ、いやらしい女。私は立ち上がり、マットレスをたたんで部屋に戻る。でも、頭の中では屋上で鈴木さんに抱かれる私の妄想が渦巻いていた。それも、夜じゃなくて、真夏の昼間に絡み合う二人。汗まみれになって。ああん、私っていやらしい。
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