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死を売る子供
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「死ぬ権利、買いませんか?」
真冬の街を行く人波の中、大量の紙束を抱えた少女がいた。
フラフラと歩きながら、彼女はひたすら声を上げ続ける。
消えかける魂の灯を必死に揺り動かす。
「あのっ…死ぬ権利、買いませんか…? お願いです…少し…ほんの少しだけ安くするので…誰か…あの…お願い…売れないと…家に…!」
誰にも彼女の声は届かない。
やがて夜が深くなり、人通りは少なくなった。
「あの…そこのお兄さん…死ぬ権利を…」
「あ? いらねぇよんなもん」
「……ごめんなさい…あ、あのっ! すみませんっ…!」
「ごめんなさいね、子供の遊びにつきあってるような時間はないのよ」
「そう…ですよね…ごめんなさい…」
彼女が抱える紙束は少しも軽くはなっていない。
道の脇に座り込む裸足の少女。
多くの人に踏まれ続け彼女の足は痣だらけになっていた。
涙を落とす気力も体力も無くただ虚空を見つめる。
「…もう、使っちゃおうかな…売り物だけど…売れないし…」
紙束の中から一枚抜き出すと、ペンが無い事に気が付く、これでは、死ねない。
「……書ければ、いいか」
少女は自分の人差し指を咥えて噛み切った、赤黒い血が滴り落ちる。
途中から無くなった指を紙の上に置き、こぼれる命で文字を書き始める。
「名前・・・」
少女には名前が無かった。しかし名前を記入しないと死ぬ権利は得られない。
「これで、いいかな」
傷だらけの少女は静かに目を閉じて横たわる。
降り始めた雪を、指先から流れ出る鮮血が赤く染めていった。
ただ一人子供が死んだだけ。何も現実は変わらない。
変わることと言えば、少女の家族の収入が無くなる事くらいである。
何も変わらない。
大事そうに抱える「死亡権利書」には、ただ一言、こう記されていた。
「死を売る子供」
真冬の街を行く人波の中、大量の紙束を抱えた少女がいた。
フラフラと歩きながら、彼女はひたすら声を上げ続ける。
消えかける魂の灯を必死に揺り動かす。
「あのっ…死ぬ権利、買いませんか…? お願いです…少し…ほんの少しだけ安くするので…誰か…あの…お願い…売れないと…家に…!」
誰にも彼女の声は届かない。
やがて夜が深くなり、人通りは少なくなった。
「あの…そこのお兄さん…死ぬ権利を…」
「あ? いらねぇよんなもん」
「……ごめんなさい…あ、あのっ! すみませんっ…!」
「ごめんなさいね、子供の遊びにつきあってるような時間はないのよ」
「そう…ですよね…ごめんなさい…」
彼女が抱える紙束は少しも軽くはなっていない。
道の脇に座り込む裸足の少女。
多くの人に踏まれ続け彼女の足は痣だらけになっていた。
涙を落とす気力も体力も無くただ虚空を見つめる。
「…もう、使っちゃおうかな…売り物だけど…売れないし…」
紙束の中から一枚抜き出すと、ペンが無い事に気が付く、これでは、死ねない。
「……書ければ、いいか」
少女は自分の人差し指を咥えて噛み切った、赤黒い血が滴り落ちる。
途中から無くなった指を紙の上に置き、こぼれる命で文字を書き始める。
「名前・・・」
少女には名前が無かった。しかし名前を記入しないと死ぬ権利は得られない。
「これで、いいかな」
傷だらけの少女は静かに目を閉じて横たわる。
降り始めた雪を、指先から流れ出る鮮血が赤く染めていった。
ただ一人子供が死んだだけ。何も現実は変わらない。
変わることと言えば、少女の家族の収入が無くなる事くらいである。
何も変わらない。
大事そうに抱える「死亡権利書」には、ただ一言、こう記されていた。
「死を売る子供」
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