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朝、颯が学校に着くと、昇降玄関の周りで何やら人が集まって騒いでいた。
颯は何事かと近づこうとしたが、人混みが多すぎて前へ進めない。
──参ったな……俺の靴箱こっちの昇降口なんだよな……。
颯の通う、私立白鷺学園には、昇降口が二つある。
だが、当然ながら靴箱は指定されている。つまりは、この人混みの中を掻き分けて行かなければならないのだ。
颯は靴箱に近づくのを諦め、何が起こったのかを、一番近くにいた後輩に訪ねてみることにした。
「どうしたんだ? この騒ぎ」
「え? あぁ……それが、いきなり昇降口のガラスが割れたんですよ。それで、なんで割れた! とかいう話になって……あ、今から誰か推理するみたいですよ」
そう言って後輩が指さした先には、一人の男が立っていた。
「ははははは! わかった! 事件は解けたぞ! 昇降口の前に、靴が落ちている! ということは、誰かが靴を投げてガラスを割ったのだ!」
言われてよく見ると、確かに靴が並べられて落ちていた。そして、その時に颯はやっと割れたガラスも見た。なるほど、外側に割れている、ね……。
周りの人たちは、おおおお?と、歓声を上げながらも、不思議に思っていた。まぁ、当たり前か。
しかしまぁ、他に解決のしようがないから仕方ないのだろう。
すると、颯は、推理をした男と目が合った。……なんだ?
推理をした男は、こちらを見て言った。
「なんだ、違うとでも言いたいのか?」
明らかにこちらに訪ねてきている。だがしかし、しまった、と思った時にはもう遅い。男はそのままこちらに向かって言う。
「なにか意見があるのであれば、こっちにこい!」
そう言われて、その上にほかの人の視線がこちらに集まってきていたため、逃げるに逃げられなくなった。
「──はぁ……わかったよ、出るよ」
颯はそう言って、仕方なく昇降口前に上がった。
その時ふと中を見るが、昇降口から廊下へ行く途中に、石油ストーブが置いてあった。最近寒くなってきたからなぁ……。
しかしまぁ、なるほど……と、颯は思う。颯の中では一応では解けてはいるらしいが、しかし合っているかどうか。
正直、物理理論的にはできるが……いや、できないか……?
「さぁ、何か言いたいことがあるのなら言え! 俺の推理に間違いなんてないから、言えないだろうがな!」
男は言った。ネクタイが青色ということは、こいつは2年生みたいだ。
颯は3年なので、ネクタイは赤色である。年下かよ……。
「じゃあ、その前に質問いいか?」
年下、ということは、敬語も使わず、遠慮せずに話していいはずだ。というかそもそも先生以外に敬語の意味が無い。
まぁ、相手は身長で颯を年下と判断しているようなので、無遠慮すぎるとは思うが。
「一応聞くけど、割る時に中に誰かいたのか? それと、そのストーブはいつから置いてあるんだ? あとは──」
颯は次々と口早に質問していく。
最後の質問は……結構重要だ。
「──窓はすべて閉まっていて、空気が通りやすかったか?」
「え、あぁ……誰かいたとは聞いてないね。ストーブは……済まないけど、わからない。窓はずっと今の状態と同じだよ」
近くにいた少年にそう言われて、颯はチラと廊下全体を見る。
──全部閉まっているみたいだな。
「おーけー。んじゃあまず、あんたの推理の方からだ。まず最初に、割れた瞬間この場には誰もいなかったのにどうやって靴を投げて割れる? それだけじゃない。ここにおいてある靴、これ、きちんと並べておいてあるじゃないか。投げたのにどうして並んでるんだ?」
「そ、それは………時限式だったり……そ、外から! 外からの可能性だってある!」
「外からはないんだよ。窓ガラスは外側に割れている。外から投げられたなら、内側に割れるはずだ」
「ぐっ……く、靴が並んでいたのは投げた人が揃えたんだ! そしてその後どこかへ行った!」
なるほど、理屈は通ってないことは無い。だが。
「無理矢理すぎるな。わざわざ揃える意味は? そして揃えてどこかへ行ったということは、そいつは今裸足か? これがもし愉快犯とかなら、野次馬とかに混じっているはずだよな? なのに、スリッパのやつもいないし、裸足は更にいない。それに、だ……」
颯は、落ちている靴……の横にいる人を向いて、言った。
「この靴、あんたのだよな? 額とかに傷があるってことは、靴を持って近づいたら割れたってことか?」
「え……そ、そうだよ。なんでわかるんだ?」
「わかった! そいつが犯人だ! そいつが靴を投げて──」
