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第3話:カイの逃走
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ダンはプラカーシュの首を持ってきた麻袋に入れた。
そして、動揺しているグエンとカイに言った。
「さっさと帰ろうぜ」
グエンはプラカーシュの血を浴びて真っ赤になった自分の体を見てわめいた。
「こんな血まみれになった姿で戻ったら門番にバレるだろ」
正直のところ、ここからさっさと逃げ去りたいがグエンは足が悪いので走れない。
逃げたらダンの奴に殺されるだろう。
ダンはグエンに水筒を渡す。
「水で顔を洗えよ。それからこの布で体を覆え」
入口まで戻り、ダンは再び桶に隠れる。
グエンは怯えた顔で小声でカイを非難した。
「えらい事に巻き込みやがって。どうするんだよ、バレたら俺たち死刑だぞ」
「お、俺だって殺すなんて聞いてないよ」
カイも顔面が真っ青になっている。
外は凄い暴風雨だ。
裏口まで荷車を運んで行くと門番も見張り小屋から出ることはせずに、グエンの顔をちらりと見て手で合図をするだけだ。
門が開き、何事も無かったようにグエンたちは寺院の外に出た。
待ち合わせの場所へ行くために、来た時とは別の道を通る。
荷車を引いていると、豪雨の中、少し離れた場所で馬を畜舎に入れようとしている老人が見えた。
その時、突然、荷車が重くなったとグエンが思ったら、いつの間にか後ろから押していたはずのカイがそっと近づいてきた。
カイがグエンに囁く。
「これは下手したら俺たちもダンの奴に殺されちまうよ。逃げようぜ」
「俺は足が悪いんだ、走れない。捕まっちまうよ」
「そうか、仕方が無い。悪いな、グエン」
カイはグエンを見捨てて、馬の方に向かって脱兎のごとく走って行く。
それに気づいたダンが桶から飛び出した。
暴風雨の中、カイを追いかける。
「待て、この野郎!」
カイは馬の手綱を持っている老人に近づくと、顔面をぶん殴る。
「悪いな、爺さん」
いきなり殴られた老人は地面に倒れ、カイはすばやく馬に乗ると、そのまま走らせた。
追っかけてきたダンは剣でカイに斬りかかるが馬には追いつけない。
そのままカイは逃走した。
腹の虫がおさまらないのか、ダンが倒れて驚いている老人に剣を振る。
「この、くそったれが!」
悲鳴を上げる間もなく、その老人は血を吹き出して絶命した。
戻って来たダンにグエンは抗議した。
「あの爺さんは全く関係ないじゃないか」
「うるさい。俺は腹が立ってんだよ。あのカイの野郎、後で必ず見つけてぶっ殺してやる。さて、もう荷車も必要無いな」
グエンは仕方が無く荷車を捨てて、ダンと一緒に待ち合わせ場所へ向かった。
……………………………………………………
古代遺跡が見えてきた。
建物の周りにはいろんな石像が並んでいる。
石造りのこの遺跡の地下室でアヤンという外国人が待っているはずだ。
しかし、今、腰に剣を差した男が遺跡の周りを歩いているので近づけない。
グエンとダンは遺跡から少し離れた木の陰に隠れて様子を見る。
ダンがイライラしている。
「あいつは何だよ」
「この遺跡の衛士じゃないか。暴風雨なんで見回りでもしてるんだろ」
衛士と思われる人物が、石像にロープを巻いて暴風対策をしている。
「こんな廃墟、放っとけよ!」
ダンがますますイライラして、グエンを小突く。
「痛い」
「うるせえ、黙ってろ」
ったく、このダンって野郎は狂ってる。
ダンとグエンはしばらくの間、衛士が消えるのを待った。
雨と風はますます激しくなっていく。
高僧殺害の片棒を担いでしまった。
俺はどうすればいいんだ。
カイの誘いなんか、きっぱりと断ればよかったとグエンは後悔した。
ようやく衛士がいなくなったので、ダンとグエンは遺跡に近づき、石造りの階段を下りて地下室に入った。
その一室に肌は真っ黒で鷲鼻の男が椅子に座って待っていた。
こいつがアヤンかとグエンは思った。
倉庫にでも使われている部屋なのか、汚い机と椅子が置いてあるだけの殺風景な部屋だ。
机の上にはランプが置いてある。
部屋の中を薄暗く照らしていた。
アヤンが薄笑いでダンに聞く。
