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5.エレベーターが故障したので非常階段を上る
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早朝。
自転車で自宅マンションの地下室へのスロープを下る。
俺の住んでいるマンションは地下室に自転車置き場がある。
二十四時間営業しているスーパーマーケットで食材を買ってきた。
地下室の駐輪場で自転車を置いて、エレベーターへ向かう。
しかし、なんと故障中で臨時停止していた。
俺の部屋はこの十階建てのマンションの最上階にある。
やれやれ。
修理が終わるのを待つか。
しかし、いつ終わるかわからない。
仕方がないので非常階段を上ることにした。
俺は今、六十一歳だ。
仕事は六十歳で定年退職した。
一応、六十五歳まで再雇用で働くこともできたのだがな。
しかし、ただの平社員に降格して、給与も大幅に減り、おまけに昔の部下の指示で仕事なんてしたくはない。
独身なのでそれなりに貯金はある。
年金はあてにしていないが、それがなくてもなんとか生きていけるほどの貯えはある。
俺は非常階段に向かった。
一階へ上る。
すると、家族連れが下りてきた。
途中の踊り場で、軽く会釈をしながらすれ違う。
若い夫婦と男の子。
今日は休日だったかな。
仕事を辞めると急激に、曜日や時間の感覚がおかしくなる。
毎日が正月みたいなもんだからな。
いや、今日は平日だなあ。
年休でも取って家族で旅行かな。
五歳くらいの男の子がむずがっている。
理由はわからない。
父親が叱っている。
俺にもあんな小さい頃があったなあ。
ほとんど断片的にしか覚えていない。
両親と海水浴に行ったことは覚えている。
どこに行ったのか覚えていないが楽しかったなあ。
親も若くて元気で健康そのものだった。
その両親もすでにこの世にはいない。
俺は結婚したこともないし、子供もいない。
子育ての苦労は知らない。
小さい子供の頃、俺は毎日が楽しくて仕方がなかったが親はけっこう大変だったんだろうなあと今は思う。
両親とも、ある日、突然亡くなった。
何の親孝行もしてやれなかったな。
一階から二階へ上る。
踊り場で十代くらいの制服姿の女子高生らしき女の子とすれ違う。
ムスっとしている。
俺が挨拶しても無視。
十代ってのは、何だかいつも怒っていたなあ。
何で怒っていたのかわからない。
成人して、部屋を整理していると自分が中学の頃書いた日記が出てきたことがある。
やたら学校やら家族やら社会のことで怒っていた。
なにが不満だったのだろう。
今、思えば人生で一番楽しい時期だったのになあ。
そう言えば、高校の頃、隣の席にかわいい女の子がいた。
やたら、俺に話しかけてきたなあ。
それだけで終わったけど。
あのかわいい女の子も六十歳を過ぎたおばさんか。
やたら話しかけてきたけど、まあ、俺をからかっていただけかもしれないな。
それでも懐かしい思い出だ。
二階から三階へ上る。
踊り場で二十代くらいの颯爽とした感じの新人サラリーマン風の男性とすれ違う。
自分が就職した新人の頃を思い出す。
就職一日目、職場がなぜかキラキラと輝いていたのを思い出す。
実際は、仕事はつらいことばかりだったけどな。
それでも、最初はやたら張り切っていたもんだ。
あと、会社全体が家族みたいな感じだった。
青春時代より鮮明に思い出が残っていたりする。
そして、あの頃はやたら社内行事が多かった。
レクリエーションでスポーツしたり社員旅行とか。
今はそんなことをする会社も少ないんじゃないかな。
当時はいやだなあと思ったもんだ。
しかし、今はそれらの行事が懐かしい思い出になるとは思わなかったなあ。
今の退屈な生活よりは全然ましだった。
やれやれ。
三階から四階へ上る。
踊り場で三十代くらいの中堅サラリーマン風の男性とすれ違う。
大きい声で挨拶された。
だんだんと自信がついてきて、そして仕事の責任が重くなっていく頃だな。
そう言えば、この頃、結婚寸前までいったなあ。
結局、別れてずっと独身だ。
世の中、常にタイミングってのが重要だよなあ。
あの女性は今、どこにいるのだろうか。
四階から五階へ上る。
そろそろ疲れてきた。
もう体力もだいぶ落ちてしまったなあ。
踊り場で四十代くらいの男性とすれ違う。
こんにちはと挨拶をする。
この男性は生まれつき足が悪い。
マンションの理事会で一緒になったことがある。
生まれてからずっと足を引きずっているようだ。
つらい人生だと思う。
本人はあまりそんな風には思わせないそぶりをしていたが、内心はどうだろうな。
俺は健康なだけ、幸せだったのかもしれない。
今後はどうなるかわからないが。
五階から六階へ上る。
踊り場で五十代くらいの男性と女性の夫婦らしき人たちとすれ違う。
今日は平日だが、この夫婦は早期退職でもしたのだろうか。
それとも自宅で仕事でもしているのかな。
二人ともジャージ姿だ。
ジョギングにでも行くのかね。
こんにちはと挨拶する。
夫妻もにこやかに挨拶を返す。
仲の良さそうな夫婦だな。
結婚かあ、俺とは縁がなかったなあと思っていた、その時。
「うわ!」
男性が足を滑らした。
思いっきり頭を階段にぶつけた。
奥さんが悲鳴をあげる。
男性の頭から大量に血が出ている。
これは大変だと、すぐにスマホで救急車を呼んだ。
すぐに救急隊員がやってきたが、男性は全く動かない。
そのまま、連れていかれたが、多分、亡くなったんじゃないだろうか。
管理人もやってきた。
一応、後で警察に事情を聞かれるかも知れないとのことだった。
保険金目当てに奥さんが突き落としたかもってことだろうか。
明らかに自分で転んでたけどな。
しかし、人生とは何が起きるかわからないな。
ほんの少し前まで元気に階段を下りてきた男性。
まさか、俺と挨拶した直後に死んでしまうとは夢にも思わなかっただろう。
六階から七階へ上る。
踊り場で六十代くらいの男性とすれ違う。
俺が挨拶すると、無言でうつむき加減でうなずくだけだ。
心ここにあらずって感じだ。
なんとなく沈んでいる感じがした。
黒いスーツに黒いネクタイをしている。
葬式にでも行くのだろうか。
俺の両親は、俺が五十代の頃、相次いで亡くなったが。
二人とも八十代で亡くなった。
人生百年時代とか政府は言っているが、実際は八十代で亡くなるのが多いのではなかろうか。
平均寿命も今のところ八十代だ。
無謀な延命治療で無理矢理延ばしても仕方がないと思う。
本人が辛いだけだ。
七階から八階へ上る。
踊り場で七十代くらいの男性とすれ違う。
すごくつまらなそうな顔をしていた。
もう七十代ともなると、体力も落ちるし、頭の回転もかなり悪くなる。
自分の人生を振り返り、なんにも面白くなかったと思う人もいるらしい。
老人性鬱というやつだな。
俺もそうならないとはとても言えない。
会社では結局、全然、出世しなかった。
最後は窓際で退屈していた。
そして、会社を辞めた今も退屈しているからな。
八階から九階へ上る。
踊り場で八十代くらいの男性が座り込んでいた。
「どうしたんですか、大丈夫ですか」
「いや、大丈夫だよ。ただ、俺の部屋は九階なんでなあ。ゆっくりと上がってきたんだよ、休み休みね」
「九階なら、もう少しですね」
「そうだね。まあ、わしの人生ももう少しで終わりだけどね」
「えっと、どういう意味ですか」
「末期癌でね、後、余命は半年って宣告されたよ」
「大変じゃないですか、本当に大丈夫ですか」
「まあ、手術を勧められたけど、断ったよ。少し長く生きても仕方がない。体が動くまでは自宅にいたくてね」
