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第4話:貧民街のボス
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石窟寺院で高僧プラカーシュが殺された件が発覚し役場は騒然となった。
門番が衛士長のティエットに詰問されている。
「多分、荷車で汲み取り作業をやっているグエンって奴の仕業です。いつもは一人なのに今回はカイって奴もつれてました」
「ちゃんと身体検査をしたんだろうな」
「ええ、武器は持ってなかったんですけど……」
さえない顔つきの門番を見て、こいつには何かしらの罰を与えるべきだろうが、そんなことは後回しだとティエットは思った。
「首を切り落として持ち帰るなんて、いかれてますね。なんか相当恨みがあったんでしょうか」
「それはグエンって奴を捕まえて聞いてみるしかないな。とりあえず、お前は他の衛士たちと貧民街のグエンの家を捜索しろ。私はプラカーシュ様に恨みをもっている奴がいないか、出身の村を訪ねることにする」
部下たちが去った後、中年太りの男がティエットに話しかけてきた。
「今回の件、お前の仕業じゃないだろうな」
「まさか、プラカーシュの身辺調査はしてましたが、さすがに殺しなんてしませんよ」
「まあ、うるさい奴がいなくなってこっちは助かったがな」
衛士長のティエットは古参幹部の僧侶たちの派閥に入っている。
改革派の僧侶だったプラカーシュは汚職や派閥争いばかりしている宗教界に対して批判的な態度をとっていた。そのため、古株の僧侶たちから煙たがられていた。
そこで、なにか弱みがないか衛士長のティエットがプラカーシュの身辺を探っている最中だった。
ティエットとしてはプラカーシュに起こったことは単なる強盗の仕業としか思えなかったが。
……………………………………………………
その頃、カイは馬を走らせて貧民街のボスである兄のボーのところに逃げ込んだ。
「僧侶のプラカーシュを殺したって! お前、大変なことをしでかしたな」
胆のすわった大男でめったに物事に動じないボーも、弟のカイの話を聞いて驚愕している。
大雨で全身ずぶ濡れのカイは焦燥した顔で言った。
「殺すとは聞いていなかったんだよ。ダンが暴走したのか、それともアヤンって外国人と最初からそんな図り事をしていたのかも」
「何で先に俺に相談しなかったんだ」
「話したら止められると思ったからだよ」
「捕まったら、お前死刑だぞ」
「頼むよ、兄貴、助けてくれよ」
全く、このお調子者の弟のせいで、何度面倒をかけられたことか。
「お前は姿を見られていないんだな」
「ああ、見られていない。桶の中に隠れていたんだ」
兄に見捨てられるのが怖いカイは嘘をついた。
「そうか。とにかくプラカーシュを殺した奴らを皆殺しにすればいい。口封じだ。政府には高僧プラカーシュ様を殺した奴らの敵討ちとか適当に言えばいい。政府から褒美をもらえるかもしれない。ついでに宝石はいただく」
ボーとカイは雨の中、アヤンたちの追跡を開始した。
二人が待ち合わせ場所だった古代遺跡に到着して、中に入るとダンの首が転がっていた。
他にもこの遺跡の衛士とグエンが倒れている。
床の上は血まみれだ。
震えながらダンの首を指さすカイ。
「こいつが坊さんの首を切ったんだ」
「殺されてるじゃないか。取引相手にだまされたのか」
カイが床の上でうずくまっているグエンの様子を見る。
「グエンも死んでるみたいだよ、兄貴」
すると、遺跡の衛士がうめき声をあげた。
ボーが抱き起こし質問する。
「おい、いったい何が起こった。すぐに助けを呼んでやるから」
「……不審な連中が地下室に入っていくのを偶然見て……そしたら、外国人がいてこの有様だ……」
「そいつらはどこに行った」
「……渡船場だ……そう連中が話しているのを聞いた……」
「そうか。すまんな、今、楽にしてやる」
ボーは剣で衛士の首の頸動脈を切断した。
血が噴き出す。
「あ、兄貴、助けるんじゃないのかよ」
「どうせ助からんよ。それにもしかしたら、お前が関わっていることを聞いていたかもしれん」
カイは何となく後ろめたい気分になった。
「せめて、埋葬でもしてやりましょうか。グエンも一緒に」
「そんな暇は無いだろ」
その後、机の上のプラカーシュの生首を指差すカイ。
「プラカーシュの首はどうします」
