孤児院育ちのエイミー

守 秀斗

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第8話:村であれこれ活動する

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 さて、次の日から、ちまちまとこの小さい村周辺のスライムを倒しながら小銭を稼ぐ。出現するスライムは最弱スライムばっかり。あたしもアレックスとクリスたちと暮らしていた時に何匹も退治したので、だいぶナイフの使い方が上達したのか一人でも簡単に倒せる。

 たまに、大勢で襲いかかってきて追い回される時もあるが、そういう時は木の上に登ってあらかじめ何ヵ所かに置いてある大きい石を投げつける。あっさり、スライムたちはぐしゃっと潰れて簡単に退治できた。とりあえず、無一文なのでお金を貯めなくてはいけないからなあ。

 この村はこじんまりとした人口も少ない静かな村だ。アレックスたちと暮らしていたときみたいに木の上に自分の家でも作ろうとしたら村の人に怒られた。勝手な事をするなと言ってるみたい。よそ者なんで言葉も通じないし、あたしには、みんな、よそよそしいなあ。ちょっと悲しい。結局、いまだに冒険者ギルドに居候している。ギルドの怖い顔した主人もしょうがないなあって感じで許してくれている。いい人だ。それにしても、どうやら何日経ってもナロードリア王国の警官は来ないので外国までは追って来ないようだ。

 ある日、雨がたくさん降っているので、仕事は休むことにした。冒険者ギルドの窓ガラスに強い雨がたたきつけてくる。椅子に座って窓からぼんやりと外を見ていると、お母さんの顔が浮かんできた。体を悪くしてベッドに横になっている。あたしはすぐ側に立っている。

 その日も雨が降ってきた。窓からその風景を見ながら、お母さんが、「空と大地は昔、恋人同士で一緒だったのよ。しかし、その後、離されてしまった。雨が降るのは、二人が離されて、哀しくなって涙を流すからなのよ」って、どこかしら、ぼんやりとつぶやくようにしゃべっている。あたしは、その時、雨はやっぱり単なる雨なんじゃないかなあと思ったけど。あたしのお母さんはロマンチックな人だったのかなあ。

 そんなことを思い出して、なんとなくもの悲しい気分になっていたら、村の人たちが大勢走っているのが見えた。何事かと外に出てみると近くの川の方へ集まってみなさん大勢で騒いでいる。川が増水して堤防が決壊しそうだとあわてている。村人のみなさんが土嚢を積んでいるので、よそ者のあたしも、えっちらおっちらと重たい土嚢を運んで手伝う。

 けど、どんどん水位が上がってきた。決壊しそうな箇所があるぞ。これは、やばいんじゃないかと思っていたら、そうだ、この魔法銃の弾丸に、「土の固まり」って弾があったのを思い出した。「雪の固まり」の弾が大きい雪だるまになっていったんなら、これも大きい土の固まりになるのではと、ちょっと身振り手振りで村人のみなさんにどいてもらってその弾を撃ってみた。

 土の固まりが発射され、あっさりと決壊寸前だった土手の穴がふさがった。それを見た村人たちにたいそう褒められた。ちょっとした報奨金までいただいた。川の決壊を防いだおかげで、一応、よそ者のあたしを受け入れてくれたみたい。やはり、何か役に立つことをしないとね。

 その後、仕事の無い日は村の畑の作業を手伝ったり、細々な雑用をしたりして、村の人たちとしゃべったりしていたら簡単な日常会話くらいはできるようになった。当分、この国で暮らすつもりなので冒険者ギルドの主人に、「読み書きを教えてください、お願いします!」と、またうるさくわめいたら、仕方がないなあといった感じで、毎日、ヒマを見ては少しづつ教えてくれた。しかも、頭が悪く覚えのよくないあたしに対して懇切丁寧に教えてくれる。やっぱりいい人だ。ちなみにお名前はレオンさん。

 レオンさんに読み書きを教えてもらいつつ、相変わらず、ちまちまとスライム退治をする。しかし、そんなに毎日スライムが出現するわけではないしヒマな時もある。そういう時は村人から頼まれて暖炉の煙突掃除を引き受けたりした。

 大人が煙道に入るのは難しく、あたしぐらいの大きさが一番ちょうどいい体格らしい。小さい村なんで、家も小さくほとんど真っすぐな煙突ばかりだけど、中には宿屋みたいにくねくねと曲がった煙道が何本もあって、ちょっとした迷路のようになっているところもあり、あたしとしてはダンジョン気分を味わってその点は楽しかったりした。ブラシで煙道に付いたすすをこすり落とす作業はちょっと大変だったけどね。全身すすだらけになったが結構な報酬をもらった。業者に頼むより、ずっと安いらしいんだけど。

 それで初めて真っ黒な姿で冒険者ギルドに戻った時は、レオンさんがあきれてギルドの建物にある風呂に入るのを許してくれた。あたしが風呂に入っているあいだに、服を洗濯までしてくれて、その代わりに近くの村人の家から子供用のパジャマを借りてきてくれた。いい人だなあ。まあ、ロビーがすすだらけになるのが嫌だったのかもしれないけど。

 そんなふうに過ごしていたら、この村に来てから四ヵ月くらい経った頃、雪が降ってきた。もう、十二月、冬か。小さい頃はお母さんと一緒のベッドで固まって寝ていた。お母さんの温もりが懐かしいなあ。

 ある日、寒い中スライム退治が終わった後、冒険者ギルドに戻って暖炉の前で冷えた体を温めているとカッコいい冒険者の男性が入ってきた。暖炉の前に座り込んでいるあたしに向かってにこやかに近づいてくる。よく見るとお父さんだ。あたしはびっくりして起き上がった。生きてたんだ! 「エイミー、大きくなったなあ」と抱き上げてくれる。思わず、あたしもお父さんに抱きつく。 

 気がつくと、あたしは毎晩寝ている定位置の部屋の隅っこに運ばれていて、暖炉はすでに消えていた。なんだ、夢か。もう、お父さんはこの世にいないんだよなあ。懐かしくも、ちょっと悲しい気分になった。けど、あたしは確か暖炉の前にいたはずなのに。うつらうつらしていたら、つい、そのまま眠ってしまったのかな。ただ、いつもより多くの毛布にくるまれていた。これはレオンさんが毛布を増やしてくれたんだろう。本当にやさしい人だ、いつかお礼をしたい。レオンさんは何が好きなんだろう? やっぱり、お酒かな。

 その後、レオンさんに読み書きを教えてもらった成果を試したいと思って、村の掲示板を見に行ってみた。すると、一応、何となくは読めた。そこには、村で起きた事件や活動の細々とした報告の他に、「グライダー大会開催」とあった。はて、グライダーとは何だろうと、今日、行われるその大会の開催場所に行ってみると少し小高い丘に大勢集まっている。

 空を見上げると何か変なモンスターが空中を飛んでいると思ったら、人間が木の板にぶら下がっていてそれが飛んでいるぞ。気球のようにただ浮かんでいるだけじゃなくてちゃんと操縦しているようだ。すごい! 鳥みたいだ。見物人に、「あの人は魔法使いですか」と聞いたら、「普通の人がグライダーというものを操縦しているんだよ」と教えてくれた。

 魔法が使えない一般人でも鳥のように空を飛べるんだ! カクムール王国は進んでいるなあ。どうやら、つい最近、グライダーなるものが発明されたようだ。気持ちよさそうに飛んでいる。風よけのためか、頭に耐寒帽子と防風眼鏡を付けている人もいる。しかし、よく見ると飛び立とうとして、全然飛べずに、ただ坂道を走っている人や、いきなり急降下で落っこちている人もいる。グライダーの形も大小さまざま、いろんな種類があって千差万別だな。

