織稚影願ホラー短編集

織稚 影願

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歌がお好き?

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 おや? これは皆様御機嫌よう。
 またお越しになったのですね? 私の"お話"を聞きに。そうですね、ではこちらなどはいかがでしょうか?
 あるお方がお仕事をしている最中に起こった、奇妙で恐ろしい体験のお話を、どうぞお聞きくださいませ。

 これは僕が仕事をしている時の話だった。僕はカラオケ屋の夜勤の仕事をしていて、その日は各部屋の清掃をしていた。鏡を拭いたり、床をモップ掛けしたりと、様々な業務があり、二階建ての二階の業務ということもあって、歌いながら仕事をしていた。
 その日僕は何故か、某モンスターRPGゲームのBGMを口ずさんでいました。オープニングから戦闘曲、ボス戦曲などを自分なりに歌っていたんですが、何を思ったのか僕は、ある部屋でそのゲーム1のホラータウンと言われる「シ〇ンタウン」のBGMを口ずさんでいたんです。
 そのある部屋というのは、御手洗場の横の部屋なのですが、実はこの部屋、幽霊が出ると言う噂がありました。というのも、何故かその部屋に入ると夏でも少し肌寒い程気温が低く感じられるという奇妙な現象が起きていたのです。隣の部屋や御手洗場では温度が変わらず、その部屋のみなので、幽霊でもいるのではないか? と噂になっていました。
 そんな部屋でホラーな曲を歌ったもんですから、私はすぐに後悔しました。鏡を拭いている途中、突然嫌な気配がしたのです。悪寒と言いますか、何かおぞましいものを感じとり、やばい! と思って早く終わらせようと手を動かした瞬間。
 ──鏡を見ると後ろに女性が立っていました。部屋の入口の辺りです。僕はしばらく恐怖で硬直していましたが、しかしその女性もそこから動かず、何もしてくる気配はありませんでした。やっと体が動くようになったので振り向くと、そこには誰もおらず、その代わりペタペタと走る音が聞こえました。もしかしてお客様だったのかな? と思いその後は作業を終わらせ、一階に降りたのですが、その時にふと思い出したのです。
 一階には男性の2人組のお客様しかおられませんでした。そして二階には。
 ──誰も利用者が居ないのです。最終退出は僕が出勤する前で、実は自分が清掃を始めた頃には二階にはお客様はいなかったのです。つまりあの女性は……。
 僕はそれ以上考えることを辞めました。それ以降は楽しい歌を歌いながら作業をしており、何もおかしなことは起きていません。未だに僕は、鏡を磨き続けます。鏡にこびりついた黒いシミが取れるようにいつまでも。

 いかがでしたか? 今回は不思議な体験のお話でしたね。さて、このお話はこれにて幕閉じとなります。また、お話をお聞きしに来てくださいませ。それでは、御機嫌よう。
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