4 / 16
4.夜に歩く
しおりを挟む
夜に歩く。
ひきこもりで日中は寝ているので、起きるのは夕方だ。
適当にパンなど食って缶コーヒーを飲む。
パソコンでゲームしたりテレビでアニメを見て部屋で一人でゴロゴロする。
それでも退屈な時は、夜に散歩。
午前三時頃。
たまに巡回中の警官に職務質問されるときもあるが、精神障害者手帳を見せればあっさり解放される。
精神障害者手帳と言っても三級だ。
何の役にも立たない。
都営のバスや地下鉄が無料で乗れるくらいだ。
ぶらぶらと一時間ほど歩いて、コンビニへ寄り食料を買う。
家にひきこもっている時も、毎朝一回はコンビニへ行く。
そして、自宅アパート近くの自販機で缶コーヒーを買って、帰って寝る。
この缶コーヒーは、明日起きた時に飲むためにいつも買っている。
缶コーヒーだけ、なぜコンビニではなく自販機で買うのかと言うと八十円で格安で販売しているからだ。このインフレ時代に頑張ってるね。
そんな日々の繰り返しだ。
もう、三十歳を過ぎた。
これから俺はどうなるのだろう。
安アパートで一人で住んでいる。
親の仕送りで暮らしている。
一緒に住まないのは、親と殺し合いになるのが嫌だからさ。
さて、今日も退屈だ。
夜の町を散歩でも行くかな。
ぼんやりと歩く。
つまらんなあ。
なんで、俺なんかこの世に産んだんだ。
俺の両親に問いかけたい。
しかし、俺の両親も、俺のことをさっさと死ねと思ってんだろうなあ。
うちの不良債権と電話で俺のことを親戚にこっそりと言っているのを聞いたことがある。
親と言っても、そんなもんさ。
子供ガチャに失敗したって感じかね。
この世に必要のない人はいないって、何かの映画かアニメで言ってたな。
ウソだね。
俺はこの世に必要ないぞ。
死んでも誰も困らない。
歩くのも疲れた。
そろそろ引き返すか。
深夜、いつものコンビニに入る。
オーナーらしき人がいつも一人でレジにいる。
前は外国人だったんだけどな。
オーナーが出てくるとは経営が苦しいのか、それともバイトが採用できないのか。
ふと見ると、バイト募集のチラシが入口に貼ってあった。
別にこのオーナーとは親しくはない。
適当に食料を買ってコンビニを出る。
家に向かう。
途中の自販機でコーヒーを買おうと思ったら、その横の空き缶用のゴミ箱の隣に浮浪者がいた。
空き缶からほんの少し残っている中の飲料を飲んでやがる。
汚いなあ。
しかし、親が死んだら俺もいつかはこうなるかもしれん。
憂鬱になる。
百円玉をポケットから取り出す。
自販機に投入しようとして誤って落としてしまった。
百円玉が落ちて、変な具合に跳ねて自販機の下に入ってしまった。
まいったな。
覗いてみると、狭い隙間に入っている。
手では取れないな。
俺が困っていると、浮浪者が持っていた汚い袋から細長い五十センチくらいの木製の定規を出した。
何でそんなものを持っているかは知らない。
どこかで適当に拾ったもんだろう。
その浮浪者が自販機の底をその定規をうまく使って、百円玉を取り出すと俺に渡した。
「すみません」
「いいってことよ」
浮浪者はニヤリと笑った。
歯が何本も抜けている。
かなりの年寄りだな。
老い先短そうだ。
俺は百円玉を入れる。
缶コーヒーを買う。
お釣りの二十円が釣り銭で戻ってきた。
その二十円を俺は眺める。
しばらくして、浮浪者に渡した。
「これ、お礼です」
「いいのかよ、別にたいしたことはしてないけど」
「いいですよ、たいした金額じゃないし」
そして、俺は自宅アパートに向かう。
たったの百円。
しかし、あの浮浪者がいなかったらあの狭い場所から取るのは難しかっただろう。
あの浮浪者は役に立ったわけか。
そして、二十円の対価を得た。
たった二十円だが。
この世に必要ない人はいないか。
そうかもしれん。
明日、地下鉄の駅に行ってバイト求人の無料雑誌でももらってくるかな。
それともあのコンビニは人不足で困っているようだから、応募してみようか。
あの浮浪者とのほんのちょっとした出会いでこんな考えが浮かぶとは不思議なものだ。
もう少し、人生頑張ってみるか。
まあ、明日、本当に行動するかわからないけどな。
(終)
ひきこもりで日中は寝ているので、起きるのは夕方だ。
