スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗

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第170話:俺たちはスライム退治を続けているが、一か月後には忘れられているぞ、 まあ、スライム退治なんて、どうでもいいようなもんすからね

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 俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
 普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。

 今は宿屋の屋根裏に住んでいて、副業で猫カフェのオーナーと山の湧き水の販売をしている。

 朝。
 今日も寒いぞ。

「うーん、うーん、腰が痛い」
「何すか、また腰痛すかね。今日もずる休みっすか。そして、ガマガエルリーダーは台車で遊んで、今度は村の公園の池に落ちて溺れ死んで最終回すかね」

「おい、だから勝手に殺すなよ。今日は冒険者ギルドに行くぞ」
「途中でぶっ倒れて、また台車で運ばれるんすかね」

「うるさいぞ。そう何度も倒れたりはせん、不屈の精神力で冒険してやるぞ」
「爺さんが無理しなくていいのに」

「いや、とにかく頑張るぞ。俺の華麗な冒険を歴史に刻むのだ」
「何をバカな事を言ってるんすか。車椅子に乗った老人にも負ける冒険者のくせに」
「うるさいぞ」

 まあ、そんなわけで、腰が痛いが何とか杖をついて、冒険者ギルドに行く。

「ところで、壊れて修理に出した手押し車はいつ戻ってくるんすかね」
「いろいろと改造してもらっているので、まだ時間がかかる。それまで杖を使って歩くしかないな」

「何すかね、改造って」
「モンスター退治用に強化する予定だ」

「強化するって、手押し車を強化してどうするんすか」
「まあ、出来上がるまで待て」

「出来あがる前に、あの世に逝ってそうっすね。腰痛持ちのハゲデブブサイクのリュウマチ持ちの歯抜けの爺さんは」
「うるさいぞ」

 さて、冒険者ギルドに到着。
 で、依頼されたのは、いつも通りのスライム退治だ。
 
「やれやれ。不屈の精神力でギルドまで到達したの、いつもと同じスライム退治か」
「清掃よりはマシじゃないすかね。だいたいギルドまで歩くだけで疲れているハゲデブブサイクの腰痛持ちの爺さんにはスライム退治さえもったいないっすよ」
「うるさいぞ」

 依頼の場所に到着。
 村役場が倉庫に使用している二階建ての建物。

 そこにスライムが発生したらしい。

 何ともつまらない仕事だな。

「おい、腰が痛いから、階段を上るのがつらい。俺は一階を担当するから、お前は二階に行ってくれ」
「こんな階段も上れないなんて、もうガマガエルリーダーは完全に終わってますね」

「ガマガエルではない。とにかく腰痛が治るまでは養生することにしているんだ」
「もうマジに爺さんすね」
「うるさいぞ」

 そんなわけで、相棒は二階へ上っていく。
 俺は一階の部屋に入る。

 ゴミしか置いてないと聞いていたんだが、ずいぶんと書類が置いてある。
 他にも汚らしい布やら、何だか判別の付かない本とか。
 俺はそれをどんどん外に出していく。

 ああ、疲れた。
 すると、隅っこにスライム発見。

 バシッ!

 一匹だけだ。
 今日の仕事はこれだけか。

 おもろーないな。

 相棒も二階から下りてきた。

「どれくらい倒した」
「三匹っすね」

 たいした数ではないな。

「ところで、何すか。このゴミは」
「ああ、何だか、部屋にいっぱいあってさあ。どうしよう」

「確か、村役場からは置いてあるのはゴミなんで、全部焼き捨ててほしいってことでしたよ」
「うむ、そうか」

 俺と相棒は焚火を焚いて、書類をどんどん放り込んでいく。
 炎で紙の書類が焼けて灰になっていく。

 俺は放り込んでいく途中、ふと、いくつかの書類を見てみる。
 五十年前くらいの書類だ。

「うーん」
「どうしたんすかね」

「いや、何やら大昔の村の行政関係の書類なんだが、かなりきちんと書いてあるぞ」
「それがどうしたんすかね」

「この書類を作成した役人は、自分の仕事をきっちりとする人だったんじゃないのか。そして、完成した仕事に満足したのではないかな。もう引退しているだろうな。いや、すでにこの世にいないかもしれないぞ。そして、結局、いくら真面目に仕事をして書類を作成しても、最後は焚火で燃やされる羽目になるんだ。何だか悲しいなあ」
「そんなもんじゃないすかね、事務書類なんて。芸術品じゃないんだから。もう必要がないわけっすから仕方がないっすよ」

「しかし、この書類を作成した人の苦労や時間はどうなったんだ。全く無駄だったのか」
「そんなことないすよ。当時は役に立ったんじゃないすかね。でも、今は必要無しと」

「うーん、でも、生きた証みたいなものが全て灰になってしまうんだぞ。俺たちはスライム退治を続けているが、一か月後には忘れられているぞ」
「まあ、スライム退治なんて、どうでもいいようなもんすからねえ」

「なんだか、悔しいんだなあ。ドラゴン退治すれば、いろんな記録に残って、未来永劫、人々の記憶に残るのではないか」
「残ったとしても、それを行ったリーダーはあの世に逝ってるんだから、どうでもいいんじゃないすかね」
「それはそうなんだがなあ」

 何だか釈然としない気持ちにもなるのだ。

「俺の生きた証はどこにあるのか。みんな忘れられるのか」
「そんな、歴史に名を残す人なんて、ほんの一握りっすよって、前にもこんな会話をしたような気がしますね。つーか、ガマガエルリーダーはすでに誰にも相手にされてないっすけど。台車の上に腹ばいになって移動する姿はみっともなくて、すぐに記憶から消し去りたいと見た人は誰しも思うんじゃないすかすね」
「うるさいぞ」

 しかし、俺は考える。
 みんな、ただ生きて、ただ死んでいくのか。

「でも、やっぱりおもろーないな」
「しょうがないすよ。わけわからないドラゴン退治を妄想したあげく、妙な場所に行ってあの世に逝くのは歯抜けの爺さんリーダーだけにしてくださいよ。俺っちを巻き込まないでくださいっすよ。つーか、そもそもドラゴン退治なんて依頼されるわけないんすから」
「うるさいぞ。先のことはわからないのだ。それに改良手押し車がいずれ納品されたら大冒険に出発するんだ」

「手押し車で大冒険ってなんすかね」
「とにかく大冒険するんだって……ゲホン、ゲホン」

 焚火の灰が舞って、それを吸い込んで俺は咳込んでしまう。

「爺さんが無理するとろくなことにならないっすよ」
「うるさいぞ。不屈の精神力で頑張るんだ」

 しかし、寒い中、焚火にあたっていると温かい。
 やはり、俺は爺さんか。

 大冒険なんてありえないのか。

 残念である。
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