「───こいつはねぇよ。言っただろ?外側に割れてるって。内側から投げたんなら、こいつには傷はないはずだ。んで、他のやつもない。他のやつなら、こいつが見てるはずだからな」
「ぐっ………それなら、誰が犯人だというんだ! 言ってみろ! 分かるんだろう!?」
男は完全に論破され、しかし負けじとこちらへ反論してくる。なるほど、犯人を当ててみろ……か。
いいだろう、犯人を当ててやる。
「──多分だけど、犯人はいねぇよ」
「……は!?」
男だけでなく、その場にいた全員が驚いたような声を出した。いや、『ような』ではなく、まさに驚いているのだろう。
さぁ、推理の続きだ。
「犯人はいない。強いて言うなら………ストーブを置いた先生かな、犯人は」
「……おい。何をふざけたことを言っている。犯人がいないだと? 誰も何もせずに割るわけがないだろう!」
「それがあるんだよ、なんにもせずに、ただ石油ストーブが置いてあるだけで割れることが」
そしてみんなもその現象のことを知っている。なぜなら。
「電子レンジで卵が割れるのと同じだ。このガラスも、熱膨張で割れたんだよ」
電子レンジで卵が割れる、という事実は、料理をしていない人でもわかる常識だ。我ながら喩えとして上手い、と思ってしまった。
「……熱膨張?」
「そう。熱によって空気が膨張して、それで入りきらなくなってバーン。恐らくだが、この窓ガラス、割れる少し前は少し膨らんでなかったか?」
俺は、靴を持っていた人に聞いた。
「え?あぁ、うん。膨らんでたね。なんか、ガラスが曲がってた」
その人は、少し戸惑いを見せたが、しかしそのすぐあとに答えた。そしてこれによって、真相が確定した。
「ほらな。ってことで、犯人がいない。熱割れの可能性も否めなかったが、このガラスが大して老朽していなかったからな。熱膨張で間違いない。Q.E.D(証明終了)」
これで俺の仕事は終わりだ……そう思った颯だった。
すると、推理をした男が、こちらを睨んできた。
「あ……ありえん……認めんぞ……後輩に負けるなんっ──」
「おいこら……お前いい加減にしろよ。誰が後輩じゃボケ2年」
颯の手が、男の顔を掴んだ。
その顔には、恐怖の汗が滲んでいた。
「──一応俺、3年だから」
特になんの意味もない報告を告げて、颯は、教室へと向かった。
「いやぁ、凄かったねぇー、名探偵くん。素晴らしい推理だよ」
教室に入ると、そこには颯の友達の、海翔が、颯の席に座っていた。
その隣には、もうひとりの友達、赤羽もいる。
颯を含むこの3人が、いつもの仲良しトリオだ。
「名探偵じゃねぇよ、別に。ただの凡人だ」
そう、凡人。
知識があるわけでもなく、かと言って無さすぎるわけでもない。
身体能力も、中の中と言ったところで、まさに平均的な男である。
しかし、海翔はそれで納得がいかないらしい。
「普通、凡人があんな推理できるかねぇ? お前は探偵の素質あんだよ絶対。それともなにか? お得意の霊感でも使って、幽霊に答え聞いたか?」
「は? んなわけねぇだろ。偶然だよ、偶然」
彼のいうとおり、霊感はある。だが、そんなもの、少し感じる程度だ。話すことなんて出来やしない。
ということは、実力ということになる。いやまぁ、実際実力でしかないのだが。
「んー、まぁいいけどよ。この学校で事件が起きたらお前に任せるしかねぇなぁ。今日ので何回目だっけ?」
「3回目だよ……しかもどうでもいいような事件ばっかだよ。こんなもの、実績にもならないし……って、そもそも探偵目指してないから!」
颯は思い出したかのように叫ぶ。
そんなやり取りをしながら、心の中ではこう思っていた。
──こんな時間がずっと続けばいいのに。
だが、そんな希望も淡くどこかへ行ってしまった。
突然、生徒が教室に走ってきた。
そして開口一番、放った言葉は
「大変だ! 事件が起こったらしいぞ!今回は──殺人だ!」
である。
全く、平和というものはいつも長くは続かないものだ。
「殺人事件だって、怖いー!」
「今警察が来ているらしいぜ」
「誰が死んだの?」
「学級役員の3人だってさー!」
教室は事件の話で持ちきりだった。
颯は、そんな中、あたりを見回していた。
そして情報収集をしたところ、事件の概要は少しずつ見えてきた。
まずは被害者。
これは、室長、副室長、書記の3人の学級役員だった。
3人とも、生活が苦しいからバイトをすると、めちゃくちゃ意気込んでいた。
そんな頑張ろうとしている奴らが殺されるのは、なにか……嫌な気持ちにさせられる。
考えに耽っていると、3人の生徒がこちらを見てニヤニヤ笑っていた。
──なんだろう?