「仕事はうまくいったかい」
ダンがいつものように無表情で言った。
「ああ、ちゃんとプラカーシュの首は持ってきたぞ」
アヤンがダンたちに勧めた。
「まあ、座れよ」
ダンとグエンが入口を背にして座る。
アヤンがダンに言った。
「首を見せろよ」
ダンが言い返す。
「金と交換だ」
「その前に本物かどうか確認するだけだよ」
アヤンは依然として薄笑いをしている。
「ちっ!」
舌打ちしながら、ダンは麻袋からプラカーシュの首を出して、ドカッと机に置いた。
プラカーシュの生首を見ながらアヤンがせせら笑う。
「ふん、お偉い坊さんもこうなったら終わりだな」
「早く、金を出せよ」
ダンがアヤンをせかす。
「ああ、わかったよ」
すると、アヤンが指をはじく。
「グエ!」
突然、ダンの胸から槍が突き出た。
それを見たグエンはびっくりして思わず立ち上がった。
槍が引き抜かれダンの胸から血が吹き出る。
その槍がすばやく、今度はグエンの腰を貫いた。
グエンは自分の腹から槍が突き出ているのを見て悲鳴をあげた。
「ウギャア!」
槍が引き抜かれる。
グエンは気を失って床に倒れた。
アヤンがプラカーシュの額から宝石を引きちぎり、槍を持った男に言った。
「おい、クリシュナ、こいつらにとどめを刺しな」
ダンが胸を抑えて苦しがっている。
「お前ら、だましやがって……」
クリシュナと呼ばれた男が槍を床に置いて、腰に差していた剣でダンの首を刎ね飛ばした。
剣が一閃して、ダンの首が床の上を転がる。
クリシュナが気絶しているグエンにもとどめを刺そうとする。
すると、騒ぎを聞きつけたのか先ほど遺跡の見回りをしていた衛士が入ってきた。
ダンの首が床に転がっているのを見て、驚いて叫んだ。
「お前ら、こんなところで何をしてるんだ!」
その衛士が剣を抜いた。
アヤンも剣を抜いて、衛士と格闘になった。
アヤンが剣で衛士の腰を貫いた。
よろめいた衛士を後ろからクリシュナが斬りつける。
悲鳴を上げて、衛士は床に倒れた。
アヤンがクリシュナを促す。
「新手が来るかもしれないからさっさと逃げよう」
クリシュナがグエンを指さして言った。
「こいつはどうします」
「ほっとけよ、じきに死ぬだろ。さっさと渡船場まで逃げるぞ」
床の上で動かないグエンをおいて、アヤンとクリシュナは地下室を飛び出した。
そして、動揺しているグエンとカイに言った。
「さっさと帰ろうぜ」
グエンはプラカーシュの血を浴びて真っ赤になった自分の体を見てわめいた。
「こんな血まみれになった姿で戻ったら門番にバレるだろ」
正直のところ、ここからさっさと逃げ去りたいがグエンは足が悪いので走れない。
逃げたらダンの奴に殺されるだろう。
ダンはグエンに水筒を渡す。
「水で顔を洗えよ。それからこの布で体を覆え」
入口まで戻り、ダンは再び桶に隠れる。
グエンは怯えた顔で小声でカイを非難した。
「えらい事に巻き込みやがって。どうするんだよ、バレたら俺たち死刑だぞ」
「お、俺だって殺すなんて聞いてないよ」
カイも顔面が真っ青になっている。
外は凄い暴風雨だ。
裏口まで荷車を運んで行くと門番も見張り小屋から出ることはせずに、グエンの顔をちらりと見て手で合図をするだけだ。
門が開き、何事も無かったようにグエンたちは寺院の外に出た。
待ち合わせの場所へ行くために、来た時とは別の道を通る。
荷車を引いていると、豪雨の中、少し離れた場所で馬を畜舎に入れようとしている老人が見えた。
その時、突然、荷車が重くなったとグエンが思ったら、いつの間にか後ろから押していたはずのカイがそっと近づいてきた。
カイがグエンに囁く。
「これは下手したら俺たちもダンの奴に殺されちまうよ。逃げようぜ」
「俺は足が悪いんだ、走れない。捕まっちまうよ」
「そうか、仕方が無い。悪いな、グエン」
カイはグエンを見捨てて、馬の方に向かって脱兎のごとく走って行く。
それに気づいたダンが桶から飛び出した。
暴風雨の中、カイを追いかける。
「待て、この野郎!」
カイは馬の手綱を持っている老人に近づくと、顔面をぶん殴る。
「悪いな、爺さん」
いきなり殴られた老人は地面に倒れ、カイはすばやく馬に乗ると、そのまま走らせた。
追っかけてきたダンは剣でカイに斬りかかるが馬には追いつけない。
