人生について考える

守 秀斗

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1.寝たきりになった父親

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 父親が寝たきりになった。
 もう、かなりの高齢だから仕方が無いか。

 今は自宅のマンションで母がケアマネジャーの方と相談しながら介護にあたっている。
 独立していた俺も仕事の合間に父親の様子を見に行った。

 すっかりやせ細ってしまった父。
 去年までは、一応、歩けたし会話も通じた。

「もうすっかり呆けちゃったよ」

 そう言って笑っていた。
 しかし、つい一か月前に熱を出して入院。

 あっという間に寝たきりになってしまった。
 入院したのだが、自分が自宅のマンションにいるのか病院にいるのかわからなくなったり、大小便を漏らすようになり成人用のおむつを付けるようになった。

 その後、熱は冷めて退院となったが、家に介護用のベッドをレンタルして置いたり、歩く時の支えになる棒を家の中のあちこちにつけたりした。
 そして、連日のようにくるケアマネジャーや介護士の方々。

 去年まではごく静かに暮らしていたのに。
 しかし、母が元気なのでまだ助かっている。

 これで二人とも倒れたら大変だ。
 独身の俺一人では何とも出来ないなあとおむつを変えている介護士の仕事を見ながら思った。

 ベッドで寝ている父に話しかけるが、どうも会話が通じない。
 俺の事を息子とは認識できているようだが。

 父を抱えて立ち上がらせようとしたが無理だった。
 足に力が入らないようだ。
 椅子に座ることも出来ない。

 父親はけっこうな大企業に勤めていたので貯金はかなりあるし、年金の方もけっこうな金額を貰っているので、お金の心配はない。
 
 ただ、結局、人間は誰しもいつかは死ぬのだなあと思った。
 自分が子供の頃、テレビで見て親しみを感じていた芸能人が亡くなっていくのを聞くと何とも寂しい感じがしてくる。

 自分が死ぬのは子供の頃からわかっていた。
 しかし、漠然としていたなあ。
 かなり先の話のような感じがして、現実感が伴っていなかった。

 でも、もう俺もかなり年を取った。
 死が近づいてくるのがわかる。

 自分の人生はうまくいかなかった。
 父の人生は大企業で花形の部署で働いていたようだ。

 でも、人生、うまくいこうが失敗しようがいつかは死ぬんだなと思った。
 俺は何も成功せずに、そして、父と同じように寝たきりで死んでいくのか、それとも孤独死か、または車にでもはねられて突然死か。もう、どうにもならないなとも思った。

 さて、ある日、父の様子を見に行くと驚いた。
 ベッドの端っこに座っている。
 俺を見て微笑んだ。

「自分で起きて座ったのよ」

 母が説明してくれた。
 さすがに座るだけで、立ち上がって歩くまでは出来ないようだが。

 もしかして、また歩くことが出来るようになるのだろうか。
 人生、最後の最後までわからないものだな。

 俺の人生も今からでも何か出来ることがあるのだろうか。
 先のことなんかわからないが。

 しかし、ベッドの端で座って微笑む父を見て、少し気分が楽になった。
 
(終)
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