適当にパンなど食って缶コーヒーを飲む。
パソコンでゲームしたりテレビでアニメを見て部屋で一人でゴロゴロする。
それでも退屈な時は、夜に散歩。
午前三時頃。
たまに巡回中の警官に職務質問されるときもあるが、精神障害者手帳を見せればあっさり解放される。
精神障害者手帳と言っても三級だ。
何の役にも立たない。
都営のバスや地下鉄が無料で乗れるくらいだ。
ぶらぶらと一時間ほど歩いて、コンビニへ寄り食料を買う。
家にひきこもっている時も、毎朝一回はコンビニへ行く。
そして、自宅アパート近くの自販機で缶コーヒーを買って、帰って寝る。
この缶コーヒーは、明日起きた時に飲むためにいつも買っている。
缶コーヒーだけ、なぜコンビニではなく自販機で買うのかと言うと八十円で格安で販売しているからだ。このインフレ時代に頑張ってるね。
そんな日々の繰り返しだ。
もう、三十歳を過ぎた。
これから俺はどうなるのだろう。
安アパートで一人で住んでいる。
親の仕送りで暮らしている。
一緒に住まないのは、親と殺し合いになるのが嫌だからさ。
さて、今日も退屈だ。
夜の町を散歩でも行くかな。
ぼんやりと歩く。
つまらんなあ。
なんで、俺なんかこの世に産んだんだ。
俺の両親に問いかけたい。
しかし、俺の両親も、俺のことをさっさと死ねと思ってんだろうなあ。
うちの不良債権と電話で俺のことを親戚にこっそりと言っているのを聞いたことがある。
親と言っても、そんなもんさ。
子供ガチャに失敗したって感じかね。
この世に必要のない人はいないって、何かの映画かアニメで言ってたな。
ウソだね。
俺はこの世に必要ないぞ。
死んでも誰も困らない。
歩くのも疲れた。
そろそろ引き返すか。
深夜、いつものコンビニに入る。
オーナーらしき人がいつも一人でレジにいる。
前は外国人だったんだけどな。
オーナーが出てくるとは経営が苦しいのか、それともバイトが採用できないのか。
ふと見ると、バイト募集のチラシが入口に貼ってあった。
別にこのオーナーとは親しくはない。
適当に食料を買ってコンビニを出る。
家に向かう。
途中の自販機でコーヒーを買おうと思ったら、その横の空き缶用のゴミ箱の隣に浮浪者がいた。
空き缶からほんの少し残っている中の飲料を飲んでやがる。
汚いなあ。
しかし、親が死んだら俺もいつかはこうなるかもしれん。
憂鬱になる。
百円玉をポケットから取り出す。
自販機に投入しようとして誤って落としてしまった。
百円玉が落ちて、変な具合に跳ねて自販機の下に入ってしまった。
まいったな。
覗いてみると、狭い隙間に入っている。
手では取れないな。
俺が困っていると、浮浪者が持っていた汚い袋から細長い五十センチくらいの木製の定規を出した。
何でそんなものを持っているかは知らない。
どこかで適当に拾ったもんだろう。
その浮浪者が自販機の底をその定規をうまく使って、百円玉を取り出すと俺に渡した。
「すみません」
「いいってことよ」
浮浪者はニヤリと笑った。
歯が何本も抜けている。
かなりの年寄りだな。
老い先短そうだ。
俺は百円玉を入れる。
缶コーヒーを買う。
お釣りの二十円が釣り銭で戻ってきた。
その二十円を俺は眺める。
しばらくして、浮浪者に渡した。
「これ、お礼です」
「いいのかよ、別にたいしたことはしてないけど」
「いいですよ、たいした金額じゃないし」
そして、俺は自宅アパートに向かう。
たったの百円。
しかし、あの浮浪者がいなかったらあの狭い場所から取るのは難しかっただろう。
あの浮浪者は役に立ったわけか。
そして、二十円の対価を得た。
たった二十円だが。
この世に必要ない人はいないか。
そうかもしれん。
明日、地下鉄の駅に行ってバイト求人の無料雑誌でももらってくるかな。
それともあのコンビニは人不足で困っているようだから、応募してみようか。
あの浮浪者とのほんのちょっとした出会いでこんな考えが浮かぶとは不思議なものだ。
もう少し、人生頑張ってみるか。
まあ、明日、本当に行動するかわからないけどな。
(終)
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる