非モテ最底辺Ω VS 特権階級α

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売られるβ、売るΩ

木下陸翔(Ω)

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楊が手下を二人程連れて孔を殺しに行っている隙に、健司に来るよう打ち合わせしておいた。
地元の知り合い等を引き連れて来た健司らは、孔が見張りに残して行った手下数名と意外にも善戦したが、最終的に相打ちとなったのは好都合だった。

これまで稼いだ金は海外の銀行に入れてあり、そこに健司の持参していた金も手に入った。
健司らの乗ってきた車で逃走し、そのまま空港で乗り捨てるとフィリピンへ飛び今に至る。
最初の頃は宿泊先のホテルを転々と変え、大人しく目立たぬよう過ごしていたが、それも数か月しか持たず、今ではカジノへ通い豪遊するようになっている。
金が尽きる頃にはほとぼりも冷めているだろう、帰国して特殊詐欺でもやって稼ごうと思っていた。

ある夜、いつもの様にカジノでゲームに興じていた時の事、従業員の一人がいきなり声をかけてきた。

「お客様、他のお客様が是非お話したいと仰っています。こちらへ来ていただけますでしょうか?」

従業員は無表情で、その顔からは何の感情も読み取れない。しかし陸翔は、嫌な予感がした。

「分かった、ただ少々飲み過ぎたみたいだ…用を足しに行ってから伺うよ。」

普通にトイレへ入ると都合良く誰もいなかったため、そこにある窓から這い出て脱出した。

敷地内の建物と塀の隙間に入り、塀をよじ登って外に出、一息つくと後頭部に強い衝撃が走り意識が遠くなっていった。

意識がゆっくりと戻ると同時に、車の走る音が近づいてくる。
目覚めるとそこは、宿泊先のベッドではなく車の後部座席だった。

「久しぶりだな、元気だったか。」

聞き覚えのある声がすぐ横から聞こえ、心臓が凍り付いた。予想していた最悪のパターンだ。

「す…すまない…」

陸翔は蚊の鳴くような震える声で、俯き加減で呟いた。楊は何も答えず、前方に目をやっている。無表情だが、腸が煮えくり返っている事が雰囲気で伝わってきた。

「か、金を払う…倍払う…だから…」

弱弱しく訴える陸翔の台詞が言い終わらぬうちに、楊はすぐ側にあった陸翔の片手を引き寄せた。

「アルバート・フィッシュって知ってるか?」

楊の訳の分からない突然の質問、陸翔は困惑し目が点になる。

「アメリカにいた殺人鬼の一人だ。そいつは極度のマゾヒストでもあってな、自分の体に様々な加虐行為を施して快感を得ていたんだ。性器に針を突き刺したりして、な。」

楊は言いながら、掴んだ陸翔の片手をマッサージでもするようにさすっている。指、一本一本丁寧に。
嫌な予感しかしない。掴まれた手を振りほどきたくて仕方ないが、それをすれば、抵抗の意思を少しでも見せれば反発と警戒を呼び、逃げ出す事はますます困難になるだろう。

「しかし、そんなアルバート・フィッシュにも一つだけ耐えられなかったプレイがある。何だと思う?指と爪の間を針で刺す行為だよ。」

楊が初めてこちらを向いた。やたら大きな白目が光り、小さな黒目が陸翔を凝視している。目が笑っていた。これから起こる事を考えて、心から楊は嬉しそうに笑みを浮かべて興奮している。

「これからお前の両手両足、全ての指と爪の間に針を突き刺してやる。その後は刃がすり減った鋸を使い、手足の指、性器、耳と鼻をゆっくりとそぎ落とす。お前のケツをチンパンジーに犯させながらな。」


ウキウキとした、まるでこれから遊びに行く子供のような口調で楊は語った。薄暗い車内で楊の大きな白目が三日月型になり、口角の上がった口が開けられ真っ赤な口内と黄ばんだ歯が浮き上がって見えた。ふと見ると楊の股間の辺りが盛り上がっている。

陸翔の背後、シートの隣には楊の手下が控えており、決死の覚悟で車外へ飛び出す事もできない。

「ちょっとフライングするか…」と言い、楊は掴んだ陸翔の手、小指を掴むと針を当てた。

「や…やめてくれ…」

泣きそうな顔、いや既に涙でぐちゃぐちゃになった顔で陸翔は懇願する。
楊は陸翔の顔をもはや見ていなかった。エロ漫画に出てくる性行為中の女の様な顔で、喘ぎ声のような荒い息を吐きながら針を抑える指に力を入れる。

フィリピンの夜空に、陸翔の悲痛な叫びが響き渡った。

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