あいつらは確か、新井、濱部、片西だったか。
きっと、事件を解いてくれるだろうという期待で笑ってしまうんだろう。
よく周りを見ると、みんなこちらを見ていた。
「まだ解けてねぇよ、流石に。情報が少なすぎるだろ」
颯がそう言うと、クラスの扉が勢いよく開いた。
「妃颯くん、黒鉄海翔くん、赤羽塔夜くん。きたまえ」
そう言って、クラスに入ってきたのは、警察だった。
見るからに警察としか言いようがなかった。
警部……と、巡査クラスの刑事か……? 巡査部長の可能性もあるけど、多分あれは巡査だな。
そんなことを考えていると、警部と思しき人がまた呼んだ。
「いないのかね? 3人とも」
「あっ、はい。俺が妃颯です」
颯がそう言って出ると、ほかの2人もすぐに出てきた。
調査協力だろうか? そう思っていると、予想外の言葉を口にされる。
「実は、被害者に刺さっていた包丁から──君たちの指紋が出た」
「──は!?」
颯たちは驚きを隠せなかった。
しかし頭の冷静な部分は、死因について考えていた。
──なるほど、死因は刺殺……後ろから包丁でグサリと言ったところか?
包丁が刺さっていた、というワードだけで導き出せるのはここが限界だ。
「指紋が出たのだよ。しかも、後ろから刺されているのに、仰向けになっていた。不思議に思うとね、彼らの服からも指紋が出たんだよ」
ありえない。服からは、今までに触ったことがあるからまだしも、包丁に指紋がついているなんて。
「……指紋以外の証拠はないんですか?」
颯が、躊躇いつつも言った。
ここは教室、変な噂が出回る前に、どうにか弁護しないと……。
するとまたもや、驚愕の出来事を警部は口にした。
「実はね……現場に、君達3人のものと思われるものが見つかったんだ」
そう言って取り出したのは、キーホルダー、シャーペン、ストラップだった。
それには、見覚えがあった。
キーホルダーは……颯のものだった。
颯は違うと言いたかったが、しかし物的証拠が出てきている以上、反論しようもない。
その日の朝は、SHRから集会へと、予定を変更することとなった。
「えー、大変残念なことですが、本日の朝、屋上で、3年5組の学級役員の、桃園くん、来栖くん、宮田くんが亡くなっているのを発見しました。そして出てきた容疑者は、妃くん、黒鉄くん、赤羽くんです。今日は、この3人の供述を聞きたく思い、この場を開かせていただきました」
ずっと喋ってきたのは、生徒指導の主任の先生だった。
先生が合図をすると、警察に連れられて、俺達はステージの上へ上がらさせられた。
ここで言いたいことを言えというのだろう。下手な事情聴取よりは上手いかもしれない。
先生は、海翔にマイクを渡した。
海翔は、やはり第一声でこう言った
「俺達はやってません! アリバイだって……朝って言ったら、登校中です! そんなの……」
「残念ながら、死亡推定時刻は夜中の2時ぐらいです。アリバイにはなりせん」
「い、いや……その時間は寝てました! 通話履歴があると思います! 通話しながら寝るタイプなので……」
「編集可能です」
海翔が挙げる数々の反論を、しかし警察はすべて一蹴する。
そもそも、指紋が出ている時点でほぼ勝てないのだ。普通ならば。
現に、二人は既に諦めモードに入っている。
「罪を……認めますね?」
警部は後押しするように、颯達に問いかける。
やってなくても罪を認めなければならないとは……理不尽な世の中だ。
だから颯は、その理不尽な世の中を変えようと思った。
二人は問いかけに対し頷く。
颯は──頷く代わりに、口を開いた。
「なら……指紋を作れるとしたら……俺達は完全に犯人とは言い難いですよね?」
「? なに……?」
「俺達の指紋を採取して、コピー、それを使用したとしたら……俺達は犯人じゃない可能性も出ますよね?」
指紋は作れる。
厳密に言うと指紋をコピーできる。
「馬鹿なことを。指紋を作れるわけがない。それに、作ったところで、どこにあると言うんだ?」
「指紋は簡単に作れますよ。インクジェットプリンターで作ったり、ゼラチンで作ったり。どこにあるかなんて、捨てたならゴミ箱とか、草むらの中、では?」
警部の反論に、颯はなんの戸惑いもなくいった。
まぁ、家に持ち帰られてると困るが、しかし犯人が持ち帰って親などに見つかったらある意味大変だし……おそらく学校にあるだろう。
「俺は、完全無罪を主張します。その証拠に……」
颯は息を吸い、高らかに言った。
「この事件を解いてみせましょう」
推理をする、と。
「事件を解く……だと? 子供の遊びじゃないんだ。探偵ごっこならよそでしなさい」
「遊んでる暇は俺にはありませんよ。本気です。事件現場に行ってもいいですか?」
そう言うが、行かせてはもらえなかった。
すると警部は、思い出したかのように言った。
「指紋を作れる、と言ったね?では実際に作ってみてくれないか?」
「材料さえあれば。プラスチック粘土とゼラチンさえあれば、警部の指紋も取れますよ。それに、ゼラチンを使った方法なら、物からでも取れます」
颯は応えた。
すると警部は、後ろの刑事たちに何やら指示をしていた。
話が終わるとその刑事たちがいきなり走り出した。
「いま、買いに行かせた。しばらく待ってもらおうか。期待しているよ」
警部がいう。
警部はニヤニヤと笑っているが、しかしその笑顔が崩れるのも、時間の問題だった。
少なくとも、数時間後には、その顔は驚きと屈辱の表情に変わるのだった。
「警部、買ってきました!」
「ありがとう。彼に渡してくれ」
「はっ!」
刑事は警部に一度敬礼をして、こちらに走りよってきた。
