非モテ最底辺Ω VS 特権階級α

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売られるβ、売るΩ

小机豊(α)

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チンピラ達はタイヤのパンクした車をその場で火を点けて燃やし、死体はそのまま放置して代えの車に乗り込み走り去った。もちろん小机も連れて。

両脇をチンピラに固められながら後部座席に座る小机は、車がどこへ向かっているのか分からず不安だった。

――行先は空港か駅だろうか、もしくは木下陸翔の部屋…あいつの行方などどうでも良い、俺は関係ない。そんな事よりも、妻子は無事なのか?こいつらは忘れていないだろうか?

「安心しろ」

老板と他から呼ばれるチンピラの一人が、そんな小机の心を見透かしたように言った。

「俺たちが向かっているのは、お前の妻子がいる場所だ。忘れちゃいねえよ。」

それを聞き、小机はようやく安堵した。彼らは忘れていなかった、約束を守ったのだ。悪夢のようなひと時だったが、これでもう終わり。明日からいつも通りの平穏な日々が戻って来る。
元はと言えば、卑しいβなどに関わり深入りした事が原因だった。反省し、今後は付き合う相手を見定めよう。やはりβやΩなどと関わると、ろくな事が無い。

高速を走り、着いた先は廃墟となった工場の様だった。周囲は山に囲まれている。
湿っぽい臭いのする建物内に入ると、パッと辺りが明るくなった。驚いた事に、ここは電気が引いてある。廃墟ではないのかもしれない。

明かりが点いた瞬間、目に飛び込んできた光景に小机は凍り付いた。

最初はそれが妻だと気付かなかった。それほど彼女は変わり果てていたのだ。

両腕、両足が付け根から無くなり、包帯が巻かれている。両目は潰されたのか、血塗れで眼窩から夥しい血がダラダラと流れていた。
常に美しくセットされたセミロングの髪はボサボサに乱れており、豊満な乳房には鷲掴みされたような痣があり痛々しい。

「あー…」

妻が呻き声をあげながら開いた口の中から、ボタボタと血が流れ出る。歯を全て抜かれた、むき出しの歯茎が覗き見えた。おそらく舌も切られたのだろう。

「うわあああああああああああああああ」

小机は狂ったように喚きながら妻に走り寄ろうとし、羽交い絞めにされ止められた。

これは彼らが水野に施したものを同じ、つまり妻を性奴隷に改造したのだ。

「なぜだ?!なぜ妻を性奴隷に改造する必要がある?!彼女は俺と同じαなんだぞ!性奴隷なんぞ、Ωかβにやらせるものだろう?!」

「あんた、面白い事言うな。」

老板が目を丸くし、不思議そうな顔で言った。

「αの性奴隷とか、のαは知らないんじゃないすか?世間知らずなんですよ。」

横にいたチンピラが、老板にそう耳打ちするのが聞こえた。

「あ、αの性奴隷…?」

聞いた事も無い言葉に、思わず小机の動きが止まる。αの性奴隷、αが奴隷だなんて聞いた事も無い。なぜαが奴隷になるのだ?奴隷とは、βかΩがなるものだろう。


「それもそうだろうな。しかし説明する必要も無いだろう…とにかく、あんたの妻は木下陸翔が払わなかった残りの報酬分を賄うため、性奴隷として売る事にした。こういうのは金持ちのΩがよく買っていくんだよ。」

「そ、そんな事が許されると思っているのか?!俺も妻もαだぞ!息子も…そうだ、息子は…息子の牧人はどこに…まさか…」

「安心しろ、あんたの息子の年齢だと、あの時点で改造する事はまず無いんだ。まだガキだからな、改造しなくても売れるんだよ。変態に。」

「そんな…牧人…頼む、息子には…」

涙を流しながら懇願する小机に、老板は優しく笑いかけ肩に手を置いた。

「気落ちするな、お前も奥さんと一緒だからな。…売り出し先は別になるが。」

「え…」と呟くや否や、小机の肩のあたりで機械の轟音が響き、骨の削られる音がした。彼の叫び声は機械音にかき消された。


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