「首なんて持ち歩いたら、下手したら俺たちがこの坊さんを殺したと思われるじゃないか。ほっとけよ」
ボーはカイを促して地下室を後にした。
門番が衛士長のティエットに詰問されている。
「多分、荷車で汲み取り作業をやっているグエンって奴の仕業です。いつもは一人なのに今回はカイって奴もつれてました」
「ちゃんと身体検査をしたんだろうな」
「ええ、武器は持ってなかったんですけど……」
さえない顔つきの門番を見て、こいつには何かしらの罰を与えるべきだろうが、そんなことは後回しだとティエットは思った。
「首を切り落として持ち帰るなんて、いかれてますね。なんか相当恨みがあったんでしょうか」
「それはグエンって奴を捕まえて聞いてみるしかないな。とりあえず、お前は他の衛士たちと貧民街のグエンの家を捜索しろ。私はプラカーシュ様に恨みをもっている奴がいないか、出身の村を訪ねることにする」
部下たちが去った後、中年太りの男がティエットに話しかけてきた。
「今回の件、お前の仕業じゃないだろうな」
「まさか、プラカーシュの身辺調査はしてましたが、さすがに殺しなんてしませんよ」
「まあ、うるさい奴がいなくなってこっちは助かったがな」
衛士長のティエットは古参幹部の僧侶たちの派閥に入っている。
改革派の僧侶だったプラカーシュは汚職や派閥争いばかりしている宗教界に対して批判的な態度をとっていた。そのため、古株の僧侶たちから煙たがられていた。
そこで、なにか弱みがないか衛士長のティエットがプラカーシュの身辺を探っている最中だった。
ティエットとしてはプラカーシュに起こったことは単なる強盗の仕業としか思えなかったが。
……………………………………………………
その頃、カイは馬を走らせて貧民街のボスである兄のボーのところに逃げ込んだ。
「僧侶のプラカーシュを殺したって! お前、大変なことをしでかしたな」
胆のすわった大男でめったに物事に動じないボーも、弟のカイの話を聞いて驚愕している。
大雨で全身ずぶ濡れのカイは焦燥した顔で言った。
「殺すとは聞いていなかったんだよ。ダンが暴走したのか、それともアヤンって外国人と最初からそんな図り事をしていたのかも」
「何で先に俺に相談しなかったんだ」
「話したら止められると思ったからだよ」
「捕まったら、お前死刑だぞ」
「頼むよ、兄貴、助けてくれよ」
全く、このお調子者の弟のせいで、何度面倒をかけられたことか。
「お前は姿を見られていないんだな」
「ああ、見られていない。桶の中に隠れていたんだ」
兄に見捨てられるのが怖いカイは嘘をついた。
「そうか。とにかくプラカーシュを殺した奴らを皆殺しにすればいい。口封じだ。政府には高僧プラカーシュ様を殺した奴らの敵討ちとか適当に言えばいい。政府から褒美をもらえるかもしれない。ついでに宝石はいただく」
ボーとカイは雨の中、アヤンたちの追跡を開始した。
二人が待ち合わせ場所だった古代遺跡に到着して、中に入るとダンの首が転がっていた。
他にもこの遺跡の衛士とグエンが倒れている。
床の上は血まみれだ。
震えながらダンの首を指さすカイ。
「こいつが坊さんの首を切ったんだ」
「殺されてるじゃないか。取引相手にだまされたのか」
カイが床の上でうずくまっているグエンの様子を見る。
「グエンも死んでるみたいだよ、兄貴」
すると、遺跡の衛士がうめき声をあげた。
ボーが抱き起こし質問する。
「おい、いったい何が起こった。すぐに助けを呼んでやるから」
「……不審な連中が地下室に入っていくのを偶然見て……そしたら、外国人がいてこの有様だ……」
「そいつらはどこに行った」
「……渡船場だ……そう連中が話しているのを聞いた……」
「そうか。すまんな、今、楽にしてやる」
ボーは剣で衛士の首の頸動脈を切断した。
血が噴き出す。
「あ、兄貴、助けるんじゃないのかよ」
「どうせ助からんよ。それにもしかしたら、お前が関わっていることを聞いていたかもしれん」
カイは何となく後ろめたい気分になった。
「せめて、埋葬でもしてやりましょうか。グエンも一緒に」
「そんな暇は無いだろ」
その後、机の上のプラカーシュの生首を指差すカイ。
「プラカーシュの首はどうします」
「首なんて持ち歩いたら、下手したら俺たちがこの坊さんを殺したと思われるじゃないか。ほっとけよ」
ボーはカイを促して地下室を後にした。
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