右手にはプラスチック製粘土とゼラチンが入ったビニール袋がある。
「ありがとうございます」
颯はそう言って、袋を受け取り、用意していた机に中身を出した。
そして同じく用意していた水に、プラスチック製粘土をつける
「プラスチック粘土は水につけると柔らかくなるので、柔らかくしときます」
粘土が柔らかくなったのを確認すると、取り出して机の上に置く。
そして──警部に渡された、指紋付きの万年筆を、粘土に押し付ける。
すると……粘土にでこぼこが浮かび上がった。よく見るとそれは、指紋だった。
「ほう?そうやってとるのか……しかしそれでは指紋は──」
「──これだけでは終わりませんよ」
警部が言い終わる前に、颯がそういった。
粘土が固まったのを確認すると、颯はゼラチンをその窪みに流し込んだ。
そして流し終わると、乾かすために放置した。
しかし……ほぼ指紋は作り終えた。
颯は警部の方に向き直り、口を開いた。
「これで完成です。冷蔵庫などで冷やすと早いですが、まぁ、このまま乾かしていてもできるでしょう」
「ほう? なるほどなぁ……しかしそれでは、指紋が君のじゃないという確定ではないが……」
「分かってますよ。ですが、俺以外の犯行もある、ということは頭に入れておいてください」
颯はそう言って、きっ、と睨んだ。
「分かった、わかった。それも考慮しておこう。しかし、あの落とし物はどう説明するのかね?」
「盗んでも気づかれないような、かつ、個人を特定できるようなものを盗んで、わざと置いていったんでしょう。俺たちに罪をなすりつけるために」
ありえない話ではない。むしろ、結構ある。
しかし現場を見ない限りは、なんとも言い難いというのが現状、颯が抱く気持ちだった。
まだやってない証拠としては弱い。
「警部。お願いします、現場を見せてください。絶対に、推理して見せますので……!」
颯は真剣な顔付きでそういった。
しかし警部は、頑なに首を縦には振らない。
「一般人で、しかも容疑者に現場を見せることは出来ないな。証拠隠滅もされかねん」
「それなら、監視しておけばいいでしょう? 荒らしたりしませんから」
無理なのはわかるが、頑なすぎる。なにか見られたくないものでもあるのだろうかと疑いたくなる気もする。
確かにプロの探偵ではないが、推理してみせるというのだ、警部にとっても悪い話ではない。少なくとも冤罪で颯たちを逮捕するよりはマシのはずだ。
しかし
「ダメだ。そもそも推理なんて出来るわけない」
警部の返事はダメの一点張りだった。諦めきれないが、諦めるしかないのだろうか。
すると警部は思い出したかのような顔をして、こちらを向いた。
「いや、しかしね。君の友達2人が自分たちがやったと言っていることに関しては、どう弁論するのかね?」
なるほど、痛いところを突かれた。と颯は思った。
しかし、反論材料がないわけでもない。反論するにしては少し弱すぎる気もするが。
「本当に犯人ならなんで抵抗したんですか? 必死に抵抗していたでしょう? しかしなにも無実を立証する方法が無かったら、たとえ冤罪であっても誰だって諦めると思いますが……そうさせたのは警部さんたちでしょう?」
「ぬ……なるほど。分かった、では一応それも考慮しておこう」
納得した様子で警部はその場を立ち去ろうとするが、しかし颯はそれを許さなかった。
「警部! 現場に入れてください! 絶対に犯人を当てて見せます! 絶対に……推理して見せます!」
颯は懇願するように言った。
これで通らなかったら、無理矢理にでも行くしかない。そんな覚悟で叫んでいた。
果たして警部は納得してくれるだろうか。
警部は立ち止まり、こちらに振り返って、言った。
「何度も言っているが、ダメだ。絶対に」
「──警察では謎は解けないでしょう。そして俺たちを冤罪で逮捕する。警察は確実に解けません。ですがら俺なら解けます。なので現場に入れてください」
颯は最後の切り札を出した。
そう、煽ったのだ。
すると警部はこちらを睨み、そしてすぐ後にニヤリと笑った。
「いいだろう、そこまで言うのならば入ってもいい。だが、解けなかったら……君を犯人ということにするが、それでもいいかね?」
「ええ、いいですよ」
どうやら交渉は成功したらしい。
颯は警部の方を見て、不敵に微笑んだ。
颯は何事かと近づこうとしたが、人混みが多すぎて前へ進めない。
──参ったな……俺の靴箱こっちの昇降口なんだよな……。
颯の通う、私立白鷺学園には、昇降口が二つある。
だが、当然ながら靴箱は指定されている。つまりは、この人混みの中を掻き分けて行かなければならないのだ。
颯は靴箱に近づくのを諦め、何が起こったのかを、一番近くにいた後輩に訪ねてみることにした。
「どうしたんだ? この騒ぎ」
「え? あぁ……それが、いきなり昇降口のガラスが割れたんですよ。それで、なんで割れた! とかいう話になって……あ、今から誰か推理するみたいですよ」
そう言って後輩が指さした先には、一人の男が立っていた。
「ははははは! わかった! 事件は解けたぞ! 昇降口の前に、靴が落ちている! ということは、誰かが靴を投げてガラスを割ったのだ!」
言われてよく見ると、確かに靴が並べられて落ちていた。そして、その時に颯はやっと割れたガラスも見た。なるほど、外側に割れている、ね……。
周りの人たちは、おおおお?と、歓声を上げながらも、不思議に思っていた。まぁ、当たり前か。
しかしまぁ、他に解決のしようがないから仕方ないのだろう。
すると、颯は、推理をした男と目が合った。……なんだ?
