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4.夜に歩く
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夜に歩く。
ひきこもりで日中は寝ているので、起きるのは夕方だ。
適当にパンなど食って缶コーヒーを飲む。
パソコンでゲームしたりテレビでアニメを見て部屋で一人でゴロゴロする。
それでも退屈な時は、夜に散歩。
午前三時頃。
たまに巡回中の警官に職務質問されるときもあるが、精神障害者手帳を見せればあっさり解放される。
精神障害者手帳と言っても三級だ。
何の役にも立たない。
都営のバスや地下鉄が無料で乗れるくらいだ。
ぶらぶらと一時間ほど歩いて、コンビニへ寄り食料を買う。
家にひきこもっている時も、毎朝一回はコンビニへ行く。
そして、自宅アパート近くの自販機で缶コーヒーを買って、帰って寝る。
この缶コーヒーは、明日起きた時に飲むためにいつも買っている。
缶コーヒーだけ、なぜコンビニではなく自販機で買うのかと言うと八十円で格安で販売しているからだ。このインフレ時代に頑張ってるね。
そんな日々の繰り返しだ。
もう、三十歳を過ぎた。
これから俺はどうなるのだろう。
安アパートで一人で住んでいる。
親の仕送りで暮らしている。
一緒に住まないのは、親と殺し合いになるのが嫌だからさ。
さて、今日も退屈だ。
夜の町を散歩でも行くかな。
ぼんやりと歩く。
つまらんなあ。
なんで、俺なんかこの世に産んだんだ。
俺の両親に問いかけたい。
しかし、俺の両親も、俺のことをさっさと死ねと思ってんだろうなあ。
うちの不良債権と電話で俺のことを親戚にこっそりと言っているのを聞いたことがある。
親と言っても、そんなもんさ。
子供ガチャに失敗したって感じかね。
この世に必要のない人はいないって、何かの映画かアニメで言ってたな。
ウソだね。
俺はこの世に必要ないぞ。
死んでも誰も困らない。
歩くのも疲れた。
そろそろ引き返すか。
深夜、いつものコンビニに入る。
オーナーらしき人がいつも一人でレジにいる。
前は外国人だったんだけどな。
オーナーが出てくるとは経営が苦しいのか、それともバイトが採用できないのか。
ふと見ると、バイト募集のチラシが入口に貼ってあった。
別にこのオーナーとは親しくはない。
適当に食料を買ってコンビニを出る。
家に向かう。
途中の自販機でコーヒーを買おうと思ったら、その横の空き缶用のゴミ箱の隣に浮浪者がいた。
空き缶からほんの少し残っている中の飲料を飲んでやがる。
汚いなあ。
しかし、親が死んだら俺もいつかはこうなるかもしれん。
憂鬱になる。
百円玉をポケットから取り出す。
自販機に投入しようとして誤って落としてしまった。
百円玉が落ちて、変な具合に跳ねて自販機の下に入ってしまった。
まいったな。
覗いてみると、狭い隙間に入っている。
手では取れないな。
俺が困っていると、浮浪者が持っていた汚い袋から細長い五十センチくらいの木製の定規を出した。
何でそんなものを持っているかは知らない。
どこかで適当に拾ったもんだろう。
その浮浪者が自販機の底をその定規をうまく使って、百円玉を取り出すと俺に渡した。
「すみません」
「いいってことよ」
浮浪者はニヤリと笑った。
歯が何本も抜けている。
かなりの年寄りだな。
老い先短そうだ。
俺は百円玉を入れる。
缶コーヒーを買う。
お釣りの二十円が釣り銭で戻ってきた。
その二十円を俺は眺める。
しばらくして、浮浪者に渡した。
「これ、お礼です」
「いいのかよ、別にたいしたことはしてないけど」
「いいですよ、たいした金額じゃないし」
そして、俺は自宅アパートに向かう。
たったの百円。
しかし、あの浮浪者がいなかったらあの狭い場所から取るのは難しかっただろう。
あの浮浪者は役に立ったわけか。
そして、二十円の対価を得た。
たった二十円だが。
この世に必要ない人はいないか。
そうかもしれん。
明日、地下鉄の駅に行ってバイト求人の無料雑誌でももらってくるかな。
それともあのコンビニは人不足で困っているようだから、応募してみようか。
あの浮浪者とのほんのちょっとした出会いでこんな考えが浮かぶとは不思議なものだ。
もう少し、人生頑張ってみるか。