そのままカイは逃走した。
腹の虫がおさまらないのか、ダンが倒れて驚いている老人に剣を振る。
「この、くそったれが!」
悲鳴を上げる間もなく、その老人は血を吹き出して絶命した。
戻って来たダンにグエンは抗議した。
「あの爺さんは全く関係ないじゃないか」
「うるさい。俺は腹が立ってんだよ。あのカイの野郎、後で必ず見つけてぶっ殺してやる。さて、もう荷車も必要無いな」
グエンは仕方が無く荷車を捨てて、ダンと一緒に待ち合わせ場所へ向かった。
……………………………………………………
古代遺跡が見えてきた。
建物の周りにはいろんな石像が並んでいる。
石造りのこの遺跡の地下室でアヤンという外国人が待っているはずだ。
しかし、今、腰に剣を差した男が遺跡の周りを歩いているので近づけない。
グエンとダンは遺跡から少し離れた木の陰に隠れて様子を見る。
ダンがイライラしている。
「あいつは何だよ」
「この遺跡の衛士じゃないか。暴風雨なんで見回りでもしてるんだろ」
衛士と思われる人物が、石像にロープを巻いて暴風対策をしている。
「こんな廃墟、放っとけよ!」
ダンがますますイライラして、グエンを小突く。
「痛い」
「うるせえ、黙ってろ」
ったく、このダンって野郎は狂ってる。
ダンとグエンはしばらくの間、衛士が消えるのを待った。
雨と風はますます激しくなっていく。
高僧殺害の片棒を担いでしまった。
俺はどうすればいいんだ。
カイの誘いなんか、きっぱりと断ればよかったとグエンは後悔した。
ようやく衛士がいなくなったので、ダンとグエンは遺跡に近づき、石造りの階段を下りて地下室に入った。
その一室に肌は真っ黒で鷲鼻の男が椅子に座って待っていた。
こいつがアヤンかとグエンは思った。
倉庫にでも使われている部屋なのか、汚い机と椅子が置いてあるだけの殺風景な部屋だ。
机の上にはランプが置いてある。
部屋の中を薄暗く照らしていた。
アヤンが薄笑いでダンに聞く。
「仕事はうまくいったかい」
ダンがいつものように無表情で言った。
「ああ、ちゃんとプラカーシュの首は持ってきたぞ」
アヤンがダンたちに勧めた。
「まあ、座れよ」
ダンとグエンが入口を背にして座る。
アヤンがダンに言った。
「首を見せろよ」
ダンが言い返す。
「金と交換だ」
「その前に本物かどうか確認するだけだよ」
アヤンは依然として薄笑いをしている。
「ちっ!」
舌打ちしながら、ダンは麻袋からプラカーシュの首を出して、ドカッと机に置いた。
プラカーシュの生首を見ながらアヤンがせせら笑う。
「ふん、お偉い坊さんもこうなったら終わりだな」
「早く、金を出せよ」
ダンがアヤンをせかす。
「ああ、わかったよ」
すると、アヤンが指をはじく。
「グエ!」
突然、ダンの胸から槍が突き出た。
それを見たグエンはびっくりして思わず立ち上がった。
槍が引き抜かれダンの胸から血が吹き出る。
その槍がすばやく、今度はグエンの腰を貫いた。
グエンは自分の腹から槍が突き出ているのを見て悲鳴をあげた。
「ウギャア!」
槍が引き抜かれる。
グエンは気を失って床に倒れた。
アヤンがプラカーシュの額から宝石を引きちぎり、槍を持った男に言った。
「おい、クリシュナ、こいつらにとどめを刺しな」
ダンが胸を抑えて苦しがっている。
「お前ら、だましやがって……」
クリシュナと呼ばれた男が槍を床に置いて、腰に差していた剣でダンの首を刎ね飛ばした。
剣が一閃して、ダンの首が床の上を転がる。
クリシュナが気絶しているグエンにもとどめを刺そうとする。
すると、騒ぎを聞きつけたのか先ほど遺跡の見回りをしていた衛士が入ってきた。
ダンの首が床に転がっているのを見て、驚いて叫んだ。
「お前ら、こんなところで何をしてるんだ!」
その衛士が剣を抜いた。
アヤンも剣を抜いて、衛士と格闘になった。
アヤンが剣で衛士の腰を貫いた。
よろめいた衛士を後ろからクリシュナが斬りつける。
悲鳴を上げて、衛士は床に倒れた。
アヤンがクリシュナを促す。
「新手が来るかもしれないからさっさと逃げよう」
クリシュナがグエンを指さして言った。
「こいつはどうします」
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