推理をした男は、こちらを見て言った。
「なんだ、違うとでも言いたいのか?」
明らかにこちらに訪ねてきている。だがしかし、しまった、と思った時にはもう遅い。男はそのままこちらに向かって言う。
「なにか意見があるのであれば、こっちにこい!」
そう言われて、その上にほかの人の視線がこちらに集まってきていたため、逃げるに逃げられなくなった。
「──はぁ……わかったよ、出るよ」
颯はそう言って、仕方なく昇降口前に上がった。
その時ふと中を見るが、昇降口から廊下へ行く途中に、石油ストーブが置いてあった。最近寒くなってきたからなぁ……。
しかしまぁ、なるほど……と、颯は思う。颯の中では一応では解けてはいるらしいが、しかし合っているかどうか。
正直、物理理論的にはできるが……いや、できないか……?
「さぁ、何か言いたいことがあるのなら言え! 俺の推理に間違いなんてないから、言えないだろうがな!」
男は言った。ネクタイが青色ということは、こいつは2年生みたいだ。
颯は3年なので、ネクタイは赤色である。年下かよ……。
「じゃあ、その前に質問いいか?」
年下、ということは、敬語も使わず、遠慮せずに話していいはずだ。というかそもそも先生以外に敬語の意味が無い。
まぁ、相手は身長で颯を年下と判断しているようなので、無遠慮すぎるとは思うが。
「一応聞くけど、割る時に中に誰かいたのか? それと、そのストーブはいつから置いてあるんだ? あとは──」
颯は次々と口早に質問していく。
最後の質問は……結構重要だ。
「──窓はすべて閉まっていて、空気が通りやすかったか?」
「え、あぁ……誰かいたとは聞いてないね。ストーブは……済まないけど、わからない。窓はずっと今の状態と同じだよ」
近くにいた少年にそう言われて、颯はチラと廊下全体を見る。
──全部閉まっているみたいだな。
「おーけー。んじゃあまず、あんたの推理の方からだ。まず最初に、割れた瞬間この場には誰もいなかったのにどうやって靴を投げて割れる? それだけじゃない。ここにおいてある靴、これ、きちんと並べておいてあるじゃないか。投げたのにどうして並んでるんだ?」
「そ、それは………時限式だったり……そ、外から! 外からの可能性だってある!」
「外からはないんだよ。窓ガラスは外側に割れている。外から投げられたなら、内側に割れるはずだ」
「ぐっ……く、靴が並んでいたのは投げた人が揃えたんだ! そしてその後どこかへ行った!」
なるほど、理屈は通ってないことは無い。だが。
「無理矢理すぎるな。わざわざ揃える意味は? そして揃えてどこかへ行ったということは、そいつは今裸足か? これがもし愉快犯とかなら、野次馬とかに混じっているはずだよな? なのに、スリッパのやつもいないし、裸足は更にいない。それに、だ……」
颯は、落ちている靴……の横にいる人を向いて、言った。
「この靴、あんたのだよな? 額とかに傷があるってことは、靴を持って近づいたら割れたってことか?」
「え……そ、そうだよ。なんでわかるんだ?」
「わかった! そいつが犯人だ! そいつが靴を投げて──」
「───こいつはねぇよ。言っただろ?外側に割れてるって。内側から投げたんなら、こいつには傷はないはずだ。んで、他のやつもない。他のやつなら、こいつが見てるはずだからな」
「ぐっ………それなら、誰が犯人だというんだ! 言ってみろ! 分かるんだろう!?」
男は完全に論破され、しかし負けじとこちらへ反論してくる。なるほど、犯人を当ててみろ……か。
いいだろう、犯人を当ててやる。
「──多分だけど、犯人はいねぇよ」
「……は!?」
男だけでなく、その場にいた全員が驚いたような声を出した。いや、『ような』ではなく、まさに驚いているのだろう。
さぁ、推理の続きだ。
「犯人はいない。強いて言うなら………ストーブを置いた先生かな、犯人は」