 そして、着地する時はカッコよく地面に降り立つ人もいれば、足をバタバタさせて、すッ転びそうになっている人もいる。機体の下に車がついていて滑るように着陸するのもあった。中には、ひっくり返ってしまって壊れてるグライダーもあった。おまけに巨大なグライダーは着陸したら、一旦、ばらして部品ごと持って行くか、または、グライダーをそのまま大勢で担いで丘の上まで運んでいる。車が下についているグライダーはそのままロープで引っ張っていて、比較的運ぶのが楽そうだ。

 あたしは、その人たちに、「鳥のように羽ばたいて離陸することはできないんですか」と聞いたら、そういう事をやっている人もいるが全く飛べないんだそうだ。橋の上から両腕に翼をつけて羽ばたいて飛んだら、真っ逆さまに川に落ちて危うく溺れ死にそうになった人もいるみたい。鳥さんのように羽ばたいて飛ぶのは無理なのか。要するに、大きい紙飛行機みたいなもんかなあとあたしは思った。

 見ていたら、あたしも飛んでみたくなった。「グライダーに乗らしてくれませんか」と頼んだが、「子供はケガするとまずいので、ダメ」と断られちゃった。まあ、仕方がないか。けど、でっかい紙飛行機なら、あたしにも作れるのではないかなあ、頭は悪いけど。草っ原に寝転んで陽が落ちるまでグライダーが飛んでいるのを眺めながら、いつか自分も乗ってみたいと思ったりした。

 さて、いいかげんスライム退治も飽きたんで、「もっと面白い仕事をさせてください、お願いします!」と、またもや冒険者ギルドでギャーギャー騒いだら、レオンさんはちょっとうんざりした顔で、「サイクロプス退治というのがあるが、どうだ、やってみるか」と言われた。「サイクロプスっていうのはどんなモンスターですか」と聞いたら、「一つ目の巨人で、人間の大人の三倍はあるぞ、強いし怖いぞー!」とレオンさんが立ち上がって、怖い顔をもっと怖くして、あたしに向かって太い両腕を大げさに振り上げる。怖いならやめろと追い返すつもりだったらしいがあたしは受けた。必殺の魔法銃があるもんね。サイクロプスは、たまに村の端っこのダニエルさんという人の畑に来て食い物目当てに暴れるらしい。

 けど、「もう冬だから、大根くらいしかないし来ない可能性が高い。多分、来ないんじゃないかなあ」とレオンさんが予想した。但し、来なくても、一応、畑の番人としての多少の報酬が出るそうだ。あたしはその畑に行って堂々と腕を組んで待つ。「ヒーローは一人で戦うもんよ! 笑顔でね」とは言うものの、ちょっと寒いな。上着がほしいなあ。

 指定された畑で待っていると、天気が曇ってきた。サイクロプスを待っている間に魔法銃の確認する。弾は、「雪の固まり弾」と「火弾」、「土の固まり弾」は使ったんで、残りは、「冷水弾」、「雷弾」、「竜巻弾」、「花粉弾」、「熱水弾」、「石弾」、「鉄弾」、「縄弾」だ。うーん、この中で一番強力そうなのが、やっぱり、「雷弾」かと思い、その弾を魔法銃に込める。

 それにしても、この魔法銃の弾の中で、「花粉弾」とか「縄弾」って、なんに使うのか、いまいちよくわからんなあ。そんなことを考えつつ、サイクロプスを待つ。しかし、なかなかサイクロプスが来ない。いつまで経っても来ない。どこまで待っても来ない。全然来ない。いつ来るんじゃ。こりゃ、来ないのかなあと、眠くなったのでつい横になって昼寝しちゃった。

