4 / 10
第4話:原住民の伝説
しおりを挟む
俺たちは、再び豹が襲撃して来ないか、朝まで警戒しながら周囲を伺う。皆、無言でただ中央の小屋の中に座って朝が来るのを待っている。時々、動物の鳴き声が聞こえると思わずそちらに携帯ランプを向けるが、特に狂暴な動物が襲ってくることも無いまま時間が過ぎて、日が昇ってきた。俺は皆に声をかけた。
「よし、もう出発しよう。ただ、オーガスタスは埋葬してやろう」
バラバラになったオーガスタスの死体を集めて、大きい布袋に入れた。木の枝を伝って、俺は数人の仲間と陸地を目指す。木から落ちないかと冷や冷やした。もし、落ちたら、あの肉食の魚にあっという間に食われてしまうだろう。
枝を伝ってやっと土のある場所に到着した。また豹か何かが襲ってこないか警戒しながら土を掘るが、水分が多く、泥ですぐに穴が崩れていく。仕方なく、浅く掘った穴に無理矢理布袋を突っ込んで、それで埋葬することにした。墓柱も立てられないが仕方がない。
「オーガスタスには悪いが、あいつも冒険者なら、こんな末路も覚悟していただろう」
俺は適当に言い訳まがいの事を言うと、皆にさっさといかだに戻るよう促した。そして、全員、無事にいかだに到着すると縄を大木から外して、再び動かすことにした。片腕をやられたバーソロミューは中央の小屋に寝かし、チャドに看病させる。残りは周囲を見張る。川は依然としてゆったりと進んでいく。しばらく周りを警戒していたが、特に危険な兆候はない。俺は再び、昨夜の黒豹が群れで襲ってきたことを不思議に思っていると、弓使いのブレントがこっそりと話かけてきた。
「リーダー、この辺に住んでいた原住民の話は知っているか」
「どういう話だ」
「動物を操れる能力があったようなんだよ。実はこの仕事に誘われた時、冒険者ギルドでこの川の周辺の噂を聞いてみたんだ」
「じゃあ、昨夜、黒豹が群れで襲ってきたのは、原住民が豹を操って俺たちを襲わせたって言いたいのか」
「いや、それはわからない。それにこの辺りの原住民たちは王国の軍隊によって全滅させられたようなんだ。ほんの少数が生き残って、川の上流で細々と暮らしていたみたいなんだが、その連中も突然、外国に逃げて行ったようだ」
カミアキンも似たような話をしていたと俺は思い出して、ブレントに言った。
「確か、カミアキンも言ってたよ。原住民たちは国に反抗して成敗されたらしいって」
「成敗って、そんな生やさしいもんじゃないよ。一方的な虐殺だったらしいぞ。かなり昔の話らしいが」
「国が何でそんなことをしたんだ」
「黄金が欲しかったらしい。この奥地は金が大量に取れる場所だったが、原住民たちが邪魔したんで、ほとんど殺してしまったって話だ」
「ひどい話だな。ただ、昔の話だろ。それを恨んで、何で俺たちを襲撃するんだ。今、遺跡の調査隊を襲っているゴブリンたちも、その原住民が操ってるのか。原住民たちはほぼ全滅したんじゃないのか」
「そうなんだよな。そもそもここら辺に原住民たちは残っていないはずなんだよ」
そして、ブレントが少し声を落として言った。
「一方的な虐殺をしたのは、もう一つ理由があるらしいんだ」
「どんな理由だよ」
「国の軍隊に対抗するため原住民たちはこの国を滅ぼせるほどのモンスターを召喚しようとしたらしい。それが国王の逆鱗に触れて、結局、大虐殺になってしまったようなんだ」
「なんだよ、そのモンスターって」
「わからん。ただ、呼び出すには人間の心臓をくり抜いて、神殿の像に塗り付ける儀式とかをしなくてはいけないってことだ」
「気味の悪い話だな。作り話じゃないのか。その神殿って言うのが、今、調査を行っている遺跡のことか」
「うーん、そこまではわからない」
単なる与太話だと俺は思ったが、しかし、昨夜の黒豹の動きはたしかにおかしい。カミアキンが言っていたことを思い出す。
『狂える獣の群れ』が復活する。