「……おい。何をふざけたことを言っている。犯人がいないだと? 誰も何もせずに割るわけがないだろう!」
「それがあるんだよ、なんにもせずに、ただ石油ストーブが置いてあるだけで割れることが」
そしてみんなもその現象のことを知っている。なぜなら。
「電子レンジで卵が割れるのと同じだ。このガラスも、熱膨張で割れたんだよ」
電子レンジで卵が割れる、という事実は、料理をしていない人でもわかる常識だ。我ながら喩えとして上手い、と思ってしまった。
「……熱膨張?」
「そう。熱によって空気が膨張して、それで入りきらなくなってバーン。恐らくだが、この窓ガラス、割れる少し前は少し膨らんでなかったか?」
俺は、靴を持っていた人に聞いた。
「え?あぁ、うん。膨らんでたね。なんか、ガラスが曲がってた」
その人は、少し戸惑いを見せたが、しかしそのすぐあとに答えた。そしてこれによって、真相が確定した。
「ほらな。ってことで、犯人がいない。熱割れの可能性も否めなかったが、このガラスが大して老朽していなかったからな。熱膨張で間違いない。Q.E.D(証明終了)」
これで俺の仕事は終わりだ……そう思った颯だった。
すると、推理をした男が、こちらを睨んできた。
「あ……ありえん……認めんぞ……後輩に負けるなんっ──」
「おいこら……お前いい加減にしろよ。誰が後輩じゃボケ2年」
颯の手が、男の顔を掴んだ。
その顔には、恐怖の汗が滲んでいた。
「──一応俺、3年だから」
特になんの意味もない報告を告げて、颯は、教室へと向かった。
「いやぁ、凄かったねぇー、名探偵くん。素晴らしい推理だよ」
教室に入ると、そこには颯の友達の、海翔が、颯の席に座っていた。
その隣には、もうひとりの友達、赤羽もいる。
颯を含むこの3人が、いつもの仲良しトリオだ。
「名探偵じゃねぇよ、別に。ただの凡人だ」
そう、凡人。
知識があるわけでもなく、かと言って無さすぎるわけでもない。
身体能力も、中の中と言ったところで、まさに平均的な男である。
しかし、海翔はそれで納得がいかないらしい。
「普通、凡人があんな推理できるかねぇ? お前は探偵の素質あんだよ絶対。それともなにか? お得意の霊感でも使って、幽霊に答え聞いたか?」
「は? んなわけねぇだろ。偶然だよ、偶然」
彼のいうとおり、霊感はある。だが、そんなもの、少し感じる程度だ。話すことなんて出来やしない。
ということは、実力ということになる。いやまぁ、実際実力でしかないのだが。
「んー、まぁいいけどよ。この学校で事件が起きたらお前に任せるしかねぇなぁ。今日ので何回目だっけ?」
「3回目だよ……しかもどうでもいいような事件ばっかだよ。こんなもの、実績にもならないし……って、そもそも探偵目指してないから!」
颯は思い出したかのように叫ぶ。
そんなやり取りをしながら、心の中ではこう思っていた。
──こんな時間がずっと続けばいいのに。
だが、そんな希望も淡くどこかへ行ってしまった。
突然、生徒が教室に走ってきた。
そして開口一番、放った言葉は
「大変だ! 事件が起こったらしいぞ!今回は──殺人だ!」
である。
全く、平和というものはいつも長くは続かないものだ。
「殺人事件だって、怖いー!」
「今警察が来ているらしいぜ」
「誰が死んだの?」
「学級役員の3人だってさー!」
教室は事件の話で持ちきりだった。
颯は、そんな中、あたりを見回していた。
そして情報収集をしたところ、事件の概要は少しずつ見えてきた。
まずは被害者。
これは、室長、副室長、書記の3人の学級役員だった。
3人とも、生活が苦しいからバイトをすると、めちゃくちゃ意気込んでいた。
そんな頑張ろうとしている奴らが殺されるのは、なにか……嫌な気持ちにさせられる。
考えに耽っていると、3人の生徒がこちらを見てニヤニヤ笑っていた。
──なんだろう?