 気がつくと、頭に角が生えたサイクロプスが目の前にいた。でかい! 確かに大人の三倍はある。あたしの顔を興味深そうにのぞき込んでいる。「うわ!」と叫んで、思わず反射的に横になったまま魔法銃を撃つがはずしちゃった。弾は遥か上空へと飛んで行った。サイクロプスが怒って、でかいこん棒持って追いかけて来たので畑の中を必死になって逃げ回る。「ひえー! 助けてー!」と小石を拾ってサイクロプスに投げつけるが当たっても全く役に立たない。

 畑の中をドタバタと逃げながら魔法銃に新たな弾を込めようとするがサイクロプスに追われてるのでうまくいかない。サイクロプスが振り回したこん棒があたしの頭を掠った。「殺されちゃうよー!」と逃げ回っていると急に空が暗くなったと思ったら、突然、でかいサイクロプスに雷が落ちて黒焦げになってぶっ倒れた。

 あの「雷弾」は空に向かって撃つものだったのだろうか、それとも自然現象かな。雨も降ってきたし。まあ、結果オーライ。雷は金属よりも、背の高いものに落ちるんだなあ、マリア先生が言ってた通りだ。けど、サイクロプスが暴れたおかげで、畑の大根などがメチャクチャになってしまった。畑の主のダニエルさんに文句を言われちゃった。「申し訳ありません」と謝る。「けど、まあ、かえって、畑を耕す手間が無くなったよ」と、一応、約束通りけっこう高額な報酬をもらった。

 だいぶ、お金が貯まった。そこで居候はやめることにして冒険者ギルドの主人で顔が怖いけど、実はやさしいレオンさんにはお礼を言って、宿屋に泊ることにした。久々にベッドで眠れるとスキップしながら村の真ん中辺りにある宿屋に行く。隣に服屋兼雑貨屋のような店があったので、ちょっとした外套とパジャマを買った。宿屋に行って、カウンターで手続きをしていたら車椅子の人がいる。歩けないのかな。かわいそう。従業員に聞いたら、車椅子割引サービスあるそうだ。ド田舎なのに先進的だなあ。

 廊下でその車椅子の人に会ったので部屋までその車椅子を押してやったら感謝された。その後、共同風呂に入ったりして、すっきりする。部屋に戻って、「わ~い、久々のベッドだ」と飛び跳ねていたら、隣の部屋の人にうるさいと怒られた。やれやれ。仕方がないので、とりあえず、おとなしく寝ることにした。

 しかし、眠れない。いまだに孤児院で夜中に暴れていた習慣がまだ残っているのだろうか。眠れないので、例のマリア先生の件について考える。誰がマリア先生を殺したのだろうか。強盗かな? けど、強盗が食事用フォークを使うだろうか。首に刺さってたって話だけど、マリア先生は背が高いから、あたしみたいなチビには無理だなあ。やっぱり、大人か。院長は病院だし、マルセル事務長は病気だし、残るはシャルロッテ先生とフィリップ爺さん、給食担当のアナベルおばさんだけだ。この三人が犯人とは思えん。やっぱり強盗か。それとも、先生がしゃがんでいる時に児童の誰かが刺したってことも考えられなくはないなあ。けど、なんでマリア先生を殺すんだろう? だいたい、あのフォークは全然尖っていなかったんだけどなあ。

 そんな事を考えていたら、あれ、なんだか煙くさい。これは火事だとあわてて廊下に出ると給湯室が燃えている。部屋に引き返して、魔法銃を取ってきて、「冷水弾」を込めて発射すると、冷たい水が銃口から噴射されて消火できた。まあ、ボヤ程度の火事だったけど宿屋の主人に、「いやあ、ありがとう。おかげで大火事にならずにすんだよ」と感謝され、今日の宿代は無料にしてくれた。
 
 あれ、気がつくと廊下の野次馬の中に、例の車椅子の人が立っている。「おい、あんた立てるじゃん」と指摘したら、あわてて全速力で走って宿屋の玄関から逃げて行った。割引サービス目当てかよ、せこいなあ。まあ、あたしには関係ないからどうでもいいかと思っていたら、宿屋の主人が、「いま、逃げていった奴は詐欺師で、おまけに宿屋の金を盗んでいきやがった」とあわてふためいている。泥棒か。それはいかんと、あたしは魔法銃を持って追いかけた。