まあ、明日、本当に行動するかわからないけどな。
(終)
ひきこもりで日中は寝ているので、起きるのは夕方だ。
適当にパンなど食って缶コーヒーを飲む。
パソコンでゲームしたりテレビでアニメを見て部屋で一人でゴロゴロする。
それでも退屈な時は、夜に散歩。
午前三時頃。
たまに巡回中の警官に職務質問されるときもあるが、精神障害者手帳を見せればあっさり解放される。
精神障害者手帳と言っても三級だ。
何の役にも立たない。
都営のバスや地下鉄が無料で乗れるくらいだ。
ぶらぶらと一時間ほど歩いて、コンビニへ寄り食料を買う。
家にひきこもっている時も、毎朝一回はコンビニへ行く。
そして、自宅アパート近くの自販機で缶コーヒーを買って、帰って寝る。
この缶コーヒーは、明日起きた時に飲むためにいつも買っている。
缶コーヒーだけ、なぜコンビニではなく自販機で買うのかと言うと八十円で格安で販売しているからだ。このインフレ時代に頑張ってるね。
そんな日々の繰り返しだ。
もう、三十歳を過ぎた。
これから俺はどうなるのだろう。
安アパートで一人で住んでいる。
親の仕送りで暮らしている。
一緒に住まないのは、親と殺し合いになるのが嫌だからさ。
さて、今日も退屈だ。
夜の町を散歩でも行くかな。
ぼんやりと歩く。
つまらんなあ。
なんで、俺なんかこの世に産んだんだ。
俺の両親に問いかけたい。
しかし、俺の両親も、俺のことをさっさと死ねと思ってんだろうなあ。
うちの不良債権と電話で俺のことを親戚にこっそりと言っているのを聞いたことがある。
親と言っても、そんなもんさ。
子供ガチャに失敗したって感じかね。
この世に必要のない人はいないって、何かの映画かアニメで言ってたな。
ウソだね。
俺はこの世に必要ないぞ。
死んでも誰も困らない。
歩くのも疲れた。
そろそろ引き返すか。
深夜、いつものコンビニに入る。
オーナーらしき人がいつも一人でレジにいる。
前は外国人だったんだけどな。
オーナーが出てくるとは経営が苦しいのか、それともバイトが採用できないのか。
ふと見ると、バイト募集のチラシが入口に貼ってあった。
別にこのオーナーとは親しくはない。
適当に食料を買ってコンビニを出る。
家に向かう。
途中の自販機でコーヒーを買おうと思ったら、その横の空き缶用のゴミ箱の隣に浮浪者がいた。
空き缶からほんの少し残っている中の飲料を飲んでやがる。
汚いなあ。
しかし、親が死んだら俺もいつかはこうなるかもしれん。
憂鬱になる。
百円玉をポケットから取り出す。
自販機に投入しようとして誤って落としてしまった。
百円玉が落ちて、変な具合に跳ねて自販機の下に入ってしまった。
まいったな。
覗いてみると、狭い隙間に入っている。
手では取れないな。
俺が困っていると、浮浪者が持っていた汚い袋から細長い五十センチくらいの木製の定規を出した。
何でそんなものを持っているかは知らない。
どこかで適当に拾ったもんだろう。
その浮浪者が自販機の底をその定規をうまく使って、百円玉を取り出すと俺に渡した。
「すみません」
「いいってことよ」
浮浪者はニヤリと笑った。
歯が何本も抜けている。
かなりの年寄りだな。
老い先短そうだ。
俺は百円玉を入れる。
缶コーヒーを買う。
お釣りの二十円が釣り銭で戻ってきた。
その二十円を俺は眺める。
しばらくして、浮浪者に渡した。
「これ、お礼です」
「いいのかよ、別にたいしたことはしてないけど」
「いいですよ、たいした金額じゃないし」
そして、俺は自宅アパートに向かう。
たったの百円。
しかし、あの浮浪者がいなかったらあの狭い場所から取るのは難しかっただろう。
あの浮浪者は役に立ったわけか。
そして、二十円の対価を得た。
たった二十円だが。
この世に必要ない人はいないか。
そうかもしれん。
明日、地下鉄の駅に行ってバイト求人の無料雑誌でももらってくるかな。
それともあのコンビニは人不足で困っているようだから、応募してみようか。
あの浮浪者とのほんのちょっとした出会いでこんな考えが浮かぶとは不思議なものだ。
もう少し、人生頑張ってみるか。
まあ、明日、本当に行動するかわからないけどな。
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