あいつらは確か、新井、濱部、片西だったか。
きっと、事件を解いてくれるだろうという期待で笑ってしまうんだろう。
よく周りを見ると、みんなこちらを見ていた。
「まだ解けてねぇよ、流石に。情報が少なすぎるだろ」
颯がそう言うと、クラスの扉が勢いよく開いた。
「妃颯くん、黒鉄海翔くん、赤羽塔夜くん。きたまえ」
そう言って、クラスに入ってきたのは、警察だった。
見るからに警察としか言いようがなかった。
警部……と、巡査クラスの刑事か……? 巡査部長の可能性もあるけど、多分あれは巡査だな。
そんなことを考えていると、警部と思しき人がまた呼んだ。
「いないのかね? 3人とも」
「あっ、はい。俺が妃颯です」
颯がそう言って出ると、ほかの2人もすぐに出てきた。
調査協力だろうか? そう思っていると、予想外の言葉を口にされる。
「実は、被害者に刺さっていた包丁から──君たちの指紋が出た」
「──は!?」
颯たちは驚きを隠せなかった。
しかし頭の冷静な部分は、死因について考えていた。
──なるほど、死因は刺殺……後ろから包丁でグサリと言ったところか?
包丁が刺さっていた、というワードだけで導き出せるのはここが限界だ。
「指紋が出たのだよ。しかも、後ろから刺されているのに、仰向けになっていた。不思議に思うとね、彼らの服からも指紋が出たんだよ」
ありえない。服からは、今までに触ったことがあるからまだしも、包丁に指紋がついているなんて。
「……指紋以外の証拠はないんですか?」
颯が、躊躇いつつも言った。
ここは教室、変な噂が出回る前に、どうにか弁護しないと……。
するとまたもや、驚愕の出来事を警部は口にした。
「実はね……現場に、君達3人のものと思われるものが見つかったんだ」
そう言って取り出したのは、キーホルダー、シャーペン、ストラップだった。
それには、見覚えがあった。
キーホルダーは……颯のものだった。
颯は違うと言いたかったが、しかし物的証拠が出てきている以上、反論しようもない。
その日の朝は、SHRから集会へと、予定を変更することとなった。
「えー、大変残念なことですが、本日の朝、屋上で、3年5組の学級役員の、桃園くん、来栖くん、宮田くんが亡くなっているのを発見しました。そして出てきた容疑者は、妃くん、黒鉄くん、赤羽くんです。今日は、この3人の供述を聞きたく思い、この場を開かせていただきました」
ずっと喋ってきたのは、生徒指導の主任の先生だった。
先生が合図をすると、警察に連れられて、俺達はステージの上へ上がらさせられた。
ここで言いたいことを言えというのだろう。下手な事情聴取よりは上手いかもしれない。
先生は、海翔にマイクを渡した。
海翔は、やはり第一声でこう言った
「俺達はやってません! アリバイだって……朝って言ったら、登校中です! そんなの……」
「残念ながら、死亡推定時刻は夜中の2時ぐらいです。アリバイにはなりせん」
「い、いや……その時間は寝てました! 通話履歴があると思います! 通話しながら寝るタイプなので……」
「編集可能です」
海翔が挙げる数々の反論を、しかし警察はすべて一蹴する。
そもそも、指紋が出ている時点でほぼ勝てないのだ。普通ならば。
現に、二人は既に諦めモードに入っている。
「罪を……認めますね?」
警部は後押しするように、颯達に問いかける。
やってなくても罪を認めなければならないとは……理不尽な世の中だ。
だから颯は、その理不尽な世の中を変えようと思った。
二人は問いかけに対し頷く。
颯は──頷く代わりに、口を開いた。
「なら……指紋を作れるとしたら……俺達は完全に犯人とは言い難いですよね?」
「? なに……?」
「俺達の指紋を採取して、コピー、それを使用したとしたら……俺達は犯人じゃない可能性も出ますよね?」
指紋は作れる。
厳密に言うと指紋をコピーできる。
「馬鹿なことを。指紋を作れるわけがない。それに、作ったところで、どこにあると言うんだ?」
「指紋は簡単に作れますよ。インクジェットプリンターで作ったり、ゼラチンで作ったり。どこにあるかなんて、捨てたならゴミ箱とか、草むらの中、では?」
警部の反論に、颯はなんの戸惑いもなくいった。
まぁ、家に持ち帰られてると困るが、しかし犯人が持ち帰って親などに見つかったらある意味大変だし……おそらく学校にあるだろう。
「俺は、完全無罪を主張します。その証拠に……」
颯は息を吸い、高らかに言った。
「この事件を解いてみせましょう」
推理をする、と。
「事件を解く……だと? 子供の遊びじゃないんだ。探偵ごっこならよそでしなさい」
「遊んでる暇は俺にはありませんよ。本気です。事件現場に行ってもいいですか?」
そう言うが、行かせてはもらえなかった。
すると警部は、思い出したかのように言った。
「指紋を作れる、と言ったね?では実際に作ってみてくれないか?」
「材料さえあれば。プラスチック粘土とゼラチンさえあれば、警部の指紋も取れますよ。それに、ゼラチンを使った方法なら、物からでも取れます」
