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ろくでなしαの逃亡劇
松崎健之助(α)
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深夜1時、健之助たち3人は高級住宅街の中にある一軒の門の前に立ち尽くしていた。目の前にはポリバケツがある。
30分前、強盗に入った田中金融で失敗し捕らえられた3人の前に、パンチパーマはポリバケツを置いて見せた。蓋を開けると、凄まじい悪臭に口と鼻を覆いたくなるが、手足を拘束されているのでできず目にも染みて涙が出る。
ポリバケツの中身は大量の糞便、それもおそらく人糞だ。
「これは俺たちが数週間かけて溜めた糞便だ。」
パンチパーマが得意げに言う。糞便を溜め込んだ事を得意げに話す者を、健之助は初めて見た。これもまた、自分たちが来る事を予測して用意していたわけではなく、趣味でやっていたのだろう。狂っている。
この悪臭に、彼らヤクザは鼻も覆わず平然としていた。不快害虫は平気で手掴みするし、よほど図太くできているのだろう。
健之助たちに与えられた任務、それはこの糞便を中里の家の門に塗りたくる事だった。中里の家はホームセキュリティに加入しているが、侵入せず門の前だけで済ませればバレないだろうとの事だ。ついでに郵便ポストにも糞便を詰め込んでおけと言われた。
そういう訳で、今3人は中里の家の前に立っている。かろうじてマスクと軍手の装着を許されたのだが、悪臭が目に染みる。
糞便は、肉食に偏ると悪臭がきつくなると聞いた事がある。あのヤクザ共は野菜も食べず肉ばかり食っているのだろう。にも関わらず健康体に見えるあたり、体が生来頑丈なのだろうか。
刷毛を手に、糞便を黙々と塗り始めた。作業が進むにつれ、臭いに慣れ徐々に平気になってきた。臭いだけでなく糞便を扱う事にも、だ。
ヤクザ3人が不快害虫や糞便に平然としていられる理由が分かった気がした。彼らもまた、慣れで平気になったのだろう。
忘れぬうちに、と健之助は糞便を郵便ポストにあふれ出そうになるまで次々と放り込んでおいた。
中里は綺麗好きだ。これを見てどれだけダメージを受けるかを想像すると気味が良かった。
「お前ら何やってんだ。」
作業が楽しくなり始め、夢中になる頃、背後から聞きなれた声が聞こえた。振り返ると、中里が3人の手下を控えさせ突っ立っている。
健之助たち3人は体も心臓も凍り付いた。中里の背後にいる3人は、いずれも喧嘩慣れしていそうな厳ついオーラを出している。勝てるわけが無い。
「うわあああああああああああああああああ!」
健之助は雄たけびをあげながら、ポリバケツの糞便を中里に向けて投げつけた。他の2人も次々と糞便を投げつける。中里と彼の手下は糞便塗れになった。
「…この野郎!!」
糞便塗れになった中里と手下たちは、殺気立った目を向け、こちらへ向かって来た。
彼らは糞便を投げつけられても、糞便塗れになっても、全く怖気づく様子が無い。
健之助たちは逃げだした。マスクを取り、全力で逃げた。しかしやがて体力が尽き、足を止めてしまう。背後からは走り寄る足音が近づいて来る、もうだめだとゼイゼイ息をしていると、車の音が近づいてきて目の前に止まった。
車から出てきたのは、パンチパーマたち田中金融の者だった。
彼らは健之助らを車内に連れ込むと、素早く走り去った。
30分前、強盗に入った田中金融で失敗し捕らえられた3人の前に、パンチパーマはポリバケツを置いて見せた。蓋を開けると、凄まじい悪臭に口と鼻を覆いたくなるが、手足を拘束されているのでできず目にも染みて涙が出る。
ポリバケツの中身は大量の糞便、それもおそらく人糞だ。
「これは俺たちが数週間かけて溜めた糞便だ。」
パンチパーマが得意げに言う。糞便を溜め込んだ事を得意げに話す者を、健之助は初めて見た。これもまた、自分たちが来る事を予測して用意していたわけではなく、趣味でやっていたのだろう。狂っている。
この悪臭に、彼らヤクザは鼻も覆わず平然としていた。不快害虫は平気で手掴みするし、よほど図太くできているのだろう。
健之助たちに与えられた任務、それはこの糞便を中里の家の門に塗りたくる事だった。中里の家はホームセキュリティに加入しているが、侵入せず門の前だけで済ませればバレないだろうとの事だ。ついでに郵便ポストにも糞便を詰め込んでおけと言われた。
そういう訳で、今3人は中里の家の前に立っている。かろうじてマスクと軍手の装着を許されたのだが、悪臭が目に染みる。
糞便は、肉食に偏ると悪臭がきつくなると聞いた事がある。あのヤクザ共は野菜も食べず肉ばかり食っているのだろう。にも関わらず健康体に見えるあたり、体が生来頑丈なのだろうか。
刷毛を手に、糞便を黙々と塗り始めた。作業が進むにつれ、臭いに慣れ徐々に平気になってきた。臭いだけでなく糞便を扱う事にも、だ。
ヤクザ3人が不快害虫や糞便に平然としていられる理由が分かった気がした。彼らもまた、慣れで平気になったのだろう。
忘れぬうちに、と健之助は糞便を郵便ポストにあふれ出そうになるまで次々と放り込んでおいた。
中里は綺麗好きだ。これを見てどれだけダメージを受けるかを想像すると気味が良かった。
「お前ら何やってんだ。」
作業が楽しくなり始め、夢中になる頃、背後から聞きなれた声が聞こえた。振り返ると、中里が3人の手下を控えさせ突っ立っている。
健之助たち3人は体も心臓も凍り付いた。中里の背後にいる3人は、いずれも喧嘩慣れしていそうな厳ついオーラを出している。勝てるわけが無い。
「うわあああああああああああああああああ!」
健之助は雄たけびをあげながら、ポリバケツの糞便を中里に向けて投げつけた。他の2人も次々と糞便を投げつける。中里と彼の手下は糞便塗れになった。
「…この野郎!!」
糞便塗れになった中里と手下たちは、殺気立った目を向け、こちらへ向かって来た。
彼らは糞便を投げつけられても、糞便塗れになっても、全く怖気づく様子が無い。
健之助たちは逃げだした。マスクを取り、全力で逃げた。しかしやがて体力が尽き、足を止めてしまう。背後からは走り寄る足音が近づいて来る、もうだめだとゼイゼイ息をしていると、車の音が近づいてきて目の前に止まった。
車から出てきたのは、パンチパーマたち田中金融の者だった。
彼らは健之助らを車内に連れ込むと、素早く走り去った。
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