そして、その男性は立ち上がろうとしたが、少しふらついた。
俺が支えて九階まで連れていく。
「まあ、人生、生きるのもつらいが死ぬのもつらいですなあ」
その男性がつぶやくように言った。
そして、俺にお礼を言った。
「ありがとう。もう後は大丈夫ですよ」
「では、お体ご自愛下さい」
男性は九階の自分の部屋に入って行った。
大丈夫かなと、俺は思った。
九階から十階へ上る。
何だか不思議と何人もの人に会ったが、今度は九十代だろうか。
踊り場に数人の人たちがいる。
九十代くらいの女性を介護用のシートみたいなものに座らせて運んでいる。
運んでいる人たちはデイサービスの職員らしい。
俺もいつかこのデイサービスやデイケアを頼りにする日が来るのだろうか。
その女性は全く表情がない。
痴呆かなあと俺は思った。
失礼ながら、自分なら無理に生きていくことはしたくないなあと俺は思った。
と言って、自殺とかはする気はない。
こればっかりは仕方がないか。
そして、十階へ到着。
次は百歳の人でも現れるのかと思ったのだが。
しかし誰にも会わない。
やはり人生百年時代とか言ってるが、実際は、ほとんどの人が八十代くらいが限界じゃないかなと俺は思った。
とにかく、やっと俺の部屋がある十階まで上った。
正直、疲れた。
すっかり体力も衰えたなあ。
スーパーマーケットで買った食材をテーブルに置く。
誰もいない部屋。
それにしても、さっき転んで頭を打った男性。
もし亡くなったとして、今日死ぬなんて本人は全く思っていなかっただろうなあ。
そして、あの末期癌の男性。
子供の頃は、自分が癌で辛い目にあって死ぬとは想像していなかっただろう。
いや、想像できても、自分はそうならないとか思っちゃうんだよな。
若い時って、自分がいつか死ぬことはわかっていても、それを実感することはないからな。
俺はいつ死ぬのだろうか。
百歳で死ぬのか。
それとも明日か。
誰にもわからない。
しかし、死ぬまで生きる。
それしかないだろうなと俺は思った。
(終)
自転車で自宅マンションの地下室へのスロープを下る。
俺の住んでいるマンションは地下室に自転車置き場がある。
二十四時間営業しているスーパーマーケットで食材を買ってきた。
地下室の駐輪場で自転車を置いて、エレベーターへ向かう。
しかし、なんと故障中で臨時停止していた。
俺の部屋はこの十階建てのマンションの最上階にある。
やれやれ。
修理が終わるのを待つか。
しかし、いつ終わるかわからない。
仕方がないので非常階段を上ることにした。
俺は今、六十一歳だ。
仕事は六十歳で定年退職した。
一応、六十五歳まで再雇用で働くこともできたのだがな。
しかし、ただの平社員に降格して、給与も大幅に減り、おまけに昔の部下の指示で仕事なんてしたくはない。
独身なのでそれなりに貯金はある。
年金はあてにしていないが、それがなくてもなんとか生きていけるほどの貯えはある。
俺は非常階段に向かった。
一階へ上る。
すると、家族連れが下りてきた。
途中の踊り場で、軽く会釈をしながらすれ違う。
若い夫婦と男の子。
今日は休日だったかな。
仕事を辞めると急激に、曜日や時間の感覚がおかしくなる。
毎日が正月みたいなもんだからな。
いや、今日は平日だなあ。
年休でも取って家族で旅行かな。
五歳くらいの男の子がむずがっている。
理由はわからない。
父親が叱っている。
俺にもあんな小さい頃があったなあ。
ほとんど断片的にしか覚えていない。
両親と海水浴に行ったことは覚えている。
どこに行ったのか覚えていないが楽しかったなあ。
親も若くて元気で健康そのものだった。
その両親もすでにこの世にはいない。
俺は結婚したこともないし、子供もいない。
子育ての苦労は知らない。
小さい子供の頃、俺は毎日が楽しくて仕方がなかったが親はけっこう大変だったんだろうなあと今は思う。
両親とも、ある日、突然亡くなった。
何の親孝行もしてやれなかったな。
一階から二階へ上る。
踊り場で十代くらいの制服姿の女子高生らしき女の子とすれ違う。
ムスっとしている。
俺が挨拶しても無視。
十代ってのは、何だかいつも怒っていたなあ。
何で怒っていたのかわからない。
成人して、部屋を整理していると自分が中学の頃書いた日記が出てきたことがある。
やたら学校やら家族やら社会のことで怒っていた。
なにが不満だったのだろう。
今、思えば人生で一番楽しい時期だったのになあ。
そう言えば、高校の頃、隣の席にかわいい女の子がいた。
やたら、俺に話しかけてきたなあ。
それだけで終わったけど。
あのかわいい女の子も六十歳を過ぎたおばさんか。
やたら話しかけてきたけど、まあ、俺をからかっていただけかもしれないな。
それでも懐かしい思い出だ。
二階から三階へ上る。
踊り場で二十代くらいの颯爽とした感じの新人サラリーマン風の男性とすれ違う。
自分が就職した新人の頃を思い出す。
就職一日目、職場がなぜかキラキラと輝いていたのを思い出す。
実際は、仕事はつらいことばかりだったけどな。
それでも、最初はやたら張り切っていたもんだ。
あと、会社全体が家族みたいな感じだった。
青春時代より鮮明に思い出が残っていたりする。
そして、あの頃はやたら社内行事が多かった。
レクリエーションでスポーツしたり社員旅行とか。
今はそんなことをする会社も少ないんじゃないかな。
当時はいやだなあと思ったもんだ。
しかし、今はそれらの行事が懐かしい思い出になるとは思わなかったなあ。
今の退屈な生活よりは全然ましだった。
やれやれ。
三階から四階へ上る。
踊り場で三十代くらいの中堅サラリーマン風の男性とすれ違う。
大きい声で挨拶された。
だんだんと自信がついてきて、そして仕事の責任が重くなっていく頃だな。
そう言えば、この頃、結婚寸前までいったなあ。
結局、別れてずっと独身だ。
世の中、常にタイミングってのが重要だよなあ。
あの女性は今、どこにいるのだろうか。
四階から五階へ上る。
そろそろ疲れてきた。
もう体力もだいぶ落ちてしまったなあ。
踊り場で四十代くらいの男性とすれ違う。
こんにちはと挨拶をする。
この男性は生まれつき足が悪い。
マンションの理事会で一緒になったことがある。
生まれてからずっと足を引きずっているようだ。
つらい人生だと思う。
本人はあまりそんな風には思わせないそぶりをしていたが、内心はどうだろうな。
俺は健康なだけ、幸せだったのかもしれない。
今後はどうなるかわからないが。
五階から六階へ上る。
踊り場で五十代くらいの男性と女性の夫婦らしき人たちとすれ違う。
今日は平日だが、この夫婦は早期退職でもしたのだろうか。
それとも自宅で仕事でもしているのかな。
二人ともジャージ姿だ。
ジョギングにでも行くのかね。
こんにちはと挨拶する。
夫妻もにこやかに挨拶を返す。
仲の良さそうな夫婦だな。
結婚かあ、俺とは縁がなかったなあと思っていた、その時。
「うわ!」
男性が足を滑らした。
思いっきり頭を階段にぶつけた。
奥さんが悲鳴をあげる。
男性の頭から大量に血が出ている。
これは大変だと、すぐにスマホで救急車を呼んだ。
すぐに救急隊員がやってきたが、男性は全く動かない。
そのまま、連れていかれたが、多分、亡くなったんじゃないだろうか。
管理人もやってきた。
一応、後で警察に事情を聞かれるかも知れないとのことだった。
保険金目当てに奥さんが突き落としたかもってことだろうか。
明らかに自分で転んでたけどな。
しかし、人生とは何が起きるかわからないな。
ほんの少し前まで元気に階段を下りてきた男性。
まさか、俺と挨拶した直後に死んでしまうとは夢にも思わなかっただろう。
六階から七階へ上る。
踊り場で六十代くらいの男性とすれ違う。
俺が挨拶すると、無言でうつむき加減でうなずくだけだ。
心ここにあらずって感じだ。
なんとなく沈んでいる感じがした。
黒いスーツに黒いネクタイをしている。
葬式にでも行くのだろうか。
俺の両親は、俺が五十代の頃、相次いで亡くなったが。
二人とも八十代で亡くなった。
人生百年時代とか政府は言っているが、実際は八十代で亡くなるのが多いのではなかろうか。
平均寿命も今のところ八十代だ。
無謀な延命治療で無理矢理延ばしても仕方がないと思う。
本人が辛いだけだ。
七階から八階へ上る。
踊り場で七十代くらいの男性とすれ違う。
すごくつまらなそうな顔をしていた。
もう七十代ともなると、体力も落ちるし、頭の回転もかなり悪くなる。
自分の人生を振り返り、なんにも面白くなかったと思う人もいるらしい。
老人性鬱というやつだな。
俺もそうならないとはとても言えない。
会社では結局、全然、出世しなかった。
最後は窓際で退屈していた。
そして、会社を辞めた今も退屈しているからな。
八階から九階へ上る。
踊り場で八十代くらいの男性が座り込んでいた。
「どうしたんですか、大丈夫ですか」
「いや、大丈夫だよ。ただ、俺の部屋は九階なんでなあ。ゆっくりと上がってきたんだよ、休み休みね」
「九階なら、もう少しですね」
「そうだね。まあ、わしの人生ももう少しで終わりだけどね」
「えっと、どういう意味ですか」
「末期癌でね、後、余命は半年って宣告されたよ」
「大変じゃないですか、本当に大丈夫ですか」
「まあ、手術を勧められたけど、断ったよ。少し長く生きても仕方がない。体が動くまでは自宅にいたくてね」
そして、その男性は立ち上がろうとしたが、少しふらついた。
俺が支えて九階まで連れていく。
「まあ、人生、生きるのもつらいが死ぬのもつらいですなあ」
その男性がつぶやくように言った。
そして、俺にお礼を言った。
「ありがとう。もう後は大丈夫ですよ」
「では、お体ご自愛下さい」
男性は九階の自分の部屋に入って行った。
大丈夫かなと、俺は思った。
九階から十階へ上る。
何だか不思議と何人もの人に会ったが、今度は九十代だろうか。
踊り場に数人の人たちがいる。
九十代くらいの女性を介護用のシートみたいなものに座らせて運んでいる。
運んでいる人たちはデイサービスの職員らしい。
俺もいつかこのデイサービスやデイケアを頼りにする日が来るのだろうか。
その女性は全く表情がない。
痴呆かなあと俺は思った。
失礼ながら、自分なら無理に生きていくことはしたくないなあと俺は思った。
と言って、自殺とかはする気はない。
こればっかりは仕方がないか。
そして、十階へ到着。
次は百歳の人でも現れるのかと思ったのだが。
しかし誰にも会わない。
やはり人生百年時代とか言ってるが、実際は、ほとんどの人が八十代くらいが限界じゃないかなと俺は思った。
とにかく、やっと俺の部屋がある十階まで上った。
正直、疲れた。
すっかり体力も衰えたなあ。
スーパーマーケットで買った食材をテーブルに置く。
誰もいない部屋。
それにしても、さっき転んで頭を打った男性。
もし亡くなったとして、今日死ぬなんて本人は全く思っていなかっただろうなあ。
そして、あの末期癌の男性。
子供の頃は、自分が癌で辛い目にあって死ぬとは想像していなかっただろう。
いや、想像できても、自分はそうならないとか思っちゃうんだよな。
若い時って、自分がいつか死ぬことはわかっていても、それを実感することはないからな。
俺はいつ死ぬのだろうか。
百歳で死ぬのか。
それとも明日か。
誰にもわからない。
しかし、死ぬまで生きる。
それしかないだろうなと俺は思った。
(終)
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