颯は応えた。
すると警部は、後ろの刑事たちに何やら指示をしていた。
話が終わるとその刑事たちがいきなり走り出した。
「いま、買いに行かせた。しばらく待ってもらおうか。期待しているよ」
警部がいう。
警部はニヤニヤと笑っているが、しかしその笑顔が崩れるのも、時間の問題だった。
少なくとも、数時間後には、その顔は驚きと屈辱の表情に変わるのだった。
「警部、買ってきました!」
「ありがとう。彼に渡してくれ」
「はっ!」
刑事は警部に一度敬礼をして、こちらに走りよってきた。
右手にはプラスチック製粘土とゼラチンが入ったビニール袋がある。
「ありがとうございます」
颯はそう言って、袋を受け取り、用意していた机に中身を出した。
そして同じく用意していた水に、プラスチック製粘土をつける
「プラスチック粘土は水につけると柔らかくなるので、柔らかくしときます」
粘土が柔らかくなったのを確認すると、取り出して机の上に置く。
そして──警部に渡された、指紋付きの万年筆を、粘土に押し付ける。
すると……粘土にでこぼこが浮かび上がった。よく見るとそれは、指紋だった。
「ほう?そうやってとるのか……しかしそれでは指紋は──」
「──これだけでは終わりませんよ」
警部が言い終わる前に、颯がそういった。
粘土が固まったのを確認すると、颯はゼラチンをその窪みに流し込んだ。
そして流し終わると、乾かすために放置した。
しかし……ほぼ指紋は作り終えた。
颯は警部の方に向き直り、口を開いた。
「これで完成です。冷蔵庫などで冷やすと早いですが、まぁ、このまま乾かしていてもできるでしょう」
「ほう? なるほどなぁ……しかしそれでは、指紋が君のじゃないという確定ではないが……」
「分かってますよ。ですが、俺以外の犯行もある、ということは頭に入れておいてください」
颯はそう言って、きっ、と睨んだ。
「分かった、わかった。それも考慮しておこう。しかし、あの落とし物はどう説明するのかね?」
「盗んでも気づかれないような、かつ、個人を特定できるようなものを盗んで、わざと置いていったんでしょう。俺たちに罪をなすりつけるために」
ありえない話ではない。むしろ、結構ある。
しかし現場を見ない限りは、なんとも言い難いというのが現状、颯が抱く気持ちだった。
まだやってない証拠としては弱い。
「警部。お願いします、現場を見せてください。絶対に、推理して見せますので……!」
颯は真剣な顔付きでそういった。
しかし警部は、頑なに首を縦には振らない。
「一般人で、しかも容疑者に現場を見せることは出来ないな。証拠隠滅もされかねん」
「それなら、監視しておけばいいでしょう? 荒らしたりしませんから」
無理なのはわかるが、頑なすぎる。なにか見られたくないものでもあるのだろうかと疑いたくなる気もする。
確かにプロの探偵ではないが、推理してみせるというのだ、警部にとっても悪い話ではない。少なくとも冤罪で颯たちを逮捕するよりはマシのはずだ。
しかし
「ダメだ。そもそも推理なんて出来るわけない」
警部の返事はダメの一点張りだった。諦めきれないが、諦めるしかないのだろうか。
すると警部は思い出したかのような顔をして、こちらを向いた。
「いや、しかしね。君の友達2人が自分たちがやったと言っていることに関しては、どう弁論するのかね?」
なるほど、痛いところを突かれた。と颯は思った。
しかし、反論材料がないわけでもない。反論するにしては少し弱すぎる気もするが。
「本当に犯人ならなんで抵抗したんですか? 必死に抵抗していたでしょう? しかしなにも無実を立証する方法が無かったら、たとえ冤罪であっても誰だって諦めると思いますが……そうさせたのは警部さんたちでしょう?」
「ぬ……なるほど。分かった、では一応それも考慮しておこう」
納得した様子で警部はその場を立ち去ろうとするが、しかし颯はそれを許さなかった。
「警部! 現場に入れてください! 絶対に犯人を当てて見せます! 絶対に……推理して見せます!」
颯は懇願するように言った。
これで通らなかったら、無理矢理にでも行くしかない。そんな覚悟で叫んでいた。
果たして警部は納得してくれるだろうか。
警部は立ち止まり、こちらに振り返って、言った。
「何度も言っているが、ダメだ。絶対に」
「──警察では謎は解けないでしょう。そして俺たちを冤罪で逮捕する。警察は確実に解けません。ですがら俺なら解けます。なので現場に入れてください」
颯は最後の切り札を出した。
そう、煽ったのだ。
すると警部はこちらを睨み、そしてすぐ後にニヤリと笑った。
「いいだろう、そこまで言うのならば入ってもいい。だが、解けなかったら……君を犯人ということにするが、それでもいいかね?」
「ええ、いいですよ」
どうやら交渉は成功したらしい。
颯は警部の方を見て、不敵に微笑んだ。
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