 宿屋を出ると、月明かりの中、車椅子詐欺師兼泥棒の奴が村の出口に向かって走っているのが見えた。大人なのに意外と走るのが遅いな。あたしも走って追いかける。逃げてる奴は車椅子詐欺で座ってばかりいたので足が萎えてしまったのだろうか、子供のあたしより遅いぞ。ドタバタと走っている。あたしはサササと走って村を出た小道辺りでそいつに追いついた。

 さて、これは魔法銃に活躍してもらおうと、弾を調べると、「縄」って弾があったな。突然、「泥棒を捕らえて縄をなう」って言葉を思い出した。頭の悪いあたしには珍しく難しいことわざを覚えていたなあ。事が起こってから、慌てて準備を始めることみたいだけど、もしかして、泥棒をお縄にちょうだいするための弾ではないか。そう言うわけで、泥棒目がけて、「縄弾」を発射してみた。すると、縄の固まりが発射され、そいつに当たるやいなや縄が泥棒をぐるぐる巻きにして逮捕成功。ヒャッホー! 泥棒を捕まえたんで、宿屋の主人から今日から一週間、無料で宿泊にしてくれた。正直、貧乏なのでありがたい。

 翌日。さて、今日は久々に休むかと村を散歩する。寒いので外套を着て村の中をウロウロするが、この小さい村には特に楽しいものはないんだな。周りの風景はきれいなんだけどね。川岸に行って、アレックスやクリスたちと暮らしていたときみたいに石を水面に投げて飛び跳ねさせたり、木片を拾ってボートに見立てて川に流しても一人じゃつまらんな。釣り道具も無いし。この村はあたしと同世代の子供も少ないんだよなあ。なんだか寂しいぞ。

 そう言えば、例のグライダーというものはやっていないかと、再び、グライダー大会をやっていた丘に行ってみると、一人だけ、あたしよりちょっと年上くらいの少年がグライダーの準備をしているのを見つけた。その子に声をかける。

「あたしの名前はエイミーです。よろしければ、グライダーに乗せてくれませんか」
「一人では乗せられないな、二人でならいいよ」

 その子のお名前はトムさん。笑うと、のぞいた白い歯がキラッと光る。なかなかの二枚目だ。ちょっと地上で練習する。わりと小型のグライダーだ。三角形のような翼にベルトが二つ付いていて、それに胴体と足先を載せて支えるようだ。最初は地上で練習。何度か、グライダーを持って平地を走る。意外と重いな、これで空を飛べるんかいなと最初は思ったんだけど、たまに風が吹くと急に軽くなったりする。その時、飛び上がるとあたしの背の高さくらいまで浮いたりする。なんかだんだん面白くなってきたぞ。

 地上で練習した後、丘の上に上ってグライダーにベルトで二人を並んで支える。丘から斜面をゆっくりと駆け出し途中で一気に足で地上を踏み切る。すると、グライダーがスイーっと空を飛ぶ。ちょっと怖いけど気分が良い。鳥になったあたし。スイスイと飛ぶ。飛んでいる時間は三分くらいだけど。降りるときはスッと着陸できた。

 驚いたのは、このグライダーは折りたたみができるってことで一本の棒状に丸くたたむことが出来る。一人で持ち運びも可能だ。なかなか優れもののグライダーだなあ。面白くて、しつこくトムさんにねだって何度か飛んでいたら、変な大型の鳥が近づいてきた。よく見るとモンスターらしい。小型のドラゴンとコウモリを合体させたようなモンスターが襲って来た。「あれは、ワイバーンってモンスターだ」とトムさんが焦っている。あたしは魔法銃を使って、「鉄弾」を装填してワイバーン目がけて撃った。どうやら、そのモンスターの目に当たったらしく、そいつは退散していった。地上に降りてトムさんにお礼を言われた。