確か、カミアキンはそう言っていた。それを恐れて、わずかに残っていた原住民たちも逃げ出したと。馬鹿馬鹿しいと思いつつも、どうも不気味な感じがしてくる。川の上はさらに樹木が生い茂り、絡み合って、日の光は時折しか差してこない。
ブレントが俺に顔を近づけて真剣な顔で言った。
「このまま、旅を続けて行っていいのか。一旦、戻って、冒険者ギルドを通じて、国の政府機関に報告したほうがいいんじゃないだろうか」
「戻るって言っても、川を逆流するのは俺たち全員で櫂を漕いでも無理だ。だからと言って陸地に上がって、上流の方へ戻るのはさらに大変だぞ。また豹が襲ってくるかもしれないし、だいたい道なんかないぞ」
「確かに、木を伐り払いながら、戻るのは大変かもしれないが、まだ俺たちは元気だし、食料もあるだろ」
俺は迷ってしまった。ブレントの言うことも一理ある。戻った方がいいかもしれない。ただ、かなり奥地へ進んでしまった。ここから戻るのはかなり苦労しそうだし、危険も多そうだ。カミアキンの話ではこの川はずっと緩やかな流れらしい。それに、大ケガしたバーソロミューの事も心配になった。俺は小屋で寝ているバーソロミューの具合を見る。
「おい、バーソロミュー。具合はどうだ」
「……食いちぎられた腕が痛い。それに、熱っぽい……」
側で看病しているチャドも心配そうだ。
「バーソロミューさんには、一応、痛み止め薬草を飲ませたんですけど、あまり効果がないみたいです」
バーソロミューの具合を見て、俺はブレントに言った。
「バーソロミューは動けそうにもない。見捨てるわけにはいかないよ。食料だって、下手に陸路で戻ろうとして迷ったり時間がかかって、途中で尽きてしまうかもしれない。このいかだに乗っていれば、後、一日半で目的地に到着する。そこには調査隊もいて、バーソロミューの手当もしてくれるだろう。このまま進むしかないと思う」
「……そうか、わかった」
ブレントは少し不満そうな顔をしたが、一応、納得してくれたようだ。ただ、俺から離れる時に呟いた言葉が気になった。
「役立たずはさっさと死ねばいいのに」
バーソロミューのことかと思った俺は、ちょっとひどいことを言う奴だなと思った。
「よし、もう出発しよう。ただ、オーガスタスは埋葬してやろう」
バラバラになったオーガスタスの死体を集めて、大きい布袋に入れた。木の枝を伝って、俺は数人の仲間と陸地を目指す。木から落ちないかと冷や冷やした。もし、落ちたら、あの肉食の魚にあっという間に食われてしまうだろう。
枝を伝ってやっと土のある場所に到着した。また豹か何かが襲ってこないか警戒しながら土を掘るが、水分が多く、泥ですぐに穴が崩れていく。仕方なく、浅く掘った穴に無理矢理布袋を突っ込んで、それで埋葬することにした。墓柱も立てられないが仕方がない。
「オーガスタスには悪いが、あいつも冒険者なら、こんな末路も覚悟していただろう」
俺は適当に言い訳まがいの事を言うと、皆にさっさといかだに戻るよう促した。そして、全員、無事にいかだに到着すると縄を大木から外して、再び動かすことにした。片腕をやられたバーソロミューは中央の小屋に寝かし、チャドに看病させる。残りは周囲を見張る。川は依然としてゆったりと進んでいく。しばらく周りを警戒していたが、特に危険な兆候はない。俺は再び、昨夜の黒豹が群れで襲ってきたことを不思議に思っていると、弓使いのブレントがこっそりと話かけてきた。
「リーダー、この辺に住んでいた原住民の話は知っているか」
「どういう話だ」
「動物を操れる能力があったようなんだよ。実はこの仕事に誘われた時、冒険者ギルドでこの川の周辺の噂を聞いてみたんだ」
「じゃあ、昨夜、黒豹が群れで襲ってきたのは、原住民が豹を操って俺たちを襲わせたって言いたいのか」
「いや、それはわからない。それにこの辺りの原住民たちは王国の軍隊によって全滅させられたようなんだ。ほんの少数が生き残って、川の上流で細々と暮らしていたみたいなんだが、その連中も突然、外国に逃げて行ったようだ」
