スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗

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第77話:今度はどこが調子悪いんすか、リーダー、全身が調子悪い、全く動けないぞ

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 俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
 普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。

 朝から雨がザーザー降っている。
 今日は土砂降りだな。

 俺は安宿のベッドの上で横になって唸っている。

「うーん、うーん」
「どうしたんすか。今度はどこが調子悪いんすか、リーダー」

「何て言うか、全身が調子悪い。頭痛はするし、肩が痛い。背中も腰もお腹も痛い。膝が痛いし腕の肘も痛い。体が重い。全く動けないぞ」
「例の慢性膵炎の症状すかねえ」
「わからん」

 ああ、すっかり調子が悪くなってしまったなあ。

「このまま体が動かなくなって、死ぬんじゃないのか、俺は」
「でも養生しながら生活すれば、後三十年は生きられるって医者に言われたんすよね」
「まあ、そうなんだが、うーん、体が動かん」

「今日は雨っすからね」
「雨がどうした」
「天気病すよ。雨が降ると、頭痛や肩こり、全身倦怠感、関節痛、気分の落ち込みとかの症状が起きる病気っすね」
「そんな病気があるのか。確かに雨が降ると憂鬱な気分になるよなあ。それに俺はリュウマチで慢性膵炎だ。ああ、俺はこのまま体が動かなくなって死ぬんだ」
「大げさじゃないすか」

 隣のベッドでのんびりと寝転んでいる相棒。

「おい、仕事がさぼりたくての演技じゃないぞ。本当に調子が悪いんだぞ」
「別に疑ってないすよ。まあ、この大雨じゃあ、仕事にならないから今日は休みにしますか」
「うむ、そうするしかないな」

 俺と相棒は、ただぼんやりとベッドで横になっている。
 ヒマだ。

「おい」
「なんすか」
「これはもう冒険者とは言えないな。寝たきり老人じゃないか」
「しょうがないんじゃないすか。この大雨の中、スライム退治やってもしょうがないすよ」

「しかし、食費も足りなくなってきた状況だろ」
「この前、取ってきた山菜がまだ残ってますよ」

「山菜料理か。やれやれ。何なんだ、この人生は。本当ならドラゴン倒して英雄になってウハウハの豪勢な生活をしているはずだったのに。今や安宿で、ベッドの上で横になって体も動かせずに、ただ痛みを我慢する生活。つまらんぞ」
「つーか、最初からそんな華麗な人生なんてなかったんじゃないすか、リーダーには。ハゲでデブでブサイクだし」
「うるさいぞ。何度も言うがハゲデブブサイクは関係ないぞ」

 ああ、横になっているとまた眠くなってきた。雨音もなんだかうるさいというより心地よい気分にさせていく。

 しかし、冴えない人生だなあと思っていると、なにやら不気味な雰囲気に襲われる。何だろうと思っていると外から騒ぎ声が聞こえてきた。

「おい、なんか騒ぎが起きているぞ」
「ちょっと外を見てみますね」

 相棒が窓を開けて外を見た。

「大変すよ! ゾンビの集団が暴れてますよ」
「何だと!」

 俺は素早くベッドから起き上がり、剣を掴んだ。窓から外を見てみる。おお、いつの間にか大量のゾンビがそこら中で村人たちを襲っているぞ。いつ発生したんだ、こいつらは。

「よし、ここは俺たち冒険者の出番だぞ」
「しかし、敵が多過ぎっすよ。この部屋に立て籠もったほうがいいんじゃないすか」
「何言ってんだ、村人たちが襲われているんだ。助けなくては」

 俺は二階の窓からさっと地上に飛び降りる。

「かかってこい、ゾンビども」

 片っ端からゾンビどもを斬り倒す。しかし、次から次へとゾンビたちが襲って来た。相棒もやって来たが苦しい戦いだ。

「ウグ!」
「どうしたんすか、リーダー」
「クソ! ゾンビに噛まれた!」

 しまった、ゾンビに噛まれてしまった。俺もすぐにゾンビになってしまう。するとすぐ近くに真っ黒なローブを着た怪しげな男が立っているのが見えた。うむ、あいつがゾンビどもを操っているにちがいない。

「よし、俺はあの魔法使いに特攻するぞ! どうせ俺は死ぬんだ、お前は逃げろ!」
「そんなリーダーを見捨てられませんよ」
「いや、俺はゾンビに噛まれた。ゾンビになるなら、その前にあの悪党を倒して死んでやる!」

 俺はゾンビを操っている魔法使いに突進した。

「覚悟しろ! この野郎!」

……………………………………………………

 そこで目が覚める。
 なんだ、夢か。

「どうしたんすか、リーダー。なにを覚悟するんすか」
「ああ、夢の話しだ。ゾンビ軍団と戦う夢を見たんだよ。でも、夢の中で俺はさっと窓から飛び降りて、ゾンビを軽やかにバッタバッタと斬り倒していた。まるで若い頃に戻ったようだったぞ。ああ、昔に戻りたいなあ」

「本当に若い頃は軽やかに動いてたんすか。昔からのそのそとしか動けなかったから、スライム退治専門みたいな冒険者になったんじゃないすか、リーダーは」
「うるさいぞ。まあ、確かに冴えない冒険者ではあったな、若い頃も。しかし、腹は出てなかったし、髪の毛もフサフサだった」
「ブサイクは若い頃からっすかね」
「うるさいぞ。しかし、ブサイクなりにロマンスもあったもんだ。ああ、ホント若い頃に戻りたいよ。今や、ベッドの上で全く動けない体になってしまうなんて」

「全然動かせないんすか」
「ああ、痛くてなあ。もう全く動けないぞ。ゾンビが襲ってきても、少しも動けずに食われてしまうだろう。情けない。人生はつらいなあ」
「そんなことばっかり言ってると本当に動けなくなりまっすよ。おっと、そろそろ山菜料理でも食べますか」
「いや、食欲もない。ああ、このまま寝たきりで俺は死んでいくのだ」
「やれやれ。まあ、リーダーが腹をすかすまでちょっと待ちますかね」

 再び、俺と相棒は漫然とベッドの上で横になっているだけ。
 雨はますます降っている。

 うーん、雨音がちょっとうるさいな。
 眠れやしない。

 俺はただ目をつぶりじっとベッドの上で横になっている。
 ああ、つまらんなあと思っていると、突然、俺のハゲ頭にモノが落ちてきた。

「うわあ!」

 びっくりして、ベッドから飛び起きる。

「どうしたんすか」
「なんだか知らんが、突然、頭に攻撃を受けたぞ」

 びびっている俺をしらけた顔で見ている相棒。

「天井を見て下さいよ」
「うん? なんだ」

 俺が部屋の天井を見上げると水が垂れてきている。なんだ、雨漏りで水が頭に落ちてきただけか。

「どうやら雨漏りっすね。安宿ですからね。宿屋の主人に言っておきますか。それにしても全く体が動かせないって言ってたわりには、ずいぶんと素早く立ち上がりましたね。水滴がハゲ頭に落ちたくらいで。全然、元気じゃないすか」
「ううむ、面目ない。しかし、びっくりすると痛みを忘れるもんなんだなあ。おっと、また体中が痛くなってきた」

「まあ、とにかく、飯にしますか」
「そうだな、体は痛いがせっかく起きたことだし」
「じゃあ、また食堂に行ってきます」

 相棒が山菜を持って調理場へ行った。
 
 しかし、体調が悪いのは事実なんだよな。
 ああ、俺の人生はこれからどうなるのだろう。
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