「危ないところだった、助けてくれてありがとう。このグライダーって、最近流行りはじめたせいか、モンスターたちも警戒しているようでめったに襲ってこないんだけどね」
「いえいえ、こちらこそ、トムさんには何度もグライダーに乗らせてもらってありがとうございます。もし、また機会があれば乗せてくれませんでしょうか。よろしくお願いいたします」
「ああ、時機が合えば、いつでもいいよ」

 日が暮れてきたので、トムさんと別れて宿屋に戻ろうと村を歩いていると、この前、サイクロプスを倒した畑の主のダニエルさんに声をかけられた。「この間はご苦労さん、ところで、わしは果樹園も持っているのだが、そこにオークが十匹くらい襲って来るんだけど、そいつらも退治してくれないかなあ」と依頼された。もう、冬なんで果物の収獲は終わっているんだが、オークの連中にはわからないらしくウロウロしているそうだ。あたしは承諾した。

 次の日、冒険者ギルドに行って、主人のレオンさんに、「オークって何ですか」と聞くと、「豚の顔をしたモンスターだ」と教えてもらった。「それじゃあ、十匹退治に行ってきます」とギルドを出ると追いかけてきて、「お前一人でやるのか」と聞かれたんで、「ヒーローは一人で戦うもんよ!」とカッコつけて果樹園に向かうと、「お前、一人で大丈夫かよ」とレオンさんもついて来た。あたしのことを心配してくれてるようだ。全くもって、本当にいい人だ。

 さて、果樹園に到着する。何だか、今日は風が強いなあと感じていると、オークがやって来た。確かに豚の顔をしているなあと思っていたら、百匹くらいの団体さんで果樹園を襲って来たぞ。話が一桁違うじゃないか! レオンさんもビビっている。すっかり囲まれてしまった。

 こりゃ、魔法銃の出番だな、どの弾を使うかなと、強風の中、「竜巻弾」ってのを撃ったら、すごい竜巻が吹いてオークの大群を全部巻き込んでいく。まあ、巻き込むだけでそんなにたいしたことないけど。しかし、オークのほとんどは驚いて逃げ出していった。

 あたしも竜巻に巻き込まれそうになったけど、レオンさんが木とあたしを必死に掴んで、何とか助かった。けど、竜巻のせいで果樹園までメチャクチャになってしまった。これはダニエルさんにまた怒られるかと思って、謝りに行ったら、「この時期は無駄な枝とかを剪定する時期なので、まあ、いいや」と報酬はくれた。そして、レオンさんから、「すごいなお前、魔法使いだったのか」と聞かれたんで、思わず、「大魔法使いだ!」と名乗ってしまった。ウソだけど。

 さて、またその次の日、冒険者ギルドに行くと、レオンさんがチョコレートを食べている。怖い顔に似合わないなあ。強いお酒をかっこよくボトルからそのままガブガブと飲んでいる感じがしたんだけど。「チョコが好きなんですか」と聞いたら、レオンさんはちょっと気まずそうな顔しながらも、「甘いもんが好きなんだ」と教えてくれた。そして、あたしにも少しくれた。そういや、初めてこの冒険者ギルドに泊まったときも、腹をすかしたあたしにチョコレートをくれたことを思い出した。よし、もう少しお金を貯めて、いつかはレオンさんにチョコレートをプレゼントすることに決めた。

「さて、何か仕事はないですか」と聞くと、あたしはこの前のオーク退治で認められたらしく、ダンジョン探索を提示された。地図を広げて、「この山の洞窟の穴に入れ」とレオンさんから指図される。あたしの生まれ故郷、ナロードリア王国に近い山だな。携帯ランプと剣も貸してくれた。剣を腰のベルトに差す。

 ウヒョー! やっぱり冒険と言ったらダンジョンだよね。あたしはすっかり張り切ってしまうのであった。
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