カミアキンも似たような話をしていたと俺は思い出して、ブレントに言った。
「確か、カミアキンも言ってたよ。原住民たちは国に反抗して成敗されたらしいって」
「成敗って、そんな生やさしいもんじゃないよ。一方的な虐殺だったらしいぞ。かなり昔の話らしいが」
「国が何でそんなことをしたんだ」
「黄金が欲しかったらしい。この奥地は金が大量に取れる場所だったが、原住民たちが邪魔したんで、ほとんど殺してしまったって話だ」
「ひどい話だな。ただ、昔の話だろ。それを恨んで、何で俺たちを襲撃するんだ。今、遺跡の調査隊を襲っているゴブリンたちも、その原住民が操ってるのか。原住民たちはほぼ全滅したんじゃないのか」
「そうなんだよな。そもそもここら辺に原住民たちは残っていないはずなんだよ」
そして、ブレントが少し声を落として言った。
「一方的な虐殺をしたのは、もう一つ理由があるらしいんだ」
「どんな理由だよ」
「国の軍隊に対抗するため原住民たちはこの国を滅ぼせるほどのモンスターを召喚しようとしたらしい。それが国王の逆鱗に触れて、結局、大虐殺になってしまったようなんだ」
「なんだよ、そのモンスターって」
「わからん。ただ、呼び出すには人間の心臓をくり抜いて、神殿の像に塗り付ける儀式とかをしなくてはいけないってことだ」
「気味の悪い話だな。作り話じゃないのか。その神殿って言うのが、今、調査を行っている遺跡のことか」
「うーん、そこまではわからない」
単なる与太話だと俺は思ったが、しかし、昨夜の黒豹の動きはたしかにおかしい。カミアキンが言っていたことを思い出す。
『狂える獣の群れ』が復活する。
確か、カミアキンはそう言っていた。それを恐れて、わずかに残っていた原住民たちも逃げ出したと。馬鹿馬鹿しいと思いつつも、どうも不気味な感じがしてくる。川の上はさらに樹木が生い茂り、絡み合って、日の光は時折しか差してこない。
ブレントが俺に顔を近づけて真剣な顔で言った。
「このまま、旅を続けて行っていいのか。一旦、戻って、冒険者ギルドを通じて、国の政府機関に報告したほうがいいんじゃないだろうか」
「戻るって言っても、川を逆流するのは俺たち全員で櫂を漕いでも無理だ。だからと言って陸地に上がって、上流の方へ戻るのはさらに大変だぞ。また豹が襲ってくるかもしれないし、だいたい道なんかないぞ」
「確かに、木を伐り払いながら、戻るのは大変かもしれないが、まだ俺たちは元気だし、食料もあるだろ」
俺は迷ってしまった。ブレントの言うことも一理ある。戻った方がいいかもしれない。ただ、かなり奥地へ進んでしまった。ここから戻るのはかなり苦労しそうだし、危険も多そうだ。カミアキンの話ではこの川はずっと緩やかな流れらしい。それに、大ケガしたバーソロミューの事も心配になった。俺は小屋で寝ているバーソロミューの具合を見る。
「おい、バーソロミュー。具合はどうだ」
「……食いちぎられた腕が痛い。それに、熱っぽい……」
側で看病しているチャドも心配そうだ。
「バーソロミューさんには、一応、痛み止め薬草を飲ませたんですけど、あまり効果がないみたいです」
バーソロミューの具合を見て、俺はブレントに言った。
「バーソロミューは動けそうにもない。見捨てるわけにはいかないよ。食料だって、下手に陸路で戻ろうとして迷ったり時間がかかって、途中で尽きてしまうかもしれない。このいかだに乗っていれば、後、一日半で目的地に到着する。そこには調査隊もいて、バーソロミューの手当もしてくれるだろう。このまま進むしかないと思う」
「……そうか、わかった」
ブレントは少し不満そうな顔をしたが、一応、納得してくれたようだ。ただ、俺から離れる時に呟いた言葉が気になった。
「役立たずはさっさと死ねばいいのに」
バーソロミューのことかと思った俺は、ちょっとひどいことを言う奴だなと思った。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる