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6.父親と海水浴場で別れた時のことを思い出す
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父親が亡くなった。
八十代後半。
まあ、普通の寿命かな。
母はまだ元気だ。
父と俺はあまり仲が良くなかった。
趣味が合わない。
父はスポーツとか好きだった。
俺は映画が好きだ。
父はノンフィクション派。
俺はフィクション派って感じかな。
それに、どうもタイミングが合わないというか、お互い、相手の機嫌が悪いときに問題がおきたりとかした。
父は俺の兄とはうまくやっていたようだ。
しかし、俺とはあまり喋らなかった。
俺が就職するともう事務的な会話しかしなくなった。
別にそれでいいと思っていた。
そして、そのまま何十年も過ぎ、父は八十代で死んだ。
俺は、今、五十代。
独身で家族はいない。
だから、子供との関係で悩むとかはない。
しかし、父が亡くなったことはやはりショックだ。
なにか父とのいい思い出はないだろうかと昔の記憶を辿る。
すると、五歳頃の海水浴場へ旅行に行ったときを思い出した。
場所は忘れてしまった。
父と母、そして兄と俺で四人で行った。
二泊三日だったか。
もう楽しくて仕方がなかった。
しかし、その旅行でせっかく海水浴に来たのに父は海にも入らず、わずか半日で帰ってしまった。
仕事の都合ってことだった。
何でこんな楽しい場所からすぐに帰ってしまうのだろうと、その時、俺は不思議で仕方がなかった。
海水浴場で楽しく遊んでいる俺たちと別れて、駅へ向かう道を歩きながらこちらに手を振る父を覚えている。
父はなんとなく悪いなあって顔をしていたが、同時にほっとした表情も見せていた。
今なら、その気持ちも分からないでもない。
仕事って大変だもんな。
仕事が大変なうえに、家族サービスもしなきゃいけないんだから。
自分も一日仕事が終わって家に帰るとほっとする。
誰もいない家だが。
しかし、一人だからこそ気分がいい。
子育てとは大変なんだろうなあと思う。
父も仕事で疲れて帰ると、仲の悪い息子が家に居たりで気の休まる時間がなかったかもしれない。
海水浴場から駅へ向かう道を歩きながら、振り向いて俺たちに手を振っている父を再び思いだす。
少し笑っていた。
もう少し仲良くして、もっとあの笑顔を見ればよかったかなあと俺は思った。
(終)
八十代後半。
まあ、普通の寿命かな。
母はまだ元気だ。
父と俺はあまり仲が良くなかった。
趣味が合わない。
父はスポーツとか好きだった。
俺は映画が好きだ。
父はノンフィクション派。
俺はフィクション派って感じかな。
それに、どうもタイミングが合わないというか、お互い、相手の機嫌が悪いときに問題がおきたりとかした。
父は俺の兄とはうまくやっていたようだ。
しかし、俺とはあまり喋らなかった。
俺が就職するともう事務的な会話しかしなくなった。
別にそれでいいと思っていた。
そして、そのまま何十年も過ぎ、父は八十代で死んだ。
俺は、今、五十代。
独身で家族はいない。
だから、子供との関係で悩むとかはない。
しかし、父が亡くなったことはやはりショックだ。
なにか父とのいい思い出はないだろうかと昔の記憶を辿る。
すると、五歳頃の海水浴場へ旅行に行ったときを思い出した。
場所は忘れてしまった。
父と母、そして兄と俺で四人で行った。
二泊三日だったか。
もう楽しくて仕方がなかった。
しかし、その旅行でせっかく海水浴に来たのに父は海にも入らず、わずか半日で帰ってしまった。
仕事の都合ってことだった。
何でこんな楽しい場所からすぐに帰ってしまうのだろうと、その時、俺は不思議で仕方がなかった。
海水浴場で楽しく遊んでいる俺たちと別れて、駅へ向かう道を歩きながらこちらに手を振る父を覚えている。
父はなんとなく悪いなあって顔をしていたが、同時にほっとした表情も見せていた。
今なら、その気持ちも分からないでもない。
仕事って大変だもんな。
仕事が大変なうえに、家族サービスもしなきゃいけないんだから。
自分も一日仕事が終わって家に帰るとほっとする。
誰もいない家だが。
しかし、一人だからこそ気分がいい。
子育てとは大変なんだろうなあと思う。
父も仕事で疲れて帰ると、仲の悪い息子が家に居たりで気の休まる時間がなかったかもしれない。
海水浴場から駅へ向かう道を歩きながら、振り向いて俺たちに手を振っている父を再び思いだす。
少し笑っていた。
もう少し仲良くして、もっとあの笑顔を見ればよかったかなあと俺は思った。
(終)
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